3Dメタバースによる、子どもたちの学びと居場所の空間とは

DNPは、不登校や日本語指導が必要な児童生徒が学び、居場所として利用できる3Dメタバース「メタバース空間を活用したラーニングシステム」を提供しています。2023年9月には東京都の事業に採択され、28自治体に導入。2024年には静岡県の事業にも採択されました。本コラムでは、教育分野における3Dメタバースの特徴について紹介します。

増加傾向にある、不登校や日本語指導が必要な児童生徒数

2024年10月31日に文部科学省より発表された「令和5年度小・中学校における不登校児童生徒数調査」では、前年より15.9%増加した346,482人 *1 の児童生徒が不登校の状態であることがわかりました。不登校の理由としては、「学校生活へのやる気が出ない」「不安・抑うつ」「生活リズムや体調への不安」「学業不振」「友人関係の問題」などが挙げられています *1 。また、日本語指導が必要な児童生徒も増加傾向にあり、自治体や学校現場では既存の支援体制の見直しが求められています *2

文部科学省は、2023年3月31日に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を掲げ、支援の充実を全国に通知。支援に関する基本的な考え方である「誰もが安心して学べる魅力ある学校づくり」に応じる施策のひとつとして、ICTを活用した多様な学び方が示され *3 、現在、さまざまな企業や団体が一丸となってこの課題に取り組んでいます。

教育分野で活用いただいている3Dメタバース

新たな学び方の選択肢を提供

DNPは、不登校や日本語指導が必要な児童生徒の学びや居場所の空間として、GIGA端末で利用できる「メタバース空間を活用したラーニングシステム」を提供しています。

コミュニケーションプロセスの説明

3Dメタバースは空間内が立体的で、現実に近い没入感やコミュニケーション機能を有していることが特徴です。これにより、幅広い種類の学習コンテンツや学習機会を利用者へ提供することができます。さらに、3Dの空間環境には児童生徒同士のコミュニケーションや自己表現を促す効果がみられており、空間内で人と人とのつながりを育み、安心安全な空間の形成へと寄与します。

実際に参加いただいた支援員の方からも、「外に出づらいお子様にとって、家庭以外で関わりを持てる場となる」「実際の人間関係に近い感覚でコミュニケーションをかわせる」など3Dメタバースの効果を実感いただいています。

DNPが提供する「メタバース空間を活用したラーニングシステム」の特徴

①GIGA端末に対応した3Dメタバース

3Dメタバースは、より高い没入感を得られ、子ども同士のコミュニケーションや体験型学習にメリットがあります。DNPでは、monoAI technology社と連携し、GIGA端末対応の3Dメタバースを開発。利用された東京都担当者様からも「3Dメタバースは臨場感のある空間をつくることができ、没入感の高い体験を提供できる」と評価をいただきました。

②学び、居場所に適した空間デザイン

空間内の説明

これまでも、児童生徒向けにメタバースで国際交流や職業体験の開催など、教育現場向けサービスを提供してきました。

本サービスでは、これらで得た学びをもとに、多様な学び方を想定したさまざまな機能を整備しました。例えば、子ども達が自由に自己表現できるよう動物も含めた40種類のアバターを用意し、また、プライバシーが確保されたエリアを設けるなど、過ごしやすい空間デザインにしました。

③安心・安全に利用できる環境

登録したユーザーのみ利用できるクローズドな環境を提供します。個人情報と紐付けない方式で、入室用ID/パスワードを発行します。

不登校の児童生徒への支援経験が豊富で、コミュニケーションや対応について徹底した指導を受けたオンライン支援員が学びの伴走をし、安心して学んでいただけます。文字チャットは、事前登録のNGワードを自動で検知・削除し、誹謗中傷を未然に防ぎます。

アバターデザイン

さまざまな種類のアバターデザイン

今後について

実際に当サービスを利用された方からは、「学校に行きづらい中、仮想空間は自分に合っている」「顔の見える対面でないからこそ、子どもたちが自分らしく振舞えている様子が窺えた」などさまざまな感想をいただきました。

利用調査から、総じて児童生徒はデジタルデバイスへの適応が早く、メタバースへの抵抗が少ないことがわかりました。初めてのお子さまでも、空間の利用しやすさを感じてもらえたようです。さらに、家から出ることが難しかった児童生徒が適応指導教室に通い始めた事例や、出席認定に向けた取り組みを実施する自治体が増えていることもわかりました。

DNPでは、こうした社会課題や子ども達の悩み対する多様な選択肢をスピーディーに検証・提供し、その過程で生じたさまざまな好事例を、多くの自治体に横展開することで、新たな支援の可能性を開いていきたいと考えています。

また同時に、安心安全な空間設計があって、初めて3Dメタバースなどの新たな教育の選択肢が活かされると考えています。今後も、新たな教育体験の提供と、誰一人取り残されない教育環境づくりに取り組んでまいります。

引用

*1 文部科学省.「令和5年度 調査児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」.2024年10月31日.

*2 文部科学省.「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果の概要」. 2024年8月8日.

*3 文部科学省.「不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方」.

※ この情報は、2024年12月10日時点のものです。

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