ARコーティングとは|AGコーティング(アンチグレア処理)との違いも解説
ARコーティング(AR:Anti-Reflection)とは、フィルムなどの基盤上にAR層を作り、反射光を低減させて画面の表面反射や映り込みを抑える技術です。基盤の表面に薄膜層を作るコーティングによって、さまざまな機能を付与することができます。
※こちらのページに記載されている内容は、2023年12月時点の情報です。
ARコーティングの用途
ARコーティングはテレビやPCの液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タブレットやスマートフォンのタッチパネルディスプレイの最表面に使用されています。ディスプレイ以外にも、展示ケース、窓ガラス、メガネ、カメラレンズ、自動車のメーターパネルなどでも使われています。最表面で用いられるために耐擦傷性や耐薬品性、防汚性といった機能が求められる製品となっています。
ARコーティングとは
光の干渉を利用して反射光を低減させるためには、反射防止層の表面で反射する光と、反射防止層は透過して反射防止層と基盤との界面で反射する光が、同振幅かつ逆位相になるように材料を設計する必要があります。そのため、AR層の膜厚は一般的に100nm程度に設計する必要があります。
また、コーティングの厚みが変わると反射率や色味が変化してしまいます。ARコーティングでは、100nmの薄膜を均一にコーティングするために、薄膜コーティングに適したインキの設計と塗液の精密な塗工技術が必要となります。なお、薄膜コーティングの塗工方式にはさまざまな種類がありますが、代表的なものとして「リバース方式」「グラビア方式」「ダイコート方式」の3つが挙げられます。
ARコーティングの材料と手法
ARコーティングによって基盤に付与する機能は、低反射機能だけではなく、傷つき防止機能や防汚機能などがあります。それらの機能を付与するべく、さまざまな無機や有機の材料が用いられます。
また、これらの材料を塗布する際には、以下のような手法があります。
ウェットコーティング法
水や溶剤に粒子や樹脂を混合した塗液を、基盤表面に薄く塗って乾燥させることで薄膜を形成します。
真空蒸着法
基盤とコーティング材料を入れたチャンバー内を真空状態にし、コーティング材料を加熱することで蒸発(気化)させて薄膜を形成します。
スパッタ・CVD法(CVD:Chemical Vapor Deposition=化学気相成長)
どちらも基盤を入れたチャンバー内を真空状態にし、コーティング材料を基盤表面に堆積させ、薄膜を形成します。スパッタ法では、ターゲットと呼ばれる物質を照射して粒子を生成し、基盤表面に堆積させます。一方、CVDではガスや液体の原料を供給し、化学反応を起こして薄膜を形成します。
DNPのARコーティング
DNPでは、硬度と屈折率を両立するために、さまざまな材料(粒子、樹脂、添加剤等)を開発しており、さらにそれらの材料をバランスよく配合することで、フィルムの機能を最大限にまで高めています。
また、ARコーティング技術の中でもDNPが得意とするのは「ウェットコーティング技術」です。この方式は連続生産ができるため、他の手法に比べ大量生産が可能となり、低コストなフィルムを提供できます。DNPではウェットコーティング法においても塗液を精密に塗布できるよう、粘度や表面張力などインク物性の最適化も行っております。
ARコーティングとAGコーティングの違い
AGコーティング(アンチグレア処理)とは
ARコーティングに似た効果を狙ったコーティングとして、AGコーティング(AG:Anti-Glare)があります。AGコーティングは、ベースフィルム表面に粒子を配置したハードコート層を塗布することで表面凹凸を形成します。入射光がこの凹凸面に乱反射することにより、外光の映り込みを抑えます。AGコーティングは「光の乱反射」、ARコーティングは「光の干渉」を利用するという点で異なっています。
ARコーティングとの違い
ARコーティングでは光の干渉を利用するため、AR層の膜厚を100nm程度に設計する必要があります。一方でAG層は、所望の散乱特性や硬度を発現するためには数μmの膜厚にする必要があり、AR層とは膜厚が大きく異なります。また、ベースフィルム表面に塗布するAG層に配合する粒子の材料としては、無機粒子や有機粒子が用いられ、ARコーティングとはインキ組成も大幅に異なります。
このようにARコーティングとAGコーティングでは、制御する膜厚の幅やインキ設計も大きく異なるため、それぞれの層に応じて適切なコーティング手法を選択する必要があります。
AGコーティング×ARコーティング
AGコーティングとARコーティングの両方を組み合わせたAG-ARフィルムを製造することも可能です。2種類のコーティング技術を組み合わせることで、外光の映り込みをさらに低減させることができ、フィルムの性能が向上します。この場合はベースフィルムに対し、最初にAGコーティングを行った後、乾燥させてからARコーティングを行います。
DNPのコーティング技術
DNPではAGコーティング、ARコーティングのそれぞれに求められる材料特性や光学特性に合わせて、独自にインキの材料設計を行っております。各種コーティングに合わせて適切な塗工方式、インキ、乾燥条件などを使い分けることにより、nm~μmの膜厚を調整することが可能です。
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