駅舎の部材選びで押さえるべき5つのポイントと建築・施工事例
駅舎の建設は、地域のシンボルや憩いの場にもなり得る点で、一般のビルや住宅と異なります。長きにわたり人々に受け入れられる存在であることが期待される上に、法律で定められたルールをクリアしなければなりません。
特に、駅舎の部材選びには気をつけたいポイントがあります。この記事では、駅舎の部材選びで押さえるべき点を整理した上で、おすすめのアルミパネルの使用例も紹介します。ぜひ駅舎の設計やデザインを行う一助にしてください。
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駅舎の部材選びで押さえるべき5つのポイント
駅舎を建設する場合、その特性をふまえて部材を選ぶ必要があります。ポイントは、次の5つです。
・耐久性
・耐火性
・防音性
・地域性
・経済性
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耐久性
駅舎は、ほかの建築物以上に耐久性が求められます。一度建てたあと、長期間にわたり使用し続けることを前提としているためです。
また、別の理由としては、駅舎の修復工事が鉄道会社や利用客に与える影響の大きさも挙げられます。例えば、部材の修理や取り替えのために、電車を止めざるを得ない場合もあるでしょう。多くの乗客が利用する路線であればあるほど、ステークホルダーが増え、鉄道会社の負担は大きくなると考えられます。
耐久性を左右する要因としては、建物の設計や建設後の維持管理の良し悪しに加えて、使用部材の耐久性が挙げられます。耐久性の高い部材を採用することは、駅舎の突発的なメンテナンスの抑制にもつながるでしょう。
耐火性
建築基準法では、火災による被害の防止・抑制を目的として、建物に地域・用途・規模に応じた耐火性を求めています。
駅周辺の中心市街地は、「防火地域」に指定されています。防火地域では、建物の規模や用途にもよりますが、多くの場合、耐火建築物もしくは準耐火建築物として設計することが義務づけられます。
そのため、鉄筋コンクリート造や鉄骨造を採用することが多く、外装や屋根には延焼防止のための防火措置が必要であるため、不燃材料の使用が不可欠です。
また、百貨店や飲食店、映画館と一体化している駅舎も珍しくありません。駅舎内の商業施設は内装制限を受けるため、壁と天井を不燃材料で仕上げる必要があります。
駅舎に使用する部材の選定時には、防火上の制限を十分考慮しなくてはいけません。
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防音性
電車の走行音は、騒音レベル80dB(デシベル)とされています。騒々しい街頭と同程度の騒音で、会話や電話が聞き取れないレベルです。
駅職員や利用客への騒音の影響や、駅外部への音漏れを抑制するために、駅舎は防音性を考慮する必要があります。駅ホームの天井や壁に、吸音パネルを設置する試みがその一例です。
電車の走行音や人の喧騒は反響によって増幅されるため、吸音パネルで反響を軽減することは防音対策になります。吸音パネルは駅だけでなく、会議室やホテルのロビー、空港でも活用されています。
地域性
駅は、人の乗り降りや貨物の積み下ろしの機能を果たすだけでなく、地域のパブリックスペースとしての役割も担っています。近年は、多機能化が進む駅ビルも多く、地域住民の暮らしや文化、交流、情報の拠点としての働きが期待されています。
今からおよそ100年前に建てられたJRの旧国立(くにたち)駅舎は、2006年の中央線高架化工事に伴って一度解体されましたが、住民に望まれて、2020年に再築・復元されました。
これから地域のシンボルになっていく駅舎の設計には、部材の選定も含め、地域住民や訪れる人に長く愛される工夫が望まれます。
経済性
部材の選定は、予算に応じて行わなければいけません。
建設分野の物価指標のひとつである「建設工事費デフレーター」(建築総合)は、ここ10年一貫して上昇しています。2022年度は、2015年度基準で約120%増加しています。
不安定な世界情勢による資源不足やエネルギー価格の高騰、人手不足などの問題は解消されず、建築費の先行きは不透明です。
コスト削減の手段として、部材のコストダウンは有効な選択肢のひとつです。
アルミパネル内外装材料「アートテック」を用いた駅舎事例4選
内装と外装の両方に使える「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック」は、大日本印刷が製造・販売する、アルミニウムに直接印刷を施した化粧金属板です。高い印刷技術によって、金属の質感を強調することや、木や石のような自然素材の表情を再現することができます。
原板にアルミニウムを使っているため、軽量で耐候性に優れ、サビにも強いというメリットがあります。また、国より不燃認定を受けており、防火対策としても使い勝手の良い部材です。
ここからは、アートテックを使った国内の駅舎を、4つ紹介します。
・JR北陸新幹線 軽井沢駅
・東急電鉄 祐天寺駅
・JR東日本 高輪ゲートウェイ駅
・西武鉄道 豊島線 豊島園駅
濃い木目調のホーム待合室|JR北陸新幹線 軽井沢駅
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2014年に設置された軽井沢駅のホーム待合室は、濃色の洗練された木目調パネルが印象的です。
無機質になりがちな駅ホームの待合室に、あたたかみのある木目を採用し、ぬくもりと落ち着きを感じさせる空間を実現しました。
このアルミ製待合室は、あらかじめ工場で組んだものを現場で組み立てるユニットシステムのため、短工期で施工が完了します。また、アルミは軽量なため、搬入・施工が手作業だけで完結し、重機が不要な点も魅力です。搬入・施工条件が悪い場所でも、スムーズな施工が行えます。
以下のリンクからDNPが提供しているアートテックの建築作品事例を見ることができます。
ARTTEC 建築作品集 JR軽井沢駅ホーム待合室
赤色の木目調外壁|東急電鉄 祐天寺駅
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祐天寺駅に2018年竣工した駅ビルには、落ち着いたレッドブラウンの木目調の外壁が採用されています。また、駅ビルから続く長いホーム外壁には、窓が不規則に配置されており、ホームに明るい光を取り込んで利用者が感じる圧迫感を軽減する役割を担っています。
これらのデザインは、駅ビルが街と調和し、人々に長く愛されることをめざしたものです。街並みに調和しつつ、街の個性を活かす駅舎は、人々が親しめる雰囲気を実現しているといえるでしょう。
以下のリンクからDNPが提供しているアートテックの建築作品事例を見ることができます。
ARTTEC 建築作品集 東急電鉄祐天寺駅
明るい木目が特徴的|JR東日本 高輪ゲートウェイ駅
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2020年3月、山手線新駅として開業した高輪ゲートウェイ駅は、明るい白木が作るやわらかな雰囲気が特徴的な駅舎です。日本を代表する建築家の一人、隈研吾氏がデザイン監修を行いました。
本物の木材と木目調のアートテックが混在していますが、見た目では違いがほとんど感じられません。外装に本物の木材を採用する場合、メンテナンスの問題で木材を使える部分に制限がつくことも多いです。その点、アートテックは、見た目の木質感とメンテナンス性の両立が可能です。
以下のリンクからDNPが提供しているアートテックの建築作品事例を見ることができます。
ARTTEC 建築作品集 高輪ゲートウェイ駅
シンプルな木目調ファサード|西武鉄道 豊島線 豊島園駅
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「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京‐メイキング・オブ・ハリー・ポッター」のオープンに合わせて、2023年4月、豊島園駅の駅舎がリニューアルされました。
コンセプトは「イマジネーションが日常に溶け込む駅」です。ナチュラルな木目調のファサードに演出された駅舎は、日常と非日常をつなぐゲートをイメージしてデザインされました。
シンプルな駅舎とは対照的に、駅ホームは赤を基調としたデザインが採用されており、ホグワーツ魔法魔術学校へと続く「ホグズミード駅」を思わせる世界観を表現しています。
以下のリンクからDNPが提供しているアートテックの建築作品事例を見ることができます。
ARTTEC 建築作品集 西武鉄道 豊島線 豊島園駅
まとめ|アートテックは駅舎の部材にもおすすめ
耐候性や軽量性、耐火性に優れたアートテックは、駅舎の部材としてふさわしい性質を兼ね備えています。
また、質感や加工など、細やかなカスタマイズの要望に応えられる点も見逃せません。設計やデザインの自由度を広げることにつながる、重要なポイントといえます。
駅舎の設計・デザインを手掛けるなら、ぜひアートテックの使用をご検討ください。
【参考】出典元
隈研吾からみたアートテック®の可能性と建築の未来 大日本印刷株式会社
木造建築のすすめ 一般社団法人 木を活かす建築推進協議会
騒音に関わる苦情とその解決方法 総務省 公害等調整委員会事務局
駅ホームの吸音対策例~天井・壁を有効活用 株式会社静科
駅 一般社団法人日本民営鉄道協会
旧国立駅舎
建設工事費デフレーター 時系列(年度別)2015年度基準 e-Stat
ecoms 待合室|SUS株式会社
東急東横線 祐天寺駅 株式会社東急設計コンサルタント
池袋駅と豊島園駅のリニューアルが完成します! 西武鉄道株式会社
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*2024年1月現在の情報です。
*アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。