NPS®とカスタマージャーニーマップの組み合わせでできること

「One to Oneマーケティング」 が重要視されている昨今、多くのマーケターが注目し、活用しているのが、「カスタマージャーニーマップ(以下CJM)」です。(※1)
CJMは、購買プロセスの整理やタッチポイントの洗い出しとしては非常に有効ですが、顧客の感情や商品への関心度については、マーケターの想定・想像や、デプスインタビューにもとづく定性情報を用いるため、偏りが生じる場合も多々あります。デプスインタビューや、ワークショップを通じることで、プロジェクトメンバーの意思形成を図れる側面はとても有益ですが、顧客に対する具体的なアクションを講じるためには、この偏りをいかに排除できるかが課題となっていました。
本記事では、CJMが抱えている「偏りを排除する」という課題の解決方法として、CJMと「ネットプロモータースコア(以下 NPS)」とを組合せた最新のマーケティング手法について解説します。

目次

1.CJMの顧客感情をスコアリングし、改善すべき体験価値が明らかに
2.スコアリングにNPS(R)を活用
3.NPS(R)でできること
 3-1.課題の真因分析
 3-2.顧客セグメントごとの課題点も可視化
 3-3.経営指標との相関
4.まとめ

1.CJMの顧客感情をスコアリングし、改善すべき体験価値が明らかに

CJMが抱えている 「偏りを排除する」という課題の解決手法として有用なのが、感情のスコアリング手法です。定量データでスコアリングすることで、顧客の感情・関心が可視化でき、顧客の購買プロセスにおいて、どのタッチポイント・プロセスにどれくらいの大きさの課題があるかを数値で把握できるため、解決に向けた対応施策の優先順位を、より正確につけることができます。

定性データを活用したCJM

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スコアリングを活用したCJM(※2)

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2.スコアリングにNPSⓇを活用

スコアリング手法のひとつとして、ネットプロモータ―スコア(NPS(R))があります。 NPS(R)は、フォーチュン500(※3)の1/3以上の企業に導入されている指標のひとつで、顧客ロイヤルティを数値化しています。具体的な算出方法は、顧客に対して「商品やサービスを友人や知人に勧めたいと思うか?」という質問に、0〜10の11段階で評価してもらい、以下のように分類します。

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各割合を算出し、「推奨者の割合」から「批判者の割合」を差し引いた値がNPSとなり、推奨者の正味比率を明らかにすることができます。 これによって、従来のCJMではできなかったより深い分析が可能となります。

3.NPSⓇでできること

3-1.課題の真因分析

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※上記図は実際の分析画面を、本記事用に見やすくイメージ図化しています。

NPS(R)をスコアリングに使うことで、課題のあるタッチポイントにおいてどの因子の影響が強いか?その因子は顧客体験において良い影響を与えているか?悪い影響を与えているか?といった真因の分析が可能になります。

3-2.顧客セグメントごとの課題点も可視化

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さらに、定量データでスコアを算出するため、セグメントごとの分析や、ニーズの真因分析が可能になります。
例えば上図のように平均値では見えなかった課題が、属性(図では男女で分析)で比較すると、特に女性には大きな課題となっていることが分かるなど、従来のCJMでは発見できない細かな分析が可能になるのです。

3-3.経営指標との相関

また、NPS(R)は利益率や成長率、売上といった各種経営指標との相関が高いため(※4)、課題の改善を単なるプロセスの改善だけでなく、収益などの経営指標をKGIとし、課題改善によってどれだけ経営指標に影響を与えられるか、マーケティングROIの最大化に向けた明確な目標を立てることも可能になります。

収益相関分析(参考図)

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4.まとめ

企業のマーケティング活動におけるカスタマーエクスペリエンスの重要性の高まりに伴い、戦略・戦術を検討する上で、CJMを活用しているマーケターの方は多いと思います。今回ご紹介した「NPS(R)×CJM」は、従来のCJMにNPS(R)を組み合わせることで、より広く、より深く分析を行うことができる上、経営指標との相関を証明することでより説得性を高めることが可能となります。

「現状の分析ではエビデンスに乏しい」、「新たな課題を明確にしたい」などの課題をお持ちであれば、ぜひ一度「NPS(R)×CJM」を活用してみてはいかがでしょうか。NPS(R)を活用し、中長期的な収益性や成長率の向上に繋がる施策をめざしましょう。

※NPS(R)は、Bain&Company,Inc.、Fred Reichheld、Satmetrix Systems,Inc.の登録商標です。
※1:カスタマージャーニーマップ(CJM)について、詳しくはこちら
※2:CJMのスコア抽出は株式会社Emotion Techの保有する特許範囲に該当
※3:フォーチュン500はアメリカの経済誌フォーチュンが、年に1度発表している全米上位500社の総収入ランキング
※4:参照元 株式会社Emotion Tech 「自動車業界ロイヤルティ調査レポートPart.1」


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金子 祐一
大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部
第1CXセンター第1本部第1部第1課

※2022年10月時点の内容です。

ギフトに関して、NPS(R)とカスタマージャーニーマップを組み合わせたエモーショナルCJMを用いた調査を行いました。本調査のレポートはダウンロードし、ご活用いただけます。

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