亀田誠治氏が実現した、親子三世代が無料で最高の音楽を楽しめる「日比谷音楽祭」【後編】
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無料で親子三世代が楽しめる音楽祭として、今年初めて開催された「日比谷音楽祭」。「誰もが参加できる、フリーで、ボーダーレスな音楽祭」というテーマからは“ダイバーシティ” “持続的成長” “次世代育成”というキーワードが見えてくる。前編では、実行委員長の音楽プロデューサー、亀田誠治氏に、開催に向けた想いや開催実現までの道のりなどをうかがいました。この後編では引き続き、亀田氏に、音楽文化への取り組みや日比谷音楽祭のテーマに込めた想いなどをお聞きします。
目次
音楽文化の持続的な醸成に向けた取り組み
Q:今回の日比谷音楽祭もそうなのですが、亀田さんは音楽文化を醸成していくためにさまざまな活動をされていらっしゃいますね。
亀田:音楽教育としては、何年も前からYouTubeで無料のベース講座をやっていて、NHKのEテレの「亀田音楽専門学校」やJ-WAVEの「FM KAMEDA」という番組を持っていました。J-POPの素晴らしさや、音楽はこうやって聴くと楽しくなるということを伝えたい、いろいろな人と音楽との接点をつくりたい、という想いからです。こうした番組は全部、台本を自分で書いているんです。人の言葉で書かかれたものでは熱い想いが届かないからです。テーマや出演いただくアーティストもすべて僕が決めてきました。これまでに僕と積み上げてきた関係で、アーティストの方も技術やこれまでの経験をオープンに出してくれるので、見たり聞いたりしてくれた人に伝わるんです。
また、僕は今も現場に立っていて、音楽業界の最前線で作品をつくっています。そのスキルや経験を自分だけで囲い込むのではなく、今音楽業界で何が起きているか、何が必要かということをオープンにしていくことが大事だと考えています。そこに必要なのは座学ではなく、実学です。
そのためには日比谷音楽祭のようなリアルな場所が必要で、出演してくれるアーティストたちや、ワークショップで楽器演奏などいろいろなことを教えてくれる先生のような存在が必要です。座学や言葉だけでは語りつくせない、体験することで気づくことがあると考えています。
例えば、会社に勤めている人が楽器演奏を体験してリラックスできたり、安らぎの時間が持てたりすることで、生きる喜びや希望、明日への活力などを得られたり、生涯学習のきっかけとなる場になっていたらうれしいですね。
Q:亀田さんの活動は、現在、世界の国や地域、企業などが2030年までに達成しようとしている「SDGs(持続可能な開発目標)」の目標のひとつ、「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことに貢献していると感じます。
亀田:僕が今までやってきたことが社会に貢献できているならうれしいですね。
人生はすべて学校で、誰かと想いを共有できる共通言語を生んでいくことが教育だと僕は思っています。僕が教育にこだわるのは、人と人が認め合えて尊重し合える社会をつくっていきたいという想いがあるからです。音楽はそれを実現する力のひとつになると思っています。
「フリーで誰でも参加できる、ボーダーレスな音楽祭」に込められた想い
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Q:今回の日比谷音楽祭は、「フリーで誰でも参加できる、ボーダーレスな音楽祭」というテーマが掲げられていますが、どのような意味を込められたのでしょうか。
亀田:世代の差という縦軸と、ジャンルや国境・人種という横軸をなだらかにつなげていきたいという意味を込めています。ボーダーレスにつなぐ場合、どこかを強引につなごうとするとひずみが生じるので、なだらかに、というのがポイントです。世代や価値観が異なるさまざまな人が、音楽を通じて緩やかにつながる場にしたい、という想いがありました。
フリーは「無料」という意味で使っていますが、「自由」という意味合いも兼ねています。自由になるためには様々なルールが必要ですが、自由を尊重するための概念がボーダーレスです。人間は置かれている状況や属性、個性など、一人ひとり多種多様で違うけれども、お互いにシンプルに認め合える日が来ることを願っています。その近道は音楽という共通言語を活用することなのではないかと考えています。
Q:協賛企業を募る際にも、哲学があったとお聞きしました。
亀田:協賛していただく企業には「競合排除をしない」ということを承諾いただきました。これは広告代理店を通す場合にはなかなか難しいことで、勇気のいることでしたが、ほとんどの企業の方はわかってくださいました。「亀田さんがこのような想いでフェスをプロデュースし、この先何年も続けていくということであれば協力できる」と言っていただけたりして、とてもうれしかったですね。
実際に金融や出版関係の企業、楽器メーカー関係は複数社にご協賛いただきました。チケットを取り扱うプレイガイドも3社が入りましたが、3社で無料チケットの抽選受付の設計やシステム提供にも協力していただけました。ボーダーレスでみんなが一緒に成長していけるように、「競合排除をしない」という哲学は来年以降も続けていきます。
今年の経験を来年、再来年へ、そして未来にバトンをつなぐ
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Q:日比谷音楽祭に協賛した企業や団体、アーティストやスタッフの方々にメッセージをいただけますでしょうか。
亀田:日比谷音楽祭の「フリーでボーダーレスな音楽祭」というテーマに賛同していただいて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。第1回に協力してくださったことをぜひ誇りに思っていただきたいです。そして、ぜひ、ご意見があればお聞かせください。2020年に予定している第2回では、今年できなかったことや達成できなかったことを改善して、さらなる高みを目指していきます。これは規模を大きくすることを目標としているのではなく、クオリティを上げていくことが目標です。その結果として、規模が大きくなることもあるかとは思いますが。
企業が実際にお金を出す、技術や製品・サービスを提供するというアクションをとるのは、なかなか大変なことだと感じています。こちらも可能な限り、ご支援やご協力に応えていきたいです。
日比谷音楽祭は今後世代から世代へバトンを渡して50年、100年と続いていくイベントになるのではないかと思っています。ニューヨークのようにひと夏の長期間の開催とまではいかなくても、毎年、夏になると日比谷音楽祭があり、家族連れで気軽に音楽を楽しめてご飯も美味しいと喜んでもらえる、定番のイベントとして根付くことを期待しています。
Q:日比谷音楽祭でDNPは、環境配慮パッケージ「GREEN PACKAGING」の中で、森林認証紙を使ったお皿やカップ、石灰石を使ったトレーなどをフード店に提供して、ゴミの分別やリサイクルへの意識を高める活動をしました。DNPの取り組みについて、どのように感じましたか。
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亀田:初めにDNPの本社を訪問したときに、ロビーに展示されたリサイクルへの取り組みを拝見して、興味がある分野なのでぜひご一緒できたらと感じていました。僕自身も、自然環境への配慮に取り組んでいて、勉強もしています。音楽プロデューサーの小林武史さんの呼びかけで、環境問題を身近に考えようという趣旨でスタートした「ap bank fes」にも参加していて、日比谷音楽祭のチームも、半分は「ap bank fes」のメンバーでもあります。DNPの取り組みには共感していますので、もっとこういった分野で一緒に関わりたいと感じています。今年回収したトレーやお皿、カップを来年、ポスターやチケットとして再利用するというご提案は、ぜひ実現させたいですね。
それから、打ち合わせの早い段階で、DNPの社員のみなさんがボランティアとして参加したいというお話をいただくなど、取り組み方がとても温かいと感じました。実際に音楽祭当日にも多くのボランティアの方々に熱心に活動していただき、非常に感謝しています。
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Q:今後に向けて最後に一言お願いします。
亀田:第2回の日比谷音楽祭が来年の5月30日・31日に決まりました。今年の経験を踏まえて、さらにフェスとしての完成度を高めることを目指して、チーム一丸となって取り組んでいきたいと思います。来年もフリーイベントとして開催しますので、みんなで一緒につくり上げていきましょう。よろしくお願いいたします。
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日比谷音楽祭を含め、亀田さんの音楽文化を育む活動は、SDGsの目標4「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」に通じるもので、日本の音楽文化を持続的に醸成していく重要なファクターとなります。音楽業界の発展だけではなく、文化レベルの向上、ひいては日本経済の活性化にもつながります。
また、亀田さんは環境に配慮した取り組みにも積極的で、DNPの活動についても共感していただき、今後もっとこのような分野でも関わっていきたいという話しもいただきました。
DNPは、このような亀田さんの活動に賛同し、これからも協働しながら、ともに成長していきたいと考えています。
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