1杯のコーヒーから世界を知る。社会課題解決のヒントを届けるDNPのフェアトレード活動
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持続可能な社会づくりに向けて、国連で採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals=SDGs)。このSDGsが目指す17項目の目標のうち、特に8つの目標達成に大きく貢献するものとして、フェアトレードに国際社会が注目をしています。
DNPは、フェアトレード(※1)認証コーヒーの社内消費が100万杯に達するなど、日本におけるフェアトレード活動の黎明期から普及に取り組んできました。その功績をたたえ2018年5月、特定非営利活動法人フェアトレード·ラベル·ジャパン(FLJ)から国内初の表彰状が贈られました。今回は、このDNPのフェアトレード普及活動を支えてきたCSR·環境部の佐藤 淳、福地寿江の両名に話を聞きました。
目次
- 8つの目標についての詳細は、特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンのホームページ「フェアトレードとサスティナビリティ」をご覧ください。
https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/sus.php(別ウィンドウで開く)
- ※1:フェアトレードは、開発途上国の原材料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、立場の弱い生産者や労働者の生活改善と自立をめざす貿易の仕組みです。
(右)CSR・環境部CSRグループ リーダー
佐藤 淳
(左)CSR・環境部 CSRグループ
福地 寿江
DNPのCSR活動については、こちらをご覧ください。
DNPのCSRの軸になる活動をつくりたい
DNPの応接室や社内にあるカフェ店舗で毎日提供されているフェアトレードコーヒー。今では社員にとって身近な存在になり、社外からもCSRの先進的な事例としてDNPのフェアトレード活動が取り上げられる機会も増えた。しかし、その道のりは平坦ではなかった。
2005年、CSRグループの福地はDNPのCSRの軸になる活動を模索していた。「DNPが取り組むべき社会貢献活動は何か」「事業活動と両立するものは何か」と情報収集に奔走していたある日、福地の上司が旅行先のアメリカから1つのヒントを持ち帰ってきた。
福地は当時を振り返る。
「アメリカのコーヒーショップでフェアトレードのコーヒーを扱っているという情報を教えてくれたんです。当時、『フェアトレード』という言葉は聞いたことがあったものの、日本ではまだ馴染みがなく、どのような商品があって、どこで買えるのかが分かりませんでした。しかし、『アメリカで広まっているのなら、きっと日本でも近いうちに広まるだろう』と考え、DNPとしてフェアトレード活動に取り組む方法を検討しはじめました」
プロジェクトはすぐに動き出した。DNPがフェアトレード認証製品を取り扱う方法として、社内消費に着目。応接室や社内カフェで提供されるコーヒーをフェアトレード認証製品に切り替えるというアイデアに辿り着いた。日常的に消費されるコーヒーなら、無理なくフェアトレード活動を続けていける。しかも、社員にも認知が広まりやすく、来客にもDNPの取り組みを伝えることができる。取り組まない理由が見つからなかった。
しかし、応接室のコーヒーをフェアトレード認証製品に切り替えるとなると、当然今までよりもコストが上がる。また、日本でまだフェアトレードの概念が一般的でなかったこともあり、賛同を得て実施するまでには時間がかかるだろうと考えていた。
だが、役員にプレゼンした結果は予想を覆すものだった。「日々の消費活動が社会貢献に繋がるのなら、いいものに変えるべき」「今すぐに取り組もう」との声で実施が決まったのだ。かくして、CSRグループのメンバーは、フェアトレード活動に取り組むフロントランナーとして走りはじめた。
社会課題を解決するビジネスのヒントに
DNPがフェアトレード活動に取り組む理由は何か。CSRグループのリーダー佐藤は次のように語る。
「社会貢献にもいろいろな形がありますが、単に企業がお金を払って支援するという一方通行ではなく、企業として何らかの価値や経験を得られる双方向の要素が加わることで、永続的な取り組みになるのではないでしょうか。そこで、参加する側の付加価値として、社員教育という側面に注目しました。
DNPのビジネスはBtoBが多く、社員は日々の業務で生活者を意識する機会が少ない。しかし、社会課題を解決するビジネスを生み出すためには、世の中で何が起きているのか、誰が困っているのか、それに対してどんな解決方法があるのかを知ることが欠かせません。
例えば、社員一人ひとりが、社内でフェアトレード認証製品について知ることで日常生活でもフェアトレード製品を選ぶようになることや、来社されるお客様に、応接で出されるコーヒーがフェアトレード認証製品であることを説明するなどもそうです。主体的にフェアトレード認証製品に触れることで、社会的感度を高め、新しいビジネスの発想の一助にしてもらえればと考えたのです」
2006年に社内消費のコーヒーがフェアトレード認証製品のものに切り替わって以降、DNPではさまざまなフェアトレード活動が実施されている。毎年5月に行っている「フェアトレード月間キャンペーン」では、社員食堂でフェアトレード認証製品を使ったメニューを提供。2014年以降はフェアトレード認証製品を使った自社キャラクターのグッズ作成や、アイスクリームやコーヒードリップバッグの社内販売を行うなど、広がりをみせている。
- 写真:「ベン&ジェリーズ」のアイスクリーム(右上)、DNPオリジナルキャラクターを使用したコットンバッグとブックカバー(中央)、株式会社アートコーヒーと共同企画したドリップバックタイプのコーヒー(右下)、これら全てが国際フェアトレード認証製品で、社内のいくつかの拠点で購入できます。
来客スペースで使用するコースーター(左下)には、DNPがフェアトレードを応援していることが記載されています。
100万杯を達成できたのは、「日常」になったから
フェアトレード活動を開始してから約12年を経た2018年5月。DNPでのフェアトレードコーヒーの社内消費が100万杯に到達(2018年3月時点)し、特定非営利活動法人フェアトレード·ラベル・ジャパン(※2)より、日本企業としては初となる表彰状が贈られた。一過性ではなく、10年以上続けてきたことが評価されたのだ。
- ※2:特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン
Fairtrade Internationalの構成メンバーとして日本国内における、国際フェアトレード認証ラベルのライセンス事業、製品認証事業、フェアトレードの教育啓発活動を主に行っています。
http://www.fairtrade-jp.org/(別ウィンドウで開く)
10年以上の長期にわたってフェアトレード活動を続けてこられた理由として、佐藤は「特別なことをするのではなく、日々の生活に溶け込ませることができたから」と語る。今ではフェアトレードの商品があることが社員にとって当たり前となり、フェアトレード認証製品を扱うキャンペーンや新商品登場の際には、社員から社員へ、そして社員の家族へと草の根で広がっている。
「新入社員が『フェアトレード活動をしているからDNPを選んだ』 と言ってくれたり、私たちが知らないうちに社内の売店などでフェアトレード認証製品を扱っている拠点が増えていたり。フェアトレード認証製品を扱うことが会社のカルチャーとして根付いているのをうれしく思います。まさに、継続は力なりです」と福地は話す。
DNPのフェアトレードへの取り組みは、CSR活動の成功事例として注目が高まっている。CSRやフェアトレードに関心が高い企業や学生からのヒアリングの依頼が増えているほか、学校の教科書でDNPのフェアトレード活動が紹介されたこともある。近年では、同じようにフェアトレード活動に取り組む企業との“連携”も深めており、普及活動を一緒に企画するケースも出てきている。
「企業が連携することで、より大きなインパクトが生まれます。商品が増えて消費が活性化すれば、需要も伸びる。10年前は多くの人にとってフェアトレードは馴染みの薄いものでしたが、最近は学校教育でもフェアトレードが取り上げられており、今の子供たちにとってはもはや当たり前のこと。時代の価値観が変わりつつある中、先行して取り組んできた企業が取り組むべき次の展開として、DNPが企業連携のハブとなることが重要だと考えています」と佐藤は話す。
パイオニアであり続けるために
フェアトレードコーヒーを扱っているパートナー企業を探すこと自体が大変だったという活動当初に比べ、現在のフェアトレードを取り巻く環境はかなり進化を遂げている。しかし、佐藤、福地は「まだ、終わりではない」と口を揃える。
「私たちが率先して取り組むことで、あとに続く企業が出てきてくれるのはうれしい。誰も取り組んでいないことに取り組むことは困難もありますが、それはパイオニアとしての責任です。さらに言えば、SDGsがめざしている持続可能な社会の実現に大きな役割を果たすことができます。これからも挑戦を続けるという姿勢は持ち続けたいです」と佐藤。福地も、「社会課題を解決するために私たちがやれることはまだたくさんあるはず。現状に留まらずに、アンテナを張って情報を集め、新しい取り組みにも積極的にチャレンジしていきたい」と次の展開への意欲を語ってくれた。
「フェアトレードであることが当たり前」の社会をめざすパイオニアとして、DNPのCSRチームはこれからも走り続けていく。
※記載された情報は公開日現在のものです。あらかじめご了承下さい。
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