DNPが取り組むフィジタルNFT
DNPが現在取り組んでいるフィジタルNFTは、リアルな"モノ"の正規品証明およびデジタル上での所有者管理を行うサービスです。リアルな"モノ"にNFC(近距離無線通信技術)タグを搭載し、そのNFCタグに対してユーザーがスマートフォンをかざすことで、リアルな"モノ"の正規品証明とデジタル上での所有者管理を実現します。
2024年9月30日公開
DNPが取り組むフィジタルNFT
目次
1.フィジタルNFTとは?
2.フィジタルNFTに関わる市場動向
3.DNPが考えるフィジタルNFT
4.フィジタルNFTのメリット
5.フィジタルNFTに最適な"NFCタグ"
6.今後の展望(フィジタルNFTを導入することで見えてくる未来)
1.フィジタルNFTとは?
"フィジタル"とは、物理的「Physical」と「Digital」を掛け合わせた言葉で、リアルなモノとデジタル要素の組み合わせを表現しています。また、"NFT"は、"Non-Fungible Token (代替不可能なトークン)"の略であり、デジタル上での所有権を証明する技術を指します。つまり、フィジタル"NFT"とは、リアルなモノをデジタル上で管理・証明する仕組みのことです。
2.フィジタルNFTに関わる市場動向
偽造品や模造品の流通があらゆる業界で拡大しています。経済協力開発機構(OECD) および欧州連合知的財産庁(EUIPO)が 2021 年 6 月に「lllicit Trade Global in Fakes A WORRYING THREAT」で公開した内容によると、模造被害が多い産業として靴、衣 類、革製品・ハンドバッグ、電気機械・電子機器、香水・化粧品、玩具、時計などが挙げられています。
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また、NFTに関連する技術の進歩という観点で見ると、ブロックチェーン技術が挙げられます。管理主体が存在せず、不特定多数の参加者が存在するネットワーク上で不正のない取引を実現するために開発された技術で、ビットコインといった仮想通貨に利用されています。そのブロックチェーン技術を利用し、デジタルアセットの所有権を証明する一意のトークンとしてNFTという概念が生まれ、アート作品、音楽、ゲームなどに適用し、所有権を証明することに利用されてきました。近年、NFTの世界全体での市場は上昇傾向にあり、「NonFungible.com“Yearly NFT Market Report 2021」 (引用元:調査結果(caa.go.jp))によると、取引額全体が2020年の8250万ドルから2021年には176.9億ドルへと拡大しています。NFTの市場は今後も成長していくことが期待されています。
こうした市場動向をふまえ、DNPは、すでにサービス提供しているDNP NFCタグ認証プラットフォームとブロックチェーンの技術を掛け合わせ、リアルな"モノ"の正規品証明とデジタル上での所有者証明を実現できないかと考えました。これにより、偽造品・模造品の流通の抑制と個人の資産であることの証明を実現し、リアルな"モノ"の価値を最大化できると考え、サービス化を進めています。
3.DNPが考えるフィジタルNFT
DNPが現在取り組んでいるフィジタルNFTは、リアルな"モノ"の正規品証明およびデジタル上での所有者管理を行うサービスです。リアルな"モノ"にNFC(近距離無線通信技術)タグを搭載し、そのNFCタグに対してユーザーがスマートフォンをかざすことで、リアルな"モノ"の正規品証明とデジタル上での所有者管理を実現します。
図:サービスの全体像とDNPの提供範囲(特許出願中)
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DNP NFCタグ認証プラットフォームでは、アプリケーションサーバーと NFCタグ認証サーバー間で認証鍵を使用して、正しいNFCタグにスマートフォンがかざされているかの検証を行います。この検証により、モノ自体が正規品であることを証明します (図①②③④⑤⑥)。さらに、ブロックチェーン技術を活用して所有者情報を書き込むことで、どの所有者のモノかを管理・証明することができます(図⑦)。
DNPではこのように、正規品証明と所有者情報管理の実現を検討しており、特許出願中です。 また、以下のような希少性の高い商品にて活用を検討しております。
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4.フィジタルNFTのメリット
フィジタルNFTのメリットは以下2点です。①正規品の証明②所有者の管理それぞれについて以下に説明します。
①正規品の証明
アイテムに貼付されているNFCタグとNFCタグ認証サーバーが連携することで、正規品であることが証明され、スマートフォン上で証明結果を確認できます。これにより、偽物の流通抑制やブランドの信頼性向上が期待されます。
②所有者の管理
NFTにより、ブロックチェーン上に所有者情報を保持し、所有権を証明できます。また、アイテムが譲渡されるたびに、ブロックチェーン上で所有者情報が更新され、所有者情報の追跡が可能となります。
5.フィジタルNFTに最適な"NFCタグ"
フィジタルNFTにおけるリアルな"モノ"とのタッチポイントとしてはNFCタグが適しています。2次元コードなどのカメラでの読み取りが必要な方式の場合、コードの貼付によって商品の意匠性を損なう可能性があり、また、ユーザーはカメラを起動して撮影するという手間がかかります。一方NFCタグは電磁波による読み取り方式であり、貼付場所の自由度が高いため、意匠性への影響が少なく、また、ユーザーはスマートフォンをNFCタグにかざすだけで簡単に認証結果を確認できます。
NFCタグには以下のような種類があり、用途に応じた使い分けが可能です。
・シールタグ :シール状のタグであり、金属以外のさまざまな箇所に貼付できることが特徴です。
・メタルタグ :金属部分にも貼付可能なタグです。 通常、金属部分にNFCタグを貼り付けるとスマートフォンにて読み取りができませんが、メタルタグであれば読み取り可能です。
・ランドリータグ:ラベル本体の厚みを厚くすることで耐水性と耐圧性に優れ、堅牢性を高めました。衣類への貼り付けが可能で、ご家庭での洗濯にも耐えることができます。
ランドリータグイメージ画像
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6.今後の展望(フィジタルNFTを導入することで見えてくる未来)
フィジタルNFTの導入により、偽造品や模造品の流通・不法な転売行為の抑制が見込まれ、将来的には、商品の循環における新たな価値の創出が期待されます。アートなどのコンテンツを創出した著作者が2次流通以降も正しく報酬が行き渡る仕組みといった新たなエコシステムの登場が可能性としてあります。その他にもVRやXRといったバーチャル空間の利用が増えることにより、そういったコンテンツと連動した価値の創出などが考えられます。以上のような広がりに対してユーザーに提供する付加価値向上をめざします。