ミラノデザインウィーク2022レポート Vol.4

イタリアで6月6日から12日にわたり開催された今年のミラノデザインウィーク。DNPでは社員が実際に現地にて、50件を超えるブランドの視察・取材を行いました。このコラムではVol.1からVol.4まで4回に分け、DNPの視点で分析したトレンドのキーワードとともに、各ブランドの新作をご紹介いたします。

DNPではミラノデザインウィーク2022を通し、3つのメガトレンドと7つのキーワードを設定しました(詳しいことは“ ミラノデザインウィーク2022レポート Vol.1 レポート Vol. 2 レポート Vol. 3 ”をご覧ください)。このコラムでは、“Boundless”を取り上げます。

トレンド方向性




2022年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介

Cassina   https://www.cassina-ixc.jp
ミラノ市内のCassinaショールームでは、CassinaとAntonio Citterioとの初のコラボレーションとなるリビングルームシステムEsosoftがメインウィンドウを飾りました。60年代のファッションを彷彿とさせる形状や色使いは世の中の暗いムードを明るくするかのように鮮やか。天然由来/再生PET製繊維の使用や分解を容易にする設計など、サステナビリティにも深く配慮された製品です。

Text by Hidehiro Anzai

Cassina




B&B ITALIA   https://www.bebitalia.co.jp​
Mario BelliniデザインのLe Bambole​が発表から50年を経て、より快適にそして持続可能な家具に進化しました(画像左)。リサイクルされたポリエチレンを使い、快適な柔らかさを実現。さらにすべて分解可能でリサイクルがしやすい構造になっています。右の画像はPiero Lissoni ​がデザインしたスモールテーブルPlanck。​天板の下にLED照明が埋め込まれているモデルもあり、色温度を自由に変更することができます。​いずれもカラーバリエーションが豊かで、リビングスペースを華やかに彩るアイテムです。

Text by Chihori Kunito

B&B ITALIA




NATUZZI   http://www.natuzzi.com
Durini通りにあるNatuzzi Italiaの旗艦店は、同社のルーツであるイタリアプーリアの文化と歴史を伝えるプロジェクトで(Fabio Novembreとのコラボで)リニューアルを行いました。店内には新作ソファのADAMなど2nd LIFEをコンセプトにしたコレクションが展示されました。また中庭では、ピアス病菌からオリーブの木を保護するプロジェクトに着目したインスタレーションも行われ、Marcantonioによるデザインの新作Terraは次世代エコ素材の生地でデビューし、沢山の人がくつろいでいました。

Text by Chihori Kunito

NATUZZI




FENDI CASA   https://www.fendicasa.com/en
左の画像はPiero LissoniによるアウトドアコレクションSaganoです。京都嵐山の嵯峨野をイメージし、ソファーやチェアのフレームは竹が使われています。インテリアコレクションはThe Vibrant Soul、The Crafting Mood(画像中央)、The Family Couchの3つのムードでショールームを構成していました。右の画像はDimorestudioによる新作のMatrice Bookshelf​です。

Text by Chihori Kunito

FENDI CASA




Versace Home   https://www.versace.com/international/en/home-decor/home-lifestyle/home-collections
ソファ、ローテーブル、チェスト、バーユニットなどStilettoコレクションのさまざまな家具が発表されました。Durini通りにあるフラッグシップストアではホワイトに赤ワインのようなキャンティーカラーが組み合わせられ、Versaceらしいファッショナブルでエレガントな空間を作り上げていました。

Text by Chihori Kunito

Versace Home




Dolce&Gabbana
初のホームコレクション用ショールームをミラノ のDuriniとCorso Veneziaの2つの地区にオープン。家具の枠組みを超えた鮮やかな色彩の家具はイタリアの職人やメーカーとのコラボレーションによるものです。Corso Veneziの店舗の奥では、Leopard, the Sicilian Cart, Zebra そしてMediterranean Blueの4つのテーマを表現した映像に囲まれる没入型のルームが来場者を出迎えてくれました。

Text by Hidehiro Anzai

Dolce&Gabbana




Nilufar Depot
Nina Yasharが新進気鋭のアーティスト約25名の作品を集め、スタイリングしたNilufar Depot。改築した3階建ての倉庫で、個性あふれるインテリアデザインを組み合わせ、独創的な世界観を表現しました。右の画像はDraga & Aurelデザインの“The Candy Box”です。ボンボンキャンディーのようなコーヒーテーブルはレジンで作られていて、その透明感とカラーリングが美しく印象的でした。

Text by Chihori Kunito

Nilufar Depot




moooi   https://moooi.co.jp
最高のデザインとライフスタイル、テクノロジーの融合を華やかに表現していたmoooi。ダンスを踊るロボットのような動きを見せるディフューザーの​​Piro(IDEOによるデザイン)、LGとのコラボレーションによるOLED Objet Collectionを発表しました。またARにより、moooiの世界観に没入できるコンテンツもリリースしています。

Text by Chihori Kunito

moooi




Rossana Orlandi   https://www.rossanaorlandi.com
アバンギャルドなデザインが集まることで知られる同ギャラリーの代表、Rossana Orlandiと娘のNicoletta Orlandi Brugnoniは、今年第4回を迎える国際的なプロジェクト“RO GUILTLESS PLASTIC“の一部であり、プラスチックの可能性を探りながら、プラスチック以外の廃棄物利用にも影響を与えるデザイン賞“Ro Plastic Prize“を開催。今回は再生樹脂製のベンチなどの先進的なプロダクトが受賞しました。また、同ギャラリー初となるメタバース関連のアートに特化した企画展“meta_WASTE“を開催し、いわゆるNFTなどのデジタルアートをフィジカルな形で展示。リアルとバーチャルの境界がなくなる時代の幕開けを想像させました。

Text by Hidehiro Anzai

Rossana Orlandi

※2022年9月時点の情報です




まとめ

コロナ禍の規制が緩和される中で、人が集って楽しいライフスタイルを提案し、ポジティブな感情を引き起こす提案が加速しました。固定概念にとらわれず、彩り豊かな製品や空間が見られ、室内と室外、空間と空間、ファッションとインテリア、現実世界と非現実世界など、さまざまな視点でBoundlessな提案がありました。それらはマテリアルやデジタルテクノロジーの向上によって実現されています。今後もそれらのテクノロジーの発展に伴うBoundlessな新しい提案に注目し、日本の環境に適した取り入れ方を考えていきたいと思います。




Editor紹介

ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネイト提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

ドイツ・デュッセルドルフを拠点として欧州市場のデザインマーケティングを担当。現地駐在員として市場調査やデザイナーとの対話を通じ、ヨーロッパトレンド情報の収集、及びその発信活動に従事。

未来のあたりまえをつくる。®