精算機や券売機のキャッシュレス決済に対応するためのポイント

国内の決済手段はここ数年で多様化し、クレジットや電子マネーに加え、スマートフォンを活用したQRコード決済など新しいキャッシュレス手段が急速に浸透しています。また、COVID-19や労働力不足問題を背景に、非接触決済や無人決済といったニーズも増加の一途をたどっています。
そうしたなか、キャッシュレス化を検討している事業者は、どのようにサービス導入を進めていけば良いのでしょうか。今回は、精算機や券売機のキャッシュレス化に対応するためのポイントを紹介します。

目次

1.伸び続けるキャッシュレス決済とセミセルフレジ
2.精算機・券売機にまつわるトレンドと導入課題
3.精算機・券売機にキャッシュレス決済を導入する際のポイント
4.キャッシュレス決済導入の流れ
5.キャッシュレス決済の導入実績
6.今後はキャッシュレス決済の選択肢の豊富さも重要なポイントとなる

1. 伸び続けるキャッシュレス決済とセミセルフレジ

改正割賦販売法や国策のキャッシュレス化の推進を背景に、日本のキャッシュレス決済比率は2017年以降毎年3%近いペースで伸び続け、2019年には26.8%に達しました(※1)。加えてCOVID-19による社会情勢の変化もあり、流通や小売、特に食品スーパーでは有人レジからセミセルフレジ・セルフレジを導入する流れが高まっています。

対面接触の軽減やレジスピードの高速化だけでなく、企業にとっても業務効率化や雇用問題の改善などのメリットがあるため、この流れは今後も加速していくと考えられます。セミセルフレジは商品スキャン業務を店員が、会計を消費者が実施する方式で、キャッシュレス決済の自由度が高いこともあり特に拡大が見込まれています。

(※1)経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」 第二回資料(PDF)

2. 精算機・券売機にまつわるトレンドと導入課題

駐車場の精算機や施設などの券売機は、これまで現金での決済が主流でした。しかし近年、利便性やコスト削減、顧客の囲い込みやデータ分析による差別化などの理由から、キャッシュレス決済の導入が進んでいます。一例として、全国コイン式駐車場のキャッシュレス割合は、2020年4月時点でクレジット対応がほぼ半数の44%を占める結果となりました。(※2)また、クレジット以外のキャッシュレス決済のニーズも高まっており、電子マネーやQRコード決済などの方法も拡大しています。

しかし、精算機や券売機のキャッシュレス化には、先述の流通・小売とは異なる課題があります。改正割賦販売法に対応するためのインフラ整備に時間がかかるほか、精算機や券売機は基本的に無人環境下での運用となるため、例えば駐車場のような屋外設置型の精算機であれば、天候などの使用環境に対する適性が端末に求められます。さらに、ハードウェアの故障や通信不良など運用上発生しうるトラブルに対応するのはもちろん、システム面や運用面で予防・対処を行う仕組みの構築も必要になってきます。

(※2)一般社団法人日本パーキングビジネス『コイン式(時間貸)自動車駐車場市場に関する実態分析調査』2020年版

3. 精算機・券売機にキャッシュレス決済を導入する際のポイント

精算機・券売機にキャッシュレス決済を導入する際には、先述の課題をふまえ、以下のようなポイントを考慮すると良いでしょう。

設置環境に応じたハードウェア選定

屋外設置型の精算機の場合、防水、防風、防塵、防爆といった環境適正に配慮したハードウェアであるかどうかが重要になります。

無人利用環境下でのサポート体制の有無

無人利用特有のトラブルに対し、監視・復旧などのサービス供給体制や運用体制がどのようになっているかを確認しましょう。運用実績から豊富な経験値があるかどうかを判断するのも有効です。

決済手段の選定と拡張性の考慮

決済ニーズは多様化していますが、拡張性をどこまで考慮するかについては慎重に検討する必要があります。決済端末を組み込む場合、精算機側の開発コストが大きく、選択する機種やオプション機器、ソフトウェア機能によっては容易に拡張できないものもあるためです。

4. キャッシュレス決済導入の流れ

目安として、リリースまでにかかる期間は最短で3カ月、精算機の開発が必要な場合は約半年から1年ほどかかります。また、導入規模や個別開発の有無によっても導入にかかる期間は変わってきます。スケジュールを考慮しながら、下記の通り導入を進めていきます。

(1)導入したいキャッシュレス決済手段の確認

クレジット決済、電子マネーやQRコード決済など、導入する決済手段を検討します。決済対象の商品により異なりますが、多くの決済手段をサポートできる方が理想的です。

(2)導入する精算機および決済端末の選定

次に、決済端末を選定します。ハードウェアの選定を間違えると、決済手段追加の際にハードウェア自体の再選定が必要となってしまうため、慎重な検討が必要です。

(3)利用する決済サービス事業者の選定

要件と予算に合う事業者を選定します。利用する決済サービスを検討後、利用する決済事業者の調整と契約を行い、決済端末の購入先を検討します。

(4)開発および組み込み

上記の選定と契約を済ませたら、開発および組込みに着手します。この段階では、決済端末を組み込むための精算機や券売機の設計・開発、またはそのテストや検定などを行います。

(5)運用設計・運用保守

開発および組込みが完了したら、どのように運用していくかを考え運用設計を行います。端末のキッティング、設置などの出荷プロセスや保守運用プロセスを検討します。
故障した際の修理や端末交換、または遠隔地から行う無人端末の死活監視など、トラブルに迅速に対処するためのハードウェアおよびソフトウェアの日々の運用保守が必要です。

5. キャッシュレス決済の導入実績

さまざまな業界の精算機・券売機で取り入れられているキャッシュレス決済について、DNPの導入実績をご紹介します。

ゴルフ業界

自動精算機の更新に合わせて、改正割賦販売法への対応およびキャッシュレス決済システムを再構築。自動精算機との接続を実現し、全国約150カ所のゴルフ場にて展開・導入しています。

駐車場業界

改正割賦販売法による決済端末のIC化対応に伴い、駐車場利用料金のマルチ決済化を目的に、1台でマルチ決済が可能な端末を導入。2021年10月時点で約400台の駐車場で稼働しています。

その他各種施設券売機

駅や博物館、文化施設などにおけるチケット販売の無人化およびフルキャッシュレス化を推進。クレジット、電子マネー、QRコード決済に対応し、全国で約100台が稼働しています。

6. 今後はキャッシュレス決済の選択肢の豊富さも重要なポイントとなる

キャッシュレス化の波は、流通・小売だけでなく駐車場の精算機や無人券売機にも押し寄せています。非接触決済や無人決済は利便性や安全性の向上、業務の効率化などメリットが多くありますが、現状では改正割賦販売法に対応するためのインフラ整備に多くの事業者が時間を要している状態です。

しかし、現金を持ち歩かない消費者やクレジット以外の決済を望む消費者も増加しており、ニーズに対する企業側の対応が問われているのも事実です。今後、多様化するキャッシュレス決済のニーズにどのように対応していくかが、企業の成長の鍵となっていくでしょう。

2021年3月時点の情報です。

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