最先端クラウド技術を学ぶ! AWS re:Invent参加レポート
2022年11月28日 〜 12月2日にかけて、アメリカ・ラスベガスで開催されたAWS re:Invent 2022にDNPのエンジニア3名で参加してきました。
AWS re:Invemt 2022で注目した内容、実際に現地参加してみて感じたことなど、クラウドを利活用する企業のエンジニアから見たAWS re:Invent 2022についてご紹介します。
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AWS re:Invent2022 概要
AWS re:Invent2022 概要
AWS re:Invent はAWSの世界最大の学習型グローバルカンファレンスで、今回で11回目の開催となります。
会期は2022年11月28日 〜 12月2日で、コロナ禍を経て3年ぶりの通常開催となりました。
DNPとしては2017年からre:Inventに参加していますが、2020年はオンライン開催、2021年は制限された中での開催ということで現地参加することができなかったため、DNPとしても3年ぶりの現地参加となります。
通常開催となった今回は現地参加者数 5万人超(日本からは1,300名が参加)、オンライン参加登録者数に至っては30万人超という数多くの方が参加されたそうです。
会場はKeynoteを行うThe Venetian | Palazzoを中心にLAS VEGASの6つのホテルのカンファレンスホールを使用して、2000を超えるセッションが行われました。
参加するセッションによっては、ホテル間を移動する必要があるのですが、今回会場となっている両端のホテル間は直線距離で約4.5Kmにもなり、徒歩で移動すると約45分もかかります。ちなみに地図アプリで調べると、この距離は東京駅から市谷にある当社までの距離とほぼ同じでした。
それだけではなく、各ホテル自体も広大な敷地面積を誇るため、ホテル内を移動するだけでもかなりの時間を要してしまいます。
そのため、参加するセッションは内容だけではなく、会場や移動時間も考えて選択してスケジューリングする必要があるというのがre:Inventに現地参加する際のポイントのひとつです。
Keynote
Keynote
re:Invent 2022のKeynoteは全部で5つありました。
・Monday Night Live with Peter DeSantis, Senior Vice President, AWS Utility Computing
11/ 28 (月) 19:30 ~ 21:00 (PST) | 会場Venetian Hall A
・Keynote - Adam Selipsky, Chief Executive Officer of Amazon Web Services
11/29 (火) 8:30 - 10:30 (PST) | 会場Venetian Hall A
・Keynote - Swami Sivasubramanian, Vice President, Data and Machine Learning, AWS
11/30 (水) 8:30 - 10:30 (PST) | 会場Venetian Hall A
・Global Partner - Ruba Borno, Vice President of AWS Worldwide Channels and Alliances
11/30 (水) 15:00 - 16:30 (PST) | 会場Venetian Hall A
・Keynote - Dr. Werner Vogels, Amazon.com Vice President and Chief Technology Officer
12/1(木) 8:30 - 10:30 (PST) | 会場Venetian Hall A
基調講演の中から、私たちがメインとしていた三つのKeynoteについて、ポイントだけご紹介します。
・Adam Selipsky, CEO of AWS
-既存の製品やサービスのクオリティを向上させてユーザーの利便性を高めるサービスの発表
-データの重要性をテーマに Zero-ETL を掲げ、データの取り回しを容易にするサービスを発表
-新しいサステナビリティ戦略 2030年までにWater Positiveを実現すると発表
・Swami Sivasubramanian, Vice President, Data and Machine Learning
-データが自律的に整理され、共有され、可視化される必要性を示唆
-サービス間のデータ連携を容易にするサービスを発表
-データセキュリティを確保するサービスを発表
・Dr. Werner Vogels, Amazon.com Vice President and CTO
-システムは自然であるべきという示唆
-同期性、非同期性 に関する問い
-どんな複雑システムも、初めはシンプルな機能から始まる持続的成長戦略
-サーバーレスベースシステム開発を効率化するサービスを発表
-3D コンテンツの取扱いがより一層容易になることを示唆
AWS re:Inventでは、毎年Keynoteの中で新しいサービスや大きなアップデートに関する発表が行われるため、非常に注目されるのですが、現地参加すると、新サービスやアップデートの発表がされた際の歓声や拍手の大きさによって、それがどのくらいの期待度なのかを肌で感じることができます。
今回のre:Invent期間中に発表された新サービスやアップデートは126個に上りますが、
Keynoteで発表されたものに絞ったものが以下になります。
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Keynoteではデータ関連のお話が多かったため、新サービスやアップデートについてもデータ関連のものが多くなっていますが、全体的に既存サービスをより使いやすくするもの、各サービスとの連携や統合、個々のクオリティ向上といった内容が多く見られました。
参加者のロールやバックボーンによって、注目する新サービスやアップデート内容は異なりますが、今回DNPから参加したメンバーはアプリケーション開発者よりのメンバーが多かったため、AWS Application Composerや、AWS Step Functions Distributed Map、Amazon EventBridge Pipesといったサービスに注目が集まりました。
また、Keynoteでは新サービスの発表以外にも、これからのAWSの方向性を示す内容が発表されますが、なかでもDr. Werner VogelsのKeynoteのシステムアーキテクチャについてのお話は、今回参加した全セッションの中で、最も私たちが考えさせたられたと言っても過言ではない内容でした。
このDr. Werner VogelsのKeynoteの考察については、長くなりそうなので、また別の機会に書きたいと思います。
セッション
re:Invent 2022では基調講演の他に2,750ほどのセッションが開催されました。
初心者向けのサービス説明から利用事例紹介の他に、経験者向けに実際にハンズオンで操作をするWorkshopや構成・設計のディスカッションなど多岐にわたっています。
・Breakout Session
- 発表形式のセッション
-スライドを投影して発表者がプレゼンテーションする形式
-コロナ禍以降は大半のセッションがOn Demandでも後日配信されています
・Chalk Talk
-ディスカッション形式のセッション
-ホワイトボードを使用してサービスの詳細の解説や構成・設計についてディスカッションを行います
・Workshop
-ハンズオン形式のセッション
-各自もしくはグループで手順書にもとづいて、目的のサービスを構築するハンズオンを行います
・Builders’ Session
-ディスカッション+ハンズオン形式のセッション
-1グループ6名程度に分かれ、各グループにAWSのEXPERTエンジニアが1名付く形式
-最初にAWSのEXPERTエンジニアが説明やデモを行い、その後グループ内でのディスカッションになることもあります
-最後にシナリオに沿って目的のサービスを構築するハンズオンを行います
セッションスケジュールはre:Inventの約1~2カ月程前から公開され、その後、一斉に予約が開始になります。半分くらいのセッションが予約開始日のうちに満席となってしまうため、事前に予約したいセッションは決めておかなければなりません。
そのため、セッションスケジュールが公開されたら、まずは内容を確認して、予約するセッションの優先度を決め、予約開始前までにセッションのスケジュールを立てておく必要があります。
セッションのスケジューリングは参加したいセッションの内容はもちろんのこと、ホテル間の移動が伴う場合は移動時間の考慮も必要です。
また、Keynoteでの新サービス発表によってセッションがイベント開催中に追加になることも多いため、スケジュール変更にも対応できるように、セッションの優先度は最初に確実に設定しておくことにしました。
今回、私たちはBreakout Sessionが後日On Demandでも聴講可能ということで、現地でしか体験できない Workshop や Builders’ Session 形式のセッションを優先してスケジュールを組みました。その上で、Keynoteで新サービスやアップデートの発表を受けて追加されたセッションに一部のセッションを急きょ変更しました。
そんな優先的に参加したWorkshop や Builders’ Session形式のセッションでは、同じテーブルやグループになった方々とディスカッションになることもあります。
ディスカッションの中では、悩みや課題の話になることもあるのですが、皆さん悩むところは同じことが多く、さまざまな考えを聞くことができ、とても参考になりました。
また、こういったディスカッションやセッションに参加することで、海外のエンジニアの方々の開発方法や使用しているサービスのトレンドなどを知ることができるのも現地参加のとても良いポイントです。
今回、私たちが参加したセッションの中から注目したセッションについて、いくつかご紹介します。
1.Using AWS savings instruments in a FinOps journey (sponsored by Spot by netapp)
「FinOps」の概念を用いてAWSでの利用料金を節約することに関するセッションです。
「FinOps」とは、クラウド財務管理の規律と文化的実践であり、エンジニアリング、財務、テクノロジー、ビジネスの各チームがデータ主導での支出に関する意思決定に協働することで、組織が最大のビジネス価値を得ることができるようにするフレームワークを指します。(出典:https://www.finops.org/introduction/what-is-finops/)
AWSを使う上で、より高いレベルでの投資・コスト最適化を行うために必要なことは
「チーム全体の日々の活動とプロセス」にコストの意識と管理を組み込むことであるとされています。
具体的には、下記のような要素が重要となります。
・クラウド、リソース、利害関係者全体の詳細な可視性と分析
・ビジネス、運用、DevOps チームを連携させるための透明性と信頼できる唯一の情報源
・インフラストラクチャーとアプリケーションの継続的かつリアルタイムの評価と最適化
・合理化されたプロセスと例外処理を備えたポリシー主導のワークフロービジネス
・ニーズに合わせた標準プロセスの管理による自動化
・コストを意識したリソースのプロビジョニングと利用
・SLA を実現するためのジャストインタイム スケーリング
これらを実現させるための有効なツールとして「Spot」というものを紹介するセッションとなっていますが、紹介されたこれらの視点はより良いクラウド利用を進めるために必要になってくるものなので、今後も意識して実現させていきたいと考えています。
2.Multi-Region design patterns and best practices
マルチリージョンでのアーキテクチャを設計する上で考慮すべき点について紹介してくれるセッションです。
マルチリージョンでサービスを動かす方法はAWS側でいくつも用意されており、運用の助けになるサービスも日々アップデートされています。ただ、設計をする上でサービス要件・機能が本当にマルチリージョンを必要としていて、細かい部分も含めてそれが実現できる設計になっているかは考慮しなければいけないとのことです。
具体的には下記のような観点が挙げられます。
・そもそも技術的に可能か、オーバーヘッドは大丈夫か、コストとの兼ね合いは?
・他システムとの通信連携はマルチリージョンに対応しているか(endpointが変わる等)
・有効なDR戦略は組まれているか。なにをフェイルオーバーするかの定義。
・モニタリングでもクロスリージョンとしての設定を作成移設することになる(アラーム発火条件等)
これら観点が抜けているとビジネスローンチする過程で問題になりえるため、設計時には常に考慮しておきたいと感じました。
3.Introducing AWS SimSpace Weaver for large-scale spatial simulation
基調講演で発表された新サービス「AWS SimSpace Weaver」を紹介・深掘りするセッションです。
AWS SimSpace Weaverは空間的な環境シミュレーションの構築・運用をサポートするフルマネージドサービスです。一般にこの手のデジタルツインのシミュレーションを行う場合、処理能力の制約が強い単一のサーバーで行うか、高価なソリューションを使って処理能力を確保する必要がありましたが、このサービスではそれがフルマネージドかつ安価に実施できるのがメリットとなっています。
セッションではユースケースとして、災害やイベント時の人流整理、自動運転車で構成されたスマートシティーに使う技術のテストが挙げられていました。さらに、現地ではユースケースを考えるチョークトークセッションも行われる等、いろいろなユースケースが考えられると感じました。
4.Get hands-on and unlock renewable energy data with AWS IoT
AWS IoTの各サービスを駆使して、センサーデータの保管・処理からデジタルツインの作成、モニタリング用ダッシュボードを作成するというワークショップです。
テーマとしては「再生可能エネルギーの装置に関する課題」を取り上げています。
太陽光発電や風力発電では計画外のメンテナンスや装置の故障に多くのコストがかかるのですが、IoTでセンサーデータを取ることはできても、それと運用保守を直結できておらず予防措置等を効果的に実施できないというのが背景となっています。
そこで、センサーデータとデジタルツイン技術を組み合わせて、チェックや検証を行うことで運用保守手法の最適化を図る取組みにつなげるのがワークショップのゴールとなっていました。
直接は普段の業務では扱わないようなサービスではあるのですが、そういったサービスを実際に操作して学ぶことができるのが現地ハンズオンの良いところだと感じました。
今回ご紹介したセッションはほんの一部であり、参加者が学んでみたいと思うサービスや設計・運用に合わせてセッションを選び、実際に操作できるのが現地参加の良い点です。
また、今回のセッションを受けてみて感じたこととしては、単なるサービスの紹介や使い方説明のセッションは少なくなってきており、サービスを組み合わせて「どのように課題にアプローチしていくか」「どのようにビジネスを革新させていくか」というようにレイヤーがより上流になり、発展的な内容のものが増えてきたということです。
これは「世の中でクラウド利用が成熟してきたこと」を示しており、それに追随、あるいはリードしていかなければ置いていかれることをも意味していると考えています。
現地の様子
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基調講演は会場のオープンと同時にミュージシャンの生演奏が始まり、参加者をお出迎えしてくれます。
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基調講演では毎年数多くの新サービスやアップデートが発表されるので、そちらに注目が集まりがちですが、それ以外にもAWSの思い描くビジョンなどについてのお話もあり、個人的にはこちらのお話の方が刺激的でした。
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企業ブースが数多く出展しているEXPO会場。日本で行われるような展示会イベントと同じくらいの広さがあります。
ここでは、日本国内ではまだあまり知られていないようなサービスや製品に出会うことができます。
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EXPO会場やセッションなどでAWSから配布されるノベルティは、ここで受け取ることができるような仕組みになってます。
AWSの資格保有者はここでTシャツなどももらえました。
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Builders’ SessionやWorkshop形式のセッションでは、1テーブル6名くらいの人数でグループ分けがされ、進行します。グループ内でディスカッションになることも。
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最終日の夜に開催される後夜祭のようなイベントです。参加者の皆さん、たくさん学んだあとは、たくさん遊びます。
おわりに
AWS re:Invent 2022はリアルとリモートでのハイブリッド開催で行われ、KeynoteとBreakout SessionについてはOn Demandでも聴講可能となりました。
このようなイベントがリアルだけではなく、リモートでも参加できるような時代になったことは、参加することへの自由度が広がり、とても素晴らしいことだと実感しています。
実際、2020年、2021年のre:Inventはリモート中心での開催となりましたが、世界中どこにいても参加することができ、不便さを感じることなく、むしろリモートで参加することの方が快適にも感じました。
一方で、実際に現地参加をしてみて、リアルでしか体験できないことがまだまだ数多くあるということも実感しました。
リアルで参加したからこそ、世界中から集まった参加者同士でのディスカッションが生まれましたし、AWS のサービスを実際に開発しているエンジニアの方々とじかに接することでしか得ることのできない情報や知識を得ることもできました。
そして何より、集まった世界中のエンジニアの方々の考え方や情熱といった部分に触れ、そこから受ける刺激はリアルで参加することでしかなかなか得ることのできない貴重な体験となりました。
AWS re:Inventは、リアルで参加することの大切さを改めて感じさせてくれるイベントでした。
今後、AWS re:Inventへの参加を検討されている方のご参考になれば幸いです。
2023年3月時点の情報です。