重点テーマ:人権・労働

人材開発・育成

代表取締役副社長 サステナビリティ推進委員会副委員長 宮健司の写真代表取締役副社長 サステナビリティ推進委員会副委員長 宮健司の写真

「人への投資」が企業価値の向上に結びつく好循環ループの確立

DNPグループがより良い未来をつくり出していくための“重要な基盤”であり“強みの源泉”は、社員一人ひとりの存在にほかなりません。社員が安心して挑戦を重ねることでそれぞれの強みを伸ばし、その強みを「対話」を通じて掛け合わせていくことによって、社会へ新しい価値を提供し続けていくことが可能となります。
こうした思いから、2019年から3年間にわたって人事諸制度を再構築し、その後もキャリア自律型の仕組みである”DNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」”を展開するなど、積極的な「人への投資」を継続して行うことで、一人ひとりの「キャリア自律」や「挑戦」を支援するとともに、その前提となる、より良い組織風土の醸成も進めています。

2022年度には、こうした取り組みの前提である“人に対するDNPグループの普遍的・基本的な考え方”を「人的資本ポリシー」として制定・公表し、「一人ひとりが強みを伸ばし、社会(社内・社外)で活躍できる人財へ成長してもらいたい」という思いと、「社員を大切にし、大切にした社員によって企業が成長し、その社員が社会をより豊かにしていく」という信念を明確にして、人的資本の強化、最大化を加速させています。
この人的資本ポリシーに基づいて、2023年度からの中期経営計画で、「人への投資」が企業価値向上に貢献するという好循環ループの確立に向け、「人的創造性(付加価値生産性)」をグローバルで飛躍的に高めていくことを宣言しました。

この達成に向けて、4つの重要課題を特定し、それぞれに具体策を定め、実行しているところです。さらにこれらの施策が人的創造性、そして財務価値、企業価値の向上に結びついているかを確認するために、DNP独自の「価値関連性分析」を行うことによって、人的資本強化に向けたそれぞれの施策と企業価値の関連性を分析・検証し、さらなる実効性の向上につなげています。
DNPグループはこれからも積極的かつ継続的に人への投資を行い、人的創造性を高めていくことで事業を通じた付加価値の最大化を図り、それをさらなる人への投資へ振り向けていく好循環を生み出し、最大の強みである人的資本をさらに伸ばしていきます。

人への投資の好循環ループ

マネジメントシステム

DNPは、経済環境、社会環境の変化を捉えつつ、「企業理念」とそれを受けた「事業ビジョン」の実現・実践に向けて必要とされる人的資本の最適確保と能動的人財の育成を推進する組織として、「人財開発部」を設置しています。社員一人ひとりが自立した個として、最大限に役割を果たし、自らの成長と自己実現を図ることができるよう、またその基盤となる企業風土を醸成するために、よりよい環境、仕組み、および組織を構築し、育成を図っています。

等級・賃金制度/採用状況

等級・賃金制度

「現在の役割と成果」に応じて等級を評価します。月例賃金、賞与基準と連動させ、年功的な要素は除いています。2007年3月に制度改定を実施。月例給与は「役割習熟給・役割基礎給」「役割成果給」を導入。賞与は、「考課分」と「等級別一律分」を軸に支給しています。

採用状況

新卒採用(単体)

第二新卒や未経験者も含む、新卒という枠組みでの採用として、求める人材像や選考ステップ、スケジュールなどを、応募者に対し公開しています。
また、等身大のDNPを理解してもらう目的で、若手社員によるリクルーティング・パートナー制度を導入しています。

キャリア採用(単体)

年齢制限を設けずに広くホームページで募集しています。また、募集職種の具体的な仕事内容を明確に公表しています。

インターンシップ(単体)

実社会での事業活動を体験したい教育機関や学生の要望に応えるため、仕事を体験できる場を提供しています。2023年度は、長期のインターンシップとしてビジネスコースの2テーマで46名、技術コースの59テーマで106名、デザインコースの3テーマで11名にご参加いただきました。また、短期のワークショップイベントとして872名を受け入れました。


人材開発・育成の取り組み・制度

DNPは、社会に貢献するという事業ビジョンの実現及び社員自らの成長と自己実現を同時に図ることのできる創発的な企業風土づくりが重要であると考えています。それぞれの価値観を尊重し、自らの能力を高め、努力を惜しまず、お互いに協調して対話を深めることができる自由闊達な風通しの良い職場づくりのため、さまざまな施策を展開しています。DNPでは、特に自律した社員を支援する人事制度や自己実現を支援する研修制度の充実を図っています。

各種制度

DNP価値目標制度(DVO制度)

DNPは、チーム力の強化とマネジメント変革、組織における信頼感の醸成と価値の創造をめざし、独自の価値目標制度である「DNP価値目標制度(DVO:DNP Value Objectives制度)」を展開しています。四半期ごとに、組織のKPIに基づく「組織目標」を設定するとともに、各社員とチームの自律性・自立性を促す「チーム目標」を設定し、週次のチームミーティング、1on1ミーティングを通して、各目標に対する進捗確認を実施しています。この取り組みにより、社員一人ひとりのチーム意識の醸成や成果・プロセスの見える化、自律的キャリア支援を促進しています。

評価制度

DNPは、人事評価制度において、実績や成果に加え、チームへの貢献や他部門との連携、他者への支援など、社員の行動やプロセスについても評価する仕組みとしています。期中においては、各職群・各等級に求められる期待役割・期待成果(=期待貢献)を基に、「DNP価値目標制度」、週次のチームミーティング、1on1ミーティングを通して、社員一人ひとりの取り組みや成果をリアルタイムに把握しています。それを踏まえ、各期末には、組織目標達成に向けた期待役割・期待成果の実績や、各等級レベルに応じた行動・プロセスの状況、人材育成・役割レベルのレベルアップに関わる内容を評価しています。さらに目標の進展状況、役割レベル表に基づく職群・等級別期待発揮度などを加味し、総合評価を行っています。

社内人材公募制度

人材の有効活用と組織の活性化を図るため、DNPグループの事業戦略に沿った製品・技術・事業開発および新しいソリューションを実現できる、専門的な能力・経験を有する人材をグループ内で公募し、社員が自主的に職場を選択できる機会を提供しています。2023年度は133名募集し、81名の異動が実現しました。

自己申告制度

社員が自らのキャリア形成を思い描き、その達成のための自己啓発や異動希望を「自己申告書」に記入し、年1回上長に申告する制度です。社員の自己啓発への意欲を喚起し、主体的な実践力を身につけさせるとともに、管理職者には部下の指導・育成に関する意識啓発ができます。2023年度は211名の面談を実施、85名の異動が実現しました。

社内FA制度

自身のキャリアアップのために、DNPグループ全社から今とは違った職種や部門への異動を、自ら積極的にアピールできる制度です。2023年度は15名が宣言し、8名の異動が実現しました。

社内留学制度

社員の自発的な意思により、一定期間他部門での経験を積み、その経験と習得した知識・能力を活かしたうえで、元の部署に戻って担当業務の幅を拡大するとともに質の向上を図っていく制度です。

資格取得奨励制度

業務に必要な専門知識や技術、資格の修得に挑戦し、無事に修得することができた社員に奨励金を支給しています(約130資格、最高10万円)。2023年度は、DNPグループ全体で834名(DNP単体433名)が制度を利用しました。

専門職制度

極めて高いレベルの専門性を有し、社内および社外で評価されている者に対して、特別に処遇するための制度です。今までは専門性のレベルに合わせて、フェロー、主席専門職でしたが、2021年度より新たに主幹専門職を新設し、3つの称号となっています。

  • フェロー
    主席専門職の中で、優れた人格を持ち、社会的に権威ある賞を受賞したものや顕著な業績を上げたものをフェローに認定しています。専門職制度の最上位の称号であるフェローを目指して、キャリア形成を図ってもらうことを期待しています。制度発足以来、累計3名が認定されています。
  • 主席専門職(主席研究員、主席企画員、主席技術員)
    非常に高度な専門性を生かし、社内外で活躍している者の中から、他薦、自薦の認定申請を年1回受け付け、成果、社外評価、社内評価およびコンピテンシー評価に「認定基準」を設け、評価・認定をしています。2023年度は認定者数6名、制度発足以来、累計66名が認定されています。
  • 主幹専門職(主幹研究員、主幹企画員、主幹技術員)
    高度な専門性を生かし、各部門で活躍している者の中から、年1回認定をしています。2023年度は167名が認定されました。

ICTプロフェッショナル制度

一定規模以上のプロジェクトを扱うプロジェクトマネージャーに特別手当を支給するなど、ICT人材を適切に処遇していく制度です。

キャリア相談室

キャリアに関する社員の考え方や将来への取り組み方、ワーク・ライフバランス、働く上で困っていることなどについて、対面とオンラインでカウンセリングを行っています。また、介護の悩みを抱える社員のために、介護の専門家が同席する「介護相談会」を定期的に開催しています。2023年度はキャリア相談室を常設している本社(東京)に加え、全国7カ所で出張相談会を実施し、779件の相談がありました。

マイスター制度

モノづくりにおける貴重な職人的技能を持った製造技能職者を対象に、2001年より導入しています。製造業の原点に立ちかえり、職人的技能の継承の重要性を認識し、育成、評価、処遇する制度です。
マイスター認定の3つの要件「専門知識・技能・創造力」「知名度・信頼感」「指導力」のうち、技能の伝承という制度の趣旨から、「指導力」は特に重要な評価項目としています。2023年度には4名認定され、制度発足以来、累計85名が認定されています。

表彰制度

持続可能なより良い社会、より心豊かな暮らしの実現に向けて、社員のモチベーションを高め、新しい価値の創出を加速させるため、従来の全社の表彰制度を2020年度に「DNPアワード」にしました。「価値創造」の視点で優れた活動を表彰し、その知見をグループ内で共有する取り組みを強化しています。また、社員の永年の勤務を称える制度に「アニバーサリー表彰」があり、勤続10年時と25年時、定年退職時に表彰しています。
2024年7月には、2023年度の取り組みを主な対象とする表彰式を実施しました。「DNPアワード」の大賞1件・最優秀賞1件・優秀賞4件などを選出したほか、 「アニバーサリー表彰」として、勤続25年の社員を表彰しました。また、2023年から表彰対象に加えた、価値創出の基盤となる「組織風土や組織・チーム力強化」の取り組みについて、2024年に新たに定めた「DNPウェルビーイング」の考え方を基に表彰する「DNPウェルビーイング表彰」へとブラッシュアップし、30件の優れた取組みを表彰しています。

研修プログラム

DNPは、社会に価値を提供していく人材を育成するため、本社に人材開発の専任部署を設置しています。この人材開発部門を中心に、本社部門と事業部門が連携を図り、年間教育計画に基づき、階層別研修や職種別研修、テーマ別研修(選抜・選択)のほか、eラーニング、通信教育を通じて社員教育を行っています。

研修プログラムについて表した図です。横軸で対象者、縦軸で研修の種類を表しています。対象者は、新入社員、若手・中堅社員・班長クラス、課長手前社員・係長クラス、課長クラス、部長クラス、事業部長クラス・本部長クラスです。研修は職種別とテーマ別に分かれており、職種別はスタッフ職、営業・企画職、ICT開発職、研究・技術開発職、生産管理職、製造・制作職。テーマ別はグローバル研修、ビジネススキル研修、DX・ICT研修、D&I研修、その他に分かれています。

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