木材代替の新選択!環境にも優しい高機能建材「アートテック」
建材として木材をとらえたとき、温度や湿度変化などに弱く、腐食や劣化のリスクがあります。鉄やコンクリートと比較すると耐候性や耐久性に難がある反面、木のぬくもりや美しさは人々に安らぎと癒しを与え、快適な空間の創出が可能です。
近年、サステナブル社会の実現が重要視されるなかで、こうした特徴を持つ木材の価値が再評価されています。それに伴い、建築・設計関係者の間では、木材の持つ課題を解決し、その魅力を最大限に引き出す新しい素材を模索する動きが見られるようになりました。
今回は、木材の魅力や課題について解説していきます。あわせて、木材に代わる新たな選択肢になりうる、「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」をご紹介しますので、木材の代替素材を検討する際の参考にしてみてください。
-
アートテックを活用したソリューション・その他製品についてご相談承っております
木材のメリットとデメリット
木材建築のイメージ |
木材は、見た目の温かさと触れたときの心地よさで、私たちに安らぎを与えてくれる素材です。日本の国土の約7割は森林であり、木は昔から人々の生活に密接に関わってきました。だからこそ、私たちは木に対して、無意識のうちに親和性や心地よさを感じるのでしょう。
しかし、木材を建材として使用する場合、使用環境によっては腐食やシロアリ被害といった耐久性の面で課題があります。
木材を活用する際には、メリットとデメリットをしっかりと把握しておくことが必要です。改めて、木材のメリットとデメリットについて確認していきましょう。
メリット|人間の生活との親和性が高く環境負荷が低い
木材が身近にある生活は、人の心身に良い影響があることが科学的に証明されつつあります。特にメリットとして知られているのは、次の点です。
・樹木のにおいによるリラックス効果がある
・自律神経を安定させ集中力を高める効果がある
・周囲の湿度の変化に応じて湿気を吸収・放出する、調湿効果がある
・熱が奪われにくく、暖かい手触りがする
・パイプ状の細胞がクッションのような役目を果たし、衝撃を和らげる
・微細な凹凸によって光を適度に散乱させ、まぶしさを軽減する
・音を吸収し、心地良い音質にする
・FSC認証*1やSGEC認証*2などによって適切に管理された森林から伐採された木材は、炭素固定機能があり温暖化抑制に貢献する
・再生可能資源のため、環境負荷が低く、持続可能性が期待できる
*1 FCS認証:FSCとはForest Stewardship Councilの略語で、森林における生物多様性保全や、地域社会、先住民族、労働者などの権利を守りながら適切に生産された製品であることを認証する国際的な制度。
*2 SGEC認証:SGECとはSustainable Green Ecosystem Councilの略語で、持続可能な森林経営と木材の有効活用がなされているかを認証する日本独自の制度。
このように、木材は、私たち人間の生活との親和性が非常に高い素材といえるでしょう。
デメリット|湿度の影響が大きいため水に弱く耐久性が低い
木材を建材として使用する上では、機能面に関するいくつかの課題が存在するのも事実です。特に、湿度や水に対する高い感受性は、大きなデメリットとして挙げられます。
木材は、温度や湿度の変化に応じて膨張と収縮を繰り返す性質を持ちます。そのため、多湿な環境では変形やひび割れが生じやすく、建物の寿命を縮める要因になるでしょう。
また、多湿な環境では、木材腐朽菌が繁殖しやすく、木材の成分を分解して腐食を引き起こします。その上、構造強度や耐久性を著しく低下させるシロアリの発生リスクも高めます。
さらに、温度や湿度変化による変形やひび割れに対応した加工を施すためには、熟練した技術が必要です。そのため、木材は、鉄やコンクリートと比較して、耐久性が低い上に、加工性や施工性も低い素材であるといえます。
他にも、無垢材自体は可燃性材料であるため、防火地域や準防火地域で仕上材として利用する場合は、用途制限が発生する点もデメリットです。
【木材代替の新選択】高度な印刷技術でリアルな木目を再現する「アートテック」
アートテックのマテリアルシリーズ |
木材には、他の建材にはない独自の魅力がありますが、見逃せないデメリットもあります。そのため、木材の課題を克服しながらメリットを表現できる建材が求められています。そこで注目されているのが、DNPの内・外装焼付印刷アルミパネル「アートテック」です。
アートテックは、基材にアルミニウムを使用し、表面に特殊な焼付塗装を施しています。そのため、吸水性がほぼなく、水回りや湿気の多い場所でも美しい状態を長く保つことが可能です。このアートテックの特長により、木材が抱える「変形やひび割れ」「木材腐朽菌やシロアリの発生」といったデメリットを解消できます。
また、アートテックはアルミニウム由来の高い耐火性により、延焼のリスクを低減し、燃えやすく火災時に延焼しやすいという課題も克服しています。
アートテックは、木材のデメリットを解消するだけでなく、高度な印刷技術を駆使して、木材のメリットを再現することも可能です。外装に木材を使用した場合、遠くからは単色に見えてしまうことがあります。一方、アートテックは色柄のスケールやコントラストの調整により、遠くからでもわかりやすい木目模様を実現します。また、モックアップを作成する際には、デジタルプリントで限りなく最終意匠に近しいものを作ることが可能な点も、設計者にとってメリットとなるでしょう。
アートテックは、まるで本物のような木目、石目、金属柄、そして独創的な抽象柄まで、多彩なデザインを表現できる建材です。多彩な色・柄・質感の組合せで、イメージ通りの空間を創造できます。さらに、DNPの豊富なシート素材と組み合わせることで、内装と外装のデザインを統一することも可能です。建物全体のコンセプトに合わせた、自由度の高いデザインが実現できるでしょう。
特に、木材に代わる建材として注目されるのは、高い印刷技術によって天然素材の美しさを忠実に再現した「マテリアルシリーズ」です。ここまでに紹介したようなアートテックのメリットを活かして、木材では耐久性に不安があるエリアで使用しても、木材と同等の意匠を表現しながら長期間美しさを維持できます。
関連ページ:アートテックの木目柄一覧
加工性・施工性の高さによるコストメリットの創出
上述したように、木材には加工性や施工性に関する課題も存在しています。アートテックは、高い加工性・施工性により、この木材の課題を解決してコストメリットを創出できる点でも魅力的な建材です。
アートテックに用いられるアルミパネルは、その優れた加工性により、切断・曲げ・溶接といった加工が容易に行えます。また、アルミパネルは、コスト面においても以下の3つの効果をもたらします。
(1)基礎工事での材料費削減
アルミニウムは、他の金属に比べて比重が小さく、軽量な素材です。そのため、アルミパネルを外壁や天井などに用いることで、建物全体の重量を軽減できます。
建物が軽量化されると、基礎への負荷が軽減され、地盤改良工事や基礎工事、構造躯体工事において、材料の選定肢が広がります。結果として、建築コストの削減や、基礎工事にかかる時間の短縮も期待できるでしょう。
(2)現場での加工費削減
木材は、現場での切断や調整に時間がかかる上に、取扱いには熟練した技術が必要となるため、加工費が高くなる傾向があります。
アートテックのアルミパネルは、工場で事前に加工することで、現場での加工時間の短縮に貢献します。また、用途に合わせて多岐にわたる形状加工が可能です。標準的なパネル形状に加え、ルーバー、R形状、パンチング加工など、高度な加工技術を駆使した高品質な製品を提供します。
(3)工期短縮による人件費削減
上述のように、アートテックを採用することで、基礎工事と現場における建材の加工を効率化できます。それにより、全体的な施工期間の短縮が可能になるでしょう。また、現場で建材を加工する必要がなければ、熟練作業員の配置を削減することもできます。
これらの理由から、アートテックは人件費の削減に大きく寄与できる建材だといえます。近年は、資材価格高騰による建設コストの上昇が続いていることもあり、アートテックが持つ経済的メリットは非常に大きいものだといえるでしょう。
高い環境配慮性とリサイクル性を持ち、持続可能性が期待できる
アートテックは、再利用性の高いアルミニウムを使用した、サステナブルな建材という点でも注目されています。
近年、地球環境問題が注目されるなか、建材にも地球環境への配慮が求められています。木材は再生可能な資源であり、適切に管理された森林から伐採された木材は、炭素を貯蔵し地球温暖化の抑制に貢献するなど、リサイクル性が高く、環境負荷も低い建材です。
アートテックは、木材が持つこれらの特徴も有しています。まず、アートテックは、環境に負荷をかける有害な化学物質を含んでいません。また、アルミニウムをベースとしているため、再利用性が高く廃棄物の削減にも効果的で、廃棄する場合でも環境への負荷が少なく済みます。
さらに、アートテックは高度な焼付印刷技術により、木材や金属など多様な意匠表現を可能としました。その技術によって、希少な銘木や特殊な石材もリアルに再現し、デザインの自由度を高めながら持続可能な建築を支援します。
自然素材の制約を超えた木目のアートテック事例紹介
アートテックで表現できる柄は、ウォールナット材やオーク材のような木目をはじめ、竹柄や集成材風など多岐にわたります。また、アートテックは、温度や湿度の変化、雨や風といった天候の変化にさらされやすい外装に使用可能です。つまり、本物の木材のような意匠で建物のコンセプトや町並みに寄り添うだけでなく、耐久性の面で自然素材の制約を超える役割を果たせる素材といえます。
ここからは、アートテックが木材の代替として使用された事例をご紹介していきます。
徳洲会ジムナスティクスアリーナ
徳洲会ジムナスティクスアリーナの外観 |
2024年に神奈川県鎌倉市にオープンした「徳洲会ジムナスティクスアリーナ
」は、国内最大級の男子体操専用の体育館です。天然木を使用し大開口を実現した建物は、町並みに自然に溶け込む外観が特徴です。
「大きな家のようなアリーナ」というコンセプトにもとづき、建物正面の軒天・壁面・ルーバーに木目柄のアートテックが採用されました。穏やかな色目の木目調は、周囲の植栽ともよく調和しています。
採用されたアートテックに施されているのは、曲げ加工技術です。アートテックはアルミ板に直接印刷しているため、曲げ加工を施しても色柄をしっかり追従できる特長を持っています。
フォレストゲート代官山
フォレストゲート代官山の外観 |
2023年10月に東京の代官山に開業した「フォレストゲート代官山
」は、MAIN棟とTenoha棟の2棟からなる複合施設です。このうち、ショップやレストラン、居住空間、シェアオフィスが共存するMAIN棟の外装にアートテックが採用されました。
木箱を重ねたような独特の形状が特徴の建物に、遠目からも陰影がわかる木目柄のアートテックが使われています。代官山という地域にふさわしい、ぬくもりのある雰囲気を演出しています。
グランリビオ浜田山
グランリビオ浜田山の正面 |
東京都杉並区に2023年10月に竣工した分譲ブランドマンションである「グランリビオ浜田山
」にも、アートテックが採用されています。
生活利便施設がそろった浜田山の邸宅街に建てられた「グランリビオ浜田山」は、日本の伝統美と次世代の邸宅像を融合したデザインが特徴です。閑静で緑豊かな住宅街において、木目のグリッドデザインが目を引く外観となっています。アートテックは、和の要素が取り入れられた水平に広がる庇(ひさし)のなかで、空間を縦に仕切るマリオン部分と軒天に採用されています。
オーバード・ホール(富山市芸術文化ホール 中ホール)
オーバード・ホールの外観 |
2023年に施工された「オーバード・ホール
」は、富山市芸術文化ホールの中規模ホールです。
外観には木目柄のアートテックが使われていて、木質感を表現して温かみを演出しながら、アートテックの高い耐候性を活かすデザインとなりました。オーバード・ホールに使用されたアートテックでは、曲げ加工技術が用いられています。カットパネルと異なり下地材が不要なため、コストメリットが得られる点が特徴です。
建物の内部には本物の木材が使用されており、アートテックとリアルな木材が融合した事例といえます。
佐賀県水産会館
佐賀県水産会館の外観 |
2023年に建物の老朽化に伴って建て替えられた「佐賀県水産会館
」は、佐賀県の漁業を支える各種機関や直売所、ギャラリーなどが入居する、地域に親しまれる施設です。
地域との関係性も深い施設ということもあり、建物の多くの場所には佐賀県産の本物の木材が使われていますが、軒天や2階以上のルーバー部分などの高い耐久性・耐候性が求められる部位には、本木に合わせた意匠のアートテックが採用されています。
まとめ
木材の温かみや美しさは、私たちの生活に安らぎを与えてくれますが、一方で耐久性や環境への影響といった課題も抱えています。
そこで注目されているのが、高度な印刷技術により木材の質感をリアルに再現しながら、アルミ素材の優れた耐久性や加工性を兼ね備えた建材であるアートテックです。アートテックを活用することで、木材のデメリットを克服しつつ、理想的な空間デザインを実現可能です。また、軽量性や施工性の高さは、コスト削減や工期短縮にも貢献します。再利用性の高い素材であるため、環境負荷の低減にも効果が期待できるでしょう。
アートテックはさまざまな建築物に活用され、そのデザイン性と機能性で高い評価を得ています。木材の魅力を活かしながら、新たな建築の可能性を追求する方にとって、アートテックが有力な選択肢となるのではないでしょうか。
【参考】出典元
木の良さ、魅力とは? 東京と全国各地との共存共栄
科学的データによる木材・木造建築物のQ&A 林野庁
木材の特性と魅力 埼玉県
-
アートテックを活用したソリューション・その他製品についてご相談承っております
-
*2025年2月現在の情報です。
*アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。