EB(Electron Beam)技術

生活者を意識した技術的アプローチ 環境配慮型の床材で世界に挑む

DNPのコア技術のひとつであるEB技術は、電子線(Electron Beam)を照射することで樹脂や塗膜の耐久性などを瞬時に向上させるもので、傷や磨耗、汚れなどに強い建材用の化粧シートの開発に活用されています。そして地球環境保全への意識が高まるなかで、DNPが開発に取り組んだのが、環境に配慮した樹脂フィルムを使った、フロア用の化粧シートです。

EB技術を駆使して環境に優しい化粧シートを開発

樹脂フィルムに段階的に色が重ねられることで、徐々にその姿を現す「木目」――。1990年代半ば、ポリ塩化ビニル(塩ビ)のフィルムに木目を印刷した建材用の化粧シートは、日本国内で広く使われていました。しかし、原料の一部の可塑剤や、燃やした時に発生する塩化水素ガス、ダイオキシンなどが地球環境や人々の健康に与える影響が問題視されるようになり、塩ビを使わない(非塩ビ)製品の開発が重要な課題となりました。

プラスチックの一種のポリオレフィンは、完全燃焼させれば水と二酸化炭素等になり、塩化水素やダイオキシンは発生しません。ポリオレフィンのフィルムは、塩ビのフィルムと比べて表面の耐久性が低いことが課題でしたが、EB技術を活用することで、傷や磨耗、汚れに強い「フロア用非塩ビ化粧シート」に使用できるようになりました。

合板や集成材等の基材の表面に化粧シートを貼り合わせた複合フローリングは、天然木の床材に見られるような経年変化による日焼けや干割れが発生しにくいうえ、木目の色や柄を揃えられることが特徴です。

そして今、地球環境保全への意識が高い国や地域において、この環境配慮型の床材の需要が高まっています。しかし日本の仕様のままでは、他の国や地域では通用せず、特に家の中でも靴を履いて過ごす欧米などでは、傷や磨耗に対する日本以上の耐久性が求められます。そこで私たちはまず、ドイツ等の欧州各国の生活環境や生活様式を研究し、必要とされる床材の調査を行い、EB技術を駆使することで欧州連合(EU)が定めた品質基準もクリアしました。その結果、2015年には複数の欧州企業がDNPの「フロア用非塩ビ化粧シート」を採用し、欧州各国で床材として販売されています。アジア市場でもDNPのEB製品は広がっており、2016年に韓国で採用されるなど、売上を伸ばしています。

技術と意匠性を重視し、世界の市場に挑む

耐久性の高い環境配慮型の化粧シートが各国で受け入れられるには、たゆまぬ技術革新と同時に、木目デザインなどの意匠面での工夫も重要となります。生活者は、まずは見た目で床材を選ぶ傾向にあるからです。DNPの表面(サーフェイス)デザインの専門家は、「原稿」となる天然木の表面をなめらかに加工し、塗装してスキャンを行い、そのデータをもとに自然で、見る人にとって心地良いリズムとバランスを持った木目をデザインします。木目にも流行のサイクルがあり、最近はエレガントで繊細なものが好まれています。木目を繊細に表現したり、エンボス(浮き彫り)加工をして天然木のような肌触りを出したりするのは、私たちの得意とするところです。

今後は、ニッチで特殊なデザインなどのラインアップも増やしていく予定です。DNPは「非塩ビ化粧シート」を中心とした事業の拡大に向けて、建材製品におけるブランド価値を高め、世界市場に挑戦していきます。

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