アンケート調査から見えたマンション内装へのニーズ、ポイントは「普遍的」と「高級感」

マンションの内装を選ぶ際には、最新トレンドの採用に加え、ユーザーの潜在的なニーズを把握し、表現することが求められます。

DNPでは、人々がマンションの内装に対してどのようなニーズや考え方を持っているのか、アンケート調査を実施しました。そこで得た意見やデータを通して、マンションの内装トレンドや、居住者の意向を解説するコラムを掲載しています。

前編のコラムでは、居住者が好む内装スタイルや、DNPが提案する「DNP 5 Styles」という5つのライフスタイルに関連した内装について見ていきました。そして、「普遍的で飽きのこないデザイン」「自分のライフスタイルに合っている」「高級感、上質さ」「ナチュラル」といったものが、居住者の好む内装のポイントであることがわかりました。

それを受けて後編では、建具や床材の具体的なコーディネートについて検証していきます。 居住者のニーズを読み解くことで、マンション内装担当者・設計者の方にとってヒントとなる情報を紹介していきます。ぜひ参考にしてください。

マンションの内装建具・床材の重要性と選定のポイント

マンションの内装建具や床材は、住み心地を大きく左右する要素のひとつです。使う素材の機能性や質感、色・柄によって感じる印象は変わりますし、快適性やメンテナンス性にも違いが出るからです。

建具や床材は、頻繁には変更できません。そのため、ライフスタイルが変化したとしても適応できる普遍的なデザインと、快適な生活につながる機能性を備えたものを選ぶことが重要です。

まずは、内装建具や床材が持つ役割と、選定のポイントを紹介します。

内装建具・床材の役割と選ぶ際の考慮点

内装建具・床材は、空間面積の大半を占めています。また、部屋の雰囲気やテーマを決める上で大きな役割を担っているため、内装デザインがマンション選びの最初の判断基準となるケースもあるでしょう。

例えば、濃い色合いの建具や床材は、重厚感や高級感を演出し、落ち着きのある空間を実現します。反対に、光を反射しやすい明るい色合いの建具や床材を用いると、空間を広く見せる効果が期待できます。内装を決める際には、色や柄、質感がどのような印象を与えるかを考慮するといいでしょう。

空間の用途にあった機能性を備えることも、内装の重要な役割です。例えば、水回りには耐水性や調湿機能のある素材を選んだり、玄関や床には傷がつきにくく防音性の高い素材を選んだりすることで、その空間の機能が維持しやすくなります。

デザインによって全体の雰囲気を演出し、用途にあった機能を持つ素材を選定しましょう。その上で、デザイン性だけでなく、メンテナンス性や耐久性も考慮した素材を採用することで、快適で実用的な空間を実現できます。

アンケートから見えた内装建具・床材に対するニーズ

上述のように、内装建具や床材の機能面は、空間の用途によって要素が決まるため、選定はしやすいでしょう。しかし、デザイン面は、その時代のトレンドやライフスタイルの変化によって居住者のニーズが変化します。内装担当者・設計者にとっては悩みどころといえるでしょう。

そこでDNPでは、内装建具と床材のコーディネートに関するアンケート調査を実施し、居住者の空間に対する意向や、マンションの内装デザインに対するニーズを分析しました。

調査は以下の方法で実施しています。

<調査対象>
DNP社員381名(生活空間事業部163名 その他の事業部も含め218名)

<調査方法>
アンケート形式

<調査時期>
2024年10月15日~21日

<回答者属性>
・性別の内訳:男性67%、女性32%、回答なし1%
・世代別内訳:20代8%、30代19%、40代27%、50代36%、60代10%

このアンケートでは、マンション内装における6パターンの「床と建具のカラーコーディネート」を用意し、「居住してみたい空間」と「直感的に好きな空間」を調査しました。6パターンとは以下の通りです。

(1)EBFW-1257 / WS-5251E
奥行きのある、まろやかなホワイトトーンのオーク柄同士の組合せ

(2)EBFW-1259 / WS-5257E
心地良いウォームグレーのブラックウォールナット柄とマグノリア柄の組合せ

(3)EBFW-1261 / WS-5256E
あたたかみある色合いのヨーロピアンウォールナット柄とアメリカンチェリー柄の組合せ

(4)EBFW-1262 / WS-5258E
深みのあるダークトーンで、抑揚感のあるクルミ柄とマグノリア柄の組合せ

(5)EBFW-1260 / WS-5238E
洗練されたディープトーンのブラックウォールナット柄とアッシュ柄の組合せ

(6)EBFW-1248 / WS-5222E
モダンなグレートーンのアッシュ柄とアカシア柄の組合せ

それぞれの設問に対する回答と、そこから読み取れるニーズについて考察していきます。

居住してみたい空間のキーワードは「普遍的」と「快適性」

6つのパターンのうち、最も「居住してみたい空間」として選ばれたのは、自然を感じさせるナチュラルな木の色合いのコーディネートである(3)でした。ナチュラルなテイストのコーディネートは、さまざまなテイストのスタイルや、手持ちの家具とも調和が取りやすい特徴があります。実際、このコーディネートを選んだ理由として最も多かったのは「普遍的で飽きなそうだから」というものであり、ライフスタイルやトレンドの変化にも柔軟に寄り添えるパターンといえるでしょう。

各コーディネートの選択理由を見てみると、個々人の好みを別にすれば、「普遍的で飽きなそう」という普遍性に関するニーズや、「家具が合わせやすそう」「汚れや傷が目立たなそう」「空間が広く感じる」など、快適性に関するニーズが強いことがわかりました。このことから、「普遍的」や「快適性」といったものが、床と建具のデザインのキーワードになるといえそうです。

直感的に好きなコーディネートは「重厚で高級感のある空間」

しかし、居住者の本能に訴えるコーディネートも同じなのかというと、そういうわけではありません。「直感的に好きな空間のコーディネート」について聞いてみたところ、濃い色合いのコーディネートである(5)が最も多く選ばれました。

このようなディープトーンは、高級賃貸物件などで見られるコーディネートです。ダークな色は空間に圧迫感を与えやすい一方で、スタイリッシュに見える効果があります。そのため、長く暮らす新築分譲よりも、賃貸などある程度居住する期間が限られる住まいの形態で好まれる傾向にあるといえるでしょう。

このように、「居住したい空間」と「直感的に好きな空間」のコーディネートにはギャップが存在しています。そのため、マンションの内装デザインは、両方のバランスを考慮することが求められるでしょう。今回のアンケートをもとにすると、「普遍的で飽きのこない」デザインでありながら、「高級感」を感じられる空間に対するニーズが強いと推測できます。

アンケートから見えた色柄の組合せとコントラスト差に対するニーズ

内装建具と床材のデザインを考える上で、近年では木質柄以外の素材をモチーフにした意匠にも注目が集まっており、非木質系の色柄や質感を持つ素材の採用例が増えています。異なる素材を組み合わせる「マテリアルミックス」という手法が、近年のインテリアトレンドのひとつとなっていることが影響しています。

そこで、木質柄の床材に合わせる建具の色柄に、抽象柄を組み合わせたパターンを4つ用意し、これらの組合せに対する傾向を調査しました。また、床材と建具の色合いを変えたパターンも用意して、居住者がどのように感じるかの検証も行っています。

同一の柄の組合せの空間ほど好まれる傾向に

まずは、ホワイトカラーの色合いをベースにした空間で、建具と収納を木質柄と抽象柄で統一する、あるいは個別に用いたとき、居住者の好みはどのように分かれるのかを調査しました。木質柄の素材は、やや彩度の下がった落ち着いた色合いのホワイトトーンのオーク柄(WS-5251E)を採用しています。抽象柄の素材は、大胆な抑揚と落ち着きのある輝きを持つWS-9101E(ラスターフィール)を採用しています。それぞれの組合せは以下の通りです。

(1)建具:木質柄(WS-5251E)×収納:木質柄(WS-5251E
(2)建具:木質柄(WS-5251E)×収納:抽象柄(WS-9101E
(3)建具:抽象柄(WS-9101E)×収納:抽象柄(WS-9101E
(4)建具:抽象柄(WS-9101E)×収納:木質柄(WS-5251E

このうち、「居住してみたい組合せ」として最も選ばれたのは、建具2カ所とも木質柄同士の組合せである(1)で、次いで非木質同士の組合せである(3)という結果になりました。

ホワイトカラーの場合、色の濃淡による柄の違いがわかりやすいので、同じ色柄の組合せのほうが、家具や室内装飾を選びやすいと考えられます。

性別ごとに見ると、男性は木質柄のみの組合せを選ぶケースが圧倒的だったのに対し、女性は木質柄と抽象柄の差はさほどありませんでした。また、若い世代ほど木質柄と抽象柄の差が少ない傾向にあることもわかっています。

今度は、近年のトレンドであるグレーカラーをベースにした空間で、同様の調査を行いました。木質柄の素材は、WS-5222E(アカシア柄)を採用しています。抽象柄の素材は、ブラウン系の木質と合わせやすいWS-9104E(ラスターフィール)を採用しています。それぞれの組合せは以下の通りです。

(1)建具:木質柄(WS-5222E)×収納:木質柄(WS-5222E
(2)建具:木質柄(WS-5222E)×収納:抽象柄(WS-9104E
(3)建具:抽象柄(WS-9104E)×収納:抽象柄(WS-9104E
(4)建具:抽象柄(WS-9104E)×収納:木質柄(WS-5222E

アンケートの結果では、ホワイトカラーと同様、木質柄同士の組合せが最も多く選ばれ、次いで抽象柄同士が選ばれています。男女差・世代差に関しても、ホワイトカラーと同様の傾向が見られました。

コントラスト差は同色か床材が明るいものが好まれる傾向に

床材と建具でコントラストをつけた場合、嗜好性にどのような変化が生じるかも調査しています。その結果、「建具と床が同色」のパターンが最も好まれることがわかりました。次いで「床が建具より明るいもの」が選ばれ、「床が建具より暗いもの」が最も低い結果となっています。

ドアと床のコントラストで最重要視するものという質問に対しては、個々人の趣味趣向を除くと、「飽きのこないパターン」や「空間を広く感じさせるパターン」という回答が多く寄せられました。

一般的に、床と建具のコントラストは、同色で揃えると空間全体の統一感を作り出しやすいといわれています。また、明るい色の床は、光を反射して空間を明るく見せる効果が期待できます。その上で、建具の色を床よりも濃い色にすれば、空間の雰囲気を引き締めることが可能です。今回の調査結果からも、居住者の好みがこうした考え方に沿っていることがよくわかります。

まとめ

今回の調査では、床材と建具に関する色と柄の組合せについて、見る人が何を感じ、どのように選ぶかがうかがえる結果となりました。

床や建具など内装のベースとなる部分の色合いに関しては、ライフスタイルの変化にも柔軟に寄り添えて、飽きのこない普遍的なパターンを選ぶ傾向があります。それと同時に、高級感のある色合いにも根強いニーズがあることもわかりました。これらの結果は、前編で紹介した、居住者が好む内装のポイントである「普遍的で飽きのこないデザイン」「高級感、上質さ」を裏付けるものだといえるでしょう。

マンションの内装を選定する際には、デザインテーマの裏付けも必要となります。今回のコラムで紹介したポイントが、その材料となれば幸いです。

  • 2025年1月現在の情報です。

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