ゲームセンターにおけるNFCタグ活用の可能性

このコラムでは顧客接点として有望なNFCタグが持つ可能性に焦点をあて、ゲーム筐体を企画・製造しているメーカー、また大型商業施設を運営しているデベロッパーに向けて、ゲームセンター(特に大型商業施設に入っているゲームセンター)におけるNFCタグの活用イメージについてご紹介いたします。

2023年10月26日公開

目次

1. ゲームセンターにおけるNFCタグの活用について
 1-1 ゲーム機での決済
 1-2 NFCタグ決済を導入することで拡がる提供サービス

2. NFCタグを活用することで得られるメリット
 2-1 ゲーム機での決済
 2-2 NFCタグ決済を導入することで拡がる提供サービス

3. まとめ


1. ゲームセンターにおけるNFCタグの活用について

 NFCタグはスマートフォンをかざすだけでサービス利用につなげられる有望な顧客接点として期待されています。

動画:NFCタグ決済フローのご紹介(00:21)

コラム「キャッシュレス決済~QRコードの次はNFCタグに注目【後編】」(※1)では自動販売機における決済シーンでの活用方法についてご紹介しました。今回はゲームセンターでのさまざまなユースケースにおけるNFCタグの活用について考えてみたいと思います。


1-1 ゲーム機での決済

クレーンゲームの画像です。

 近年、スマートフォンやICカードなどを利用したキャッシュレス決済が普及しており、業種業態を問わず、多くの店舗でキャッシュレス決済対応が進んでいます。
 しかし、商業施設内にあるゲームセンターのゲーム機では、現金(特に小銭)や専用のコインを投入して利用することが一般的で、キャッシュレス決済に対応したゲーム機の導入がまだまだ進んでいないのが現状です。

 この原因としてキャッシュレス決済対応するためには専用の決済端末を導入する必要があり「決済端末の導入コストが高い」といった課題が主な理由として挙げられます。このケースにおいてNFCタグを活用すると、キャッシュレス対応に向けた対応コストが決済端末の導入に比べて抑えられるため、キャッシュレス決済対応へのハードルを下げられると期待できます。
 一般社団法人キャッシュレス推進協議会が2023年8月に発表した「キャッシュレス・ロードマップ2023」(※2)では、全体の消費支出におけるキャッシュレス支払額の割合が上昇傾向にあり、2022年には36%となっています。このような現状をふまえると、今後現金(特に小銭)を持たない人が増えていくと考えられるため、ゲームセンターにおけるキャッシュレス対応の遅れは機会損失につながる恐れがあると真剣に考える時代になってきたのかもしれません。このような状況から事業者におけるキャッシュレス対応は重要性を増しています。

キャッシュレス支払額と民間最終消費支出に占める比率の推移を表すグラフを表示しています。年々、キャッシュレス決済を利用する比率が上昇し、2023年時点では36%になっています。

(出典)キャッシュレス・ロードマップ2023

図1 キャッシュレス支払額と民間最終消費支出に占める比率

 NFCタグを活用する決済はスマートフォンに搭載されたNFC機能を利用して、NFCタグ内の情報を読み取り決済サービスを起動します。事前に設定されたApple PayやGoogle Payや独自の決済アプリを通じて決済を行い、さらに機器のコントロール(稼働指示)までを行うことが可能です。この仕組みを使ってゲームセンターに設置されている筐体のキャッシュレス決済対応を考えてみます。
 まずゲーム筐体にNFCタグと機器の制御装置(コントローラー)を敷設します。利用者はNFCタグに自身のスマートフォンをかざし、Apple PayやGoogle Payを通じて決済を行った後、スマートフォンのネットワーク経由でゲーム機内のコントローラーへ稼働指示が発信され、ゲームをプレイできるようになります。
 このようにNFCタグを活用することでゲーム利用に対するキャッシュレス決済対応が可能になり、事業者にとっては、安価にキャッシュレス決済に対応にすることで生活者の多様な決済ニーズに対応でき、さらに現金管理のわずらわしさから解放されます。一方で利用者にとっても現金の手持ちがなくてもスマートフォンさえあればゲームプレイが可能になるなど、両者にとってのメリットが受けられます。


1-2 NFCタグ決済を導入することで拡がる提供サービス

1)若年者の使いすぎ対策について

 商業施設に入っているゲームセンターは老若男女問わず、幅広い年齢層のお客様が楽しめる場所です。近くを通りかかると小学生のグループが楽しそうに遊んでいることも見かけることがあります。こういった場合お金の使いすぎが気になるところですが、タグを活用する決済では利用料金を分析して使いすぎを警告するような取組みも可能になります。タグ決済は一度ネットワークを通じてクラウド上のサーバーにアクセスすることになります。この時、サーバー上でユーザーの利用料金を確認し、一定以上の金額を使っている場合は画面上に警告することも可能です。場合によっては保護者の方に通知し、継続利用に対して承認してもらうプロセスを加えても良いかもしれません。キャッシュレス決済はユーザーに多くの利便性を提供しますが使い勝手が良い反面使いすぎてしまう懸念があります。タグ決済はサーバーでの処理プロセスを変更することでサービスのカスタマイズが比較的容易にできるためサービス提供する上で考慮が必要なユースケースにおいてメリットが得られやすいと考えられます。

2)サービス拡張に対する柔軟性

NFCタグ決済サービスはクラウドにあるサーバー上でコントロールしているためサービスの拡張やアップデートを行う場合、ゲーム筐体への影響がほとんどありません。そのためメーカーはサービス改善のハードルが低いため、柔軟に優れたユーザー体験をお客様に対して提供することが可能です。


2. NFCタグを活用することで得られるメリット

2-1 ゲーム機での決済

①端末コストの削減
 数十万円の決済端末を導入することなく、より安価にキャッシュレス決済を導入することが可能になります。

②現金管理コストの削減
 これまで現金管理などを行う必要があったかと思いますが、キャッシュレス化することで現金管理のコスト削減が可能です。

③ユーザーの利便性向上
 現金を持っていなくてもゲームプレイが可能になります。
 また使いすぎ防止などユーザーにとって便利な機能を追加することが可能です。


2-2 NFCタグ決済を導入することで拡がる提供サービス

サービス拡張を柔軟に対応可能
 サービスの根幹はすべてクラウドにあるサーバー上でコントロールしているためサービスの拡張やアップデートを行う場合、ゲーム筐体への影響がほとんどありません。メーカーはサービス改善のハードルが低いため、常に優れたユーザー体験をお客様に提供することが可能です。そのため顧客満足度の向上が期待できます。

表1 メリットの整理
ゲーム決済 サービスの拡張
生活者 モバイル決済での
ゲーム利用
より便利に、
安心できるユーザー体験
テナント ・端末コストの削減
・現金管理コストの
削減
優れたユーザー体験
の提供


3. まとめ

 今回のコラムではNFCタグをゲームセンターに設置することで提供できるユースケースについて紹介いたしました。NFCタグはスマートフォンをかざすだけでサービスにアクセス可能なユーザー体験を提供できるため、今後の顧客接点として期待されています。NFCタグ決済はサーバーでの処理プロセスを変更することでサービスのカスタマイズが比較的容易にできるため、サービス提供する上で考慮が必要なユースケースにおいては相性が良いかもしれません。これを機にNFCタグの活用した新たな顧客体験をご検討されてはいかがでしょうか?


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