研究開発の方針・体制

印刷技術と情報技術の応用発展により事業領域を拡大してきたDNPにとって、研究開発は重要な企業活動と言えます。変化の激しい時代にあって、生活者の視点に立ち、社会で起きていることをよく見て、どのような課題が存在し、その解決に必要な技術は何か、いち早く見極める必要があります。その上で、DNPの独自技術を開発するとともに、強みを持った他社との連携も積極的に推進し、技術開発のスピードを速めています。

研究開発の方針

私たち自身が「より良い未来」の姿を描き、それを起点とする「未来シナリオ」の実現に向けて、独自技術を強化し、新製品・新サービスの開発・提供につなげることを研究開発の方針としています。

モノづくりの基礎となる微細加工/精密塗工/後加工の技術と、企画・設計/情報処理/材料開発/評価・解析の技術を常に最先端のものとして磨き、営業・企画・製造等のノウハウ、パートナーの強みと掛け合わせて新しい価値を創出していきます。

特にDXが加速するなかで、アナログとデジタル、リアルとバーチャル、モノづくりとサービスといったハイブリッドなDNP独自の強みを活かし、持続可能なより良い社会、より快適な暮らしを実現するためのアイデアをビジネスモデルとして構築していきます。

DNPの事業化プロセスを説明した図です。社会の変化・課題を分析してリスクの影響を最小化し、ビジネスチャンスにつなげます。独自のリソースを掛け合わせることで、強みのある製品・サービスを創出し、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を提供します。

DNPの技術・研究開発の強化と新たな価値創出

印刷プロセスで培った技術の応用・発展によって事業領域を拡大してきたDNPにとって、技術・研究開発の強化は重要な経営課題のひとつです。常に生活者の視点に立ち、環境・社会・経済の課題を的確に把握し、最適な解決策を生み出していきます。
DNPは、企業・団体・生活者等から預かる大切な情報を安全・安心に扱うなど、これまで培ってきた“強い技術”をさらに進化・深耕していきます。また、ベンチャーやスタートアップ、大学や研究機関など、多様なパートナーとの連携をさらに推進し、新しい技術の探索に努めるなど、開発のスピードを速めていきます。その上で、社内・社外の技術的な強みを掛け合わせて、さまざまな課題を解決し、人々をわくわくさせる新しい価値を創出していきます。
そのためには研究開発が重要で、その効率を高める手段として、機械学習や生成AIを積極的に取り入れていきます。研究開発の一部を占める材料の設計では、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)をすでに導入しています。

研究開発における技術の探索・深耕・活用を説明した図です。クラウド活用、AI、データ分析を基盤として用い、既存の技術のさらなる強化と、外部との連携による新しい技術の探索、そして、獲得した技術の製品・サービスへの活用を行っています。

イノベーションを生み出す多様な技術と組織風土

DNPの基盤技術

DXによる価値創造

メガトレンドや事業機会を捉えた注力事業領域での新規事業創出

DNPは事業構造改革を推進し、注力事業領域への集中投資により事業活動によるさらなる利益の創出をめざしています。また、DNPとは異なる強みを持ったパートナーとの連携も強化しており、さまざまな事業で「No.1」を獲得していく戦略を推進しています。

取り組み事例

メディカル・ヘルスケア関連では、2023年5月にシミックCMO株式会社を連結子会社とし、同6月からシミックグループと共同で、原薬から製剤までの一貫製造や付加価値型医薬品の開発等に取り組んでいます。

また、効率的な細胞培養に関する研究開発に長年取り組んでおり、国立成育医療研究センターとともに、ヒトのES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)からミニチュア臓器の「ミニ腸」を試験管内で生成することに、2017年に世界で初めて成功し、現在は試験販売を行っています。2024年6月には、iPS細胞専門の韓国のバイオ企業であるNEXEL Co., Ltd.と、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞の培養に関して技術提携を開始しました。これにより、新薬の研究開発に使用する高品質な細胞の大量製造法や人の臓器をチップ上に模擬的に再現した生体模倣システム(MPS:Microphysiological System)の開発をめざしていきます。

ミニ腸が試薬を腸内に吸収していくフロー図

研究開発体制

DNPの技術・研究開発部門は、「スマートコミュニケーション」「ライフ&ヘルスケア」「エレクトロニクス」の三つの部門を中心に、幅広い事業分野で、多様な課題の解決につながる独自技術の開発を進めています。技術の掛け合わせと社外のパートナーとの連携を推進し、既存事業と新規事業の両方で新しい価値を創出していく強靭な体制を構築・運用しています。

研究開発体制を説明した図です。短期的な開発は各事業部が主体となって実施し、中長期的な開発は、本社管轄の技術・研究開発本部の統括のもと、同じく本社管轄のABセンター、研究開発・事業化推進センター、技術開発センターが主導します。

研究開発・事業化推進センター

中・長期的な視点に立った新製品や生産プロセスに係る研究開発、顧客・社会課題を解決する事業開発を推進しています。

ABセンター

情報・サービス分野の事業を支えるデジタル技術を通じて、新規事業の創出やDXを推進しています。

技術開発センター

生産技術、評価技術の開発を通じて、既存製品やサービスの価値を高めるQCD革新だけでなく、新製品・サービスの開発を支援しています。

研究・開発者インタビュー

多様化する事業分野でブレークスルーを達成した開発者の舞台裏での取り組みについてご紹介します。

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研究開発費・配分

DNPは年間300億円を超える積極的な技術・研究開発投資を継続的に行っています。2024年3月期は352億円の実績となり、2025年3月期には360億円を計画しています。
近年は、ますます多様化・複雑化する課題を解決し、より良い未来を自らつくり出していくため、グループ全体の強みを掛け合わせる「オールDNP」の考え方のもと、本社開発部門の費用も増強しています。

研究開発費(連結)

DNPグループ連結での、研究開発費のグラフです。過去10年、300億円を上回る規模となっています。2024年3月期は352億円でした。

研究開発費の配分

2023年度におけるグループ全体の研究開発費は35,236百万円であり、3つの事業部門に関する研究開発費が13,707百万円、各事業部門に配分することができない本社開発部等の費用が21,528百万円であります。

  • 本社開発部門 21,528百万円
  • スマートコミュニケーション部門 2,278百万円
  • ライフ&ヘルスケア部門 2,089百万円
  • エレクトロニクス部門 9,340百万円