キャッシュレス決済~QRコードの次はNFCタグに注目【後編】
QRコードをはじめさまざまなキャッシュレス決済が浸透する中、導入の手軽さとセキュリティ性の高さを兼ね備えたNFCタグを用いた決済に注目が集まっています。前編に続き、後編ではNFCタグ決済の具体的な導入シーンとして対面決済だけでなく自動販売機などの非対面決済についてにも触れ、飲料メーカー様や自動販売機メーカー様に有用な情報をご紹介しています。またNFCタグ決済を導入する上でのポイントもご紹介します。
2022年9月20日公開
目次
1.店頭におけるNFCタグ決済のメリット
2.NFCタグで自動販売機決済の形も変わる?
3.自動販売機でのキャッシュレス対応による事業者メリット
4.NFCタグ決済を導入するためのポイント
5.まとめ
1.店頭におけるNFCタグ決済のメリット
前編ではキャッシュレス決済の現状と導入課題について触れましたが、なかでも店舗や事業者にとっての大きな課題は「端末導入費用等の初期費用が高い」ことであるとご紹介しました。(※1)この課題はキャッシュレス決済の普及を妨げる大きな理由のひとつと共通認識されています。
初期コスト低減の施策として近年はQRコード決済、特に「MPM方式」と呼ばれる加盟店固有のQRコードを印刷したPOP等のツールを設置するだけでよく、専用端末が不要な方式が普及しています。しかし、MPM方式はセキュリティ面での懸念もあり、QRコードに続く次なる手段として注目されているのが「NFCタグ決済」です。NFCタグ決済は、NFCタグの偽造のハードルが高くスマートフォンをタッチするだけで良い特長を有しています。(図1)そのため決済時に生活者の利用手順がより簡便になりレジ前での渋滞解消に繋がるなど、NFCタグ決済はこれまでのキャッシュレス決済が抱えていた課題の解決が期待されています。NFCタグ決済はQRコード決済同様専用端末なしで導入できるため、徐々に決済サービスとしての検討や取組事例もでてきています。(※2)
|
図1 QRコード決済とNFCタグ決済の概要比較
2.NFCタグで自動販売機決済の形も変わる?
決済シーンというと対面での店頭決済が思い出されますが、その他に自動販売機などの非対面での決済シーンがあります。コロナ禍にさらされている現在は特に非対面決済が注目されています。自動販売機は目的や利用場所によってさまざまで2022年現在全国で約270万台稼働していますが、キャッシュレス対応しているものは一部のメーカーに限られています。そのためか普段の支払いをキャッシュレス決済で行っていても自動販売機では現金利用が多いという調査結果もあります。(図2)
|
図2 キャッシュレス決済利用者における現金利用
それではなぜ自動販売機のキャッシュレス対応は進まないのでしょうか。その原因について考えてみたいと思います。通常キャッシュレス対応をしようとするとクレジットカードや電子マネーに対応できる決済端末を自動販売機に取り付ける必要がありますが、この決済端末の高い導入コストが最大の課題だと言えます。また自動販売機特有の事情として既存の自動販売機に対してキャッシュレス決済端末を後付けで設置することが難しいという状況もキャッシュレス対応が遅れている要因と考えられます。
しかし、自動販売機でのキャッシュレス対応は生活者に利便性を提供するだけでなく、事業者にとって大きなメリットをもたらすためキャッシュレス対応が望まれています。
3.自動販売機のキャッシュレス対応による事業者メリット
1)現金管理の煩雑性を解消
現金決済の場合、自動販売機内で管理されている売上金(現金)の回収時に販売データと売上金との差額がないか厳密に確認を行いますが、売上金の不足が発覚し回収担当者自身が不足額分を補填させられ問題となるケースが過去に発生しています。また回収した売上金(現金)を回収担当者が事務所に戻るまで持って回る必要があるため犯罪に巻き込まれるリスクがあります。このような状況からキャッシュレス対応により物理的な現金の回収作業が不要になることで、販売データと売上金の差額確認や現金の持ち運びがなくなるなどこれまで回収担当者が負っていた管理負荷やリスクが減るなど多くのメリットを享受できます。
2)硬貨や紙幣の変更対応からの解放
硬貨や紙幣は防犯上の理由から定期的に刷新が行われます。硬貨や紙幣が刷新される度に自動販売機側で新しい硬貨や紙幣を認識できるよう機器の改修が必要になりますが、これには多くの対応コストが必要になります。これらの対応がなくなることも事業者にとっては大きなメリットになります。直近では2024年に20年ぶりの紙幣の刷新が予定されており、これを機にキャッシュレス対応の機運が増しています。
DNPでは自動販売機でのキャッシュレス対応のハードルを下げ普及を後押しすべく高価な決済端末の代わりに安価なNFCタグを活用し、自動販売機に対してキャッシュレス決済のインターフェイスを手軽に整備できるNFCタグ決済サービスの開発を提携パートナーと進めております。(図3)これらの対応は既存のキャッシュレス対応と比較して初期導入コストの大幅削減を目指して進めています。
|
図3 自動販売機における決済方式の比較
4. NFCタグ決済を導入するためのポイント
店頭や自動販売機などのさまざまな場面でキャッシュレス対応を推進するNFCタグ決済。つづいてNFCタグ決済の導入にあたって押さえておくべきポイントをご紹介します。
1)高いセキュリティ性の実現
決済サービスは通常のサービスと比べて高いセキュリティを担保していることが必須となります。そのためQRコードと比較し偽造ハードルが高いNFCタグの活用は有望ですが、さらにセキュリティを高める工夫を加えることで決済サービスに必要なセキュリティ基準を十二分に満たすための取り組みが必要です。(図4)そのためにはサービス全体を俯瞰し、セキュリティ上のウィークポイントが存在するか明らかにした上で対策を施す必要があります。その際、生活者のユーザビリティも同時に考慮すべきことはいうまでもありません。
|
図4 セキュリティを高める取り組み例
2)生活者が利用しやすい決済手段の提供
キャッシュレス決済のニーズの高まりに伴い多くの決済サービスが提供されていますが、NFCタグを通じて連動させる決済サービスは生活者によく利用されているサービスを選ぶ必要があります。この時決済サービスとNFCタグとの相性の良し悪しがNFCタグ決済を導入する上での重要なポイントとなります。
5.まとめ
今回はNFCタグを活用した決済サービスについて対面での店頭決済や非対面での決済シーンへの展開についてメリットや導入する上でのポイントについてご紹介しました。普及が急速に進んでいるとはいえ、まだまだ課題も多く政府が目標として定めたキャッシュレス決済の普及率には及んでいません。その中でキャッシュレス決済対応に対し導入ハードルを下げるNFCタグ決済に期待が集まっており、市場でのサービス化の事例も増えています。
現在キャッシュレス決済導入を検討しているものの導入コストなどでお悩みになられているのであれば、これを機にNFCタグ決済をご検討されてはいかがでしょうか。
以下のコラムも読んでいただけますとNFCタグの特長や取り巻く環境の理解が深まると思いますので是非チェックしてみてください。