生活空間デザインレポート ホテル Vol.4
ご好評頂いている「デザインレポート ホテル」。第4弾は大阪から2件、東京から1件をご紹介します。ホテルのコンセプトやデザインの背景をご紹介するとともに、筆者視点でインテリアのポイントやコーディネイトについてご紹介します。
※2023年10月時点の情報です。
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・コンセプトはタイと日本の美と文化の融合
・ファミリーフレンドリーな共有部デザイン
・スタイリッシュなグレーをベースに、日本の能をモチーフに取り入れた客室
Point of Materials
木質・金属・石・ガラス・ファブリックなど
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・大正時代のレガシーを取り入れたレトロモダン
・さまざまなマテリアル、カラーを融合させたモダンな客室
・サステナビリティに配慮したアメニティサービス
Point of Materials
石・木質(古材含む)・テラゾー・金属・ファブリックなど
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・クラシカルな装いが叶えるラグジュアリーステイを表現
・アールデコとモダンが融合した明るい客室
・心身を癒すスパ&サウナ
Point of Materials
ホワイトカラーのレリーフやモールディング・真鍮・ブロンズミラーなど
- センタラグランドホテル大阪
https://www.centarahotelsresorts.com/centaragrand/ja/cgoj
住所:大阪市浪速区難波中2−11−50
TEL: 06-6616-9945
アクセス:南海電鉄「なんば駅」南口から徒歩4分、大阪メトロ御堂筋線「なんば駅」4番出口から徒歩8分
タイのセンタラ ホテルズ&リゾーツが手掛ける高級ホテルブランドの日本第一号店としてセンタラグランドホテル大阪が、なんばパークスサウスに2023年7月開業しました。グランドコンセプトは「タイと日本の美と文化の融合」。33階建てのこのホテルは、スイートやコネクティングルームを含む 515室の客室とクラブラウンジ、8つのレストランとバーがあり、幅広いダイニングエクスペリエンスを提供しています。インテリア設計は株式会社日建スペースデザイン・AvroKO・大成建設株式会社一級建築士事務所が手掛けています。
01-1.コンセプトはタイと日本の美と文化の融合
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建物の2階に位置するロビーエリアは、高い天井と大きなガラス窓により明るく開放的な空間でした。ユニークな形状のカラフルなソファや、靴を脱いでくつろげる小上がり、茶室を想起させるスペースなど、ゲストは思い思いの時間を過ごすことができます。またラグジュアリーホテルではありますが、ファミリフレンドリーに取り組んでおり、小さなお子さんが小上りで遊んでいるようなシーンも見ることができました。
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レセプションデスクは、茶碗のような形状に陶器の美しい色を融合させていました。煌びやかさもありながら、シンプルなカラー・マテリアル使いの中で、ポイントのカラーが引き立っています。
客室フロアへのエレベーターホールは、タイの伝統であるランタンフェスティバルをイメージしています。日本の格子戸や障子窓を思わせる壁面に、タイのカルチャーが融合していました。この照明は時間帯によって、ブルーやピンクなど色が変化するそうです。グランドコンセプトである「タイと日本の美と文化の融合」を表現している象徴的な場所だと感じました。
01-2.和の要素を取り入れたモダン空間
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華やかな賑やかさがあるエントランスから廊下を通り客室に入ると、トーンが一転し落ち着いた客室が広がります。グレイッシュな木質のフローリングやドア、家具により空間を上品にまとめています。コンセプトは日本の伝統文化である能と茶道。能舞台の鏡板に描かれている「松の絵」をイメージしたアートが描かれています。このアートとリンクするブルーグリーン、オレンジやパープルカラーがインテリアのアクセントカラーとして使われていました(客室タイプによって異なります)。
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洗面スペースには、バスローブやさまざまなアメニティが用意されており、優雅なバスタイムへと誘います。クラブフロアのバスルームにはバスソルトも用意されています。心身ともにリフレッシュできる時間を提供しています。
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01-3.西洋と東洋のウェルネス哲学を融合したスパ
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館内には本格的なタイ式トリートメントを体験できるスパ・センバリーもあり、人気を集めています。西洋と東洋のウェルネス哲学を融合させた包括的なセラピーで、心と体、そして精神を整え活性化させます。空間のコンセプトは和菓子。和菓子の中で表現される四季折々の美しさ、透明感や柔らかさを空間で表現しています。柔らかいシアーカーテンがラウンジスペースを包み込み、プライバシーを配慮しつつ、空間の動線を作っています。
01-4. バラエティに富んだレストラン&バー
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タイの通りに並ぶ屋台からインスピレーションを得たタイ料理のレストラン「スアンブア」。ホテルの2階入り口から入ったすぐのところにあるレストランです。トゥクトゥクが出迎えてくれ、センタラグランドホテル大阪のシグネチャー的な存在になっています。
マーケットの華やかや賑やかさがデザインでも表現されていて、切妻屋根の形状で構成されたルーバーのもとに、色鮮やかなタイルや煌びやかなネオンなど、楽しいデザインの要素で溢れています。
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大阪一の眺望を誇る最上階にあるラウンジスペース「スモーク&スピン」の店内は、温かみのある木目調の仕上げが施され、高級感のある空間に日本の野球の歴史を彷彿とさせるデザインが随所に見られます。
センタラグランドホテル大阪には、そのほかにも豊富なレストラン&バーが用意されています。
- voco大阪セントラル
https://www.ihg.com/voco/hotels/jp/ja/osaka/osakn/hoteldetail
住所:大阪市西区京町堀1-7-1
TEL: 06-6445-1100
アクセス:地下鉄四ツ橋線「肥後橋駅」7番出口から徒歩約3分、「本町駅」28番出口より徒歩5分
IHGホテルズ&リゾーツのプレミアムホテルブランド「voco」の日本初進出となるvoco大阪セントラルが2023年5月開業しました。古材を再利用したソーシャルスペース(ロビー、レストラン、カフェ&バー)の斬新なデザイン空間と、自然体で過ごす「おもいがけない特別」な世界観を提供するプレミアムホテルです。vocoという名称は、ラテン語で「招待する」「呼び集める」を意味し、まるで慣れ親しんだ場所のような居心地の良い滞在のなかに「おもいがけない特別」な体験を提供します。また、この場所は商人が集まり、市場で賑わう庶民の街として栄えてきた歴史があり、ホテルを起点に新たな人の流れや文化を創出し、街に彩りを添えるような存在となることをめざしています。インテリアデザインは、NAO Taniyama & Associatesが手掛けています。
02-1.大正時代のレガシーを取り入れたレトロモダンなロビーフロア
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スタイリッシュな外観のホテルの内部に入ると、印象が一転しどこか懐かしさを感じるようなレトロモダンな空間が広がります。よく見るとロビー、レストラン、バーを擁する吹き抜けのスペースには古材で構成されたやぐらのような構造物が設えられています。実際の家屋から回収した古木を再生・活用し、京町堀の歴史の象徴的なアイコンである「蔵」に着想を得て、日本の伝統技法で組み上げています。
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このホテルは、1926年の竣工以来、京町堀を象徴する歴史的建造物として親しまれてきた旧京町ビルの跡地に建設された背景があり、京町ビルに使用されていたレリーフや扉・郵便ポストなどを保存し、インテリアのエッセンスとして取り入れています。左の画像は旧京町ビルで使われていた鉄の扉、右の画像はバルブを活用したアート作品で、「新」「旧」の時代の境目を象徴しています。
レセプションカウンターの横にあるダイニング「LOKAL HOUSE」は自宅に招かれたような寛ぎと洗練された個性が同居し、地元のストーリーを取り込んだメニューを気取らないムードの中で提供しています。壁面に設えられた巨大アートは「大阪の街並みの写真をコラージュして旧京町ビルを復元する」というアプローチによって製作された、八木仁志氏のコラージュ作品です。
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吹き抜けのレストラン天井には、旧京町ビルの外観デザインモチーフとして使われていたレリーフを取り入れています。実際のレリーフパターンを型取り、ブリキ製の化粧パネルで表現しています。
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チェックインを済ませ、客室フロアへのエレベーターに向かう動線の間には、カフェ&バーがあり、宿泊客以外の人も気軽にくつろげるラウンジスペースとなっています。オレンジカラーの骨材が入ったテラゾーのフロアや、カウンター腰壁、家具や什器に使われているメタル素材がきらめき、高級感もありながら、肩ひじ張らずにくつろげる空間を提供していました。
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吹き抜けに設えられたアートは水の流れをモチーフとして「京都と大阪を繋いだ水運」「技術と文化の継承・混在」を表現した谷川美音氏の作品です。
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02-2. 「自分らしく過ごす時間 Me time」をコンセプトにしたモダンな客室
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客室はグレー基調のモダンスタイルで、さまざまなマテリアル・カラーをミックスし遊び心を感じる空間です。明るいグレイッシュカラーの木質フロアに対し、客室扉や家具にはダークブラウンの木質を組み合わせ、ハイコントラストのコーディネートになっています。ヘッドボードやサイドテーブル周りは直線のラインが際立つデザインで、3つの球体をもつペンダントライトが空間のアクセントになっています。最高の寝心地を提供するベッドには、環境に配慮したリサイクル素材を枕や布団の中材に使用しています。
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オープンタイプのクローゼットが部屋の開放感を演出し、まるでお気に入りの自宅にいるような感覚を演出します。ネイビーの壁面はややレトロな印象を感じるようなパターンが描かれています。ロビーやレストランの空間で見られた、「新」「旧」の融合というエッセンスを感じました。また引き戸も壁面と同じ意匠が施されており、ノイズレスで空間を広く感じさせています。
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洗面スペース・バスルームは、バーエリアで使用されていたテラゾー素材が床や壁面を構成し、ユニークな空間を作り上げていました。バスルームのシャワーヘッドは気泡が水の消費量を抑えるエアヘッドシャワーを全室に設置。そのほか竹製のアメニティを採用し、成長速度の速い竹の消費の促進や竹林の保護に貢献し、竹製品の魅力も体験できます。
- GINZA HOTEL by GRANBELL
https://www.granbellhotel.jp/ginza/
住所:東京都中央区銀座7丁目2番18号 グランベルスクエア5F
TEL: 03-6263-8935
アクセス:JR新橋駅(北改札出口)徒歩5分、東京メトロ 銀座駅(C-1・C-2出口)徒歩5分
「FUN to STAY-その街に合わせたホテルステイを演出-」をコンセプトにホテルを展開しているグランベルホテルグループは、複合施設「GRANBELL SQUARE」の5~9階にグループ初となるプレミアムタイプのデザイナーズホテルGINZA HOTEL by GRANBELLを開業しました。クラシカルな装いが叶えるラグジュアリーステイで銀座の街に相応しい洗練された時間を過ごせる、コリドー街の新しいランドマークホテルです。4階にはスパ施設「SPA&SAUNA コリドーの湯」があり、オートロウリュサウナやスチームサウナ、外気浴場やラウンジスペースなどを完備しています。ホテルの設計は株式会社プランテック、コリドーの湯の設計は今井健太郎氏が手掛けています。
03-1. イタリア家具を設えたラグジュアリーなロビー
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賑やかな銀座コリドー街沿いにあるグランベルスクエアの5階にホテルロビーがあります。開放的な空間の中には、エレガントな印象のレリーフ天井、モールディングの壁面、モザイクタイルのフロアが広がります。家具はGervasoniなどイタリア家具を中心に設え、高級感漂うロビーエリアです。コンセプトである「クラシカルな装いが叶えるラグジュアリーステイ」が体感できる空間でした。
03-2. アールデコとモダンが融合した明るい客室
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客室はスタンダードからテラス付まで10タイプの客室が用意されています。こちらの写真は広さ
22.2~24.1㎡のクイーンのお部屋です。ダークトーンの客室廊下から一転、客室はホワイト基調の明るくエレガントな空間です。腰壁にはモールディングが施され、随所にゴールドのアクセントが加わり、アールデコとモダンが融合したスタイルです。
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バスルームとベッドの間にあたる壁面にはブロンズのミラーが設えられ、空間を広く感じさせています。大きな窓から見える景色がミラーに反射し、外の風景が一つのアート作品のように客室空間と融合していました。
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バスルームは白のタイル貼りに、ゴールドのシャワーヘッドや水栓器具が映え、清潔感のある空間になっています。バスルームもクラシカルとモダンのテイストが交錯する空間でした。
03-3. 都会の真ん中で癒しを得られるスパ&サウナ
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グランベルスクエアの4階にはスパ&サウナ「コリドーの湯」があります。コンセプトは「内観へと誘う空間」。モノトーンをベースとした非日常的な浴槽と光の演出により、リラックスへと導きます。利用者の導線がしっかり考えられた設計になっていて、心身ともに、ゆっくりとくつろげる施設になっていました。設計は数々の銭湯設計を手がける今井健太郎氏によるものです。
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館内には外気浴ができるスペースも設けられています。そのほか、休憩処や食事処も完備されています。休憩処にはテレビ付のリクライニングチェアや、蔵書にこだわったライブラリースペースがあり、思い思いの時間を過ごすことができます。
コリドーの湯は11:00~翌9:00まで営業しており、同ビル地下にあるライブハウスやナイトクラブでオールナイトで楽しんだのちに、疲れを癒しながらくつろぐことも可能です。
03-3. 開放感溢れるルーフトップレストラン
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10階にあるルーフトップレストランは朝食会場としても使われています。大きな窓ガラスに囲まれた店内は外光が優しく包み込みます。天井からハンギングされた植物、広々としたテラス席が、インテリア空間とエクスエリア空間をシームレスにつないでました。夜はステーキハウス「KIYO GINZA」としてオープンしています。
まとめ&編集後記
今回は大阪、東京に開業した3つのホテルをご紹介しました。
センタラグランドホテル大阪は、タイの文化が持つ華やかさと日本のミニマリズムを融合させた煌びやかで優雅な共有部に対し、客室はグレーを基調にしたスタイリッシュで、静かに落ちける空間をつくっていました。voco大阪セントラルは、大正時代の面影を取り入れつつモダンにまとめた共有部、客室は同じくグレーをベースにしながらもさまざまなカラーやマテリアルが交錯する魅力的な空間でした。国内ではグレイッシュカラーのインテリアがまだまだトレンドとして続いていますが、グレーという中間色の良さを活かし、多様なインテリアスタイルへの展開がみられています。一方でGINZA HOTEL by GRANBELLは銀座らしい高級感の中で、ホワイトをベースにした明るい空間に、ブロンズミラーやゴールドのメタル、上質なファブリックなどさまざまなマテリアルを使い、クラシカルとモダンが融合した空間でした。
3つのホテルの共通点として、アプローチの角度は違えど、いずれも心身のリフレッシュにつながるWell-beingな空間やサービスを提供していたことです。長く続いたステイホームの影響もあり、身体だけでなく心も癒されるような提案が新たなトレンドとして出現しています。今後もこの動向に注目したいと思います。
取材、撮影 & テキスト
Chihori Kunito (大日本印刷株式会社 生活空間事業部)
大学・大学院で心理学・認知科学・色彩心理学などを学ぶ。学生時代は内装の色彩が人間の心理に与える影響や、肌がきれいに見える壁紙の色彩などについて研究。日本色彩学会 2011年学会大会にて発表奨励賞を受賞。2012年DNPグループに入社し、壁紙の企画デザインを担当。2016年より現在の部署にて、ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター
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