住宅・住設業界におけるDXの最新動向とは?~DX推進において発生しやすい課題と解決のヒントも解説~
住宅・住設業界では、顧客ニーズの多様化や社会環境の変化などにより、業務の効率化や高度化をめざしてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業が少なくありません。しかし、複雑化した各種物件や製品情報、設備情報などのデータが分散して管理が難しく、その結果ビジネスをスピーディーに遂行できないなど、さまざまな課題が浮き彫りになっています。そこで本記事では、住宅・住設・不動産業界におけるDXの動向(潮流)や、DXの壁となる業界特有の課題とその解決のヒントを紹介します。 (2024年12月時点の情報です。)
目次
1.
住宅・住設・不動産業界におけるDXの動向
2.
DX推進により解決すべき課題
3.
課題解決に貢献するPIMシステムとは
4.
PIMシステムの導入の効果
5.まとめ
1.住宅・住設・不動産業界におけるDXの動向
DXの背景
急速な社会環境の変化や顧客ニーズの多様化により、現代のビジネス環境は大きく変わりつつあります。この変化に迅速かつ柔軟に対応するためには、デジタル技術を活用し、業務の効率化や新たなビジネスチャンスの創出をめざすDX(デジタルトランスフォーメーション)への取組みが欠かせません。住宅・住設・不動産業界においても、DXの重要性が高まっています。
住宅・住設・不動産業界におけるDXの主な方向性
住宅・住設・不動産業界におけるDXの方向性は、「業務効率化に向けたDX」「顧客接点強化のためのDX」の2つに大別されます。DXに向けた具体的な施策として、以下のような取組みがされています。
・カタログ制作の効率化
・情報の統一性・最新性の確保
・各種物件や製品情報、設備情報更新時のWebへの即時反映
・クラウドを活用した施工進捗のリアルタイム確認
・営業活動や物件契約のオンライン完結化
・顧客データや営業データ、カタログデータなどのシステム間の連携強化による顧客への最適なデータ提供
・顧客の好みに合わせたパーソナライズ化された提案
これらに取り組むことにより、カスタマーエクスペリエンスの高度化・最適化や顧客の囲い込み、業務の効率化による収益拡大を図れます。
2.DX推進により解決すべき課題
住宅・住設・不動産業界においては、主に以下のような課題が存在します。
課題
<データ管理に関する課題>
住宅・住設・不動産業界では、物件や製品、設備に関する情報の管理が煩雑化しがちです。そのため、情報の収集や確認作業に時間がかかり、業務負担の増大につながっています。また、物件データの不備や不整合が原因で、トラブルが発生するケースも増えています。
(例)
・各設備の使用期限情報の管理が煩雑化し、消火器の点検・交換など、法的に義務付けられている管理を適切に実施できていない
・設備の使用期限は、設備の入れ替えなどの投資計画に紐付いていくが、情報管理ができていないため投資計画を適切に策定できない
<ビジネスに直結する課題>
顧客に対して最新の物件情報や十分な製品情報を迅速に提供できなければ、ビジネスチャンスを逃しかねません。
(例)
・カタログやWebサイトに最新情報を反映できず、古い情報を顧客に提供してしまう
・提案や見積り作成時に、各チャネルで提供する情報が異なり、顧客に混乱を与える
・顧客が必要としている情報が不足していることで、顧客がほかの競合に流れてしまうリスクが高まる
原因
これらの課題の根本的な原因として、「情報のサイロ化」が挙げられます。具体的には、次のような問題が背景にあります。
・それぞれの部門が独自のシステムやデータベースを使用しており、全社的な統一が欠如している
・縦割りの組織構造により、全体を見渡せる人材やシステムが不足している
・情報提供チャネルが多岐にわたるため、各チャネルで提供される情報の一貫性と最新性を保つことが難しい
・物件や設備など、実物と物理的な距離があるため、現地の情報をリアルタイムに連携しづらい
このように、情報の分断や不統一が、業務効率や市場競争力を低下させる原因となっています。これらの課題を解決し、情報の一元管理と効率的な運用を実現するためには、DXの推進が必要です。
3.課題解決に貢献するPIMシステムとは
PIMシステムとは
PIM(Product Information Management)システムとは、製品情報や物件情報などを一元管理するためのプラットフォームです。
PIMシステムを導入することで、各部門やチャネルに分散していた製品・物件データを統合できます。カタログやWebサイトへの迅速な情報反映が可能となり、業務の効率化につながるでしょう。また、情報の統一性が確保されるため、顧客に対して誤った情報を提供するリスクが低減され、カスタマーエクスペリエンスの向上にも貢献します。
PIMの活用イメージ図
4.PIMシステムの導入の効果
PIMシステムの導入により、住宅・住設業界ではさまざまな業務の効率化と精度向上が期待できます。本章では、カタログ制作、Web更新、営業活動、データ管理のシーンにおける具体的な導入効果を解説します。
カタログ制作
導入前の課題 |
・管理効率が悪い
各商品の情報が分散していると、担当者が最新情報を手動で収集しなければならず、手間と時間が増大します。 また、誤った情報がカタログに反映された場合、修正に多大な時間とコストが必要です。 ・情報の検索性が低い 各カタログに掲載されている商品の情報管理が属人的だと、特定のカタログにどの商品が含まれているかをすぐに確認できず、情報を探すのに膨大な時間がかかります。 |
導入後の効果 |
・情報の最新性を確保
各種物件や製品情報、設備情報が更新されると、システムがカタログ担当者にリアルタイムで自動通知します。これにより、情報更新の見落としがなくなり、迅速に修正が反映されます。 営業部門にも自動的に共有されるため、営業は常に最新の情報をもとに提案が可能です。 ・管理や更新、検索の効率化 修正箇所を即座に反映できるため、制作プロセスが短縮され、カタログ制作をよりスピーディーに行えます。 各種物件や製品情報、設備情報が一元管理されるため、全カタログの中から特定の商品がどこに掲載されているかを即座に検索・確認できます。 |
Web更新
導入前の課題 |
・更新負荷が高い
各種物件や製品情報、設備情報が更新された際、Web担当者が手動で情報を収集したうえで、サイトへの反映が必要です。情報の更新に時間がかかるため、キャンペーンや新商品の情報を迅速に公開できず、商談機会を逃すリスクが高まります。 ・迅速なプロセスが取れない 承認プロセスが分散しており、上長の承認後に改めてWeb担当者が情報を反映するため、各部署間での連携が遅れ、情報の不整合や反映遅延が頻発するリスクがあります。 |
導入後の効果 |
・情報の最新性を確保
各種物件や製品情報、設備情報の修正や更新が行われた際に、Web担当者へリアルタイムで自動通知します。各部門間の連携がスムーズになり、情報を素早く反映できる体制が整います。 承認された情報は、自動的にCMS(コンテンツ管理システム)に反映されるため、情報の迅速な公開が可能です。新商品やキャンペーン情報をタイムリーに顧客へ提供できます。 ・顧客訴求の強化 営業は常に最新の情報を持って商談に臨めるようになるため、機会損失を防ぎ、商談成功率の向上が期待できます。 Web上に最新情報が常に反映されるため、顧客は必要な情報をすぐに得ることができ、購買意欲を高められます。 |
営業活動
導入前の課題 |
・業務負荷の増大
提案書や営業資料を作成する際に情報が不足していると、毎回一から資料を作る必要があり、業務に大きな負担がかかります。 ・ビジネスチャンスの逸失 営業が新製品の情報を迅速に入手できないことで営業活動が遅れ、ビジネスチャンスの逸失につながるおそれがあります。 また、営業が既存の顧客に関連商品を提案する機会を逃すおそれもあります。 |
導入後の効果 |
・情報の最新性・信頼性の確保
営業担当者には常に承認済みの最新情報のみが提供されます。 これにより、顧客に誤った情報を提示するリスクが減り、正確で信頼性のある営業活動が実現します。 ・営業の業務効率・品質の改善 提案書や営業資料のテンプレートをPIMに登録しておけば、営業担当者は迅速に資料を作成することが可能です。また、適正なテンプレート活用は、提案品質の平準化につながります。 商品同士の関連性も明確となるため、営業は提案時に関連商品やシリーズ商品を素早く確認・提案できます。 |
データ管理
導入前の課題 |
・全体把握が困難
物件や設備に関するデータを各部署が独自に管理していると、全体を把握できません。 その結果、設備の老朽化や定期メンテナンスのタイミングを見落とすリスクが高まります。 ・業務効率・品質の低下 担当者が複数いる場合、設備情報の更新や変更履歴の管理が手作業に依存していると、情報の不整合や漏れが発生しやすくなります。 |
導入後の効果 |
・情報の一元管理、管理の効率化
全物件と付随する設備情報が一元管理され、データの更新や変更履歴も自動的に保存されます。 ・事故や故障の防止 各設備の状態を統合的にモニタリングし、老朽化やメンテナンスが必要なタイミングを把握することで、設備事故や故障を未然に防げます。 |
5.まとめ
住宅・住設業界におけるDXの推進は、業務の効率化や顧客接点の強化に大きく寄与します。なかでもPIMシステムは、製品情報や物件情報を一元管理し、カタログ制作やWeb更新、営業活動における効率性・品質の向上を支援するツールです。また、情報の統一性と正確性が保たれることで、顧客満足度の向上にもつながります。業務の効率化やマーケティング施策の高度化に欠かせないPIMシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。