顧客情報の統合がビジネスの明暗を分ける!CRM導入で失敗しないためのポイント
多くの企業で導入が進むCRM。自社の顧客を可視化し、適切に活用することでLTV(顧客生涯価値)向上に役立つツールとして広く普及しています。
しかし、多角的に事業を展開する企業であればあるほど、取り組みのハードルが高くなってしまうのも事実です。
今回は、CRMの導入で失敗しないための基礎を、CRMプラットフォームの実例を交えて解説していきます。
目次
1.CRMとは
2.CRMにおける会員基盤統合の重要性
3.会員基盤の統合がもたらすメリット
4.会員基盤統合の手順
5.よくある課題と解決策
6.会員基盤を統合しCRMを成功に導くために
1.CRMとは
CRMはCustomer Relationship Managementの略で、日本語では顧客関係管理といわれるものです。顧客との良好な関係を構築するための概念やそれを実現するためのシステムを指し、顧客情報が詰まったデータベースをCRMシステム、それらを管理するものをCRM管理システムなどと呼びます。主に顧客満足度向上のために、ひいては将来の売上向上の布石としても活用されるCRMですが、取り組みの難易度が高く、ただツールを導入しただけでは効果は見込めません。
オムニチャネル化が進むビジネスの世界でCRMの効果を最大化するためには、いくつかのポイントを押さえる必要があるのです。
2.CRMにおける会員基盤統合の重要性
CRMに取り組むためには、まず会員基盤の統合を行い、顧客情報を一元管理できる環境を整える必要があります。会員基盤がばらけた状態では、CRMのベースとなる顧客データを最大限に活用することができないからです。
CRMに取り組む目的は、大きく分けて二つあります。ひとつは、顧客を見える化して、適切な分析や効果的な施策を行うため。もうひとつは、顧客に対してアクションを起こす際に、そのアウトプット先を統一するためです。
会員基盤の統合を行わない状態では全体を通した最適施策が取りにくいなど施策の効率が低下するほか、システムが複数に分かれているために顧客管理費用が高額になる、グループ企業間でシナジー効果が生まれずブランド力が低減するなど、さまざまな面で問題が発生します。また、店舗やECサイトごとに複数の会員登録が必要になってしまう、カードやポイントを一本化できないなど、顧客視点での利便性も下がってしまいます。
また、統合された情報活用のため、既にある基幹システムを利用するという方法も考えられます。ただし多くの場合、基幹システムは業務に沿った形でデータ管理がされており、顧客軸でマーケティングを意識した作りにはなっていません。そのため、基幹システムをマーケティング活用目的で改修をしようとした場合、要件整理、設計、開発に多大なるコストと時間がかかります。CRMに取り組むための顧客管理システムを構築する場合には、基幹システムとは切り分けて別途最適なシステムを構築するべきです。
3.会員基盤の統合がもたらすメリット
マーケティングの基盤となる顧客情報を統合し、リアル(実店舗)とオンラインストアを連携させ、企業グループ内でCRMシステムを一元化することには、次のようなメリットがあります。
売上・来店効果の促進
CRMプラットフォームにもよりますが、メール配信による販促で顧客の反応率を測定・分析できるほか、ポイントシステムの活用で来店を促し、顧客との良好な関係を構築することが可能になります。複数チャネルの顧客情報を統合することで、バラバラに実施するよりも、より効果的な施策を実行することができます。また、店舗ごとに散在していた複数のカードやアプリ、ポイントなどを一本化できるため、顧客視点での利便性も向上します。
LTVの最大化への貢献
顧客の来店を促し、顧客との良好な関係を維持することは、結果として、1人の顧客が複数回の購入を行ってもらう可能性が高まります。その結果、LTVが高まります。また、LTVが高まっていくことで、新規顧客を獲得するためのマーケティングコストも増やすことが出来るだけでなく、トータルで見たときのマーケティングROIも低く抑えることが可能になります。
施策の精度向上
顧客データを最大限に活用し、最適な施策や戦略の立案が行えるようになります。顧客情報を分かりやすく見える化できるため、ひとりひとりに対して最適なアプローチが可能になり、売上・来店効果の促進と併せて相乗効果が狙えます。
また、会員基盤の統合は、もともと異なるシステムを用いていた企業同士が吸収合併する際にも有用です。
システム維持コストの削減
顧客基盤を複数保持することで、システムの運用負荷も当然高まります。特に顧客情報を管理するシステムのためのセキュリティへの配慮は欠かせないため、運用コストもその分割高になるものです。顧客基盤を統合し、システムを一元化することにより、システムの運用・維持のためのコストの圧縮効果も見逃せない効果と言えます。
4.会員基盤統合の手順
会員基盤の統合は、次のような複数のステップに分けて行われます。
(1)目的の整理
どのような目標を達成するためにCRMツールを導入したいのか、会員基盤統合の目的やその背景を明確にします。
(2) 統合後の実施施策の検討
会員基盤を統合した後、実店舗やECサイトなどで行うマーケティング施策を検討します。
(3) 顧客向けのサービスの検討
顧客満足度を向上させるためのサービス内容を検討します。導入するCRMツールによって差はありますが、会員向けのポイント制度、one to oneプロモーションが行えるメール配信、来店を促進するクーポンの配信などがあります。
(4) システムごとの情報管理状況を確認する
今までのシステムで管理されている顧客情報が、それぞれどのような情報を取得し、どこで管理されているかを明確にします。
(5) 会員基盤統合までのステップの調整
システム上の統合作業と顧客への影響を考慮し、統合までのステップを調整していきます。
CRMは難易度が高く、ツールを導入しただけで成功することは難しいため、あらかじめ目的を整理し、課題抽出から施策までを見据えて取り組むことが重要です。CRMを提供しているベンダーの中には、システム提供だけでなくCRMの活用までトータルサポートできるパートナーもあるので、自社の状況に合わせてどのパートナーを選ぶかも重要なポイントとなります。
5.よくある課題と解決策
会員基盤の統合は、いわばシステムやデータベースの更新です。多くの場合において異なるデータを統合することになるので、次のような課題が起きやすい傾向にあります。
住所・氏名などの表記ゆれ
システムごとの顧客データを取得後に統合を行うケースが大半ですが、日本語は漢字表記やカタカナ表記などの表記ゆれが多いため、特に問題になるポイントです。この場合は、顧客取得フェーズでの統合を意識した構築を行うのがベストです。
データ形式や書式の違い
顧客情報には決まった規格が存在しないので、システムやツールによって形式がバラバラという場合がほとんど。会員基盤の統合方針をケース・バイ・ケースで調整する必要があるため、実績が豊富でサポート体制が充実しているパートナーを選択するのがお勧めです。
付随して発生する作業を把握していない
データ移行に伴い、顧客への案内が発生するケースもあります。顧客向けのサービスを一新する場合は、会員証やチラシなども新たに制作することになるので、システム上の統合作業とそれがもたらすサービス・業務への影響を俯瞰して考えられる体制が必要です。案内・修正もれによる情報の混在で肝心の顧客を混乱させてしまわないよう、細心の注意を払いましょう。
6.会員基盤を統合しCRMを成功に導くために
多くの企業がCRMを導入し、成功しているという話を耳にしますが、CRMはわかりやすく売上を伸ばすためのツールではありません。CRMとは顧客との良好な関係を構築するための概念であり、その大前提となるのが「会員基盤の統合」なのです。
これまで散在していた会員情報を集約することで、顧客ひとりひとりに対する適切なアプローチが可能となり、それをもとに効果的な施策を打ち、結果として顧客満足度や売上が向上していく。つまり、会員基盤の統合はCRMの土台であると同時に、マーケティングにおけるブースター的存在ともなりうるのです。
整備された会員基盤とその上に導入されたCRMプラットフォームが、リアルとオンラインの垣根を越えオムニチャネル化が進むECの世界において、成功の呼び水となることは間違いないでしょう。
※2021年5月時点の内容です。
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