生産性を向上するには?生産ライン可視化の効果とは?
工場における生産性向上は喫緊の課題といえます。生産性を向上させるためには、「生産量の拡大」「コスト削減」「品質の安定化」の視点が存在します。そのうち、生産量を拡大するためには、生産ラインの稼動率向上が重要です。一方で、生産ラインはさまざまな設備やシステムの組み合わせで構成されており、稼動率に対してインパクトの大きい停止要因や、ボトルネックなどが見えづらいなどの課題があるのではないでしょうか。
この記事では、工場DX推進担当者、生産技術部門の皆さまに向けて、生産ラインの可視化がなぜ重要なのか、解説いたします。
※2022年11月時点の情報です
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本資料では、サービス概要や、3つの経営課題に対する個別ソリューション概要、複数の導入事例をご紹介します。
目次
1. 生産ライン稼動状況の可視化が求められる背景とは
なぜ生産ラインの可視化が重要なのでしょうか。その理由には、停止要因や具体的な停止時間が定量化できなければ、設備の修繕やリプレイスなど、的確な改善活動につなげづらいという点が挙げられます。現代の生産ラインは、さまざまな設備やシステムが組み合わされ複雑に構成されていることも考慮ポイントとなるでしょう。
改善活動を継続し、生産性向上の施策を打つためには、基礎データとして稼動状況に加え非稼動要因を記録する、可視化の取り組みが重要です。
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生産ラインの可視化はどのように取り組むべきなのでしょうか。例えば、経済産業省中部経済産業局が定義した「スマートファクトリーロードマップ」では、設備へセンサーを取り付けてモニタリングする取り組みを、工場のスマート化に向けた一つの方向性として定義しています。
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※参考:経済産業省中部経済産業局「スマートファクトリーロードマップ」
https://www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/smart_factory_roadmap/
2. 生産ラインの稼動状況可視化の効果
生産ラインの稼動状況の可視化にはどのような効果があるのでしょうか。経営面・現場面の2つの観点で紹介します。
経営面でのメリット
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安定稼動
生産ライン稼動状況とともに、停止原因を分析、改善につなげることでライン停止を減らし、安定的な生産の実現につながります。
現場の見える化
生産数や稼動率など、収益に直結する重要指標を把握できるほか、経営視点でも現場の課題を把握しやすくなります。
成果の定量化
DX推進のファーストステップとして、生産ラインの稼動状況可視化は比較的小規模の投資で実現できます。費用対効果が問われるDX推進において、小規模ながら確実に成果を定量化できる取り組みとして有効といえるでしょう。
現場面でのメリット
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負荷軽減
IoTデバイスやセンサーなどを活用し、データを自動収集するなどにより、これまで稼動状況報告のために行っていた手作業での記録業務を削減でき、業務負荷の軽減につながります。
継続した現場主導の改善
可視化された稼動状況や停止要因などのデータをもとにして、現場主導による継続した改善により生産性の向上につながります。
停止要因の分析
停止要因を記録することで、稼動率の低下を引き起こす要因を定量的に分析することができるようになります。
3. 生産ライン可視化の取り組み事例1:設備の稼動状況と停止要因の可視化
事例概要
業種:製造業(セラミック基板製造)
所在地:国内
従業員数:約130名
ポイント:可視化ツール導入と停止要因の分析・改善により設備の稼動率を20%向上
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生産ラインの可視化として有効な取り組みの一つが、設備の稼動状況と停止要因の記録です。記録したデータを分析することで、設備のトラブル要因を把握し改善活動につなげることができます。
セラミック基板製造を主な事業とする製造業A社では、これまで設備で収集していた稼動状況データの精度が悪く、データから算出した実際の生産数が合わないなど、十分な活用が難しい状況でした。
そこで、製品の生産数量拡大のタイミングに合わせ、より正確なデータを収集できる設備の可視化ツールを導入。これまでは機械の停止頻度・時間も大まかな情報しか得られていませんでしたが、ツールの導入により詳細なデータを取得できるようになりました。
結果として、停止要因の分析と継続的な改善活動により、設備の稼動率が4カ月で20%向上しました。
4. 生産ライン可視化の取り組み事例2:ヒトの作業状況の可視化
事例概要
業種:食品加工業(冷凍食品など)
所在地:国内
従業員数:約30名
ポイント:ビーコンを活用した作業データ収集・分析による作業の最適化により、生産性を161%向上
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もう一つ、有効な生産ライン可視化の取り組みと考えられるのが、ヒトの作業状況の可視化です。
冷凍食品などの製造を行う食品加工業B社では、作業室がいくつかに分かれていたため各工程で移動が頻発しており、その都度作業が中断して非効率であることが課題でした。そこで、同社ではビーコンを活用した工程・作業者ごとの作業データ収集分析を実施。メンバー全員にビーコンを持たせ、各作業室に設置したルーターで移動状況を把握できるようにしました。結果として、15分以上の連続作業が少なく、作業が断続的に途切れていることが判明。材料や器具などの段取りが悪く、必要なたびに取りに行っているという原因の突き止めに成功しました。
判明した原因に対して、ピーク時期に新人作業者をサポート専任とし、準備のフォローを行うことで作業者が作業に集中できる対策を実施。その結果、生産性の161%向上という大幅な改善を実現しました。
そのほかにも、AIを活用したカメラ画像の分析により、作業担当者の行動を検知することにより、工場入場時の衛生管理を行ったり、作業者の異常行動を検知しミスやロスの削減につなげたりといった取り組みも検討できるでしょう。
5. 生産ライン可視化の取り組み事例3:エネルギー消費の可視化
事例概要
業種:石材加工・販売
所在地:国内
従業員数:約250名
ポイント:製造設備に対してIoTセンサーを設置し、運用状況をリアルタイムで監視。設備の無駄な稼動を減らすことで、年間13万kwhの電力削減に成功
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最後に紹介するのが、エネルギー消費の可視化事例です。生産ラインにおいては電力・ガスなどのエネルギーが消費されますが、これらの消費量を抑えることは生産コスト削減の観点から重要です。また、近年ではSDGs観点からも、エネルギー消費の削減が求められています。
石材加工・販売業を営むC社では、工場の消費エネルギー削減策として、コンプレッサーに対してIoTセンサーを設置し、運用状況をリアルタイムで監視。稼動状況により設定圧力を低減させるなど設備の無駄な稼動を減らすことで、年間13万kwhの電力削減に成功しました。
さらに、同社では工場における電力使用量の監視を強化しており、電力使用量の測定機器を活用しながら、エネルギーの無駄を発見する活動も行っています。
6. まとめ
この記事では、生産ラインの可視化が求められる理由や効果に加えて、設備の稼動・ヒト・エネルギーの各観点で実際の可視化事例を紹介しました。
当社では、設備の稼動状況可視化に有効なソリューションである「m-FLIPTM
」をご提供します。本製品では、設備稼動停止時間の詳細な内訳を可視化できるほか、無線センサーユニットと連携することで、温度・湿度・振動などのデータ収集も可能です。アナログ計器や古いPLCを使用している場合でも対応方法を一緒に検討させていただきますので、ぜひお問合わせください。
m-FLIPTM
はトライアルとして2カ月198,000円から気軽に導入できます。詳細については、こちらの資料もご参照ください。
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また、DNPでは「ファクトリーDX」をテーマに、工場DX推進担当者さまとともに課題をとらえ、施策の検討~PoC~導入までを伴走型で支援する下記サービスも提供しております。ご相談などお気軽にお問合わせください。
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