DNP×パナソニック 顔認証スペシャルセミナー
~「DNP THE SESSION 2024」より~

2024年1月31日に開催された「DNP THE SESSION 2024」内での顔認証セミナーのアーカイブコラムです。セミナーの内容を抜粋してコラムにまとめています。
顔認証は、コロナ禍での非接触ニーズを契機に、現在さまざまな用途で利用が拡大しています。パナソニック コネクト株式会社(以下、パナソニック)の顔認証は、幅広い業種・業界で1日30万回以上使用されており、その技術的な差別化ポイントと、最新の社会実装事例についてお伝えいたします。またDNPで行った、社内コンビニエンスストアにおける顔認証決済の実証実験の結果についてもご紹介します。 最後に、講演内容をふまえ、パナソニックとDNPで行ったディスカッション内容も掲載しています。

2024年2月29日公開


古田 邦夫 様
パナソニック コネクト株式会社

現場ソリューションカンパニー
公式エバンジェリスト


児島 勇介
情報イノベーション事業部

第1PFサービスセンター
デジタルトラストプラットフォーム本部

パナソニック 顔認証の最新事例

顔認証がどのようなところで使われているのか、世の中の市場の高まりについて、事例を用いてご紹介いたします。

顔認証の社会的ニーズの高まり

顔認証の社会的ニーズの高まりについては3つの要因が挙げられます。

法整備・社会情勢の変化

1つ目の要因は、2018年の犯罪収益移転防止法改正により、オンラインでさまざまな金融の取引ができるようになったことです。以前は、銀行口座開設のために郵便でのやりとりが必要でしたが、これにより不要になりました。また、2019年にはCOVID-19が猛威を振るい、オンラインでの本人確認のニーズが高まりました。この2つの大きな影響により、顔認証の社会的ニーズは大きくなりました。

マイナンバーカードの浸透

2つ目の要因は、マイナンバーカードの普及です。2024年1月時点で、マイナンバーカード持っている人は9932万人になり、国民の約79%が所持していることになります。
国の政策においても、昨年の6月に発表された骨太方針の中で、マイナンバーカードを公的用途だけではなく、民間の用途においても活用することへの検討が示されています。

現場におけるニーズ

3つ目に、入社面談などのオンライン化の普及があります。
現在、約9割の企業でオンラインとリアルを併用して入社面談が実施されています。
最近では、学生はタイムパフォーマンスを考えて、オンラインで面談できるところを優先して受けているという話も聞きます。
オンライン入社面談が普及する中で、面談した学生と入社した学生が、実は別人だったというなりすましの不正利用も起こっています。
このような不正利用を解決する手段のひとつとして、顔認証という技術に注目が集まっています。

顔認証市場について

「顔認証」市場は、国内2022年で340億円の規模が、2030年で1269億円へ拡大が予想されます(左側棒グラフを参照)。
具体的な顔認証の使用用途は、約半数が入退セキュリティ等のアクセスコントロール、次いで先述の「本人確認」が3割を占めています(右側円グラフを参照)。

※パナソニックから資料提供

顔認証の事例

パナソニックでは、1992年に顔認証専門の研究組織を立ち上げ、研究開発を行ってきました。そこから30年間はなかなか市場に出ることはありませんでしたが、2017年のAIの台頭により、環境が大きく変わりました。AIの進化により、劇的に顔認証の精度が高くなったことで、現在では、顔認証は幅広い業界、さまざまな場面で使われています。その代表的な事例をいくつかご紹介します。

空港

現在、7つの空港で209の顔認証システムが導入されています。これらにより、日本人の出国、帰国がスムーズになり、外国人の出国もこのシステム1台でできるようになりました。

保育園

子どもの保育園の登園管理で顔認証の実証実験が実施されています。これは、子どもが保育園登園時にバスの中に取り残された事件がきっかけで、そういった事件を防止するために顔認証の活用が期待されています。顔認証の顔が表示される部分にキャラクターがランダムで表示されることで、子どもも楽しんで顔認証ができるような仕組みもあります。

大型集客施設

ある大型の集客施設では、会員IDと顔情報を紐づけることで、人々は手ぶらで施設に入ることができます。また、施設内のショップで買い物するときに、両手に飲み物や食べ物を持っていても、顔をかざすだけで決済ができます。

顔認証精度の向上と利用の拡大

パナソニックでは、顔認証の精度向上にも取り組んでおり、エラー率の低減だけでなく、スピードの両立の実現をめざしています。社内のテストでは、1分間に64人がゲートを通過しながら顔認証できる精度・スピードを実現しました。

※パナソニックから資料提供

また、2025年の大阪・関西万博に向けて、Osaka Metroは全駅に顔認証改札の導入を進めています。このような場面で顔認証が使われるようになることで、より身近なものになってくるかと思います。

※サービス提供・システム運用:Osaka Metro
 顔認証改札機の製造:株式会社高見沢サイバネティックス
 顔認証システム構築:パナソニックコネクト株式会社

今後のDNPとパナソニックの共奏

現在、さまざまな場面で生体認証、顔認証が使われており、さらに技術が進化することで、新しい使い方が生まれてくると予想されます。DNPとパナソニックでともに、社会を動かし、未来をつなぐような新しい価値を一緒に生み出していきたいと思っています。

DNP 顔認証決済実証実験

実証実験の概要

DNPでは、2023年9~11月に社内のコンビニエンスストアで顔認証決済の実証実験を行いました。パナソニックには顔認証エンジンを提供いただき、それ以外に必要な「顔画像の収集」、「レジ精算時の顔照合」、「顔照合結果の社員証決済システムへの連携」の仕組みはDNPで用意しました。どのように顔画像を収集するか、照合結果をどのように効率的に活用するかといったビジネス的な観点を全体の企画・システム設計に盛り込みました。

具体的には、顔画像の収集については、社員用スマートフォンから顔写真を登録する仕組みを作成、SSO(シングルサインオン)を採用することで、アクセスした人物が社員本人であることを確認できるようにしました。また、直感的でわかりやすい操作性、UIを実現することで、なるべく簡単に登録できるようにしました。

決済の仕組みついては、既存の社員証(ICカード)決済の仕組みを活用しました。DNPではICカード製造を行っており、オフィスビルの食堂やコンビニエンスストアでは、社員証を使った決済ができるようになっています。今回の実証実験では、この社員証決済の仕組みを活用し、社員証をかざす代わりに顔を認証端末にかざすことで決済ができるようにしました。

実証実験の結果

実証実験の結果は、顔写真の登録者が728名、決済回数は1297回となりました。また、実証実験中に決済ミスは確認されませんでした。
また、実証実験の評価として、ユーザーとコンビニエンスストアの従業員に向けてアンケートを実施し、課題を抽出しています。

ユーザーへのアンケートでは、「手ぶらで利便性が高い」「決済スピードが速い」ことについて多くのユーザーに体感いただいた結果が得られました。一方、ネガティブな意見としては、「ポイントカードはかざさないといけないため、完全に手ぶらになれない」、「顔認証をするときに、タブレット端末に映った顔を人に見られるのが恥ずかしい」というものがありました。羞恥心については、今後UI面の改善の余地があると考えます。
店員向けのアンケートでは、決済の切り替えの際にお客さんとのコミュニケーションが発生したというポジティブな意見が見られました。

実証実験まとめ

DNPが顔認証の取組みをしている背景として、ICカードや指紋認証などさまざまな認証方式を採用してサービス展開していることが挙げられます。中でも顔認証を他の認証方法やサービスと組み合わせることで可能性が広がっていくと考えております。

例えば、DNPではeKYCサービスというオンライン上での本人確認を提供しています。eKYCサービスはアプリで顔情報を収集するため、今回の実証実験では、そのノウハウを活かして、顔情報を登録できるようにしました。他にも、BPOサービスとの連携や、証明写真機Ki-Re-i®を活用した顔情報の収集などの組合せを検討しています。

このように、DNPでは顔認証とさまざまなサービスを組み合わせた提案で、認証技術を利用した業務のデジタル化を推進しています。

DNP×パナソニック ディスカッション

<DNP児島>
顔認証決済については、まだまだこれからの市場拡大に向けた課題があると思っております。
今回の実証実験では、ユーザーの感想に羞恥心という単語が散見されたことが意外でした。少し前まで、そもそも端末に顔をかざすという行動はあまりありませんでした。スマートフォンでの顔認証や、コロナ禍に検温するために顔を端末にかざすようになり、顔をかざすハードルが下がったかと思います。
このように新しいサービスが導入されるときは、生活者の行動変容が必要になってきます。
今回の羞恥心についても新しいサービスの導入にあたっての試金石になるかと思います。
パナソニックはさまざまな事例がありますが、このように羞恥心のハードルを下げるというときには、どのような考え方がありますか?

<パナソニック 古田氏>
お話の通りで、間抜け顔が残ってしまい、私も恥ずかしい思いをしたことがあります。
これは時間とともに顔認証というものに対して、生活者が「間違いはないんだな」といいうことが浸透すると、顔を端末に映さなくても、マークやアニメーションのキャラクターだけで良いという流れになっていくのではないかと思います。現在は、本当に本人かどうかを確認するために画像を残しておきたいという過渡期なのかと思います。

<DNP児島>
パナソニックの顔認証技術は第三者機関からも高い評価を受けておられますが、我々も相談を受ける際に、顔認証の精度が100%ではないことについて意見いただくことがあります。精度100%を実現することは難しいとは思いますが、より高精度を実現するための技術的な進歩や、顔認証を導入する上での考え方などあれば、教えていただけますでしょうか。

<パナソニック 古田氏>
顔認証に限らず、いろいろな物理的な鍵や、頭で覚える暗証番号などについても万能なものはないですよね。どれも精度が100%ではないので、顔認証とこのような他の認証手段と組み合わせて、多要素認証を活用することが肝心かと思います。
顔認証と他の生体認証を組み合わせることもできますが、私がお勧めするのは、皆さんがお持ちのスマートフォンを物理鍵とし、顔認証と組み合わせることで、生体情報と所持情報から本人認証の精度を高めていくことです。

<DNP児島>
やはり多要素認証などは認証強度を上げるためには必要になってきますね。そのための仕組みやサービスは我々もパナソニックさんと一緒にいろいろと考えていければと思っています。
最後に、顔認証はこれからまだまだ市場が伸びていくかと思いますが、今後の展望について考えをお聞かせいただけますでしょうか。

<パナソニック 古田氏>
端的に言うと顔認証は、今までの鍵が変わっただけでは価値を生んでいないと思います。
顔認証ならでの価値はとして鍵を無くさない、忘れないこともありますが、それ以上にシェアリングコミュニティにすごくエコノミーに効いてくるのではないかと思っています。

例えば、皆さんの車を1時間だけ貸すときに、物理的な鍵だと直接相手に渡す必要があり、特に短時間の貸出には手間がかかるため、リモートでは貸すことができません。しかし、顔認証なら1時間だけ、その人が車を使えるように設定することが可能で、遠隔地からでもスムーズに車を貸し出すことができます。

このような価値に着目して、民泊などさまざまなところで、顔認証によって資産の使用権を一時的に貸すことができるようになってきています。
そういった場面で顔認証が活用されていくと、より良い世の中になっていくのではないかと思います。

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証明写真機Ki-re-iは、DNP大日本印刷の登録商標です。
顔認証マルチチャネルプラットフォームは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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