環境対応&機能性の進化でニーズ再燃! 「紙製容器」の世界

容器・包装におけるプラスチック使用量の削減が世界的な潮流となるなか、あらためてその価値が見直されている紙製容器。「加工の自由度」や「素材としての強度」といった紙本来の特性を活かして、市場は大きく広がっており、DNPも紙製の電子レンジ対応容器やラミネートチューブなど、多彩な製品を次々と生み出しています。今回は、この紙製容器の最前線についてご紹介します。

目次

紙製容器について話すトンボちゃんと活じいの4コマ漫画。

登場人物

活じいのアイコン

活じい…金属活字じいさん。活字としてのキャリアは100年以上。長い経験で培われてきたDNPグループに関する豊富な知識で、いろいろなことを教えてくれる生き字引的な存在。

トンボちゃんのアイコン

トンボちゃん…印刷物の見当合わせ※トンボから生まれたキャラクター。きっちりした性格で、曲がったことが大嫌い。細かな気遣いで活じいをサポートします。

  • 【印刷用語:見当合わせ】見当とは、多色印刷において各色版の重ね合せる際の位置精度のこと。版面にトンボといわれるレジスターマークを入れて、見当を合わせるようにしている。

紙製容器のトレンドは、“環境対応+機能性”

海洋プラスチックごみ問題などの社会課題の解決が求められる中、プラスチック使用量の削減策のひとつとして、容器の「紙化」のニーズが高まっています。紙は、原料の木や草が再生可能資源である、素材として再生するマテリアルリサイクルに適している、つぶして廃棄することで容積を小さくできるなど、環境への負荷を低減する価値があります。プラスチックの代替素材として、生活のさまざまな場面で使えるため、大きな期待が寄せられています。

こうした社会的要請を受け、紙製容器の技術革新も加速しています。容器・包装分野のリーディングカンバニーであるDNPは、基盤となる高度なコンバーティング技術(※)や機能性材料などの強みを活かし、環境負荷を低減する紙製容器の開発に長年取り組んできました。紙がもともと備える「加工しやすい」「表面に印刷できる」「軽量でかつ強度がある」といった素材特性を活かした研究を進めて、プラスチック容器と同等の「密封性」「バリア性」「再封性」などの機能を実現しています。いまや紙製容器は、 “次世代サステナブル素材の最有力候補”となりつつあるのです。
では、DNPが開発・提供する製品をいくつかご紹介しましょう。

  • コンバーティング技術=材料の形を変えたり複合したりする材料加工技術。製膜、コーティング、ラミネート、賦型、転写、切断や研磨、製袋・成型や製本など、紙やフィルムなどの素材の加工技術全般を含む。

ここまでできる、紙製容器の技術

<中身を護る>

水蒸気や酸素、光などの透過を防ぎ、内容物の長期保存を実現します。多様な機能を持った複数のフィルムを貼り合わせることで、内容物の風味の保持なども可能にします。
主な用途:牛乳・ジュース・酒類・調味料・日用品など。

中身を護り、内容物の長期保存を実現するための仕組みを示した図。

 

<そのまま使える>

調理器具や喫食容器の役割も兼ねる利便性の高い形状にすることができます。「喫食」とは、満足しながら楽しく食事することをさす言葉で、DNPが提供する容器・包装によって食事がより充実したものになるように願って喫食容器の開発に注力しています。
例えば、電子レンジで「温める」「蒸らす」などの調理ができる、熱い液体を入れても手で保持できるなど、安全に使用するための機能も付与できます。
主な用途:インスタント食品・冷凍食品など。

調理器具や容器としての役割をもち、そのまま使えるための仕組みを示した図。

 

<開け閉めできる>

開封後のリクローズ(再び封ができること)を実現することで、食べ切り・使い切りではなく、必要な量だけ使用できます。チャック付きや折り込み式など、内容物に応じたバリエーションがあります。
主な用途:菓子・食品・ナッツ類・ドライフルーツ類・紅茶パック・日用品など

開封後にリクローズできるための仕組みを示した図。

機能の多様化で新たな用途も開拓

DNPは、容器を単に“内容物を入れて護る”道具としてだけでなく、生活者の購買や利用・廃棄などのシーン全体を見据えて開発しています。そうしたアプローチによって、店頭での訴求力を高めるほか、調理器具や喫食容器としても使えるといった用途も広げています。

 

DNPロングライフ用液体紙容器 L-Slit

高度なコンバーティング技術によってバリア性を備えた透明フィルム「DNP透明蒸着フィルム IB-FILM®」を複数層のラミネートフィルムに挟み込むことで、内容物を目で確認できる“窓”を設けた液体紙容器を開発。利用の際に残量がわかるというメリットに加え、店頭陳列時に来店者の購買意欲を高める効果もあります。

brand SHISEIDOサンケア製品「Expert Sun Protector Face Cream SPF 50+」 「After Sun Intensive Damage SOS Emulsion」(株式会社資生堂) ※2022年3月より、欧州にて限定発売

曲げたり捻ったりしても寸法が変わらない“剛性”が高いという紙の特性を活かし、瓶や缶と比べて柔らかい構造で適量を押し出したり、簡単に開け閉め可能なラミネートチューブ形状の製品を開発。自立するため、保管もしやすい製品です。また、クラフト紙を用いると紙製であることがひと目でわかるため、環境配慮における企業姿勢を、製品を通じて体現することも可能です。

「スターバックスオリガミ」(ネスレ日本株式会社)

レギュラーコーヒー等を入れた容器の一部がフィルターの役割を果たします。ペーパーフィルターを用意しなくても、お湯を注ぐだけでコーヒーを飲めるドリッパーとして提供しています。紙の加工のしやすさを活かし、「調理器具」としての役割も兼ねるさまざまな形状の製品を展開していきます。

「キットカット ミニ ハロウィンパック キャラメルプリン味」(ネスレ日本株式会社)

横にスライドして開ける仕掛けでお菓子を簡単に取り出すことができます。“トリック・オア・トリート”をみんなで楽しめるハロウィン用の限定商品などに使われています。非開封時は立方体の形状であり、運送時や店頭での積載効率が高い点も大きなメリットです。写真は、2018年の日本パッケージングコンテストで「パッケージデザイン賞」を受賞した製品です。

パッケージの革新を通じ、ウェル・ビーイングな未来をめざす

DNPは1950年代から着手した容器・包装製造を起点に、現在ではパッケージ関連全般に事業領域を広げ、対象分野も食品や飲料、日用品・医薬品など多方面に広がっています。そうしたなかでDNPが常に大切にしてきたのは、「生活者の暮らしをより豊かなものにしていきたい」という想いです。

衣食住の中でも、特に「食」と密接に関わるパッケージの役割は、人々の幸福につながる「ウェル・ビーイング」な未来をめざすうえで、今後さらに重要になっていくと捉えています。そこでDNPは、使いやすさの向上はもちろん、より安全・安心で環境負荷の低い製品、個食やコミュニケーション支援などさまざまな形態に合わせた製品など、パッケージの新たな役割も視野に入れた開発に取り組んでいます。

特に、サステナブルな社会の実現が世界的な課題となっている現在、環境への配慮は、パッケージに関わる全世界の人々が共有すべきテーマとなっています。DNPはこれまでも常に、地球環境と経済活動の共生を念頭に事業を展開しており、「CO2の削減」「資源の循環」「自然環境の保全」という3つの価値を社会に提供する独自のブランド「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」を構築し、多様な製品・サービスを通じて、その価値を世界に届けていきます。

DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING「CO2の削減」「資源の循環」「自然環境の保全」のアイコン

これまでの常識ではなく、これからの常識=あたりまえを常に考え、パッケージの可能性を拡げてきたDNP。今後も、各国・地域の企業や自治体、生活者などのすべての良きパートナーとして、パッケージの“あるべき姿”を追求し、新しい価値を開発・提供していきます。

紙は2000年以上の歴史があるっていうじゃない。いろんなライバルが現れても生き残ってきた、信頼の素材なわけね〜。

活じいのアイコン

確かにそうじゃな。新しい素材と組み合わすことで紙の強みがさらに引き出されることもあるから、さらなる進化も期待できそうじゃぞ!

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