現場レポート あのアイテムをデジタル化せよ!vol.1
「ちりめん本」編

帳票類から希少な保管物まで、さまざまな対象物を高品質なデジタルデータに変換する、DNPのデジタルアーカイブサービス。 限られた社員しか入れない高セキュリティエリアで行われているその作業の一端を、特別に写真付きでレポートします。
今回の対象物は、独特の風合いが特徴の「ちりめん本」です。

今回のアイテム「ちりめん本」

ちりめん本

デジタル化における対象物の特性

  • とても希少な本のため、裁断はできない
  • ちりめん加工独特の、しわの寄った素材を再現したい
  • 和紙に描かれた色味を表現したい

ちりめん本とは?

ちりめん本

ちりめん本とは、明治中期から昭和初期にかけて出版された、挿絵入りの小型の和綴じ本です。細かいしわを寄せたちりめん状の和紙を使用しているため、「ちりめん本」と呼ばれています。日本の昔話などを外国語に訳した本で、訪日観光客向けのお土産として人気がありました。ちなみに、印刷所欄にある「秀英舎」とは、DNPの前身会社です。

調査員

それではいよいよ、ちりめん本をデジタル化する現場に潜入!
プロフェッショナルなノウハウの一端をご紹介します。

フォトレポート

STEP1 デジタル化の方法を選択

フェーズワン

対象物を非破壊で扱うため、スキャンは「高性能カメラ撮影」で行います。スキャン台には「Phase One(フェーズワン)」という高性能カメラを搭載。希少な対象の場合、マスクや手袋を着用しながら作業を行います。スキャンする部屋は、社員の中でも登録者しか入れないようになっているほか、必ず2人以上で確認しながら作業を行うことで、高いセキュリティを維持しています。

調査員

「Phase One」は8000万〜1億画素もある高性能な中判カメラ。
国内でも数少ない、貴重なカメラだそうです。

STEP2 セッティング

作業1

対象物の色味や風合いを正確にスキャンすることを前提とし、ライティング(照明)やカメラの位置を細かくセッティングします。お客さまのオーダーに合わせて色味の表現を工夫したり、質感のある素材では立体感が出るようにしたりといった調整も可能です。

STEP3 テスト撮影

作業2

まずテスト撮影をして、ちりめん本専用のプロファイルを作成します。冊子の特徴を最も捉えているページを選んで撮影台にセットし、台を上げてページをガラスに押し付けたら準備完了。台にはカラーチャートが付いており、一緒に撮影することで、デジタル化したデータの色みを調整する際の基準として利用します。

STEP4 本撮影

作業3

テスト撮影を経てセッティングが確定したら、いよいよ全ページを撮影。1ページずつめくって、確認しながら撮影を行います。ページをめくる度に、ガラス面のほこりをブロワーで吹き飛ばす、傾きを直すなど、環境を整えながら進めていきます。

STEP5 基本補正

作業4

スキャン台の隣に設置されたパソコンで撮影データを現像処理*し、原本となるマスターデータを作成します。1回撮影する度に、現像処理によってパソコン上でデータを確認できるようにし、細かいほこりが入り込んでいないか、細部にまでピントが合っているかなどを見ていきます。

  • *対象物をRAW(未処理)の状態で撮影し、細かい調整を行う「RAW現像」処理のこと
調査員

絵画や貴重な本など、紙媒体の撮影に長年携わってきたカメラマンが、
その知識・経験を生かして撮影。正確かつ迅速に作業を進めていました。

STEP6 追加補正

作業5

印刷用やWeb用など、お客さまから用途のご希望がある場合は、細かなカスタマイズを行う画像補正チームが担当します。高度な技術をもつ約100名のスタッフが待機しているので、短納期や大量の作業にも柔軟に対応できます。この工程でデジタル化作業は完了となり、あとは必要に応じてOCRや検索機能を付与する次のステップに移ります。

データ完成

ちりめん本

調査報告

調査員

現場に潜入してみると、私たちがイメージする「スキャン」作業とは全く違う、多くの工程や専門の技術者たちがいて驚かされました。そこで作られているデジタルデータの再現度も非常に高く、(この記事の画像ではお伝えできないのは残念ですが)ちりめん本の色味や風合いが正確に再現されていました。また、この高度なスキャン技術や画像補正技術を用いて、美術品や貴重な作品をデジタル化し、複製画の販売といったコンテンツビジネスに活かすケースもあるのだとか。デジタルアーカイブによって生まれる新たな価値は、これからも広がっていきそうです。

その他「現場レポート」はこちら

ネガ・ポジフィルム

第二回目は「ネガ・ポジフィルム」の電子化作業をご紹介。劣化・退色しているケースも多い昔のフィルムに、適正な補正を加えつつデジタル化していきます。

大判図面

第三回目の対象物は「大判設計図」をデジタル化する現場に潜入。大きいサイズに対応するだけで無く、図面や文字を鮮明にするための工夫もしています。

関連サイト

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