“技術のDNP”を支えてきた原点とは? 印刷の現場を見に行こう! #1 「版を作る」編
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DNPグループは今、顔認証等のセキュリティサービスや、文化財の価値を高めるデジタルアーカイブ、メディカル・ヘルスケアやエネルギー関連の事業、各種エレクトロニクス製品など、幅広い分野で社会や人々に新しい価値を提供しています。これら多様な製品・サービスは基本的に、「本」をつくってきた印刷技術を応用・発展して実現させてきました。そうしたDNPの基盤とも言える「印刷」の現場を、“活じい&トンボちゃん”が潜入レポートします!この記事は、雑誌印刷の工程を例に、「#1 版を作る」「#2 印刷する」「#3 製本する」の全3回で印刷の仕組みを紹介するシリーズの第1回です。
目次
登場人物
活じい…金属活字じいさん。活字としてのキャリアは100年以上。長い経験で培われてきたDNPグループに関する豊富な知識で、いろいろなことを教えてくれる生き字引的な存在。
トンボちゃん…印刷物の見当合わせ※トンボから生まれたキャラクター。きっちりした性格で、曲がったことが大嫌い。細かな気遣いで活じいをサポートします。
- ※【印刷用語:見当合わせ】見当とは、多色印刷において各色版の重ね合せる際の位置精度のこと。版面にトンボといわれるレジスターマークを入れて、見当を合わせるようにしている。
- ※本記事は、小学館のアウトドア雑誌「BE-PAL(ビーパル)」編集部のご協力により作成しています。
書籍やパンフレット、ポスターなど膨大なメディアを日々世に送り出している印刷工場。印刷の基本工程は、文字・図版等をレイアウトした“ハンコ”である「版」にインキをつけ、紙やフィルム等に転写して複製を作るという流れです。そこでは、正確な「版」を作る、インキ等の成分を最適化する、インキ等を微細かつ均一に塗るなど、多彩な技術やノウハウが活かされています。以下、実際の工程に沿って見ていきましょう。
scene1 入稿素材の確認
出版社から印刷会社に届いた素材を整理し、雑誌の企画や記事などの単位で専用の袋にまとめます。素材には、レイアウトデータ等が入った「パッケージメディア(DVD等)」、試し刷りとの比較に欠かせない「出力見本」、色調整の指示が入った「色校正紙」、ページレイアウトで使用するイラスト等の「ビジュアル素材」などがあります。
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入稿担当:Yさん |
印刷は多くのスタッフが関わる共同作業なので、次の工程の担当者が作業しやすいように素材を確認し、整理する作業が欠かせません。お客様(出版社等)の大切な情報なので、管理を厳格に行うのが大切なルールです。
「入稿」=印刷会社に原稿等の素材を送る(入れる)こと。通常、入稿後に複数回、色校正等を出し、確認~修正を行って「校了(OK)」となります。再入稿の場合、修正指示が入った色校正紙などを素材として扱います。
scene2 データ修正
編集部からの修正指示に従って、画像や文字を修正します。床の汚れを消すなどの画像修正や、肌の色をきれいにするなどの色味調整は、専用のソフトを使って行います。
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データ修正担当:Nさん |
長年培った色調の管理や補正のノウハウをもとに、色味や明るさの調整から不要な部分の削除まで、さまざまな補正を施します。このような画像補正技術を、「DNP高精彩出力技術 プリモアート」等のさまざまなソリューションに活かしています。
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※プリモアート:複製画を出力することが可能な高精細印刷技術。原画ならではの質感や、アーティストの独特な筆致や色調の濃淡まで、作品をオリジナルと見分けがつかないほど完璧に再現することができます。
Discover DNP 高精彩出力技術プリモアート:https://www.dnp.co.jp/media/detail/1192547_1563.html
scene3 検査
工場等の現場で修正した内容が、出版社等の指示を正しく反映しているか、出力見本と修正指示を比較してチェックします。比較する方法には、「あおり検査」と「デジタル検査」の2種類があります。
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「あおり検査」=修正後データと入稿データの両方の出力紙を目印である“トンボ”で重ね合わせ、素早くめくって戻すことを繰り返して、「正しく修正されているか」「修正すべきでない箇所が変わっていないか」を確認する作業。目の残像効果によって、異なる箇所がある場合は、たちどころにわかります。
検査担当:Oさん |
デジタル技術が進化した現在も、一覧性が高く(ひと目で全体が見渡せる)、書かれた内容や発色の具合まで確認できる肉眼でのチェック=あおり検査は欠かせません。ベテランスタッフのあおり検査は、驚くほど早く、正確ですよ。
scene4 面付(めんつけ)
雑誌の印刷は、大きな印刷機に合わせて片面8ページ分、表裏で16ページ分を一気に印刷します。印刷した大きな紙を折って裁断した際に、ページが順番に正しく並ぶように、印刷用にページを並べる作業を「面付(めんつけ)」といいます。
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面付担当:Nさん |
印刷するサイズやページの順番が、完成形に合わせて適切に配置されているかどうか確認します。間違えたら一大事なので責任重大です。念入りに最終チェックを行います。
scene5 刷版(さっぱん)
いよいよ実際に印刷機で使用するハンコ=「版」をつくる「刷版」の工程です。
「オフセット印刷」の場合、面付したデータをアルミの板に焼き付けた「版」を作成します。カラー印刷の場合、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)の4つの色の「版」を用意し、印刷機で順番に重ねて印刷することで多種多様なカラーを表現します。
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「オフセット印刷」=雑誌・書籍等に使われている一般的な印刷方式。凹凸のない原版に、インキを乗せやすい(=水をはじく)部分と、インキをはじく(=水となじむ親水層)部分を形成する方式で、文字や写真を鮮明かつ短時間で大量に印刷できます。その他の印刷方式には、版の凹んだ部分にインキを着けて印刷して、写真画像等をより高精細に表現できる「グラビア印刷」、版の凸状の部分にインキを着ける凸版(とつはん)印刷や、版を使わずにデジタルデータから紙などに直接印刷する、少部数に適した「デジタル印刷」などがあります。
「網点」=シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色でフルカラーを表現するために使われる微細な点。点の間隔を広くすることで薄い色が表現できて、複数の色の版を重ねることで多様な色が表現できるなど、点の密度や大きさを調整することで多彩な加工が可能となります。
刷版担当:Sさん |
より美しく、鮮明に印刷するためには、版の表面を正確に加工する高度な技術が必要です。DNPはこうしたノウハウの積み重ねから高度な「微細加工技術」を培い、ナノレベル(10億分の1メートル単位の精度)の半導体製造にまでつなげています。
多彩な先端テクノロジーを生み出してきたDNPの印刷技術
明治9年(1876年)のDNP創業当時、金属活字による活版印刷が最先端の技術でした。それ以来、DNPは常に、イノベーティブな先端テクノロジーとして印刷技術を磨き続け、多様な製品・サービスの開発につなげて、事業領域を拡大してきました。
高品質な印刷物を安定して製造するため、Scene1~5で紹介した技術はもちろん、機械制御、品質監視、素材管理などの多くの課題を解決する技術を独自に高めてきました。1970年代の初めには、印刷の前工程(プリプレス)である情報の入力・加工・編集のデジタル化をスタートし、80~90年代にはDTP※のノウハウを高めたほか、重要性・機密性の高い印刷物を扱ってきた知見を活かしICカード事業や情報セキュリティ関連のソリューションを展開しています。また、微細加工技術の応用・発展により、1950年代には、エレクトロニクス部門の事業にも進出しました。
次回以降でご紹介する「印刷工程」や「製本工程」では、正確・精密にインキを塗工する「コーティング技術」、フィルムや金属等のさまざまな素材を均一に貼り合わせる「ラミネート技術」、プラスチックをはじめとする樹脂製品を自在に加工する「成型技術」など、さまざまな技術を取り上げます。お楽しみに!
- ※DTP(Desktop Publishing)は、書籍・雑誌等のデザイン・レイアウトや、印刷の前工程にあたる面付作業などをデジタル化して、パソコンで行うこと。
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※DNPの技術の詳細は、下記ページでもご覧いただけます。
https://www.dnp.co.jp/development/basic-technology/
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