共創型で企業の生成AI導入を支援する「DNP生成AIラボ・東京」

生成AIを活用し、多様なテーマで社外のパートナーとの協働(コラボレーション)をユースケースを増やし、その可能性を広めることを目的に開設された「DNP生成AIラボ・東京」。活動の中心となっている4人のメンバーによる座談会で、業務やモノづくりのプロセスにおける生成AIの革新性や共創型アプローチの重要性について議論しました。

2024年4月時点の情報です。


情報イノベーション事業部 ICTセンター ICTDX本部 DX推進部 佐藤陽平・御園生高太朗・神山直都・大野史暁

生成AIの進化と可能性:日々拡大する技術の魅力

佐藤:生成AIを活用した新しい価値創出の拠点として、「DNP生成AIラボ・東京(以下、生成AIラボ)」を2023年12月に開設しました。生成AIを活用した多様なテーマで社外のパートナーとの協働を促進し、新しい価値の創出をめざしています。2024年4月9日現在、約4カ月間で1600件のユースケースと70件以上のプロトタイピングを実現しました。例えば、歯車を回すたびに異なるオリジナルの物語を朗読するオルゴールや、情報端末に映る景色を自動的に文章化して音声で伝えるアプリなどがあります。

御園生:生成AIラボは、技術研究にとどまらず、実際のビジネスへの応用を重視しています。そのため、開発担当者がお客さまと直接対話し、具体的なニーズや課題を把握するようにしています。その後、プロトタイピングを通じて迅速に価値検証を行い、実際の導入までをサポートします。実際の課題に即したソリューションを提供することで、業務効率化や新たなビジネスチャンスの創出に貢献したいと考えています。

大野:以前の生成AIは機械的な作業が中心でしたが、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(LLM)が登場し、インターフェイスとしての魅力が増しました。これ以降、生成AIは多くの人にとってアクセスしやすく、興味深いものとなっています。最近では動画生成AI「SORA」が登場するなど、日々新しい技術が開発されています。生成AIの可能性は日単位で拡大しており、お客さまの関心もそれに比例して高まっていることを実感しています。

DNP生成AIラボ・東京の開設主旨・役割についての紹介をする佐藤氏と御園生氏

生成AIの役割と使命:人間中心の未来を支える革新的ツール

佐藤:生成AIは革新的で、活用範囲も日々拡大しています。生成AIの能力が人間を超える部分が増えていくのは間違いありません。メールの返信や議事録の作成は一例ですが、従来は人手で行っていた作業をAIが代替することで、大幅な時間短縮と効率化が実現されます。「AIが人間の仕事を奪う」という意見を聞きますが、開発者としては「人間が作ったツールの域は超えない」と考えています。何のために、どう使うのかという目的意識をもつことが重要です。

大野:一時的に仕事がなくなることはあるかもしれませんが、人類が火や鉄を手に入れたときや蒸気機関が産業革命をもたらしたときのように、“便利な道具をどのように使って豊かさを生み出すか”ということなのだと思います。自動車は人間より速く走れますが、自動車に支配されることはありませんよね。生成AIも同じで、「人間のライバル」ではなく「人間を力強く助けるツール」だと思います。

神山:定型業務や反復作業が自動化や生成AIに置き換わっていくのは、避けられない時代の流れです。生成AIが、企業活動や仕事のあり方を変えていくのは間違いありません。とはいえ、変わらない、変わってはいけないことがあると思います。それは「人間中心」ということです。日々の暮らしや未来にワクワクしたり、将来必要とされるであろうスキルを身につけたりしながら、時代の変化としっかり向き合っていく必要があると思います。

取材に答える、大野氏と神山氏

生成AIラボの役割:お客さまとの共創で新たな価値を創造する

御園生:Webサイトやアプリケーション制作などは、多くの場合、開発担当に依頼が来る時点で要件定義書が確定していて、開発担当が問題点や改善点に気づいても後戻りできないことがあります。一方、生成AIラボは、スタート段階から共創型で進めていくケースが大半で、お客さまと対話を重ねながら一緒にモノづくりをしていきます。モノづくりのプロジェクトにおいて「共創型」が主体になってくことは、お客さまにとっても開発サイドにとってもポジティブなことだと思います。

佐藤:確かに、「生成AIを使ってこういうことができます」という提案型ではなく、お客さまの課題やビジョンを伺いながら、「では、こういうアイデアはどうでしょうか?」と、伴走しながらステップアップしていくような価値実装が理想的です。生成AIは発展途上の技術で、だからこそお客さまとの共創が大事ではないでしょうか。対話の中から新たな可能性を見出すことはたくさんあります。

大野:生成AIラボは、さまざまなお客さまの課題が集積する場でもあります。課題と課題の混ざり合いから新しい需要を創造したり、解決をあきらめていた課題に対するアプローチが見つかったり、課題が多種多様であればあるほど、そうした化学反応が起こりやすくなります。そのためには、より多様なユースケースを生み出し、お客さまに「生成AIってそんなことにも使えるんだ!」という気づきを提供していくことが大切だと思います。

神山:お客さまと共創型で開発を進めていくときにネックになりやすいのが、PoCや実証実験の場です。実際のお客さま環境か、それに近い環境でPDCAサイクルを高速でたくさん回していくことがリードタイムの短縮につながるのですが、情報セキュリティなどの面で難しいケースが多くあります。お客さまにもご協力いただきながら、より良い開発環境を構築していくことも重要です。

「DNP生成AIラボ・東京」の対話ゾーンのイメージ

生成AIのプロトタイピング試作事例の一例写真

「“AIのモノづくり”もDNP!」と言われる未来をめざして

佐藤:多くの企業が、生成AIに高い期待感を持っている一方、いざ導入を考えるとさまざまな不安や課題を抱えていると思います。私たちDNPの生成AIラボの役割は、そのようなお客さまの不安や課題に寄り添いながら、対話を重ね、変革のビジョンを共有し、業務への組み込みまで伴走させていただくこと。そして、お客さまの生み出す価値を高め、進化させていくことにあると考えています。そのために、より多様なユースケースを生み出して生成AIの可能性を探求することと同時に、パートナー企業との連携を強化していく必要もあります。

神山:DNPは、さまざまな製品を作っている“モノづくりの会社”ですが、そこに生成AIを掛け合わせることで、モノづくりの新たな可能性が拓けるのではないかと思っています。生成AIラボでユースケースやプロトタイピングを見たお客さまの多くが、「これ、面白いね!」と興味を示してくれます。モノづくりにおける表現の可能性は、生成AIで大きく変わりました。生成AIを活用した体験、生成AIによって広がる表現の可能性を追求し、積極的に発信していくことで、「“AIのモノづくり”もDNP!」と言われる存在になりたいですね。

デモ体験ゾーンと取材に答えるメンバーの様子

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