ミラノデザインウィーク2022レポート Vol.1

イタリアで6月6日から12日にかけて開催された今年のミラノデザインウィーク。DNPでは社員が実際に現地にて、50件を超えるブランドの視察・取材を行いました。このコラムではVol.1からVol.4まで4回に分け、DNPの視点で分析したトレンドのキーワードとともに、各ブランドの新作をご紹介いたします。



ミラノ街並み・会場

メイン会場で毎年開催されるSalone del Mobileの来場者数に着目すると、2019年は約38万人、小規模開催となった2021年(この年はsupersaloneという名での開催)は約6万人であったのに対し、2022年は約26万人と、パンデミック前と同等水準とは言わないまでも、大幅な回復となりました。市内イベントFuorisaloneも盛況で、かつてのミラノデザインウィークらしい賑わいが戻ってきました。海外からの出展や来場者数も回復を見せる一方、今年は昨今の世界情勢を背景に中国とロシアからの来場が大幅に減少したそうです。

ミラノ街並み・会場



2022年ミラノデザインウィークから見るトレンドの方向性

世界がコロナウイルスという共通の脅威と戦う中で、昨年のsupersaloneから「豊かさ」についての新しい価値観“New Normal, New Premium”が生まれています。この潮流の中で、メガトレンドとしては昨年に引き続き、Respectful、Well-being、Boundlessの3つを設定しました。そして今年のミラノデザインウィークで見られたコンセプトやストーリーについて、7つのキーワードを設定し、分析しました。

トレンド方向性

このコラムでは、3つのメガトレンドと2つのキーワードをベースに、それらに結びつく出展の様子とともに、新作家具情報をお伝えいたします。Vol.1では、3つのメガトレンドに共通するキーワードとして、サステナブルな取り組みを紹介する“Must be Sustainable”と自然との共生“Living with Nature”を取り上げます。



2022年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介

Must be Sustainable
環境や人権に配慮し世界に住む全ての人、生物にとって優しい社会である提案は“to be”から“Must be”に移行しています。どのブランドも必須のメッセージとして、ストーリーに組み込むとともに、プロダクトアウトをして実装しています。




Design with Nature
Salone del Mobileの会場中心部で開催された、建築家のMario Cucinellaのプロデュースによるサステナブル関連の特別展。再生材をはじめとする持続可能性に配慮した素材の展示やパネルディスカッションの開催に加え、会場を構成する素材そのものもサステナブル素材でできており、会期終了後、これらは再利用されるようにデザインされています。

Text by Hidehiro Anzai

Design with Nature




LAGO
Salone del Mobileに建てられた800平方メートルのスタンドは全てリサイクル可能な素材で作られており、87%の温室効果ガス削減を実現。また、同社が持つプリントガラス素材“X Glass”には今回“Animal Zero” というテーマのクロコダイルとスネーク柄を追加。その名の通り、動物を一切傷つけることなく動物皮革の意匠を表現した、新しいサステナブル素材の提案です。

Text by Hidehiro Anzai

LAGO




Stella McCartney
2022年SSで発表した「キノコこそがファッションと地球の未来である」というテーマを引き継いだインスタレーションを開催。エントランスに展示されたキノコ型スカルプチャーは100%再生可能なアクリル板“ Green Cast®”で作られています。Fungi Forestのファブリックを使ったソファはB&B ITALIAと、壁紙はCole&Sonとのコラボレーションです。

Text by Chihori Kunito

Stella McCartney







Living with Nature
長く続いたステイホームの中で、自然への憧れや需要がますます高まりました。アウトドアファニチャーのリリースも加速し、年々展示スペースが拡大しています。また自然との共生を表現したインスタレーションは、よりワイルドに、ダイレクトに自然のエネルギーを感じられるものが多く見られました。




MOROSO×Kvadrat   https://moroso.it/
MOROSOとデンマークのファブリックブランドKvadratによるインスタレーション“ Forest Wandering”。Kvadratのファブリック“Arda”のリリースを祝して開催されました。Ardaの豊かな質感表現に、プロジェクションマッピングによりリアルな石や岩の表現が付与され、訪れた人に自然によるヒーリングパワーを探求させます。右の画像はAdraを使用したFront Designによる新作Pebble Rubbleです。

Text by Chihori Kunito

MOROSO×Kvadrat




左:Aqua Symphony  右:Labyrinth Garden
SuperDesign Showで行われた、Biohabitat Foundationによる“AquaSymphony”は、室内に巨大な植物に囲まれた緑豊かな森をつくりだし、水の音などオアシスにいるような感覚を来場者に提供していました。使用されている鉢は、 リサイクル素材の持続可能な素材で作られています。ミラノ大学で行われたLabyrinth Gardenは100%リサイクル可能な再生可能なプラスチックでつくられた、屋外用のパーティションシステムで迷路を構成しています。

Text by Chihori Kunito

Aqua Symphony 、Labyrinth Garden




Paola Lenti    https://www.paolalenti.jp/
メダのショールームにて新作発表を行ったPaola Lenti。広大な庭にカラフルなアウトドアファニチャーを展示。小鳥のさえずりや木々のそよぐ音を感じながらPaola Lentiの高いデザイン力とポジティブな感情を惹き起こすカラーリングを楽しめる空間でした。右の画像はV. Van Duysenデザインの新作テーブルSuzanneで、天板には熱加工されたアッシュ材が使われています。

Text by Chihori Kunito

Paola Lenti




Flexform   https://www.flexform.jp
アウトドアファニチャーの展示スペースは、テラコッターカラーやライトブルーを基調に、洗練された開放感を感じる展示が行われていました。右の画像はAntonio Citterioによる新作ALCAMOです​。セージグリーン、テラコッタなど複数のカラーから選ぶことができます。構成されているすべての部品がリサイクル可能です。

Text by Chihori Kunito

Flexform




まとめ

自然と共存することで環境を守りながら、癒しや開放感を感じられるような空間・プロダクトの提案が非常に多く見られました。サステナブルな取り組みはto beからmust beに移行し、どのブランドもSDGsへの取り組みを明言しています。プロトタイプベースのユニークなアイデアから、実際の製品として発表されているものなど段階はさまざまであり、今後もこのような提案は加速すると考えています。

2022年9月時点の情報です




Editor紹介

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ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネイト提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

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ドイツ・デュッセルドルフを拠点として欧州市場のデザインマーケティングを担当。現地駐在員として市場調査やデザイナーとの対話を通じ、ヨーロッパトレンド情報の収集、及びその発信活動に従事。

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