マイナンバーカードを使った本人確認の動向は?
現在の課題や今後の予測も解説
最近ニュースで取り上げられることも多いマイナンバーカードですが、8割近くの国民が持つようになり、今後の活用に注目が集まっています。個人情報管理やプライバシー保護などのセキュリティに関心が集まる中、今後マイナンバーカードを本人確認のスタンダードにしようという動きが急速に高まっています。マイナンバーカードを使った本人確認方法とはどのようなものなのか、また今後の課題点や懸念点などを詳しく解説します。
2023年6月20日公開
目次
1.マイナンバーカードの普及率と本人確認における利活用
有効申請件数と交付枚数 |
2016年にマイナンバーカードの交付が開始され、当初は交付枚数が伸び悩んでいたものの、2回にわたるマイナポイント施策を受け、2023年6月4日時点で9,700万枚を超えるマイナンバーカードの交付申請が行われています。人口に対する申請件数率は77.1%で、7割以上の人がマイナンバーカードを保有していることになります。
これは運転免許証の交付枚数を上回る数字となっており、今後本人確認の身分証としてマイナンバーカードが広く利用されることが期待されています。
- ※出典:デジタル庁 https://www.digital.go.jp/
実際、銀行口座の開設や携帯電話の回線契約など本人確認が求められる場面においてマイナンバーカードが利用されるケースが増えてきており、口座開設時の本人確認をマイナンバーカードに集約するという案も検討されていると言われています。本人確認が必要となる場面で、運転免許証の代わりにマイナンバーカードが使われるのが当たり前となっていくのも、それほど遠い未来ではないかもしれません。
2.マイナンバーカードを使った本人確認「公的個人認証サービス(JPKI)」とは?
マイナンバーカードを使った本人確認には、公的個人認証サービス(JPKI:Japanese Public Key Infrastructure)と呼ばれる方法があります。これはマイナンバーカードに搭載されているICチップの中にある電子証明書を活用し、公的な機関である地方公共団体情報システム機構(J-LIS)がリアルタイムにチェックすることで本人確認が行える仕組みです。
マイナンバーカードには4種類のパスワードがあり、カード受取の際に設定します。
・署名用電子証明書パスワード(6桁から16桁の英数字)
・利用者証明用電子証明書パスワード(4桁の数字)
・券面事項入力補助用パスワード(4桁の数字)
・住民基本台帳用パスワード(4桁の数字)
公的個人認証サービス(JPKI)を生活者が利用するためには、マイナンバーカードに電子証明書の発行を受けている必要があります。マイナンバーカードの申請時に、電子証明書が不要と特に申し出ていなければ、標準搭載されています。この電子証明書を利用するために、上述した署名用電子証明書パスワードと利用者証明用電子証明書パスワードが必要となります。
署名用電子証明書パスワードは5回連続で、利用者証明用電子証明書パスワードは3回連続でパスワードを間違って入力した場合、パスワードロックがかかってしまい、電子証明書は利用できなくなってしまいます。当初はパスワード忘れや入力間違いによるパスワードロックが懸念されており、ロックされてしまった場合、住民票がある市区町村窓口に行く必要がありました。こうした不便さを解消するため、デジタル庁では2022年10月より、マイナンバーカードの署名用電子証明書のパスワードを、コンビニエンスストア等で初期化・再設定することができるサービスを開始しました。
3.今後より一層、便利に利用しやすくなるマイナンバーカード
政府はデジタル庁を中心に、マイナンバーカードの利便性向上・制度改正を進めています。マイナポイント施策で行われたマイナンバーカードと健康保険証との一体化や公金受取口座の登録は、ご存じの方も多いでしょう。デジタル庁の発表によると、健康保険証としての利用登録は約6,300万件・登録率69.3%、公金受取口座の登録数は約5,500万件・登録率60.6%となっています(2023年6月4日時点)。また、運転免許証との一体化に向けた取組みも進められており、2024年度末としている一体化の時期を前倒しできないか検討していると発表されています。
最近では2023年5月より、本人の同意を前提として個人情報の基本となる基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)の提供サービスや、マイナンバーカードの電子証明書をスマートフォンに搭載するサービスも開始されました。
基本4情報の提供サービスは、マイナンバーカードに記載されている氏名、住所、生年月日、性別の情報について、生活者本人の同意(およびJPKIによる本人確認)があれば、金融機関などの企業が最新の情報を取得できるというサービスです。企業側は最新情報取得のため、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)へ照会する必要がありますが、住所変更手続きなど生活者が忘れがちな情報を最新化することができるため、継続的顧客管理などへの活用が期待されています。
スマートフォンへの搭載はまずAndroid端末のみとなりますが、マイナンバーカードの電子証明書をスマートフォンのセキュア領域に搭載するサービスです。外出先でマイナンバーカードが手元になくても、マイナポータルへのログインやコンビニ交付などが利用できるようになります。
また、2016年から交付が始まったマイナンバーカードは当時取得した人たちが更新時期を迎えることから、2026年には新マイナンバーカードの導入も予定されています。偽造防止など今よりもセキュリティを高めるほか、性別の記載削除などが検討されています。これらデジタル庁の動きなどを注視しつつ、企業側は生活者向けのサービスを構築していく必要があります。
【関連コラム】マイナンバーカードってこれからどうなる?今後の活用範囲の見通しについても解説
4.マイナンバーカードを使った本人確認に対する懸念点や期待されること
金融機関での口座開設時の本人確認方法として、運転免許証などは廃止し、マイナンバーカードに集約する動きが出ていると言われています。特にオンラインでの口座開設では公的個人認証サービス(JPKI)を活用することで、リアルタイムに本人確認が完了するため、金融機関では口座開設時にかかる審査業務の負荷軽減が期待されています。現在オンラインで口座開設する場合、その多くは、生活者はスマートフォンなどで本人確認書類の表面・裏面・厚みなど複数方向撮影し、さらに自身の顔を撮影する必要があります。その際、第三者によるなりすましを防ぐため、指示に従って顔を傾けたり瞬きをしたりすることが求められます。
また、金融機関側では本人確認書類の顔写真と撮影された顔写真が同一人物であるか、目視でチェックする必要があります。生活者にとっても金融機関にとっても負荷が高い本人確認の方法であり、最近では巧妙化するなりすまし手口への対応も求められています。
一方、公的個人認証サービス(JPKI)であれば、生活者はスマートフォンに暗証番号を入力しマイナンバーカードをかざすだけで本人確認が完了します。金融機関側も本人確認が完了した状態で申込情報が届くため、審査業務の負担を大幅に減らすことができます。
公的個人認証サービス(JPKI)は、認証における3要素である知識・所持・生体のうち、知識と所持の2要素を利用している2要素認証となります。マイナンバーカードのICチップ上に保持されている情報を利用するため不正利用が難しく、また、マイナンバーカードの電子証明書機能を活用することで申込情報自体の改ざんも難しくなっており、高いセキュリティ性を担保している本人確認の方法です。
しかし、万が一マイナンバーカードと暗証番号がセットで第三者の手に渡れば、なりすましをすることはできてしまいます。マイナンバーカードと暗証番号の管理は、所持者本人に任されているものの、家族など親しい間柄であれば、暗証番号のルールや保管場所を共有しているケースもないとは言えないでしょう。そのため、公的個人認証サービス(JPKI)を提供する企業には、こうしたケースを想定した上で対策を施し、確実に本人が利用していることを判別できる仕組みの提供が望まれています。
【関連コラム】マイナンバーカードを用いたオンライン本人確認(eKYC)の手法とは?
5.DNPが考えるこれからの本人確認
DNPは公的個人認証サービス(JPKI)を使ったオンライン本人確認サービスの開発を2017年にスタートしました。また、マイナンバーカードの普及を見越し、2021年には大和コネクト証券株式会社のスマートフォン用証券口座開設アプリに公的個人認証サービス(JPKI)を導入し、商用サービスとしてスタートしました。
●銀行向けスマートフォンアプリにおけるマイナンバーカードでのオンライン本人確認
●CONNECTのスマートフォン用証券口座開設アプリに導入
公的個人認証サービス(JPKI)などマイナンバーカードを活用したサービスを推進するため、DNPではサイバートラスト株式会社と2018年より協業し、政府や市場動向をふまえた認証サービスの構築・精度向上を行っております。
公的個人認証サービス(JPKI)の懸念と言われている「他人による申込」についても、公的個人認証サービス(JPKI)が持つ2要素(知識、所持)に生体を加え、「確かに本人の申込」であることを判別できるサービスの開発を進めています。公的個人認証サービス(JPKI)の良さを活かしながら、生活者や企業がより安心して利用できるサービスを展開していく予定です。
6.まとめ
本コラムではマイナンバーカードの現状を振り返りつつ、政府が力を入れているマイナンバーカードを活用した本人確認の課題と解決のポイントを解説しました。まだ多くの課題を持つマイナンバーカードですが、マイナンバーカードを使った本人確認方法である公的個人認証サービス(JPKI)は、今後の本人確認方法の主流となっていくことが予想されています。マイナンバーカードの普及率が7割以上と運転免許証を超えるまでに普及した今、その情報管理と利活用に多くの関心が集まっています。
マイナンバーカードによる本人確認について、協業パートナーであるサイバートラスト社との対談記事を予定しております。本コラムでご紹介した内容をさらに掘り下げ、マイナンバーカードに関わる政府の動向を整理しながら、各企業が抱える課題や懸念点などを詳しく解説していきます。どうぞご期待ください。
「オンライン本人確認(eKYC)総合サービス」へのお問合わせ(URL別ウィンドウで開く)
DNP×サイバートラスト株式会社 スペシャル対談企画
このコラムで紹介した製品・サービス
-
金融機関を中心に、本人確認機能を提供
オンライン本人確認(eKYC)総合サービス
eKYC(electronic Know Your Customer)は、オンライン上で安全に本人確認が完結する仕組みのことです。DNPは本人確認や本人認証が必要となるさまざまな場面で、最適な認証の仕組みを組み合わせ、セキュアで安心なサービスとして総合的に提供する「認証DX」を推進しています。 その一環として、2019年より「オンライン本人確認(eKYC)総合サービス」を提供しています。インターネットでの銀行口座開設やシェアリングサービス利用時の本人確認など、さまざまなシーンで本人確認機能をご導入いただけます。 -
【バックオフィスサービス】~オンライン申請での本人確認(eKYC)に対応したバックオフィスサービス~
eKYC審査業務
2018年11月30日に犯収法の施行規則が改正となり、オンラインで完結する本人確認(eKYC)が可能となりました。利用者の利便性が向上する反面、システムの構築や運用環境の整備など、事業者には大きな負担にもなっています。
本人確認アプリの作成、目視による審査業務など、盤石のセキュリティ対策の下、ワンストップで実現できるのが、DNPのeKYCサービスの特長です。
サービス開始以来、複数企業様にご採用いただき、すでに2,000万件以上のeKYC審査を実施しました。