【社長対談】ダイバーシティの一層の推進によって多様な「新しい価値」を創出
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DNPは2018年6月にダイバーシティ推進室を設置し、多様性を活かした価値創出の取り組みを加速させています。すでに女性の活躍推進には2000年代の初めから取り組んでおり、さらなる成果をめざすDNPのダイバーシティ戦略について、代表取締役社長・北島義斉(写真右)と執行役員・宮間三奈子(写真左)がお伝えします。
目次
- ダイバーシティは「第三の創業」に不可欠な、社員全員で取り組むべきテーマ
- 相手の文化に敬意を示すことが重要
- まず女性活躍の機会を拡大
- 一人ひとりの強みが異なるからこそ、それらを掛け合わせることで総合力が高まっていく
代表取締役社長 北島義斉 (写真右)
1987(昭和62)年、株式会社富士銀行入行。1995(平成7)年、大日本印刷株式会社に入社し、出版印刷分野を担当。その後、経営企画・情報コミュニケーション部門の統括担当など。2009(平成21)年、代表取締役副社長。2018(平成30)年6月、代表取締役社長に就任。
執行役員 宮間三奈子 (写真左)
1986(昭和61)年、大日本印刷株式会社入社。画像処理技術を用いたカラーシミュレーションや顔認証システムの開発等に携わる。2014(平成26)年、人材開発部部長。2018(平成30)年、執行役員に就任し、人財開発部・ダイバーシティ推進室を担当する。
ダイバーシティは「第三の創業」に不可欠な、社員全員で取り組むべきテーマ
Q.企業経営には今、ダイバーシティ(多様性)を活かして企業価値を高めることが求められていますが、DNPはダイバーシティの重要性をどのように捉え、経営に活かしていますか。
北島:我々は「第三の創業」を掲げ、社会の課題を解決し、人々の期待に応えていく「新しい価値」の創出に力を入れています。明治9年の創業と、戦後に大きく事業領域を広げた「第二の創業」を超える変革を起こすことを「第三の創業」と位置付けています。社会はまさに多様な人々で構成されていますので、DNPが提供する製品やサービスも、そうした多様な人々にフィットするものでなければなりません。事業として多様な価値の提供に取り組んでいる以上、ダイバーシティを経営に活かしていくことは、欠かすことのできない重要なテーマです。
宮間:そうですね。そして、DNPが「新しい価値」を提供していくには、イノベーションがとても大切です。さまざまな強みを掛け合わせていくことでイノベーションの効果は高まりますし、掛け合わせのバリエーションを増やすには、ダイバーシティを尊重し、高めていく必要があると考えています。
北島:すでにDNPでも、ある程度の人財の多様化は進んでいます。国内にはまだ外国籍の社員は少ないものの、グループの約4万人の社員のうち、約5千人が海外の拠点で働いています。また、子育てや介護など、人生にはいろいろな場面がありますが、どのような状況にあっても、社員が力を発揮できるような制度や支援体制を全社的に充実させていきたいと思います。
相手の文化に敬意を示すことが重要
Q.日本の社会は異質なものに抵抗を示す傾向があるとも言われていますが、DNPではいかがでしょうか。
北島:ダイバーシティの推進に取り組むには、まず社員一人ひとりが、自分自身の文化を大切にする必要があります。自らの文化の大切さに気づくことで、相手にも大切にしている文化があるのだと理解できます。「お互いの文化を尊重する」という意識を持つことができれば、社員全員が、多様な人々に敬意を持って対応できると思っています。
宮間:ダイバーシティを活かしていく意義は、とても幅広いと思います。その効果を高めるには、社長の話のように、まずお互いの違いに関心を持って、それを理解していくことが重要です。身近にある多様な価値観への理解を深めていくことは、多様な価値の創造にもつながると思います。
私たちは、「ダイバーシティを尊重し、それを自分事として受け入れて活かしていくことが新しい価値の創造につながり、ビジネスの強みになる」という意識に変わっていく必要がありますね。
北島:人はそれぞれ異なる存在ですし、異質なものに抵抗を示すのではなく、個々の強みとして尊重しあって、むしろ掛け合わせていくことで価値が高まっていきます。
宮間:また、実際の行動に移すことがなによりも大切になります。ダイバーシティという言葉を知らない社員はいないと思いますが、それを実際に活かしていくには、一人ひとりの行動が欠かせません。お互いが理解を深めるための一歩を踏み出すことが、会社からも、そして社会からも求められているのだと、決意を持って取り組んでほしいと思います。
まず女性活躍の機会を拡大
Q.DNPのダイバーシティ推進活動について、お聞かせください。
北島:意味は異なるかもしれませんが、DNPのビジネスも多様性に富んでいます。いわゆる紙への印刷だけでなく、ICカードや情報サービス、パッケージや建装材、エレクトロニクス関連やエネルギー、ライフサイエンスまで事業領域が広がっています。「これがやりたい」「これは面白そうだ」という多様な提案を受け入れ、さまざまな部署の社員が多様な強みを持ち寄って、チャレンジしてきた成果だと思います。
多様性を活かす土台は、すでにDNPに備わっていますので、これからも社員には思う存分、それぞれの力を発揮してもらいたいですね。そのためにも、さらに多様な人たちと対話し、コラボレーションしていく必要があります。それが新しい価値につながりますし、ダイバーシティの推進でもあると思います。
宮間:そうした考えのなかでも、2000年代初めにまずスタートしたのが女性活躍推進です。当時、女性社員の離職防止を目的として、研修や制度を充実させました。仕事と育児の両立支援セミナーや、短時間勤務社員のキャリア構築の支援なども行ってきました。印刷業界は伝統的に女性が少なかったのですが、現在では、グループ会社含めた女性の採用数は全体の4割超えとなり、定着率も男女で差がなくなってきています。活躍する女性のロールモデルが増え、自分の将来を描きやすくなったのだと思います。女性管理職も順調に増えています。
北島:宮間さん自身が執行役員になったことが、象徴的ですね。女性役員は、今回初めて誕生しましたが今後はさらに多様化が進むでしょう。執行役員の意識と行動も変革しなければなりませんし、「宮間さんのようになりたい」という女性社員もさらに増えていくでしょう。
宮間:DNPは、経済産業省主催の「ダイバーシティ経営企業100選」に2015年に認定されましたし、ブルームバーグの「2019年男女平等指数(GEI:Gender Equality Index)」では、日本企業14社のひとつとして選定されました。社会からも高い評価をいただくようになってきたと感じています。
Q.女性以外の取り組みには、どのようなものがありますか。
宮間:女性に限らず、現在DNPは、すべての社員が力を発揮できるよう、多様なワークスタイルを推進する取り組みをしています。私たちが行った実態調査アンケートでは、女性だけでなく、障がいを持った人やシニア、日本以外の国籍の人やLGBTの人なども含めて、自分以外のそれぞれの社員がどのようなことで困っているのかわからないこと、相手を知らないことによる漠然とした不安が見えてきました。そうした不安を解消していくには、「対話」が大切です。対話を通じてお互いをよく知り、この人にはこういう配慮が必要といったことを理解して、共有していく必要がありますね。
(写真上)大阪での「手話講座」の様子。(写真下)「メンタリング活動」では、若手を育てるための面談を月1回行っている。 |
手話講座の開催や、上司と部下が向き合う「キャリア面談」や「メンタリング活動」など、多様な対話を促す活動も効果的です。
一人ひとりの強みが異なるからこそ、それらを掛け合わせることで総合力が高まっていく
Q.ダイバーシティを価値向上につなげるうえで、大事なことは何でしょうか。
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北島:製品やサービスの開発においても、むしろ積極的に多様性を取り入れて、価値を高めるようにしています。2008年には「ユニバーサルデザイン宣言」を行い、多くの人にとって利用しやすい製品・サービスをつくるユニバーサルデザインに注力してきました。特に、多様な色覚の人々が認識しやすいカラーユニバーサルデザインへの取り組みは、印刷会社だからこそ力が発揮できます。また最近は、商品設計などの早い段階から、障がいを持った方や高齢者などに参画していいただく「インクルーシブデザイン」も推進しています。片手だけでも開けやすいパッケージなどは、その一例です。
宮間:同質の人しかいない組織では、似通った価値しかつくり出せないように思います。人財のダイバーシティは目的ではなく、それによって社会や人々に多様な価値を提供していくことが大事なのですね。
北島:繰り返しになりますが、今DNPは、社会の課題を解決し、人々の期待に応える「新しい価値」の創出に取り組んでいます。私たちの製品やサービスに価値があるかどうかは、それを受け取る人が決めることです。受け手の皆さんには、男性も女性も、障がいの有無も、子供からシニアまでの年齢の違いも、国や地域も、その他のあらゆる多様性があります。つまりダイバーシティの推進は欠かせない経営課題です。これからもDNPは、企業価値の向上に向けて、ダイバーシティを活かしていきたいと考えています。
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