25年3月「マイナ免許証」導入!企業担当者が押さえたいポイント
2025年3月24日から「マイナンバーカードと運転免許証の一体化」が始まります。この新制度で、運転免許証を持ち歩く必要がなくなり国民には便利になる一方、レンタカー業界、自動車教習所、運輸業界、アルコール検知器メーカーなど、免許証を業務で使用している企業には迅速な対応が求められます。今後は、免許証情報がICチップに記録され、従来のような目視確認ができなくなるため、ICリーダーやシステムの導入が不可欠です。対応が遅れると、業務に支障をきたす可能性が高まります。
本記事では、企業が今すぐ準備を進めるべき理由と具体的な対応策を説明します。
(2024年11月時点情報)
「マイナンバーカードと運転免許証の一体化」の施行・運用までの流れ
① 政策の発表(2020年10月16日)
2020年10月16日、小此木八郎内閣府特命担当大臣の記者会見にて、運転免許証とマイナンバーカードの一体化の方針が発表されました。
※参考:内閣府 記者会見要旨-小此木内閣府特命担当大臣 記者会見要旨(2020年10月16日)
② 道路交通法の改正と施行日決定(2022年3月4日・4月15日)
2022年3月4日、運転免許証とマイナンバーカードの一体化に向けた「道路交通法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、正式に法整備が進められることが発表されました。
同年4月15日に第208回国会で承認され、施行日が2025年3月24日と定められています。これにより、希望者は「マイナ免許証」を選択できるようになります。
※参考:警察庁資料-2022年(令和4年)版警察白書抜粋
※参考:議会承認記録-第208回国会 内閣委員会 第19号(2022年4月15日)
③ マイナ免許証の運用開始(2025年3月24日)
2025年3月24日から「マイナ免許証」が正式に運用開始され、マイナンバーカードで運転免許証情報が管理できるようになります。
※参考:警察庁プレスリリース(2024年9月12日発表)
「マイナンバーカードと運転免許証の一体化」が義務ではないのに、
免許証を業務で使用する企業が準備を進めるべき理由
マイナンバーカードと運転免許証の一体化は義務ではありませんが、企業にとって無視できない変化です。特に、既存のマイナンバーカードに免許証の情報がICチップにより記録されるため、免許証の情報は従来のような目視での確認ができません。対応を怠ると、業務効率が低下し、顧客対応が遅れるリスクが高まるため、ICリーダーやシステムの導入が必要になります。また、免許証情報を入手するには本人が定めた暗証番号(PIN)入力によるアクセスが必須となり、新たに免許証情報用の暗証番号(PIN)も設定することになります。
【補足情報】 マイナ免許証開始後、運転免許証の持ち方
2025年3月24日以降、国民は次の3つのパターンから運転免許証の持ち方を選択できます。 ※注1
パターン① マイナンバーカードと運転免許証が一体化された「マイナ免許証」のみを保有
パターン② マイナ免許証と従来の運転免許証の2枚を保有
パターン③ 従来の運転免許証のみを保有
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企業はこれら3つのケースすべてに対応できる体制を整える必要があります。特に、マイナ免許証を選択する国民の対応には、免許証情報はICチップに記録されるため、ICチップを読み取るための専用ICリーダーやシステムが必要不可欠です。
※注1 参考:国民公安委員会-国家公安委員会委員長記者会見要旨(関連部分のみ)(2024年9月13日)
免許証確認の役割は、本人確認と免許資格確認の2つ
企業における免許証の確認作業には、主に2つの役割があります。
- ① 本人確認 免許証を使用して、その人物が正しい本人であることを確認する作業です。免許証が偽造されていないか、提示された本人確認書類と申告内容を照合し、申請者本人に関するものであることを確認します。
- ② 免許資格の確認 免許証に記載された資格が有効であり、適切な資格を保有していることを確認する作業です。運用によって、免許の有効期限、条件(例:眼鏡使用など)も確認する必要があります。
※ マイナ免許証で本人確認を行う場合には、マイナ免許証を従来通りマイナンバーカードとして確認できれば問題ありません。ただし、免許証の詳細情報(氏名、住所、生年月日、性別を除く)まで確認する必要がある場合には対応が必要です。
上記、2つのうちどちらかでも免許証確認の役割を担っている場合には、マイナ免許証対応の対象になります。
マイナ免許証開始により、影響を受ける業界
マイナ免許証への対応は、特定の業界で特に重要になります。以下の業界では、免許証確認が業務の一環となっているため、対応が遅れると業務全体に悪影響が及ぶ可能性があります。
- ① 運輸業界 物流・運送業務では、運転手の免許携帯確認や、乗車可能な車両を特定するために免許証確認が不可欠です。対応が遅れると、免許不携帯や本来乗車できない車両で運転してしまうなどの交通違反を誘発し、コンプライアンス上のリスクが発生する恐れがあります。
- ② レンタカー業界 レンタカー貸渡時にお客様の免許証を確認することが不可欠です。対応が遅れると顧客流出や販売機会損失のリスクが発生します。
- ③ 自動車教習所業界 高齢者講習やすでに免許証を持っている教習生の入校時には、免許証の確認が不可欠です。対応が遅れると教習生情報の取得・管理の面で業務負担が増えます。
- ④ アルコール検知器メーカー 運転免許証と連携するシステムを提供している企業は、マイナ免許証への対応が遅れると、ドライバーとアルコール結果の紐づけ等で影響が発生します。
従来の運転免許証とマイナ免許証での書き込み情報の変化
マイナ免許証の導入に伴い、従来の運転免許証に比べて、記載される情報が大きく変わります。
従来の運転免許証では、ほとんどの情報がカード表面に記載されていましたが、マイナ免許証では生年月日・氏名・住所を除くすべての情報がICチップに格納され、カード表面からは確認できなくなります。
【重要な変更点】
・フリー領域の廃止
従来の免許証にあったフリー領域がなくなり、すべての免許証情報へのアクセスには暗証番号(PIN)入力が必須となります。
※フリー領域とは、免許証情報の確認時に、暗証番号(PIN)入力不要でも閲覧可能であった共通データ要素を指します。マイナ免許証では新たに4桁の暗証番号(PIN)を設定し、運転免許証の有効期限や免許証情報の確認にはこの暗証番号(PIN)の入力が必須になります。この番号を忘れると、本人であっても免許証情報にアクセスできません(忘れてしまった場合は警察署や免許センターで番号照会する必要があります)。
・有効期限の管理
有効期限は、新たに暗証番号(PIN)で保護された領域(WEF)に格納され、暗証番号(PIN)入力なしでは確認できません。
※WEF:Working Elementary File(作業用基礎ファイル)の略称
・交付年月日、本籍、照会番号、公安委員会名などの情報廃止
交付年月日、本籍は格納情報としてなくなり、確認できません。
従来の運転免許証とマイナ免許証の書き込み情報の違い
以下に、従来の運転免許証とマイナ免許証の主な違いをまとめました。(一部抜粋)
① 氏名、住所、生年月日、顔写真は、マイナ免許証の領域には書き込まれません。
※マイナンバーカードのカード表面および券面アプリ(券面事項入力補助アプリ等)には記載されます。
② 交付年月日、照会番号、公安委員会名、本籍等は、マイナ免許証の領域には書き込まれません。
③ その他情報の有効期限、免許証の色区分等については、マイナ免許証の領域に書き込まれます。そのため、これらの情報を確認するためには、ICチップを読み取る専用機器が必要になります。
(従来の目視確認だけでは対応できないため、企業には新たな確認手段の導入が不可欠です。)
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企業が準備すべき対応
企業がマイナ免許証に対応するためには、運用に合わせていくつかの具体的な対応策を進める必要があります。これらの対応を怠ると、業務の効率化が図れず、顧客対応に支障をきたす可能性があります。
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ICチップの読み取り機器の導入
従来の目視確認では対応できないため、ICリーダーを導入し、ICチップ内の情報を迅速かつ正確に確認するシステムを整える必要があります。特にレンタカー業界や運輸業界では、対応の遅れが業務効率に大きな影響を与えるため、お早めの導入が重要です。
NFCリーダーは、運転免許証情報の確認に最適化された業務用モデルで、公的機関発行のIC付き書類の読み取り・書き込みにも対応しています。金属面への設置が可能(金属干渉対応)な設計により、ICデータを正確かつ迅速に取得できるため、業務効率を大幅に向上させます。
システムの導入/アップデート
免許証管理システムや免許証確認の業務プロセスも、ICチップ対応に合わせて導入/アップデートする必要があります。既存システムがICチップに対応していない場合、専用ソフトウエアの導入やシステムの刷新が求められます。ICチップ情報を自動で記録・管理できるようになることで、業務の効率化が進み、ミスや確認漏れのリスクも軽減されます。
DNP運転免許証読み取り/認証ソフトウェアは、ドライバー管理、ICチップデータを活用した個人認証、さらに真贋判定補助などの機能に最適化されています。システム組み込みが簡単にできるSDKとして、システムの開発の効率を大幅に向上させることが可能です。また、自動車教習所向けの「運転免許証確認アプリケーション」では、ICデータの読み取りや確認記録の印刷も簡単に行えます。
補足情報 : 「マイナンバーカードと運転免許証の一体化」の国民のメリット
マイナンバーカードと運転免許証の一体化をすることで、国民は次のような利便性が得られます。
・運転免許証の携帯が不要に
マイナンバーカード1枚で、運転免許証を持ち歩く必要がなくなります。
・住所変更手続きの簡素化
警察への届出が不要になり、住所変更は市町村への手続きだけで完結します。
・費用の軽減
運転免許証の作成に要する費用が不要になり、更新手数料が結果として安価になります。
・免許証更新時の更新講習がオンライン化
免許証更新時に免許センターなどで講習を受講する必要があったところが、自宅などオンラインで受講できるようになります。
※無事故・無違反の「優良運転者」、軽微な違反のみの「一般運転者」が対象であり、視力検査等は免許センターで行う必要がある。
※参考:国民公安委員会-国家公安委員会委員長(代理)記者会見要旨(2024年9月12日)
最後に
マイナ免許証の導入により、企業の免許証確認業務には大きな調整が求められます。従来の目視確認に加え、ICチップに格納された情報を読み取るICリーダーの導入が必要です。また、免許証管理システムが未整備の企業では新規導入が、既存のシステムがある企業ではICチップ対応に合わせたアップデートが求められます。これらの対応が遅れると、業務効率が低下し、顧客対応の遅延や混乱が発生する可能性があります。
企業がスムーズにマイナ免許証に対応するためには、システム整備が重要です。必要な機器とシステムを整え、業務効率を維持するために早めに準備を進めましょう。
製品の企画・販売元
※内容について、予告なく変更することがあります。
このコラムで紹介した製品・サービス
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電子車検証、マイナンバーカード、運転免許証などの非接触ICカードの読み取り/書き込みに対応
NFCリーダー
NFCリーダーは、2023年1月より施行の電子車検証、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書など、公的機関が発行したIC付き書類読み取り/書き込みに対応したICリーダーライターで、金属面への設置が可能(金属干渉対応)な業務用モデルです。 -
ソフトウェア開発キット
DNP運転免許証読み取り/認証ソフトウェア
DNP運転免許証読み取り/認証ソフトウェアは、運転免許証(以下、免許証)によるドライバー管理・ICチップデータを活用した社員証のような個人認証・ICチップデータとスキャン画像による本人確認時のチェック(真贋判定補助)などの機能を簡単にシステム組み込み可能なソフトウェア開発キット(SDK:Software Development Kit)です。スタンドアローンで運用向けの「運転免許証確認アプリケーション」では、自動車教習所(以下、教習所)など、免許証チェック(真贋判定補助/ICチップデータ読み取り)や、帳票(確認記録)の印刷が、簡単にできます。