建築物の魅力を左右するエントランスデザイン

エントランスは、建物の第一印象を決める場所であり、建築物の魅力を左右すると言っても過言ではありません。印象を良くするためにも、ファサード(建物の正面外観)やエクステリアアプローチ(建物への通路や外構部分)といった要素との調和を意識した設計が求められます。

そこで今回は、エントランスのデザインの重要性や最新トレンド、実例を詳しく解説していきます。また、デザインの自由度を高めるアルミ外壁パネル「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」についても紹介します。エントランスデザインを検討する際の参考にしてみてください。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNP生活空間事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

建築におけるエントランスデザインの重要性

ビルのエントランスのイメージ

エントランスは建物の出入り口部分を指す言葉で、マンションや公共施設、商業施設、オフィスビルなどの比較的大きな建築物に使用されます。建物に訪れる人を最初に迎え入れ、建物全体の第一印象を決める重要なエリアともいえるでしょう。

ここでは、エントランスの役割や機能、エントランスが重要な理由について解説します。

エントランスの役割

エントランスの役割は、主に「機能面」と「心理面」に分けられます。

エントランスは、建物と外部を物理的に遮断する場所です。外気の流入を遮断して屋外との気温差を緩和したり、屋外のほこりや汚れを屋内に入れないようにしたりする機能を持ちます。例えばマンションなどでは、二重扉のエントランスがよく見られます。

扉と扉の間にある空間は「風除室(ふうじょしつ)」と呼び、外気や風の流れを緩和する機能を持ちます。この風除室にオートロックや防犯カメラを設置すると、外部からの侵入者を防ぐセキュリティ機能も有することになります。

また、エントランスは建物の中と外の境界線となる場所であり、利用者にとって心理的な「区切り」になります。特にマンションなどの集合住宅の場合、住民専用エリアへの入り口となるエントランスは、喧騒から解放され、安心感やリラックスを促すようなデザインが求められるでしょう。

エントランスの構成要素

マンションのアプローチのイメージ

一般的にエントランスは、次のような要素で構成されます。

・玄関ドア
・ホール
・ポーチ
・アプローチ

玄関ドアは、建物の内と外を仕切る扉です。マンションやオフィスビルでは自動ドアが一般的です。

ホールは、ドアの内側のスペースを指します。来訪者にとって最も目につきやすい場所であるため、植物やオブジェを置くなどして建物の雰囲気を演出できます。オフィスビルであれば、建物に入居している企業に関連した掲示物などを配置し、特徴や魅力をアピールすることも可能です。また、上述した建物と外部の境となるエリアがホールです。屋外の汚れを入れないようにしたり、利用者の心理的な区切りとなったりするなどの機能的、心理的な効果を発揮する場所といえます。

ポーチは、ドアよりも屋外にある庇(ひさし)の下のスペースを指します。雨天時の出入りをスムーズにしたり、晴天時には日よけできる場所であり、できる限り広い空間を確保することが求められます。

アプローチは、門やゲートからドアまで続く通路のことです。公共施設や商業施設、オフィスビルなどでは、迷わず入り口へとたどり着ける動線が必要となります。マンションであれば、セキュリティ確保のために外部からの侵入を防ぎやすい構造にすることも求められるでしょう。

また、正面玄関から続くエクステリアアプローチは、訪問者を自然に建物内部へと誘導する役割があります。ファサードデザインとの一体感があると、建物全体の統一感が高まり、より洗練された印象を与えることも可能です。

エントランスデザインが重要な理由

エントランスのデザインの質を高めることで、次のような効果が期待できます。

・建物全体のイメージアップ
・住民や利用者の利便性向上
・住民や利用者の安全性確保

エントランスのデザインそのものが魅力的であれば、来訪者に良い印象を与え、建物全体のイメージアップが図れます。

日常生活や企業活動に必要な機能や、ウェイティングスペースが備えられていれば、住人や利用者、来訪者にとっても便利な空間となるでしょう。

また、オートロックや監視カメラなどのセキュリティ対策で安全性の確保ができれば、安心して建物を利用できます。

このように、エントランスデザインは、利用する人の建物に対する総合的な評価に関わる重要な要素となるのです。

エントランス設計におけるポイント

オフィスビルのウェイティングスペースのイメージ

ここからは、マンションや公共施設、商業施設、オフィスビルなど、大型の建物のエントランスをデザインする際に考慮すべきポイントについて解説します。

ブランディングを意識する

利用者や来訪者に対して建物のイメージを印象付けるのに重要な空間であるエントランスでは、建築物のブランドイメージをアピールできるデザインにすることが重要です。

オフィスのエントランスであれば、企業活動の紹介パネルを設置したり、自社製品を展示したりするのも方法のひとつでしょう。商業施設であれば、テナントの魅力やコンセプトを視覚的に訴えるようなアプローチが考えられます。

また、デザインやカラーを建物のコンセプトに合わせたり、ファサードやエクステリアアプローチなど外部からの見え方、導線を意識した照明・調光をデザインにしたりすることで、ブランディングの醸成にもつなげられます。

一方で、情報量が増えすぎたり、利便性を損なったりすることには注意が必要です。どのようなブランドイメージをアピールしたいのかを整理した上で、利用者の第一印象に残るブランディングを意識することがポイントになります。

建物全体や外部とのバランスを考慮する

エントランスをデザインする際は、建物全体とのバランスや、建物の外部とのバランスを考慮することが重要です。エントランス単体でデザインを考えると、建物全体の印象が不調和になってしまったり、周囲の建物から浮いたりしてしまうからです。

特にオフィスビルの場合は、エントランスだけがむやみに豪華だったり、逆にオフィスに不釣り合いなデザインになっていたりすると、ブランディング的にも逆効果になる可能性があるので注意が必要です。正面の外観や外壁、外構などを含めて、建物全体のコンセプトやカラーとの相性が良く、周囲から浮き立たない、まとまりのある空間になるようにしましょう。

ゾーニング・動線に配慮する

建物の出入り口であるエントランスは、来訪者はもちろん、建物の住民や入居する企業の従業員も含めて、分かりやすく移動しやすいエクステリアアプローチにする必要があります。

ただし、利用する人によって動線を区別するなど、ゾーニングにも配慮しなければなりません。例えば商業施設やオフィスビルの場合、従業員と来訪者の動線を分ける方が、安全性や利便性を高められるでしょう。

利用者の出退勤時や、昼時など混み合う時間帯には、人流がとどまりにくい動線にすることも大切です。また、居住用の建物の場合、住民の個人情報が来訪者の目に触れにくいようにすることは、防犯上重要な意味を持ちます。

来訪者へのおもてなしや居心地を考慮する

エントランスには、来訪者へのおもてなしが感じられるような工夫も求められます。

オフィスビルであれば、ウェイティングスペースのような空間を作り、ベンチや観葉植物、ウォーターサーバーなどを設置することで、来訪者が待機する間も居心地よく過ごせるような工夫が考えられます。

また、照明や調光で快適さを向上することもできます。例えば、清潔感を与えたい場合は、青白い昼光色の照明が効果的です。また温かみのある電球色は、落ち着きや癒やしの空間を演出できます。

エントランスはスペースが限られているため、デザインだけでなく機能性も損なわないようにすることがポイントになるでしょう。

セキュリティ対策を万全にする

建物と外部をつなぐ場所であるエントランスは、セキュリティ対策を万全にする必要があります。特に不特定多数の人が行き来するオフィスビルや商業施設、公共施設など大型の建物では、死角をなくし、どこに来訪者がいても施設関係者、あるいは防犯カメラの目が届くようなデザインとすることで、不審者の侵入を見つけやすくするセキュリティ対策へとつなげられます。

また、不審者の侵入を防ぐために、高い壁や強固な門扉などでエントランスに入りにくいデザインにする方法も考えられます。ただし死角の多いデザインにしてしまうと、万が一不審者が侵入したり、何らかの異常事態が起こったときに外部から気づかれにくい可能性もあるので、バランスを取る必要はあります。

エントランスデザインの最新トレンド

ここからは、現代建築におけるエントランスデザインの最新トレンドを、設計手法とともに紹介します。

自然素材を活用して地域のエンゲージメントを高める

自然素材を活用したエントランスのイメージ

最新のエントランスデザインで注目されているのは、自然素材を活用したデザインです。環境にも人にも優しい自然素材のデザインは、温かみのあるインテリアと相性が良く、人気が高まっています。

エントランスに自然素材である地域木材を活用し「その土地ならではの素材」を取り入れることで、地域や来訪者、そこに勤める従業員からのエンゲージメント(共感度)を向上させる効果が狙えるでしょう。例えば、古民家から再生された木材を用いたり、地元の職人による手仕事を感じられるようなデザインを取り入れたりすることで、心に響くオリジナリティあふれる空間も創出できます。

色を控えて落ち着いた空間を演出

色を控えたエントランスのイメージ

洗練されたイメージのエントランスも近年、人気の高いデザインです。モノトーンを基調とするなど、多くの色を使わずに仕上げることで、来訪者に落ち着いた印象を与える狙いがあります。

エントランスの照明を業務スペースよりも暗くしてゾーニングを図ったり、エントランスのロゴに光を当てて強調したりなど、照明を工夫することで空間の奥行きや広がりを感じさせ、さらに洗練された印象を与えることができます。また、間接照明を取り入れることで、柔らかい光が空間を包み込み、温かみのある雰囲気の演出も可能です。

モダンデザインと伝統的要素を融合

モダンデザインと伝統的要素を融合したエントランスのイメージ

近年「モダン」と「伝統」という相反するような要素を組み合わせるリノベーションも注目を集めています。例えば、現代的なシンプルなデザインに和の要素を取り入れたり、洗練された空間に自然素材を取り入れたりするような手法です。単に古いものを復元するのではなく、伝統的な美しさや技術を現代の生活空間に再解釈し、新しい価値を生み出すことができます。

モダンと伝統の融合を取り入れたエントランスも増えてきています。そのビルや企業、地域に関連した柄や技法を施したアイテムを配置し、最新の建築技術を用いてその伝統を活かすような照明や空間を設計することで、訪れる人に革新的な印象を与えられます。建物のブランディングを意識するエントランスには適した手法といえます。

マテリアルミックスで奥行きのある多様な表現を実現

マテリアルミックスで構成したエントランスのイメージ

単一の素材ではなく、石、メタル、木といった異なる素材を組み合わせる「マテリアルミックス」を用いてエントランスをデザインすることも、人気が高まっています。

マテリアルミックスは、単一の素材では難しい、奥行きのある多様な表現が可能です。例えば、木質系素材と重厚な石材を組み合わせれば、重厚な高級感と温かみを同時に表現できるでしょう。また、光沢のあるメタル素材とマットな質感の石素材を対比させることで、モダンで洗練された表現が期待できます。

さまざまな意匠でエントランスを彩るアートテックの内外装パネル

ここまで紹介してきたように、エントランスには、建物のイメージやコンセプトに合わせて、さまざまなデザインが求められます。適した色や柄、質感などを求めて、木材や石材、金属を含めた多様な素材の利用を検討することになります。

一方で、木材は腐朽や変色しやすく、石材は割れやすい、金属はさびやすいといった問題から、理想のデザインを実現できないケースもあるでしょう。こうしたなかで、思い描く意匠と機能を両立させ得る素材があります。アルミに焼付印刷技術を施した内外装パネル「アートテック」です。

アートテックは、印刷だからこそ実現する木目や石目、金属の質感といった自然素材のリアルな再現や、抽象画のような自由なデザインなど、他の素材では再現できない表現で建物の内外装を彩ります。また、微細な凹凸や光沢など素材本来の質感も再現が可能です。さらに、フルカラーの画像をそのまま印刷できるため、デザインの自由度も非常に高いです。

自然素材の持つ耐久性や耐候性の問題を解決するだけでなく、印刷品ならではの表現で素材を超えたデザインを可能とします。フッ素塗料による焼付印刷のため、長期間にわたる耐久性も特徴です。

長期利用ができ、頻繁なメンテナンスも不要なため、長期的に見てコストパフォーマンスの高い製品となっています。

関連ページ:製品の特長

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アートテック内外装パネルの使用実例

ここからは、アートテック内外装パネルを使用したエントランスの実例を紹介します。

天然木らしさを感じさせる意匠|ブランズ自由が丘

「ブランズ自由が丘」のエントランス

東京都世田谷区にあるマンション「ブランズ自由が丘 」では、玄関ポーチの軒天のほか、エントランスホールの壁や柱に、天然木のような木目柄のアートテックを使用しています。アルミパネルのシャープなエッジを見せて高級感を演出する「カットパネル」の技術が用いられました。

黒を基調としたデザインに自然な木目柄のパネルと緑の植栽が組み合わさり、高級感あふれるエントランスを実現しています。

竹モチーフの意匠を軒天に|スカイニセコ

「スカイニセコ」のR付庇

北海道虻田郡にあるホテル「スカイニセコ 」は、R加工で大きくカーブした車寄せの庇が特徴的な建物です。この庇の軒天に使用されているのが、竹モチーフの意匠のアートテックです。印刷ならではの技術で、大きなパネルに竹の質感が表現されています。

エントランスホールの内装には、木目柄のパネルとあわせて、リン酸柄エリオ鋼板のアートテックがルーバー形状で採用されています。シンプルなデザインに和の自然素材を組み合わせた、注目のデザインといえるでしょう。

木目意匠が温かみを演出|ふかや花園プレミアム・アウトレット

「ふかや花園プレミアム・アウトレット」のエントランスゲート

埼玉県深谷市にある「ふかや花園プレミアム・アウトレット 」では、各店舗のエントランスゲートに木目柄のアートテックを使用しています。

アートテックは本物の木のような温かみのある意匠を実現しながらも、実際の木材では難しい耐候性・耐久性を実現できる特徴があります。ふかや花園プレミアム・アウトレットのように屋外に面した店舗には、高い耐候性・耐久性が求められることから、アートテックは大いに素材としての実力を発揮。建物の他の意匠との調和も取れ、落ち着いたデザインとなりました。

シンプルに統一された高級感ある意匠|長谷工南砂町駅前ビル

「長谷工南砂町駅前ビル」のエントランスホール

オフィスビルのエントランスデザインは、シンプルでありながら重厚感と高級感のあるデザインが求められることも多いでしょう。東京都江東区にある「長谷工南砂町駅前ビル 」では、石目柄とリン酸柄を組み合わせた新しい意匠のアートテックが採用されています。

アートテックは印刷ならではの技術で、実際にはない質感・素材感の意匠を可能とします。長谷工南砂町駅前ビルで採用されているのもその一つです。エントランスホールの壁全体にアートテックのパネルを使用していて、シンプルながらも統一された空間には高級感が演出されています。

「江戸切子」をモチーフに起用|ヒューリック錦糸町コラボツリー

「ヒューリック錦糸町コラボツリー」のエントランス

東京都墨田区にある「ヒューリック錦糸町コラボツリー 」のエントランスは、宇宙という壮大なコンセプトと伝統柄を組み合わせたデザインが特徴です。その印象的なデザインを彩るのが、ゴールド調のリン酸処理風アートテックです。

アートテックは、エントランスポーチの庇の軒天部分から、エントランスホール内の壁や天井までに使われました。夜間のライトアップ時には、ゴールド調のアートテックが光を柔らかく反射し、周囲を優しく照らす効果があります。

まとめ

エントランスは建物の顔、そして来訪者の第一印象を左右する場所であり、コンセプトや建物のイメージにあわせたデザインが重要です。そのため、来訪者の印象を良くするための取り組みが求められます。

エントランスの最新トレンドとしては、色を控えて洗練されたイメージのデザインや自然素材を活用したデザインが人気です。また、モダンなデザインと伝統的な要素を融合させたデザインも注目を集めています。

こうした多様なデザインが求められる現在、アートテックの内外装パネルは、多様な意匠でさまざまなデザインに対応できる可能性を秘めています。エントランスデザインを行う際には、アートテックの内外装パネルを検討してみてはいかがでしょうか。

【参考】出典元
【事例17選】おしゃれなオフィスエントランス・受付とデザインのポイント コクヨ
オフィスのエントランス・受付のデザイン事例13選 ワクリノ
エントランスで家の印象が決まる!作るときに大切な7つのポイントを紹介 株式会社エヌシーエヌ

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNP生活空間事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

  • *2024年11月現在の情報です。
    *アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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