時を重ねる美しさが魅力のコールテン鋼の特徴と、新たな外装の選択肢

一般的に、さびた金属は腐食や劣化を連想させます。さびを発生させないためには塗装などの処理を施さなくてはなりませんが、なかには、あえて保護性のさびを形成させることでさびの進展を防ぐ「コールテン鋼(コルテン鋼)」という独特の鋼のようなものもあります。このコールテン鋼には、時間の経過とともに美しい色調になるという魅力があり、近年ではさまざまな建築物に用いられています。

そこで今回は、コールテン鋼の特徴や、そのメリット・デメリットについて、建築事例とあわせて解説します。さらに、コールテン鋼の独特な意匠性を再現しながら、より自由度の高い外装表現を可能にする「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」についても紹介していきます。

コールテン鋼調の外装を建築に取り入れたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNP生活空間事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

コールテン鋼は「耐久性に優れた建築材料」

コールテン鋼のイメージ

コールテン鋼は、大気中において合金元素が働き、緻密なさび層を形成することで内部の腐食を抑制する特殊な鋼材です。一般的な鋼材は、一度さびが発生するとその部分が腐食して、鋼材全体が損傷してしまう傾向にありますが、コールテン鋼のさび層は単なるさびではなく、鋼材を保護する役割を果たします。そのような特徴を持っているため、コールテン鋼は「耐久性鋼」とも呼ばれます。

コールテン鋼の特徴

コールテン鋼の特徴としては、主に以下の2点が挙げられます。

①耐久性
コールテン鋼の最たる特徴は、内部の腐食を抑制する耐久性にあります。メンテナンスの頻度が少なくて済み、長寿命でもあるため、維持管理の手間やコストを軽減できます。

②深みのある色調
外観においては、形成された緻密なさび層が時間経過とともに赤褐色から茶褐色へと変化し、深みのある色調を呈することも特徴のひとつといえるでしょう。経年変化のような自然な風合いは周囲の環境との調和を図りやすく、建築設計において、素材としての表現力を高める要素となります。

コールテン鋼の用途

コールテン鋼は多岐にわたる分野で活用されていますが、特徴的なものとしては以下が挙げられます。

①インフラ構造物・公共施設
高い耐久性と低メンテナンス性が評価され、橋梁(きょうりょう)、防音壁、擁壁といったインフラ構造物や、駅舎や図書館、美術館などの公共施設において、広く採用されています。

②歴史的建造物・シンボル的な施設
コールテン鋼は、経年変化による自然な風合いが出るため、意図的にデザインに取り入れられるケースがあります。その特徴は、神社仏閣などの歴史的建造物や、記念館などのような地域のシンボル的な施設に活かしやすいでしょう。

コールテン鋼を採用するメリット・デメリット

続いて、コールテン鋼を採用するメリットとデメリットについて解説します。

コールテン鋼を採用するメリット

コールテン鋼は建築材料として高い意匠性と経済性を兼ね備えた素材で、「環境負荷の少ない建築」を実現するための選択肢として採用されるケースがあります。自然との共生を意識した建築や、長く愛される建築物をめざす場合に、その真価を発揮できる点がメリットとなります。

また建築物のライフサイクルコストの視点では、定期的な塗装や修繕が必要な他の素材と比較すると、コールテン鋼は容易に維持管理が行えることもメリットだといえます。

コールテン鋼採用時のデメリット

一方で、コールテン鋼の使用に当たってはデメリットもあります。それは「使用環境によってはさびの保護層が形成されず、美観を損ねる」という点です。

保護性のさび層が形成されるまでのコールテン鋼は、雨や湿気などの水分によってさびが流れ出てしまいます。すると、周囲の地面や建物などにさび色が付着する可能性があります。

例えば、海沿いのように塩分濃度が高い環境では、塩化物イオンが鋼材と反応し、保護層の形成を阻害したり、すでに形成された保護層を破壊したりする可能性もあります。そのため、さびによる汚れの影響を気にする建築物では施工に注意が必要となり、場合によっては美観を損ねてしまう恐れがあるのです。

コールテン鋼を使用する際には、特徴を理解し、設置場所や周辺の素材との組合せを慎重に検討すべきであることを知っておきましょう。

コールテン鋼を用いた建築事例

ここからはコールテン鋼を用いた3つの事例から、その活用方法と効果を紹介します。
※ここで紹介する事例は、DNP製品を活用した事例ではございません。

【新潟県】「森の学校」キョロロ

新潟県十日町市の「『森の学校』キョロロ」は、2003年に開館した博物館および、研究施設です。自然観察のために造られた施設に、コールテン鋼を採用しています。

コールテン鋼が使用されているのは、全長120メートルにも及ぶチューブ型の建物です。自然観察用の通路として設計された建物は、4メートルの積雪と1,000kg/m2という強大な圧力に耐えられる構造を実現しています。豪雪地帯という厳しい環境下でも優れた耐久性を発揮する、コールテン鋼の特性を活かした建築物です。

雪の積もり方によって変化する光と色の演出にも成功しており、機能性と芸術性を両立させている点も、コールテン鋼の魅力を活用した好例といえるでしょう。

【兵庫県】福良港津波防災ステーション

兵庫県南あわじ市の「福良港津波防災ステーション」では、海岸沿いという腐食のリスクが高い立地でコールテン鋼が採用されています。潮風を直接受ける立地でもあり、塩害対策にもつながります。

「うずまる」の愛称で親しまれるこの施設では、6つの円弧が連続的に交差する独特な曲面壁にコールテン鋼が使用されました。現場での溶接と継ぎ目の研磨によってシームレスな仕上げを実現していて、渦を巻くような独特の動的なフォルムが特徴です。

コールテン鋼の耐久性の高さを活かしながら、防災施設としての機能と、地域のランドマークとしての存在感を両立させた事例といえます。

【石川県】金沢市立玉川図書館

「金沢市立玉川図書館」は、1978年の竣工(しゅんこう)から40年以上が経過したコールテン鋼の建築物です。

建物の外装材としてコールテン鋼を使用しています。特徴的なのは、使用しているコールテン鋼が一般的な赤さび色ではなく、黒色の仕上げである点です。ガラス面の多い図書館という用途を考慮し、さび汁による汚れを防ぐため「酸化促進処理塗装」を施したためと考えられます。

コールテン鋼とガラスでつくられたモダンなデザインの図書館ですが、長年の経年変化を経た深みのある表情は、隣に建つレンガづくりの近世史料館とも調和のとれたたたずまいになっています。

コールテン鋼の外観を印刷で再現するアートテック

コールテン鋼風のアートテック

コールテン鋼の独特な意匠性を再現しながら、より自由度の高い外装表現を可能にするのが、DNPが提供するアルミ外装パネル「アートテック」です。焼付印刷技術によって、コールテン鋼特有のさびの表情を緻密に再現しながら、実際のコールテン鋼では難しい色調やテクスチャの表現が可能となります。

さらに、アルミ素材ならではの軽量性と加工性の高さから、複雑な形状にも対応でき、設計の自由度が格段に向上します。

高い耐久性と、色落ちや変色が少ない特性のため、メンテナンスの手間やコストも大幅に削減。有害な化学物質も含まれていないアートテックは、環境負荷の少ない素材として、サステナブルな建築への貢献も期待できます。

関連ページ:製品の特長

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アートテックを用いたコールテン調外装パネルの建築事例

アートテックのなかでも、コールテン鋼の外観を再現したパネルは、独特の色調とアルミ素材の特徴を活かしてさまざまな建築物に採用されています。

ここからは、アートテックのコールテン調外装パネルの建築事例について紹介します。

【愛知県】グランクレア昭和楽園町

「グランクレア昭和楽園町」のエントランス

閑静な邸宅街に建つ「グランクレア昭和楽園町 」では、外装にコールテン鋼をモチーフにしたアートテックのアルミパネルが採用されています。

この地域には厳しい景観規制が設けられており、周辺の趣ある雰囲気に調和しつつ、存在感のある外観が求められていました。そこで採用されたのが、コールテン鋼風柄アートテックです。

アートテックのパネルは、重厚な門構えのデザインに使われています。エントランス周りの手に触れる部分では、時間とともに変化するさびの表情を再現することで、歴史の重みを感じさせる仕上がりになりました。自動ドアの扉材にも使用されるなど、アートテックは多様な場所で活用されています。

軽量で扱いやすく、コストの面でもメリットが得られるアートテックの特徴を活かした建築物です。

【愛知県】グランクレア昭和前山町

「グランクレア昭和前山町」のエントランス

グランクレア昭和前山町 」も、「グランクレア昭和楽園町」同様に厳しい景観規制がある地域の建築物です。ここでも、外装にアートテックのコールテン調パネルが使用されており、歴史的な雰囲気との調和を図りながら、存在感のある外観を実現しています。

特に、通行人の視界に入りやすい門構えの部分では、素材感を強調することに注力しました。コールテン鋼調のパネルは門構えの柱型部分に横方向に施工され、隣接する石材やタイルとの一体感を演出しています。さらに、曲げ加工の技術を活かして、コーナー部分は見切り材を設けずにパネルを曲げて納められました。

【北海道】プレミストタワー新さっぽろ

「プレミストタワー新さっぽろ」の正面風除室の壁面

北海道の「プレミストタワー新さっぽろ 」では、エントランス部分の壁面にコールテン鋼柄のアートテックパネルが採用されました。3枚の壁で空間に奥行きを生み出し、暖色系のライティングによってパネルの表情を引き立てています。金属柄でありながら、温かみを感じられるエントランスとなっています。

「プレミストタワー新さっぽろ」で使用されたのは、曲げ加工技術です。アートテックの優れた加工性を活かし、さまざまな形状に対応しながら、実際のコールテン鋼では難しい意匠性の高い表現が可能となりました。

メンテナンス性の高さも大きな魅力で、長期的な美観の維持が期待できるでしょう。

まとめ

コールテン鋼は、表面上の保護性のさびを形成することによって、それ以降のさびの進行を抑制する特性を持った建築材料です。強い耐久性と特徴的な外観であることから、外壁や鋼橋など、頻繁なメンテナンスが難しい屋外の建築物で多く採用されています。

一方で、使用する環境を間違えると、雨や湿気などの水分によってさび色の汁や均一でないさびなど、長期的に美観を損なう可能性があることは無視できません。建築物には、周辺環境との調和や、長期的な外観維持ができる素材の選択も重要なポイントになります。

こうしたデメリットを克服する素材として注目されるのが、アートテックです。アートテックであれば、コールテン鋼の使用が難しい環境でも安心して使用でき、より自由な設計が実現できます。コールテン鋼を用いる際には、アートテックも候補として検討してみてはいかがでしょうか。

【参考】出典元
コルテン鋼ってなに?滅多に出ないレア鋼材がわかる。 鉄創庵
耐候性鋼板について!規格や用途を解説 製造タイムス
越後松之山「森の学校」キョロロ 株式会社 手塚建築研究所
Looptecture 福良 新建築データ
津波対策の拠点施設が完成 福良港防災ステーション 南あわじ市(PDFが開きます)

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  • *2024年11月現在の情報です。
    *アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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