【包材】食ニーズの変化とともに進化を遂げた「電子レンジ包材」
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世のなかの身近なトレンドをわかりやすく解説する「トレンド講座」シリーズの第一弾。今回のテーマは、生活様式の変化に合わせ、驚くほどの進化を遂げている「電子レンジ包材」です。この製品の開発に携わるスペシャリスト・多久島和弘がナビゲートします。
目次
- 成長率は年平均20%超え! 市場拡大を続ける電子レンジ対応食品
- 「レトルト食品は電子レンジで温められない」という常識を変えた機能の進化
- “温めた後”まで広がる電子レンジ包材の可能性
- 今回のトレンドまとめ
<プロフィール>
大日本印刷株式会社
包装事業部 イノベーティブ・パッケージングセンター
製品開発本部
多久島 和弘
2005年、包装事業部に配属。生産技術や設計を担当した後、2015年に、植物由来の原料を使った包材・単一素材(モノマテリアル)の包材・紙包材・電子レンジ包材などを手掛ける開発部門の課長に。2017年、電子レンジ包材「アンタッチスルー」で「第41回木下賞」の改善合理化部門を受賞。2020年には、「高いバリア性を持つ単一素材(モノマテリアル)のパッケージ」で「2020日本パッケージングコンテスト」の「経済産業省産業技術環境局長賞」を受賞するなど、包材に関する知見が社内外から高い評価を得ている。
成長率は年平均20%超え! 市場拡大を続ける電子レンジ対応食品
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電子レンジが日本に入ってきたのは1950年代。新幹線の食堂車に採用されたのが始まりといわれています。家庭に広く普及するようになったのは1980年代のこと。2009年には国内普及率が97%以上となり、まさに一家に1台、必須の家電となりました。
国内では、単身世帯や共働き世帯の増加、高齢化などにより、食生活のニーズの多様化が続いています。なかでも「簡便・時短」を求める声が高まり、食材を買って家で調理する「内食」や調理済みの食品を買って家で食べる「中食」の市場が拡大し、デリバリーの増加などにもつながっているほか、家族がいても1人で食事をするケースも増えています。(図1)
図1:成長する内食・中食市場
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この流れは、コロナ禍でさらに加速しました。店舗での飲食を控えて自宅で食べる人や、買い物の頻度を減らすためにまとめ買いする人が増えたこともあり、冷凍食品やレトルト食品などの利用が増加しています。電子レンジで温めるだけですぐに食べられるという手軽さに加えて、多種多様なメニューが揃っていることも魅力です。自宅では作るのが難しい本格的な料理を味わうこともでき、「おいしいから冷凍食品やレトルト食品を選ぶ」という声もあります。
利用者の増加によって、購入できる場所も多様化しています。コンビニエンスストアやドラッグストアはもちろん、ネット通販や共同購入など、さまざまなルートで冷凍食品やレトルト食品などを買うことができます。
いまや私たちの暮らしに欠かせない電子レンジ対応食品。そのパッケージである電子レンジ対応パウチの市場規模も、2016から2019年の年平均でプラス21.4%と、右肩上がりで伸長しています。(図2)
図2:電子レンジ対応パウチ(軟包装・フィルム)市場規模推移および予測
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「レトルト食品は電子レンジで温められない」という常識を変えた機能の進化
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市場規模の拡大にともない、電子レンジ包材はどのような進化を遂げたのでしょうか? その代表的なポイントが「耐熱性の向上」です。
電子レンジはマイクロ波を当てて温めるため、中身の食品に油分や塩分が多く含まれていると高温になりすぎて、パッケージに穴が空いたり、破裂したりということがありました。こうした課題に対して、パッケージの耐熱性を向上させることで、中身の成分の自由度を高めることができました。「美味しくしたい!」というニーズに応え、食品メーカーの志と技術・ノウハウの結晶である「中身」の良さをそのまま包装することが可能になりました。パスタソースやスープ、お惣菜などバラエティ豊かな電子レンジ対応食品が実現し、「おいしいから冷凍食品やレトルト食品を食べる」といった生活者の声につながっているのです。
さらに、「耐熱性の向上」は、「食品の簡便性」も高めました。例えば、スーパーやコンビニエンスストアの棚にずらりと並んでいるレトルトカレー。以前は、鍋を出して湯煎する必要がありましたが、現在では電子レンジにも対応したことで、短時間で簡単に食べられるようになりました。味の良さはもちろん、手軽に食べられて、後片付けもしやすくなったことも、レトルトカレーの普及に貢献していると見られています。
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<生活者に安心して使ってもらうためのこだわり>
電子レンジ包材の機能を進化させ、電子レンジで温められる食品を増やしていくなかで、DNPがもっとも大切にしているのが、安全な製品を作り、生活者に安心して使ってもらえることへのこだわりです。
食品メーカー等の味や品質、安全の追究を最大限にサポートしつつ、DNP独自の基準で安全性を担保すること。「誰もが安心して」「直感的にストレスなく使える製品」を提供すること――。それが、パッケージを開発・製造するDNPの使命だと考えています。
例えば、酸素や水蒸気をバリアして賞味期限の延長などに役立つパッケージ用のアルミ箔は、電子レンジに入れるとスパークして(火花が出て)燃える危険性があります。アルミ箔を使った商品に「電子レンジで加熱しないように」という注意書きはあるものの、電子レンジOKの商品も多いなかで、誤って電子レンジで温めることがないとは言えません。こうした課題の解決に向けてDNPは、アルミ箔を使わずに高いバリア性を実現し、透明で中身が見える「DNP透明蒸着フィルム IB-FILM」を独自に開発、パッケージに使用し、食品メーカー等に提供しています。
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<生活者にとって使いやすい設計>
電子レンジで温めた時に、倒れてしまい、中身の汁などがこぼれ出てしまったことがありませんか? これは、電子レンジのサイズや規格、内容物に合ったパッケージを設計できていなかったことが原因ではないか、と思います。DNPでは、市場で販売されている電子レンジのサイズ・内容量などの規格をデータとしてまとめ、パッケージを作る際には、倒れない、適切なサイズと形状を提案しています。
また、従来の密閉されたパッケージをそのまま電子レンジで加熱すると、発生した水蒸気の逃げ場がなく、内圧が上昇して破裂してしまいます。その課題に対してDNPは、加熱時に発生する熱と圧力を利用して自動的に開通する蒸気口を設けた「DNP電子レンジ包材 アンタッチスルー」を開発・提供しています。水蒸気を逃がして破裂を防ぐことで、そのまま電子レンジで調理できるパッケージです。
安全性については、やけどを防止する形状や外装デザインを提案するようにしています。パッケージのデザインで蒸気口を目立たせたり、熱くなる部分と持てる部分を色分けしたり、蒸気口と開け口を離して配置したり、生活者がやけどをしないようにさまざまな工夫を行っています。
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<環境に配慮したモノづくり>
さらに今、重要性を増している欠かせない取り組みが、地球環境への配慮です。DNPは、地球温暖化の原因となるCO₂の削減に取り組み、パッケージの原料の一部を石油由来からサトウキビ等の植物由来のものに置き換えた「DNP植物由来包材 バイオマテック®」を開発。電子レンジ用を含むさまざまな用途に、多様な製品ラインアップを展開しています。
また、製品のライフサイクル全体でCO₂を削減する新たな材料開発にも力を入れており、2021年1月から、国内で製造するフィルムパッケージ用のインキを植物由来のバイオマスインキに順次切り替えを開始するなど、環境負荷の低減に向けた取り組みを加速させています。
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“温めた後”まで広がる電子レンジ包材の可能性
食品用パッケージの進化に関して、独自の強みで多様な機能性包材を開発してきたDNPとしては、今後「食にまつわるすべてのシーンをカバーしていきたい」と考えています。
例えば、パッケージ自体が調理器具になる商品。ホットケーキの材料が入ったパッケージに卵や牛乳などを入れて混ぜ合わせ、そのまま電子レンジで調理をすることで、調理器具の使用も片づけも不要となり、簡便化が実現できます。また、電子レンジで温めた食品をお皿に移さずにすぐ食べたいというニーズに対して、特殊な断熱構造によって電子レンジでも利用可能な紙カップなども開発しています。つまり、パッケージが調理器具と食器の役割も果たすのです。
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賞味期限をより長く保つ素材の開発や、必要な量だけを購入して食べることができるパッケージの開発も大切です。電子レンジの普及率が高い日本は、対応するパッケージのバリエーションや開発力でも世界を先導していると言えます。皆さんもレトルト食品や冷凍食品を食べる際には、ぜひパッケージの素材や機能、デザインなどを気にしてみてください。
「電子レンジで温められないものをなくす」「加熱だけでなく調理にも使える」「パッケージをそのまま食器として使用できる」など、“温めること”の先にある“調理や食事”、そして食べた後の“片付けや廃棄”、“再利用や資源のリサイクル”まで、食生活に関わるあらゆるシーンで価値を提供できる多彩なパッケージをDNPは追求しています。
私たちDNPは、生活者のニーズに応え、より便利で使いやすいパッケージを生み出して、安全で豊かな食文化と持続可能な社会を実現していきます。
<関連製品>
DNP電子レンジ包材 アンタッチスルー®
DNP透明蒸着フィルム IB-FILM
DNP植物由来包材 バイオマテック®
今回のトレンドまとめ
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