人権・労働

DNPは「人権の尊重」を、企業が社会の一員として果たすべき責任のひとつと認識し、「社員」「地域社会」「サプライヤー」「顧客」「株主・投資家」といった多様なステークホルダーとの対話を通して、取り組みを強化しています。またDNPは、一人ひとりの「違い」を尊重し、互いに受け入れ、その多様性を活かすことにより、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供します。同時に、職場の安全衛生の維持・向上、社員とその家族の心身の健康保持・増進に努めることによって、DNPグループの健康で安全な活力ある職場づくりを推進し、持続的な発展につなげていきます。

中長期ビジョン

人類の尊厳を何よりも大切なものと考え、あらゆる人が固有に持つ文化、国籍、人種、民族、言語、宗教、価値観、性別、年齢、性自認、性的指向、障がいの有無などの多様性を尊重し、規律ある行動をとるという前提に立ち、社員の多様性に配慮した働き方を尊重し、健康で安全な活力ある職場の実現をめざす。

対応するSDGs

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 5 ジェンダー平等を実現しよう
  • 8 働きがいも経済成長も
  • 10 人や国の不平等をなくそう

達成状況を測る指標および実績

中長期ビジョン達成状況を測る指標 目標値 実績
  • 女性管理職人数・比率(DNP単体)※1
  • 障がい者雇用率 (DNP単体と特例子会社の合算)※2
  • 年次有給休暇取得率(DNP単体)※3
  • 休業災害度数率※4
  • 2025年度までに
    (1)部長クラス以上の女性の人数を2022年3月末の150%
    (2)課長クラスに占める女性の割合を15%以上
    (3)リーダークラスに占める女性の割合を25%以上
  • 2.5%以上
  • 前年度より増加
  • 0.2以下
最新年度実績へ

  • ※1女性管理職人数・比率:2022年度より指標・目標値変更
    リーダークラス:管理職一歩手前
  • ※2障がい者雇用率:2023年度より目標値変更
  • ※3年次有給休暇取得率:2023年度より指標変更
  • ※4休業災害度数率:労働災害による死傷者数(休業4日以上)÷延べ労働時間×1,000,000。集計期間は2023年1月から12月まで

人権への取り組み

方針と体制

DNPは「DNPグループ行動規範」のひとつに「人類の尊厳と多様性の尊重」を掲げ、あらゆる人が固有に持つ文化、国籍、信条、人種、民族、言語、宗教、性別、年齢や考え方の多様性を尊重することを定めています。2020年には、「国際人権章典」や「労働における基本的原則および権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」等の国際規範を尊重し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて、取締役会の審議を経て、「DNPグループ人権方針」を策定しました。人事・労務関連のほか、ダイバーシティ&インクルージョン推進、サステナビリティ推進、購買、事業推進、法務・コンプライアンスなどの各部門が連携を深めて、人権尊重の取り組みを強化しています。

人権デュー・ディリジェンス

人権デュー・ディリジェンスの全体像

DNPは、DNPグループ行動規範の考えのもと、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会にて、人権デュー・ディリジェンスを進めています。2020年には、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に依拠した「DNPグループ人権方針」を策定しました。人権方針に基づき、人権への負の影響について、特定・評価、防止・軽減、取り組みの実効性の評価、説明・情報開示を行うといった一連の人権デュー・ディリジェンスプロセスを継続的に実施しています。また、人権への負の影響を引き起こした際には、苦情処理メカニズムを通じた救済をするために、社内外のステークホルダーが利用できる通報窓口も設置しています。人権方針、人権デュー・ディリジェンスプロセス、苦情処理メカニズムを通じた救済のそれぞれが相互に影響し、さらにステークホルダーエンゲージメントを推進することで、人権デュー・ディリジェンス全体の取り組みを改善、強化しています。

DNPは、「DNPグループ人権方針」に基づき、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを強化しています。自社の事業活動が、社員だけでなく、サプライヤーや地域社会等、全てのステークホルダーの人権に影響を及ぼすことを認識し、それらの負の影響を防止・軽減するための各種施策を実行しています。また、人権デュー・ディリジェンスで求められる救済へのアクセスを確保するために、各ステークホルダーが利用できる通報窓口の実効性の強化や、ステークホルダーとの対話等を推進しています。

特に、事業活動による潜在的な人権リスクのひとつに、サプライチェーン上の人権課題があると認識しています。そのため、「人権・労働」や「安全衛生」等、DNPとサプライヤーがともに守るべき事項を定めた「DNPグループサステナブル調達ガイドライン」を制定し、その実効性を高めるために、継続的な責任ある調達のマネジメントを推進しています。

教育と浸透

DNPは、事業活動を支える社員一人ひとりが人権尊重の重要性を理解し、日々の活動に反映することが欠かせないと考えています。そのため、グループ全社員を対象に、人権への理解促進を目的として、2021年度から「ビジネスと人権」のeラーニングを実施しています。2023年度は約22,600名の社員が、「DNPグループ人権方針」および本方針に基づいて、DNPが負う責任、サプライチェーンに潜在する人権課題等について学びました。また「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進や各種ハラスメントの防止に関する研修も実施しています。そのほか、購買業務のスタッフが、環境・人権等の社会課題の動向とそれに対して企業が負う責任、購買を通じたサステナビリティ推進の必要性を学ぶ研修や、特定の事業部門を対象とした鉱物調達に関する教育など、多種多様な研修プログラムを行っています。
社外のサプライヤーに対しては、「DNPグル―プサステナブル調達ガイドライン」に基づく各種の調査や面談、サプライヤー説明会などの機会を通じて、人権問題に取り組むことの重要性を伝え、連携しています。

救済制度

DNPは社員や調達先・業務委託先がコンプライアンス上の問題を通報・相談しやすく、また会社としても権利侵害を把握・特定できるよう、苦情処理メカニズムの構築をはじめとする環境整備をグループ全体でグローバルに推進しています。情報の機密性や通報者の匿名性を保護し、通報者が不利益を被らないように運用しています。

企業市民としての取り組み

次世代育成

DNPは、「児童の権利に関する条約」(1989年の国連総会で採択)と「子どもの権利とビジネス原則」(2012年にユニセフ、国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンが策定)を支持しています。児童労働の禁止はもちろん、「児童の権利に関する条約」が定める「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」という子どもの四つの権利を尊重します。「DNPグループ社会貢献活動方針」のひとつに「次世代育成」を掲げ、次世代を担う子どもたちの健全な育成を支援する活動に力を入れています。

地域社会

DNPは、地域社会の一員として、常に国内外のそれぞれの地域に寄り添うことを心掛けています。例えば、本社がある東京の市谷地区では、地域協働学校運営協議会に参加して学校運営を支援するほか、地区防災協議会等にも参加し、地域の安全・安心な環境づくりに留意しています。全国においても、各事業所内の緑地づくりや地域生態系の保全活動を進め、工事などで一時的に環境に影響を及ぼす場合があっても、地域住民の方々への説明や緊密な連携によって、深刻化を防いでいます。DNPは、ビジネスパートナーだけではなく、地域社会等のステークホルダーともコミュニケーションを深め、体制を整えながら適切に対応しています。

人財への取り組み

人的資本ポリシー

DNPは、中長期的な成長に向けて、財務資本と非財務資本を統合的に活かすことで経営基盤を強化しています。特に重要な基盤である社員を支え、意識と行動の変革につなげていくため、社会全体の変化も念頭に置いて、社内外から見て魅力的な制度の実現などに取り組んでいます。2022年、こうした取り組みの前提に据えてきた“人に対するDNPグループの普遍的・基本的な考え方である、「社員を大切にし、大切にした社員によって企業が成長し、その社員が社会をより豊かにしていく」という信念”を「人的資本ポリシー」として制定しました。このポリシーを最上位の概念と位置づけ、人に関わる方針・ビジョン・宣言などを束ね、一体的かつ戦略的に人的資本の強化と最大化に取り組み、企業価値の向上につなげていきます。

人的資本ポリシーと、関連するDNPの宣言や方針についてまとめた図です。人的資本ポリシーとは,社員を大切にし、大切にした社員によって企業が成長し、その社員が社会をより豊かにしていくことです。社会(社内・社外)で活躍できる人財を育成します。

グローバル人事労務戦略の推進

DNPグループは多様な事業を世界34都市で展開しています。グローバルでの人的資本の強化と最大化に向けて、1.「タレントの可視化とマネジメント」、2.「人材マネジメント基盤の整備」、3.「リスクマネジメント力強化・体制の整備」を大きな3つの柱とし、それぞれに重点施策を置き、各施策を実行しています。

グローバル人事労務戦略の推進(統合報告書) 9,928KB(PDFを開く)

ダイバーシティ&インクルージョン

DNPグループの強みの源泉は社員一人ひとりの存在にほかなりません。一人ひとりのあらゆる「違い」を尊重し、互いに受け入れ、それらを強みとして掛け合わせることで組織の力を最大化し、新しい価値の創出につなげていきます。

多様な人材の活躍を支援する風土醸成

多様な人材の活躍を支援する取り組み・制度

社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値を創出する力を向上させるため、多様な人材の活躍を支援する取り組みを行っています。

人材開発・育成

DNPでは、創業以来イノベーションを支えてきた、かけがえのない財産である社員の活躍支援に力を入れています。社会全体の動きを意識し、“人的資本の最適化・最大化”に向け、優秀な人材の採用や育成、処遇などに関する制度を提供しています。

人材開発・育成の取り組み・制度

労働安全衛生

DNPグループでは、「DNPグループ安全衛生憲章」の下、「健康と安全は全てに優先する」職場風土の構築に向け、「オールDNP」全員で取り組む安全衛生活動を推進しています。

労働安全衛生推進の取り組み

社会動向や国の労働安全衛生施策を踏まえ、かつ社内における活動実績および課題に基づき、3年ごとの中期計画として「労働災害防止・健康保持増進基本計画」を策定して活動の推進にあたっています。

労使関係

DNPグループは、労使の「相互理解と相互信頼」をベースに、経営の安定と永続的発展 、社員のこころ豊かな生活の実現を図るため、様々な課題について労使で協議・意見交換する体制(経営協議会、労使専門委員会等)を整えています。この他にも、働き方や職場環境、人事制度全般、安全衛生等について、幅広く労使協議を行っています。
このような充実した労使関係はDNPグループの強みでもあり、「オールDNP」の総合力の発揮に向け、今後もより一層進化させていきます。

労使共同宣言

2006年10月に、「目指すべき労使関係の姿」や「労使関係の原点」を全従業員で共有するために、「労使共同宣言」を発しました。「労使共同宣言」でうたう「労使協働」とは、会社と組合員以外の人たちも含む全従業員が「対話」を通じて「目指す方向」について共通認識を持ち、その実現に向けてそれぞれの役割を果たしていくということを意味しています。

労使共同宣言

前文

私たちは社会とDNPグループの永続的な発展を目指し、真に優れた会社として社会の中で果たすべき役割をさらに高めていくため、経営の基盤である「労使協働」の大切さを相互に確認し、次の通り宣言する。


宣言第一項

協働による21世紀社会への貢献

宣言第二項

永続的な発展と豊かさを求めて

宣言第三項

対話による企業風土づくり