ソーシャルコマースの意味とは?
活用するメリットや実際の成功事例を紹介
ソーシャルコマースとは、SNS(ソーシャルメディア)とEC(イーコマース)を組み合わせて商品の販売・促進を行うことを意味する言葉です。従来、SNSはECサイトへの集客を目的として使われていましたが、近年は集客から購入までの一貫した流れに結び付けるためのツールへと変化しつつあります。
スマートフォンやインターネットの普及により年々存在感を増すSNSは、情報収集だけでなく人と人、企業と人をつなぐ手段としても注目されるようになりました。SNSにショップ機能や商品タグ機能を搭載したソーシャルコマースは、幅広いジャンルで顧客拡大の仕組みづくりに役立てられています。
2023年2月公開
目次
ソーシャルコマースとは
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ソーシャルコマースとECサイトの違い
ソーシャルコマースとECサイトは、SNSの使い方に違いがあります。ECサイトにおけるSNSは、サイトへ誘導するための集客ツールとして使われているのが特徴です。SNS上にECサイトの新商品やブランドの魅力、広告画像を投稿し、商品を周知するために役立てられています。
一方で、ソーシャルコマースはSNSで集客から販売まで完結できるところがECサイトとの大きな違いです。商品の魅力を伝える企業側の投稿や、口コミによるユーザー同士の交流に加え、ECサイトへの移動なしに商品を購入できるという利便性が付与されており、さらなる売上アップを期待できることから注目を集めています。
ソーシャルコマースの主なプラットフォーム
ソーシャルコマースの代表的なプラットフォームは、以下の通りです。
【ソーシャルコマースの代表的なプラットフォーム例】
■Instagram:商品紹介の投稿にショップタグや商品タグ、商品紹介ボタンを配置でき、そこから商品の購入サイトへ移動する仕組みです。なお、日本のInstagramでは、まだ決済機能は実装されていません。
■TikTok:中国をはじめとし、限られた国でショップ機能が実装されています。インターネット上のテレビショッピング「ライブコマース」を通じて商品を購入できるのが特徴です。
■Twitter:アメリカの一部企業限定で「Twitter Shops」が開始されています。最大5点まで商品を追加できる「Shop Module」やライブ配信機能「Live Shopping」で商品の購入が可能です。Facebook:ショップページを無料で開設できる他、カタログや広告の配信も可能です。ただし、日本では決済機能が実装されていないため、FacebookからECサイトへ移動する必要があります。
ソーシャルコマースの市場規模
ソーシャルコマースは、世界的にも市場規模が拡大しつつあります。コンサルティング企業・アクセンチュアのレポートでは、2025年までに全世界で約139兆円規模の市場へと成長するとの予測が出ていました。
また、日本においてもソーシャルコマースは注目の的です。経済産業省の調査によると、SNSの利用目的は「知りたいことについて情報を探すため」が前年比で 7.2%増加していました。このことから、興味のある商品を調べる場合はSNSを活用し、趣味・趣向が似ている人から情報を収集した上で購入を決定するという行動様式が広く浸透していることがわかります。
さらに、スマートフォン経由の物販のEC市場規模は2018年から2019年にかけて6,076億円増加しており、日本においてもSNSアプリを通じた商品購入がEC市場で重要な位置を占める可能性があると考えられるでしょう。
参照元:経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業
」
ソーシャルコマースの種類
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続いては、ソーシャルコマースの種類を確認しましょう。
【ソーシャルコマースの種類】
ソーシャルコマースの種類 | 概要 | 例 |
SNS型 | SNSの中で購入が可能 | |
ユーザー参加型 | ユーザーが購入者だけでなく企画自体に参加できる、クラウドファンディング | CAMPFIRE、Makuake |
グループ購入型 | 指定人数を満たすとクーポンが発行され、割引が適用される | Pinduoduo(中国)、グルーポン(アメリカ) |
レコメンド型 | 購入履歴から表示されるおすすめ商品や、他ユーザーの評判を元に購入を決められる | アットコスメ、Amazon |
この他にも、ソーシャルコマース分野ではさまざまな方法や媒体が生まれおり、今後もさらなる発展が見込まれるでしょう。近年は、オンラインサロンをはじめとした会員制コミュニティ・メディアも増加傾向にあります。
ソーシャルコマースを利用するメリット
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ソーシャルコマースには、主に以下のようなメリットがあるとされています。
【ソーシャルコマースを活用するメリット】
■購入まで離脱されにくい
■若い世代をターゲットにできる
■顧客の囲い込みがしやすい
ソーシャルコマースは商品の検索から購入までスムーズに行えるため、離脱されにくいというメリットがあります。また、SNSを頻用する10〜20代の若い世代をターゲットにできる他、SNSのフォロワーになってもらうことで顧客の囲い込みがしやすいところもソーシャルコマースの利点です。
購入まで離脱されにくい
ソーシャルコマースは、SNSの投稿に付いた商品の購入ボタンをタップすればそのまま決済まで済ませられるため、購入までの離脱率を抑えられると言われています。一方で、ソーシャルコマースを活用していない場合、商品をカゴに入れるところでストップし、ユーザーに離脱されるケースは少なくありません。
例えば、SNSで人気のインフルエンサーが紹介している商品が欲しくなった場合、ソーシャルコマースを活用していればインフルエンサーの投稿から直接商品を購入できます。「インターネット上で商品を検索し、ECサイトで購入手続きを行う」という従来の手続きを踏む必要がなく、購入の利便性を上げられるのがソーシャルコマースの良いところです。
若い世代をターゲットにできる
総務省が令和3年に公表した調査によると、2020年におけるSNSを利用している人の割合は13〜19歳で86.1%、20〜29歳で90.4%となっており、若い世代を中心に広く普及していることがわかります。また、2019年のSNS使用割合と比べると、2020年は13〜19歳で5.6%増加、20〜29歳で3.3%増加していました。
若者世代のSNS普及は今後も進んでいく可能性があり、SNSを活用したソーシャルコマースは若い世代をターゲットにした商品やサービスを販売する場合にも有効だと言えるでしょう。
参照元:総務省「情報通信白書 | 第2部 基本データと政策動向
」
ユーザーの囲い込みがしやすい
消費者がSNSのフォロワーになれば継続的に商品やサービスの情報を届けられるため、ユーザーの囲い込みが容易になるところもソーシャルコマースのメリットです。SNSでは商品の基本情報だけでなく、開発ストーリーや魅力も発信することでユーザーがブランドに愛着を持ち、ファンになる可能性が高まります。
ファンになったユーザーの囲い込みに成功すればリピーターとして再び商品を購入してもらいやすくなり、安定した利益を確保できるでしょう。さらに、SNSにおけるブランディングの徹底によって他社との差別化が可能となり、リピーターを中心としたファンコミュニティの形成にも繋げられます。
ソーシャルコマースがおすすめのケース
ECサイト事業にもさまざまなタイプがあるため、自社の方針がソーシャルコマースに適しているか確認することも大切です。ソーシャルコマースがおすすめのケースをチェックしましょう。
【ソーシャルコマースがおすすめのケース】
■ブランドの若返りを図りたい
■新しいチャネルを広げたい
■スモールビジネスを始めたい
■従来のやり方を変えたい
■新しい販売方法に挑戦したい
ソーシャルコマースは若い世代をターゲットにしやすいため、ブランドの若返りを図り、新しいチャネルを広げたい時に最適です。また、一般的なECサイト構築よりコストや手間を削減できますので、スモールビジネスを始めたい方や、新しい販売方法に挑戦したい方にも適した手法だと言えるでしょう。
ソーシャルコマースの成功事例
ブランドLの事例
世界的に知られるブランドLは、2019年に中国発のソーシャルコマースプラットフォーム「小紅書」にてハイブランド初のライブストリーミングイベントを行いました。小紅書では、ライブストリーミングに参加した視聴者が好みの商品を見つけた場合「買いに行く」を選択するだけで商品詳細や限定クーポンが表示されるのが特徴です。
2020年に行われたブランドLのライブストリーミングでは、15万2,000回以上の再生回数を突破し、多数のコメントが寄せられました。新型コロナウイルスによる外出自粛の影響もあり、新たな購入体験を楽しめる小紅書のライブストリーミングは高い注目を集めてます。
電気機器メーカーのBの事例
デザイン性と機能性を兼ね備えた電化製品が人気の電気機器メーカーBは、ECサイトの運営だけでなく自社サイト内に商品開発秘話を掲載した「ストーリーズ」を展開しているのが特徴です。商品に込めた思いを丁寧に掘り下げた記事構成になっており、多くのファン獲得に繋げられています。また、ストーリーの最後には商品のECサイトへ移動できるリンクが記載されているため、商品に興味を持った消費者がそのまま購入手続きへ移動できるのもポイントです。
さらに、TwitterやInstagramでは自社商品が暮らしに溶け込んで活用されている様子が多数投稿されており、ユーザーが気に入った投稿からECサイトへアクセスできる仕組みも作られています。こうしたSNS展開の結果として、2021年12月期の連結業績は売上高が前期比46.0%増の183億7,900万円と右肩上がりを続けており、今後も発展が期待できるでしょう。
DNPが提供するファンメディア・プラットフォームについて
DNPが提供するファンメディア・プラットフォームは、会員制メディア(コミュニティ)を構築するサービスです。コミュニティを作るとは、ユーザーに自社商品のファンになってもらうことで囲い込みを行い、企業とユーザーが直接やり取りできる環境を作ることを指します。メリット・デメリットについては、以下の通りです。
【コミュニティを作るメリット】
■コアなファンを作ることができる
■ロイヤリティの向上
■ユーザーのニーズをとらえやすい
【コミュニティを作るデメリット】
■コミュニティの育成には時間と労力がかかる
■成功させるにはスキルも必要
ユーザーとのやり取りを通してニーズを適確にとらえ、満足度向上につなげられるのが大きな利点です。ただし、コミュニティを盛り上げるには時間とスキルが必要なため、十分な準備が求められます。
DNP ファンメディアプラットフォームでできること
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DNP ファンメディアプラットフォームでは、以下のようなことが可能です。
【DNP ファンメディアプラットフォームでできること】
■有料会員登録(サブスクリプション)
■Web記事の配信
■会員ポイント付与
■ポイント景品交換
■デジタル会員証
■電子書籍ビューア
■ユーザーの写真投稿
■ユーザー間のグループチャット
■メール配信
■決済代行
■ライブ配信機能
■ECサイト機能
まとめ
SNS上で商品の検索から購入まで済ませられるソーシャルコマースは、ユーザーの離脱率が低く、若い世代をターゲットにできるところが魅力です。ソーシャルコマースを活用し、商品情報だけでなくブランドの魅力も積極的に発信することでリピーターの増加と安定した収益に繋げられます。また、SNSのフォロワーが増え、ユーザーの囲い込みが進めば自社コミュニティの形成に役立てられるのも大きなメリットです。
ソーシャルコマースは、今後も世界規模で発展が見込まれる市場として注目されています。DNP ファンメディアプラットフォームでは、誰でもすぐにネットショップを開始できるコマースプラットフォーム「shopify
」と提携し、ECサイト機能の強化に努めています。サービス詳細については下記よりダウンロード可能です。
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