顔認証決済サービスの特徴やメリットは?
活用事例もご紹介します
顔認証は画像や映像から個人を判断する生体認証技術のひとつです。その顔認証技術を用いて決済が可能なサービスの普及が進んでいます。決済サービスの導入を検討している、または顔認証決済サービスの理解を深めたい方もいるのではないでしょうか。 顔認証決済サービスの仕組みや市場動向、有用性や注意点を知ることで、具体的な導入方法を検討できます。さまざまな業界で活用されている事例も知り、自社に合った活用方法をイメージしましょう。この記事では、顔認証決済サービスの特徴やメリットについてご紹介します。
2022年10月26日公開
目次
1.顔認証決済サービスとは
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顔認証とは顔の特徴となる目や鼻の位置・形状など、顔の特徴を利用して個人を見分ける技術です。カメラが読み取った実際の顔は事前に保存した顔データと照合され、本人確認が行われます。認証精度を高めるためのAIによる高度な画像認識技術が活用されていることもあります。
この顔認証技術を活用した決済サービスが、顔認証決済サービスです。クレジットカードなどの決済情報を登録しておくことで、顔認証による決済が可能になります。年々増加するキャッシュレス化の動きに連動し、今後のさらなる普及が期待されています。
2.顔認証決済サービスの市場規模
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顔認証システムの市場は、国内外で大きく成長し続けています。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、非接触の顔認証決済サービスのニーズが高まっているのです。ここでは、顔認証決済サービスの市場規模を、日本国内と世界とに分けてご紹介します。
日本国内での市場規模
日本のマーケット調査会社である株式会社富士経済が発表した調査レポート「2021 セキュリティ関連市場の将来展望」(出展:https://fuji-keizai.co.jp/market/detail.html?cid=21125&view_type=2)によると、顔認証の市場規模は2024年には39億円に成長すると予測されています。これは、2020年の約21億円と比較すると185.7%増です。
この予測データは顔認証システム全体に対するものですが、非接触の決済サービスのニーズも2019年以降は新型コロナウイルス感染症の影響で高まっています。政府が推進するキャッシュレス化への動きも後押しとなり、連動するように顔認証決済サービスの市場規模は必然的に加速するでしょう。
ちなみに、経済産業省が公表する「キャッシュレスの現状及び意義」には、“キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指す”と記されています。
世界での市場規模
株式会社グローバルインフォメーションの市場調査レポート(出展:https://www.gii.co.jp/report/imarc1092039-facial-recognition-market-global-industry-trends.html)によると、世界の顔認証市場規模は2027年には156億米ドルに達すると予測されています。2021年時点の50億米ドルに比較すると、3.12倍に成長する見通しです。2022~2027年のCAGR(年平均成長率)は21.2%になります。
このことから、顔認証決済サービスの市場規模も世界的に拡大していくと考えられます。
3.顔認証決済サービスを導入するメリット
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顔認証決済サービスは利便性が高く、セキュリティレベルの向上にも期待できるのが利点です。クレジットカードの紛失やカード番号・暗証番号の流出といったリスクがさらに軽減できるようになります。ここでは、顔認証決済サービスを導入するメリットをご覧ください。
利便性が高まる
顔認証決済サービスを導入するメリットのひとつは「利便性の高さ」です。クレジットカードやスマートフォンといった物理的な認証、決済処理の手間が省けるため、会計にかかる時間を短縮できます。
利用者は会計時にクレジットカードや現金を取り出す必要がなくなるので、手ぶらで買い物ができるようになります。例えば、小さなお子さんを抱いている場合や手がふさがっている状態でも、顔をかざすだけで決済が完了できるのです。
暗証番号の流出やクレジットカード紛失のリスクを大幅に軽減
クレジットカードを携帯する必要がなくなるため、クレジットカードの紛失やパスワード・暗証番号が流出するリスクを大幅に軽減できます。これまで以上に安心してお買い物ができるのは、顔認証決済サービスの大きな魅力です。
その他にも、クレジットカードの情報を不正に読み取るスキミングによる被害や、クレジットカード番号の盗難などへのリスク回避によってセキュリティ面の強化も図れます。顔認証サービスは利用上の安全面を高めてくれるので、手軽さとあいまって安心して利用することができるのです。
幅広い年代が利用できる
非接触の決済サービスといえば、スマートフォンを利用した決済アプリが人気です。しかし、レジ前でスマートフォンを取り出す手間がかかります。アプリ操作が苦手な方は、そもそも使っていない場合もあるでしょう。
その点、認証端末に顔を向けるだけで決済が完了する顔認証決済サービスであれば、アプリ操作が苦手な方や不慣れな方も利用可能です。ある程度の慣れが必要な電子マネーの使い方を覚える必要もありません。
4.顔認証決済サービスを導入する際の注意点
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顔認証決済サービスには、いくつかの注意点があります。例えば、顔認証システムの認証精度は撮影環境によって認証精度に影響が出る可能性があること、顔情報を含む個人情報を適切に管理する必要があることです。サービス提供者側は注意点への理解と、問題が起こった際に対策を講じなければならない点を理解しておきましょう。
顔認証の精度はまだ完璧ではない
顔認証システムはまだ発展段階にあり、100%の認証精度には至っていません。顔と認証端末の距離や設置場所、光の加減などの条件により認証精度の低下が起きる場合があります。
認証ミスを大別すると「本人拒否」と「他人受入れ」の2種類があります。前者は本人を認証できないケース、後者は他人を本人と間違えて認証してしまうケースです。この問題を解決するために各顔認証エンジンベンダーは研究を続けており、また、赤外線センサーを組み合わせた3D認証や、虹彩(こうさい)認証と組み合わせたマルチモーダル生体認証などの活用が進められています。
個人情報保護のためのシステム確認を
顔認証システムを利用するためには、顔データをサーバーに登録する必要があるため、重要な個人情報の顔データ等は適切に管理することが大切です。
現在の最新技術では、登録された顔情報はデジタルデータに変換されるため、このデータから人の顔を復元するのは困難とされています。しかし、個人情報を保護する点からも、常に万全の体制を整えておくことが重要です。また、顔認証サービスのための機器が設置されている場所を防犯カメラで監視・録画するなど、サービス提供者自身によるセキュリティ強化も欠かせません。
5.顧客が顔認証決済サービスを利用する方法
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顔認証決済サービスは、顧客にとっても利便性の高い決済方法です。顔データなどの事前登録は必要ですが、店舗では「顔パス」で買い物をすることができます。利用者が顔認証決済サービスを利用するイメージをつかんでおくことは、事業者側にとっても大切なことです。
5-1.事前登録
利用者は事前に顔認証用の顔写真の撮影・登録を氏名やクレジットカード情報と一緒に行います。一般的な証明写真と同様、真正面を向いた画像が必要です。これらの情報がサービス事業者のサーバーで管理されることで、決済時に顔データとの照合ができます。
5-2. 加盟店で買い物
顔データや個人情報の登録が完了したら、顔認証決済サービスを導入している同企業の加盟店で買い物ができます。クレジットカードや各種電子マネーと同じく、加盟店でなければ顔認証決済サービスを利用できません。加盟店はサービスによって異なりますが、実店舗の他に、ECサイトなどでのオンライン決済にも顔認証決済サービスは活用されています。
5-3.決済
決済は店舗のレジに設置されている顔認証決済サービスの専用端末機で行います。マスク・サングラス・帽子は外した状態で行うとより認証精度が高まります。顔データが照合されれば決済されるため、現金やクレジットカードは一切不要です。
5-4.支払い状況の確認
決済完了後は、スマートフォンなどのデバイスからアプリやWebサイトを通じて支払い状況の確認もできます。決済履歴は自動保存されますが、他の支払い方法と同じように、その場での確認も可能です。決済の度にメール通知を受け取る設定もあります。簡単な操作で透明性を確保できるため、安心して利用できるでしょう。
6.顔認証決済サービスの活用事例
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顔認証決済サービスは飲食店・家電量販店・銀行など、さまざまな業種で活用されています。会員サービスとの連携や予約情報とのひもづけなど、活用方法は多彩です。一般的な活用事例を見ることで、顔認証決済サービスを実際に導入するイメージを、よりクリアにしておきましょう。
飲食店や家電量販店での導入
飲食店A社では、マスクを着用していても認証できる顔認証決済サービスを導入しています。「財布やスマートフォンを取り出さずに決済できる」と、来店客に喜ばれているようです。
また家電量販店B社では、実店舗・オンラインショップ両方に対応する顔認証決済サービスを導入しています。自社のカード会員向けに決済アプリを提供することで、ポイント還元にもつなげています。
銀行での導入
C銀行では、顔認証を使った決済システムの実用化に向けて動いています。これまでカードやスマートフォンで行っていた本人確認を顔認証に変更し、スピーディーな入出金・振込の実現をめざしています。決済とは意味が異なりますが、顔認証決済サービスはさまざまな場面で活用されているのです。
ホテルでの導入
全国チェーンのホテルを運営するD社では、旅行の利便性を高めるためにホテルでの顔認証決済サービスを導入しています。予約情報と顔認証システムをひもづけることで、非対面でのチェックインも実現しました。受付の省人化は人件費削減をはじめ運営面・経営面に良い効果をもたらしています。運用次第では、無人宿泊施設の運営も可能になります。
無人店舗での活用
店舗での物販を営むE社では、顔認証システムを導入して無人店舗を実現しました。キャッシュレス決済や入退場管理をはじめ、来店者の行動分析や万引防止にも役立つことが期待されています。決済だけにとどまらず、店舗管理にも応用した事例です。
7.まとめ
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顔認証決済サービスは企業・顧客双方にとって利便性が高い決済方法です。しかし環境面などで誤認証が起こるリスクがあるため、正しい活用方法を解した上で高品質なサービスを選ぶ必要があります。
DNP(大日本印刷)では各社と連携して顔認証マルチチャネルプラットフォーム®の検討を進めています。これは異業種とオープンに連携する業界横断型プラットフォームをめざす構想で、将来的には日常生活のさまざまな場面で利用できるよう、新たな開発にも取り組んでいます。
顔認証マルチチャネルプラットフォームを通じて「認証DX」を推進するDNPなら、安心・安全にDX化を進められます。顔認証決済サービスの導入を検討される際には、DNPにご相談ください。
顔認証マルチチャネルプラットフォームは、DNP大日本印刷の登録商標です。