マンションインテリア動向レポート2016
DNPでは、長年にわたりマンションのインテリアトレンドの調査を行い、WSシリーズの開発を行ってまいりました。
本コラムは2016年の首都圏115タイプ、近畿圏39タイプのマンションモデルルームにおける、インテリア仕上げ材の傾向をご紹介します。
*本記事は2017年に作成・公開した記事を、「マンションインンテリア動向レポート2021」公開にあわせて再編集したものですが、最近のトレンドに至る変遷の一情報として、今後のインテリア開発の参考にしていただけたら幸いです。
*各グラフは小数点以下の端数処理により、合計が100%とならない場合がございます。
調査の概要
調査対象としたモデルルームの立地
2016年1月~5月
92物件115モデル(11.659戸相当)
前年エリア供給数比 28.8%
2016年6月~7月
33物件39モデル(4654戸相当)
前年エリア供給数比 25.8%
インテリアイメージの分類
床を基軸とした5つの空間イメージに分類し、その関連性を調査しました。
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調査結果(1)
インテリアマップ
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インテリアマップを作成しました。5つのインテリアテイストに分類し、昨年と今年の出現率を示しています。
右側の象限の割合がやや減り、左側の象限の割合がやや増えていますが、数字からは大きな変化はみられませんでした。
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近畿圏では首都圏とは逆で、軸の右象限の2テイストが増加、左象限のナチュラルとオーセンティックは減少傾向にありました。関東、関西ともに、数字としては大きな変化はみられませんでした。しかし実際にモデルルームに足を運ぶと、数字では見えてこない変化を感じることができました。それは、建具・床以外のファブリックなども含めてグレーの色がインテリアを左右する重要なファクターとなり、すべてのグループの中で今までとは異なる雰囲気をつくり始めていることです。
建具と床のカラー(トーン)
建具カラー
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床カラー
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床のところでディープが非常に少なくなっています。おそらく極端に濃い茶色は、建具も含めて意図的なコーディネイトでない限り、今の生活者の嗜好にあっていないのではないかと私たちはとらえています。最近はミディアムからライトにかけての穏やかな色調に人気があるようです。また今年は床と建具のニュートラル(白い木目)やホワイト系(単色)が減少し、反対にグレーは増加していました。
建具カラー
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床カラー
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近畿圏でもディープの建具や床は減少傾向にあり、ミディアムは増えてきています。白木目のニュートラルは、建具では減少傾向ですが床は横ばい状態です。グレーについては建具も床も増加傾向にあります。
モデルルームで見るカラーの変化
ここからはモデルルームのインテリア写真をご覧頂きながら、出現率の数字では見えなかった変化についてお話します。
ホワイトカラー
一般的なホワイトカラー・インテリア(従来のミニマルテイスト)
こちらはいわゆるソフトミニマルの白いインテリアの典型です。今年はこのような従来型のミニマルスタイルはほとんど見ることができませんでした。グラフで、ホワイトやニュートラルカラーが減っていますが、白色を基調としたインテリアづくりにおいては、素材に特徴的な表情がないと、住まい手の価値観を満たすものを表現できなくなっているのではないでしょうか。年々単に白い木目ではなく表情のあるものへと変化していますが、もっと表情やカラーのある木質が好まれるようになってきているのではないかと考えています。
エレガントなホワイト・インテリア 神戸
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実際にこちらは今年のミニマルに分類された神戸のモデルです。今年は先ほどのようなシンプルなコーディネイトはほとんど見られず、こちらの写真のように「エレガント」な雰囲気が漂うものが多く見られました。建具はつや消し白の四方框組、廊下からリビングにかけて床は大理石です。玄関には大型のアートが掛けてあります。ベッドルームの床はウォールナットのパーケット貼りで、エレガントさに加えラグジュアリー感あふれる空間に仕上がっていました。このようにホワイト系のコーディネイトは従来のミニマルとは違い、より表情のある部材を使用し、エレガントさや洗練されたラグジュアリー感を表現するようになってきていることが伺えます。
グレーカラー
今までのグレーカラー・インテリア(従来のスタイリッシュテイスト)
続いては、こちらは今までスタイリッシュに分類されてきたグレーカラーのインテリアです。
従来はこのように、シンプルでクールな印象でした。
グレーのインテリア 関東
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今年のモデルでは、照明をやや落とし、ダークなグレーを中心とした落ち着きのある空間が見られました。薄暗い中に浮かび上がるグレーは、空間に立体的と温かみを与えます。またアートをそえることで空間に豊かな表情をもたらし、質感のある木質との調和がラグジュアリーな空間をつくり出しています。従来型のスタイリッシュ空間とは一味異なるものでした。
グレーのインテリア 関東
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こちらもグレーのインテリアですが、やや温かみのある落ちついたグレーを基調としたインテリアです。のEBFW-1169の素材が床に使われており、シート自体は明るめのグレーなのですが、低いトーンの家具やファブリックと合わせることで、ぬくもりのあるスタイリッシュな印象になっており、新しいグレーの意味合いを示す豊かな空間です。
和感覚のインテリア
一般的な和感覚のインテリア(従来のナチュラルテイスト) 京都
続いて、ナチュラルに分類されるインテリアに関してですが、ナチュラルゾーンで和感覚なインテリアというと、黄色系の木目に黒のアクセントを絡めた、このような典型的な和風インテリアが一般的でした。今年は和の雰囲気のあるコーディネイトや間取りで多様化が見られました。
和感覚のインテリア 大阪
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少し暴れたウォールナットの表情の床と建具はディープカラーのオークのデザインの組み合わせです。従来の分類ではオーセンティックに入るものですが、空間の放つ和の雰囲気は従来の黄色系の木質と黒で魅せる手法ではなく、ブラウンをベースとした和感覚インテリアの事例です。リビング、和室、寝室がウォークスルーになっていて、間仕切りはガラス。間取りもユニークなモデルです。和室の壁面はブルーグレーのベースの壁紙にアクセント使いしたマスタードイエローが特徴的です。このモデルは、ダークトーンの木質による、新しい和スタイルのコーディネイトといえると思います。
和感覚のインテリア 関東
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建具・床共にベージュグレーの木目を使った、和のぬくもりを感じるインテリアです。リビングドアは、畳表のような繊維を合わせガラスにした框の扉です。玄関ドアは1階に限り引戸の仕様で、玄関ホールは左下の写真のように土間が広がり、そこに小上がりのホビールームが設けられていました。ナチュラルの中に黒で空間を締めるという従来の和空間に近いテイストではあるものの、間取りやインテリア、オブジェによって生活者のライフスタイルが伺えるような空間に仕上がっています。
ミディアムカラー
最近のミディアムカラー・インテリア(従来のオーソドックテイスト) 関東
昨年あたりから増えてきているオーソドックスゾーンに見られる開放的で上質なインテリアの典型的な事例です。オーソドックスゾーンを中心としたミディアムカラーのインテリアでは、このような色使いが大半ですが、彩度をおさえた中間調の木目のナチュラルグレーのインテリアも見られるようになってきました。
ナチュラルグレーのインテリア 名古屋
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建具と床がソフトコントラストのコーディネイトで、床を中心としてナチュラルでグレイッシュな新しい雰囲気を醸し出しています。特に、グレーのオークの床が空間全体のキーになっています。床はDNPのEBFW-1168というオークのデザインなのですが、素朴な素材感が活きていて、ソフトコントラストの中で空間を柔らかくまとめています。また格子状の扉や木目の質感からおだやかな「和」を感じます。
ナチュラルグレーのインテリア 大阪
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ミデュイアムカラーのチェリーの床にダークのウォールナットの建具を組み合わせています。床と建具は強すぎないコントラストで、通常ならば全体的に彩度のあるインテリアに仕上げるのが一般的ですが、ラグや壁のタイルのグレーに囲まれて、トーンを抑えたシックな雰囲気が魅力的です。
調査結果(2) コントラスト比率
以下は、床と建具のカラーバランスの変化を示したグラフで、床が建具に比べて同じか、明るいか、暗いかの比率です。首都圏では約7割強がコントラストの組合せで、しかも明るいケースが多いです。近畿圏でもコントラストの比率は約5割を占めています。最近のモデルルームのインテリアに新しい雰囲気を見ることができるひとつの要因として、このような建具と床の組合せの自由度が高まっていることが挙げられます。それに対して家具やファブリックなどが加わることで、より豊かな表情を漂わせています。
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近畿圏
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おわりに
生活者の生活がどんどん豊かになっていくのは、ライフスタイルへ付加価値が与えられている時代の表れであると感じています。住まいにおいてもそのような付加価値が提供できるように、生活空間をとりまく素材や色、そしてそこに住まう人のライフスタイルを考えた提案をしていきたいと考えています。
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