デジタルインボイスとは?
電子インボイスとの違いや、DNPの取組みを紹介

2023年10月からインボイス制度が開始されますが、関連して注目されているのがデジタルインボイスです。そこで本コラムでは、デジタルインボイスの概要と期待される効果、DNPが推進するデジタルインボイスへの対応について紹介します。

2023年4月27日公開

1.電子インボイスとデジタルインボイスの違い

デジタルインボイスのイメージ

電子インボイスは、紙の請求書をPDFなどに電子化したデータを指します。これに対してデジタルインボイスはシステムでの自動処理を前提とした構造化されたデータを意味します。
現在、バックオフィス業務は紙やPDFのやり取りが多く、また必要な情報の確認や社内システムへの反映は依然として人間が中心となっており、これが業務の効率化や生産性向上の妨げになっていると言われています。この状態を解消するためには、デジタル活用を前提に業務プロセス自体の見直しが必要不可欠です。
電子インボイスとデジタルインボイスの違いはデジタイゼーションとデジタライゼーションの違いにも当てはまります。

2.デジタイゼーションとデジタライゼーション

デジタル化のイメージ

デジタイゼーション(Digitization)とデジタライゼーション(Digitalization)は語感が似ていますが、両者には明確な違いがあります。
デジタイゼーションとは、企業全体で取り組むデジタル化など大きな範囲ではなく、一部業務において紙でやり取りしていた資料をデジタル形式に変換することを指します。例えば、スキャナーを利用して、紙の資料を電子化するなどは、デジタイゼーションにあたります。
デジタイゼーションの場合、得意先から送られてきた紙やPDFなどの請求書を担当者が目視でチェックし、社内精算処理のために手動で入力し直すなど、人間による手作業が発生します。

一方で、デジタライゼーションは、デジタル化によって、自社内だけでなく外部環境やビジネス戦略も含めた業務プロセス全体を最適化することを指します。例えば、請求書のデータを社内システムに反映するため人間が入力し直すことなく、財務処理に自動で連動されます。
これは帳票や請求書などをコンピューターが処理できる構造化データにすることで、取り込んだデータを自動でシステムへ取り込めるようになるためです。システム間でスムーズにデータをやり取りできるため、データ活用の推進にもつながります。

デジタライゼーションの実現のためにはデジタルインボイスの普及、ひいては異なるソフトウエア間で構造化データのやり取りが必要です。

3.Peppolとは

データが連携されるイメージ

電子データを異なるソフトウエア間でやり取りし、自動処理を実現させるためには、共通の「仕組み」が必要です。その一つがPeppolです。「Peppol(Pan European Public Procurement Online)」は、請求書などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための世界標準仕様であり、国際団体Open Peppolが管理しています。
Peppolでは、各ユーザーのPeppolアクセスポイントを通して送受信を行うため、お互いのユーザーが同じソフトウエアを導入する必要がなく、Peppolのユーザーは既存のインターフェイスを活用することが可能です。
現在、欧州各国のみならず、オーストラリア、ニュージーランドやシンガポール、そして日本でもその利用が進んでいます。

4.「デジタルインボイス」への期待

業務効率化のイメージ

デジタルインボイスでは、売り手のシステムから買い手のシステムに対し、人の手を介することなく、直接データが連携されます。
現在、決済業務などでデジタル化が進んでいますが、領収書をPDFで受け取った場合、社内の会計システムに手で打ち込みなおす必要があるといった課題があります。それは、前述のとおりデジタイゼーションに過ぎず、業務プロセスを見据えたデジタライゼーションができているとは言えません。
デジタルインボイスが導入され、一気通貫な自動化であるデジタライゼーションが実現されることで、取引全体のデジタル化が進み業務プロセスが改善されます。これにより、人手不足などの課題に対してもアプローチできるようになります。

5.デジタルインボイス推進についてデジタル庁・QMSとの対談(抜粋)

対談の写真

ここまでで、デジタルインボイスによるデジタライゼーションの実現が重要であると説明しました。
2023年2月1日に行われたデジタルインボイスを推進するデジタル庁(加藤博之企画官)とQMS International S.A.(菅原淳矢代表取締役)との対談では、業務効率化という観点からデジタルインボイスの重要性についてお話しいただきました。その中で、特にDNPのデジタルインボイス推進に関わる部分を抜粋して紹介いたします。全文につきましてはQMSのWebサイトにて公開されておりますので、興味ある方はそちらをご覧ください。

(加藤様)請求業務のペーパーレス化にはさまざまな恩恵がありますが、それはデジタル化への足掛かりにすぎません。例えば、紙の請求書をスキャンした画像データは、人が「見る」ためのものであり、システムによる自動処理に向きません。デジタル化で必要なのは、システムが自動処理できることであり、構造化されたデータであることです。

(DNP)おっしゃる通りで、DNPの電子交付システムは、請求書のPDFを交付しており、システムでの自動処理ができません。そのため、Excelで集計やコピー&ペーストで請求業務が軽減できるようにCSVファイルを配信する等の工夫もしています。ただし、それはデジタル化ではありませんので、structured data(構造化されたデータ)なインボイスの検討をしておりました。

(加藤様)DNPさんが考えるstructured dataのインボイスというのは、Peppol e-invoiceということでしょうか。デジタル庁は、Peppol e-invoiceを日本のデジタルインボイスの標準仕様とする取組みを行っています。

(DNP)そのとおりです。現在、DNPは金融機関に対し、サービス手数料に係る請求を電子で行うことができるサービスを提供しています。ただ、その請求はPDF送信で行っています。そのPDFをPeppol e-invoiceに変えていきたいと思っています。得意先との調整にもよりますが、本年度中には対応を始めたいと思っています。

(菅原様)「紙の請求書やPDFがなくなると、従来の請求書業務上で行っていた確認作業は、どうすればよいのか?」といった疑問の声もよく聞かれますが、どうお考えですか。

(DNP)人は、構造化されたデータのインボイスそのものを確認する必要はなく、あくまでもシステムが構造化されたデータを自動処理した結果を確認するということになります。その観点から言えば、ビュアーの話ですね。

(加藤様)システムが処理した結果を人がどのように確認できるのかも重要なポイントだと思います。ただ、大事なことは「システムがデータを自動処理すること」です。

(菅原様)請求業務のアウトソーシングを受ける他の事業者に対し、非常に大きなインパクトを与えることになると思います。ぜひ、早期のサービス提供を開始し、Peppol e-invoiceの利用が広がるよう、貢献いただきたいと思います。

6.まとめ

デジタルインボイスによりデータ連携されるイメージ

デジタルインボイスは、システムでの自動処理を前提とした構造化されたデータを意味します。デジタルインボイスが普及することで、業務プロセスを見据えたデジタル化であるデジタライゼーションの実現につながります。現在DNPでは金融機関に対し、サービス手数料に係る請求を電子的に行うことができるサービスを提供しています。今後はPeppol e-invoiceの利用拡大も推進していきます。

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