未来のあたりまえをつくる。DNP

#03 未来創造ストーリー

挑戦の物語

280社・DNP社員2,800人が
愛した生成AIラボ

約1年の期限付きで誕生した生成AIラボは、対話と実験を通じた「共創の場」として、2,800人のDNP社員と280社のお客様から愛されました。その秘訣とは?

Introduction

社内外との共創の場
「DNP生成AIラボ・東京」

Generation
AI Lab

2023年12月4日。東京・市谷の本社エリアに「DNP生成AIラボ・東京」は誕生しました。生成AIの活用による価値の創出について社内外のパートナーと取り組む「生成AIラボ」の活動の一環として、ディスカッションと実験を通じた「共創」を行うリアルな場です。約1年の活動の中で、約2,800人のDNP社員と、280社の顧客企業が愛した「DNP生成AIラボ・東京」。現在は、この場で得た多数のユースケースを社会に実装していく新しいフェーズにステップアップしています。

なぜ「生成AI」という新技術をテーマにしたのか。どんな人が集い、どんな共創が生まれたのか。コミュニティを活性化させるコツはどこにあったのか。「生成AIラボ」の主催者である和田と、ラボへの参加をきっかけに「生成AIを活用した新サービス」を企画する鈴木。2人の対談から「共創の場づくり」その成功の秘訣を紐解きます。

  • 情報イノベーション事業部研究開発和田 剛

    2001年、新卒で入社。システム系エンジニアとして、ABセンターや情報イノベーション事業部 ICTセンターなどで、数多くのシステム開発に携わる。直近はDX推進組織の立ち上げを担当。「DNP生成AIラボ」の責任者。

  • Lifeデザイン事業部デザイン企画鈴木 英怜那

    2018年、新卒で入社。美術学部卒業。デザイナーとしてパッケージデザインや製品・サービスのコミュニケーションデザインを担う。現在はLifeデザイン事業部で生成AIを活用した新サービスの開発・販促に従事。「DNP生成AIラボ」の参加メンバー。

モデルはMicrosoftの
「AI & Innovation Center」

「DNP生成AIラボ」とは何ですか?
和田

2023年12月に誕生した「共創」のためのコミュニティです。東京・市谷の本社に隣接する地上2階・地下1階の「建物」を「DNP生成AIラボ・東京」という拠点として約1年間運用しながら、「コミュニティサイト」も駆使して展開しました。

最初に実施したのは、「生成AIという最新の技術を使って、どんなことができそうか?」というユースケース(活用事例)を社内で募ることでした。当初の目標は1,000件だったのですが、なんと約2,200件も集まり、我々エンジニアと発案者が「どうしたらそのアイデアを実現できるか?」とディスカッションしたり、実際にプロトタイプづくりを行ったりしました。

また、DNPの社内だけでなく、企業や団体等の社外のパートナーも招待したところ、約280社来てくださいました。おかげで私たちだけでは思い至らなかったようなアイデアがたくさん生まれましたし、「こんなことで困っている」という悩みも教えてもらうことができました。

「生成AIにまつわる課題の可視化ができたこと」と「課題を解決するための道筋ができたこと」が「DNP生成AIラボ」の大きな成果だと言えます。

鈴木さんは「DNP生成AIラボ」に積極的に参加して、
この場を活用したそうですね。
鈴木

ちょうど育休から復帰したタイミングで「DNP生成AIラボ」が始まることを知りました。もともとこのテーマに興味がありましたし、育休中には資格取得の勉強をする時の先生役として「ChatGPT」のお世話になっていたこともあり「ぜひそこに行ってみたい!」と。

和田

たしか鈴木さんは、所属しているLifeデザイン事業部の皆さんと来てくれましたよね?

鈴木

はい! 顧客企業に対するサービス開発を担う部署で、私は商品開発やデザインを支援していました。未来のパッケージ開発に生成AIは不可欠だと考えていたので、部署の皆で「DNP生成AIラボ・東京」へ行き、和田さんから直接いろんなことを教えていただきました。

和田

特に印象に残ったことは何ですか?

鈴木

「頭で考えていることが実際にできるのか?」という検証レベルなら、エンジニアさんの力を借りなくても、自分たちで生成AIを使ってできるということに驚きました。「私でもできるんだ!」と。そこから自分でも、もっと主体的に生成AIについて勉強を始めたんです。そして、顧客企業をこの拠点に招待してディスカッションしたら、「具体的に試してみましょう!」となりました。そして、実際に生成AIを活用して、顧客企業の商品開発を支援することになったのです。

和田

「デザイン制作に生成AIを使う」という発想までは誰でもできますが、「実際にやる」という行動力が鈴木さんのすごいところですよね! 著作権を侵害するからなど「やらない理由」を並べるのは簡単で、一歩踏み込んで行動する人は、実はそんなに多くない。鈴木さんのチームは常に「やる方」に傾いていく。見ていて、それがすごく素敵でした。

鈴木

幸い、チームの中に反対する人がいなかったんです。一つうまくいくたびに、興味を持ってくれる人も増えていきました。何よりも私が“まずはやってみるタイプ”だったからかもしれません(笑)。

和田

「DNP生成AIラボ」はあくまでも「きっかけを提供する場所」なんです。参加してくれた人が、それぞれ必要なものを持ち帰ってくれたらいい。鈴木さんはまさにそれを体現してくださったので、それが嬉しいですね。

鈴木

「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」という考えがありますが、まさに「DNP生成AIラボ」は「釣り方を教えてくれた場所」でした。ラボの担当の方から「生成AIは誰でも使えるから、何か付加価値を掛け合わせないとサービスにはならないよ」と教わったことも大きかった。それを念頭に置いて、ラボの運営が終わった今もなお、エンジニアの皆さんに伴走してもらいながら試行錯誤しているところです。

「DNP生成AIラボ」が誕生したきっかけは?
和田

まず、2023年5月に「ChatGPT」をDNPグループ社員約3万人(全社員約3万7千人のうちメールアドレス保有者)が使えるようにしたことが始まりです。おかげで「生成AIを使ってもっとこんなことができないか?」というアイデアが届くようになったのですが、私たちがそれに応える術を持っていなかったんですね。

もう一つの動きとして、2023年8月にアメリカのMicrosoftの「AI & Innovation Center」を視察しまして。ここは「AIを使ってアイデアをその場でカタチにする実験所」で、その活動を目の当たりにしたことが大きかったです。相談内容のクオリティは問わず、エンジニアが相談者に対して、「あなたがつくりたいものはこういうことですね?」と具体的に応えていくそのスタンスに感銘を受けました。「これをDNPでもつくろう!」と立ち上げたのが「DNP生成AIラボ・東京」です。

経営層から新入社員まで、
得意なことを活かそうとする空気が、
ポジティブで自発的な集団を生み出す

「DNP生成AIラボ」は「コミュニティ」としてとても良く機能していたとか。
和田

「興味がある人この指止まれ!」と、自由に開かれたコミュニティで、最終的に2,800人くらいの社員の大所帯になりました。

鈴木

短期間で2,800人も参加するようになったコミュニティなのに、すごく整備されていると感じました。「こういうお悩みの人はこちら」と誘導してもらえたし、コミュニティサイトも分かりやすかった! コミュニティの外からでも、皆さんがビジョンを持って運用されている様子がうかがえました。

和田

たしかに、「DNP生成AIラボ」が「会社のため、日本のために、いかに良い活動か」というビジョンを共有することは大事だと思っていました。この施設の1階に「ビジョン/ミッション」を書いた紙を貼って、ことあるごとにチームで目線合わせをしましたね。

鈴木

コミュニティサイトで配信していた動画の制作も皆さんでやっていたんですよね?

和田

「ラボの活動をもっと知ってもらおう」と若手の社員が自発的に始めてくれました。2,800人もいると「動画制作が得意な人」がいたり、「子どもに教えるのが得意な人」が土日のイベント出展を手伝ってくれたり。みんなが自ら手を挙げて、得意なことを活かしていく自由な空間が形づくられて、そんな場が、ポジティブに効率良く動くチームにしていったのだと思います。コミュニティ運営の一つのモデルケースになるかもしれません。

2,800人の中には経営層もいましたが、コミュニティなので誰がえらいといった上下関係がないわけです。すると、年齢としては下の社員から気軽に話しかけて、対話していたりする。そういった関係が生まれたこともすごく良いなと思います。

AIは、共創のための相棒。
発想力を押し上げるために使おう

鈴木さんは今、生成AIを取り入れた
「新サービス」を企画しているそうですね。
鈴木

はい、三つのサービスの実現に向けて、実証実験を行っているところです。

一つ目が、顧客企業に提案するパッケージデザインの「アイディエーション(アイデアを生み出すプロセス全体)」を生成AIで行うという取り組みです。

二つ目が、生成AIで「仮想の消費者」をつくって、製品やパッケージのデザインについて意見を求めるというもの。Z世代(1990年代半ば~2010年代前半生まれ)や高齢者など、いろんな仮想の消費者にインタビューできる「アプリ」のリリースを目指しています。

三つ目が、顧客企業と一緒に実施する「商品開発ワークショップ」に生成AIを取り入れるという活動です。これはすでに提供を始めていて、顧客企業からも好評をいただいています。

生成AIは人間がつくった過去のデータの集約だから、それだけでは私たちの想像を超えるアイデアは生まれません。でも、人間の発想力を押し上げるためには有効な手段だと思います。

和田

生成AIとの向き合い方が上手ですよね。生成AIを使うことで、アイデアも、ペルソナも、たくさんつくれる。でも、最後の決断は人間がする。人間がAIの下に成り下がり、コントロールされてしまってはだめなんです。人間と生成AIは共創関係にあるべきです!

鈴木

ちゃんと使えば、頻繁に私たちの想像を超えてくるんですよ! そのためには、人間の発想力とか専門性との掛け合わせが重要だと思います。パッケージデザインのアイディエーションも、長年パッケージのデザインを生業にしてきたプロに依頼したら、プロンプト(指示)の入れ方が秀逸でした! 専門性の高い人が生成AIを持つと、最強の相棒になりますね。

最後に、これからの挑戦を教えてください。
鈴木

広げた風呂敷を責任を持って畳まないと!と思っています。まずは、三つの新サービスを軌道に乗せたいですね。

個人的に興味があるのは、先ほども話した「人間の発想力を押し上げる生成AIの活用」です。業務と並行して研究し、論文を書いて、発表したいと考えています。困ったら生成AIに聞いて助けてもらいます。相棒ですから!

和田

「DNP生成AIラボ・東京」というリアルな場の運用は2024年の9月で終えましたが、そこで生み出したたくさんのアイデアがあります。それらを世の中に還元していく活動を進めていきたいですね。

また、「DNP生成AIラボ」はその名のとおり「生成AI」という技術を取り上げたコミュニティでした。でも、生成AIだけで終わらせるのはもったいない。例えば「XRラボ」があってもいいですよね。リアルな場での1年間で得た知見をもとに、「コミュニティ形式の共創の場づくり」をサポートしていきたいです。実はもう準備を始めています。またどこかでお会いしましょう!

お二人のさらなる挑戦がますます楽しみですね。応援しています! 
ありがとうございました。

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