キャッシュレス決済~QRコードの次はNFCタグに注目【前編】
導入の手軽さと高いセキュリティ性を兼ね備えたNFCタグを用いた決済に注目が集まっています。なぜ、今NFCタグなのか。注目ポイントを紹介します。
2022年12月7日更新
1.キャッシュレス決済の現状と課題
キャッシュレス決済の現状
新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、「キャッシュレス決済」のニーズはここ数年でますます高まっています。日本のキャッシュレス決済比率はこの10年で伸び続けており、2020年時点で約30%になりました。政府は2025年の大阪・関西万博も見据えて2025年までに40%程度、将来的には世界最高水準の80%を目指しています(※1)。
キャッシュレス決済にはさまざまな種類がありますが、それぞれ市場での普及状況(図1)や特徴が異なります。事業者はキャッシュレス決済導入を検討する際、顧客に提供したいサービスイメージや、自社の既存システムとの連携、導入コストを総合的にふまえて選定する必要があります。
|
導入時検討項目例
- 導入方法(自社の独自決済サービスとして導入 or 他社決済サービスの加盟店として導入)
- 導入方式(カードタイプ or モバイルタイプ)
- 既存システムとの連携要否(売上管理システム、POSシステムなど)
- コストシミュレーション
導入課題
キャッシュレス決済対応は店舗や事業者にとって急務ですが、いくつかのハードルがあるのも事実です。キャッシュレス決済を導入していない事業者からは「顧客からの要望がない」「手数料が高い」「導入のメリット不明/実感できない」などさまざまな声が上がっています。なかでもクレジットカードや電子マネー決済を取り入れたい店舗や事業者にとっての大きな課題は「端末導入費用等の初期費用が高い」(※1)ことです。
QRコード決済の広がり
近年、キャッシュレス決済導入に対し大きなハードルとなっている初期コスト低減を目指してQRコード決済が急速に普及しています。QRコード決済には、大きく以下2つの方式があります(図2)。
1)利用者のスマートフォンにバーコードやQRコードを表示し、店舗側が読み取るCPM方式
2)店舗のQRコードを利用者が読み取るMPM方式
特にMPM方式は加盟店固有のQRコードを印刷したツールを設置するだけでよく、専用端末が不要なためキャッシュレス決済の初期導入費用を大きく抑えることが可能になりました。
|
しかし、QRコード決済に関して近年セキュリティ面が問題になっています。その手軽さに付け込み悪用されるケースが出てきており、店頭に設置された読み取り用QRコードの上に偽造ステッカーが貼られていることに気づかず、支払い時に詐欺サイトへ誘導される事例も報告されています(※2)。アメリカでは米連邦捜査局(FBI)が注意を呼び掛けるほど、世界的な課題となっており(※3)今後日本でも似たケースが増えることが懸念されます。このような背景から導入コストの低減やセキュリティ面の観点からNFCタグを活用した決済が注目されています。
2. NFCタグを活用した決済サービス
NFCタグとは
NFC(Near Field Communication:近距離無線通信)はスマートフォンをかざす決済サービスや、電車・バスなどの乗車サービスに使われている通信技術です。アプリを起動して読み取るQRコードと異なり、スマートフォンをかざすだけでさまざまなサービスが利用可能なため、ユーザビリティの高いインターフェイスと言えます。NFCには4つのモード(表1)があり、スマートフォン上でそれぞれのモードの特徴を生かしさまざまなサービスへ展開されています。
No | モード名 | 内容 | サービス例 |
1 | カードエミュレーション モード |
従来の非接触ICカードの役割を代替するモード | モバイルSuiCa、モバイルWAONなどの電子マネー、Apple Pay、Google Pay |
2 | Peer-to-Peer モード |
NFCデバイス同士で簡単なメッセージを直接交換するためのモード | |
3 | リーダー/ライター モード |
NFCタグを読み取る・NFCタグに書き込むためのモード | NFCタグを通じた情報配信 |
4 | ワイヤレスチャージング モード |
電力を供給してバッテリーをチャージするモード | 電子機器へのワイヤレス充電 |
表1 NFCの4つのモード
NFCタグは、NFCに対応したICチップを埋め込んだシール状のものです(下図写真) 。URLやコードを書き込んでおき、スマートフォンをかざすことでさまざまなサービス利用を促すことが出来ます。
|
NFCタグを活用した決済サービスについて
これまでNFCを活用した決済は、利用者のスマートフォンが非接触ICカードとして振る舞う「カードエミュレーションモード」での決済(例:Apple Pay、Google Payなど)が主流でしたが、近年NFCタグの決済サービスへの活用に期待が高まっています。その理由として以下2つの背景が大きく影響しています。
- 1.iPhoneがリーダー/ライターモードに対応NFCタグを読み取るにはスマートフォンがリーダー/ライターモードに対応している必要がありますが、これまでAndroid端末しか対応していませんでした。しかし、2019年にiPhoneがリーダー/ライターモードに対応したため、ほぼすべてのスマートフォン利用者がNFCタグを読み取れるようになりました。
- 2.NFCデータ仕様の国際規格化これまでNFCタグのデータ仕様はAndroid OSとiOSで異なっていましたが、2020年に国際規格として両OS間で統一されました。これにより、NFCタグを設置する店舗はAndroid端末用、iPhone端末用それぞれのタグを準備する必要がなくなり、NFCタグの活用がとても容易になりました。
この2つの出来事により幅広いユーザーにご利用いただける機会が増え、さまざまな分野で利用検討が急速に進み始めています。決済サービス分野もその例外ではありません。現状QRコード決済が導入の手軽さから市場でのシェアを伸ばしていますが、NFCタグを活用する決済サービスはQRコード決済と比較し、より少ない手順で「かざすだけ」のユーザビリティの高いサービス提供が可能です。(図4)
次世代決済サービスとして現在注目されており、サービス事例も出始めています(※2)。
|
専用端末ではなくPOPのような簡易な什器に組み込んだNFCタグにNFC対応のスマートフォンをかざして決済している様子も動画でぜひご覧ください。
かざすだけの、スムーズな決済を体感できます。
3.まとめ
キャッシュレス化が急速に拡がる中で、決済端末導入コストや不正利用への対策が事業者の課題となっています。今回は、導入の手軽さとセキュリティ性を兼ね備えた「NFCタグ」を活用する新たなキャッシュレス決済についてご紹介いたしました。DNPではNFCタグ自体を認証し、セキュリティ性を最大限に高める「DNP NFCタグ認証プラットフォーム」を提供しており、安心・安全な決済サービス導入をサポートしています。この機会に新たなキャッシュレス決済サービス導入をご検討されてはいかがでしょうか?
コラム後編ではNFCタグ決済の具体的な活用や導入する際のポイントについて詳しくご紹介しています。合わせてお読み頂けますとNFCタグ決済の理解が深まりますのでチェックしてみてください。