丸善ジュンク堂書店
書店員が語る2020-2021
第4弾 文庫・新書 ジュンク堂書店 池袋本店 平川逸郎さん
私たちDNPは、生活者の「知」を支える出版文化の継続的な発展に貢献するというヴィジョンを掲げています。コロナ禍が社会を席巻した2020年。外出自粛やテレワーク・リモートワークの普及は、書店にも大きな影響を与えました。 いま、生活者が本や書店に求めるものは何か?ポストコロナ時代に求められる出版文化の姿はどんなものか?生活者の気持ちを知るため、丸善ジュンク堂書店の4ジャンルの書店員の皆さんに、2020年の書店動向と、2021年に向けた取り組みのヒントを伺いました。 DNPは今後も、ジャンルに則した最適なソリューションで、生活者のニーズに応える出版ビジネスを支えていきます。
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【INDEX】
■「感染症」関連の古典が強さを発揮
■全巻箱入りセットや長編シリーズに動き
■「3.11」「9.11」の“節目需要”に注目
■「感染症」関連の古典が強さを発揮
一方で、学生の課題図書や“夏の文庫フェア”は苦戦
新型コロナや感染症に関連しては、新潮文庫のカミュの『ペスト』が突出して売れていた印象です。次に売れていたのが角川ソフィア文庫『感染症の世界史』です。
他には中公文庫のデフォーの『ペスト』や、講談社文庫の『首都感染』、角川文庫、ハルキ文庫『復活の日』の動きが良かったですね。最近では岩波文庫の『白い病』も伸びました。今は落ち着いてきていますが、感染がまた拡大してきていますので、再び伸びる可能性はありますね。新型コロナ関連の新書では岩田健太郎先生の著作がかなり多く出ていましたが、一方で“アフターコロナ”をキーワードにした新書は、思ったほど伸びなかった印象です。アフターコロナといっても、未来がどうなるか現時点では誰にもわからないわけですから、お客様にもまだそこまで響いていないのかもしれません。
ほかに影響が大きかったのは、学生の「課題図書」でしょうか。大学の授業がオンラインになったり、小中高生の夏休みが短縮されたりした関係で、定番の“夏の文庫フェア“の数字が伸び悩んだように思います。特にここ池袋は学生さんも多い街なので、昨対という意味では影響は大きかったですね。
■全巻箱入りセットや長編シリーズに動き
既刊の書目をきちんと揃えておくことも重要に
巣ごもり需要という面もあるのか、岩波文庫の「美装ケースセット」など、セットものの回転が良いですね。『失われた時を求めて』『夏目漱石作品集』『江戸川乱歩コレクション』など、この時期にまとまった読書時間を取って読破してみようか、という方が増えている印象があります。池袋本店ということで言えば、元々新刊を大きく展開するような戦略ではないので、既刊の書目をきちんと揃えておくことを重視しています。版元さんからも、定番の既刊本が手堅く動いているという声は聞いています。お客さまは「意外と“棚から”買っている」という印象は私も持っていて、やはり既刊本・定番シリーズを切らさずにまわしていくという視点は基本になってくるのかなと思います。
■「3.11」「9.11」の“節目需要”に注目
周年作家の既刊本や大河ドラマ関連本も期待
2021年に向けてという意味では、堂場瞬一さんの作家生活20周年や、もしオリンピックが開催されるとすれば東京の歴史関連などの動きは期待しています。
また、大河ドラマが渋沢栄一なので、そのあたりの反応は見込んでいるところです。
あとは3.11の東日本大震災から10年、9.11同時多発テロから20年という節目が重なる年に当たるということで、新型コロナがある程度落ち着いているのであれば、そういったものを振り返るコーナーを作ることも検討したいです。
版元さんとの打ち合わせも、なかなか店舗でできない状況ではありますが、やはり棚の前で雑談しながらのほうが、色々なアイデアが浮かんでくるものです。オンラインでも打ち合わせ自体はできますが、コミュニケーションが一方通行になりがちという面はあるのではないでしょうか。文庫・新書というジャンルは多様性があるため、棚の作り方が重要になるので“現場”でのコミュニケーションを大事にしながら、戦略を立てていければと思っています。
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