MAツールで成果を上げるために知っておきたい3つのこと

検索エンンの発達やSNSの台頭により、生活者が企業からの情報を受動的に受け取るだけでなく、能動的に取捨選択できるようになりました。企業は急増する情報のなかから、自社の情報を有益ととらえ、選択してもらうために、画一的な情報を広く配信するマーケティング活動から、顧客一人ひとりにあわせた最適な情報を発信するマーケティング活動(One to Oneマーケティング)へのシフトが必要不可欠となりました。それに伴い、多くの企業がMAツールの導入・運用を行っています。

本コラムでは、MAツールを導入し、One to Oneマーケティングを実施するうえで陥りやすい課題や、押さえておきたいポイントについて解説します。

目次

1.MAツールで実現できること
2.MAツールの導入にあたって考えるべきこと
 2-1.3つの経営資源 「ヒト・モノ・カネ」でマーケティング部門を捉える
 2-2.MAツール導入の検討プロセスに気をつける
3.MAツールで成果を上げるために認識すべき項目
 3-1.結果的に業務量は増える
 3-2.担当者のスキル不足は当たり前
4.MAツールで成果を出すためには
5.知っておきたい3つのこと

1.MAツールで実現できること

「One to Oneマーケティング」とは、顧客一人ひとりにとって的を射た情報を、適切に提供することです。
近年、さまざまな機能・性能を持ったMAツールが登場し、顧客の行動を細かく把握、分析し、顧客ごとに合わせた最適な情報(クーポンや広告など)を配信することが可能になりました。代表的な機能として、以下を実現することができます。

・One to One 配信
・チャネル横断型の訴求
・トリガー配信・スケジュール配信

2.MAツールの導入にあたって考えるべきこと

2-1.3つの経営資源 「ヒト・モノ・カネ」でマーケティング部門を捉える

企業が投入可能な経営資源である「ヒト・モノ・カネ」の視点で、MAツールを導入・運用し、より高い成果を上げようと考えているマーケティング部門が検討すべき観点を整理します。

1.ヒト・・・部門内でOne to Oneマーケティングを実行できる人材はいるか?
2.モノ・・・実現したいマーケティングにおけるMAツールの位置付けは何か?
3.カネ・・・そのために必要な最小限の投資ポイントはどこか?

2-2.MAツール導入の検討プロセスに気をつける

ここで重要なのは、 「ヒト→モノ→カネ」 の順に優先度をつけて検討することです。
「ヒト」の重要度が最も高いのは、良い「モノ」を使い、多くの「カネ」を集めても、それらを使用するのは「ヒト」であるためです。
よく切れる高価なハサミを手に入れても、それを使いこなす技術を持った美容師がいなければ、素敵な髪型にカットすることはできません。

しかし、実際に、「MAツールの導入を検討している」、「すでにMAツールを運用している」といった企業には、成果を出しにくい検討プロセスを行ってしまっている場合が多く見受けられます。それが「カネ→モノ→ヒト」での検討プロセスです。

1.カネ・・・年間○○万円以下でMAツールの予算が取れるか?
2.モノ・・・予算内で利用できるMAツールのなかで、会社にあっているものはどれか?
3.ヒト・・・部門内でアサイン可能なITツールに詳しいスタッフは誰か?

この発想の違いが、自部門のマーケティング成果に大きな影響を与えます。
「カネ→モノ→ヒト」の順番で判断してしまうと、導入後にMAツールを活用しきれず、ただ呆然とMAツールを持て余すことになりかねません。

「MAツールを導入したのはいいが、担当者が扱えていない。」、「既存施策は多少効率化されているが、担当者一人に業務が集中してしまい、新しい取り組みに着手できない。」
こういった課題をマーケティング部門のマネージャーからお聞きすることは少なくないのです。

3.MAツールで成果を上げるために認識すべき項目

MAツールを導入することで一部業務は自動化され、マーケティング業務の効率化、人的リソースの軽減につながります。しかし、それはあくまでも 『従来のマーケティング』 を行う場合です。
MAを導入する目的の多くは、『従来はできていなかったOne to Oneマーケティング』 の実現でしょう。

この場合、『従来のマーケティング』 と 『新たなマーケティング』 との業務の変化を把握し、最終的に必要となる「ヒト」のリソースを明らかにすることが求められます。 そのうえで、どんな「スキル」がどれだけの「人数」必要になるのかの両軸で検討する必要があります。

3-1.結果的に業務量は増える

MAツールの導入により、それまで人手のみでは実現できなかったOne to Oneマーケティングに取り組むには、新たに、より多くの“考える”作業や、他部門との連携、セグメントに応じた制作量などが発生します。つまり、結果的に業務量は増えると認識すべきです。

極端な例ですが、これまで50人の顧客に1種類のメールを送っていた企業が、今後MAツールを活用して50人を10のセグメントに分類し、10種類のメール配信を行うとします。 それぞれのセグメントに合わせたメールの制作や配信設定、テスト・検証などの『制作・オペレーション業務』もさることながら、それぞれのセグメントの顧客とどのようにコミュニケーションし、どのように「育成」していくのかというシナリオを『考える作業』が格段に増えることになるのです。
セグメントを分けることで、それまで以上により深い考察が必要になるでしょうし、それまで対応していなかった新たなチャネルに対応する必要も出てくるでしょう。

そのような場合では、ただ単純に「ヒト」を増やせばよいというわけではありません。なぜならば、必要となるスキルにも変化が起っているからです。

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3-2.担当者のスキル不足は当たり前

では、具体的にどのようなスキルが必要となるのでしょうか。以下のようなポイントが挙げられます。

データ分析者としての「システム・データへの理解・分析力」

複数のデータを統合し、活用するには、データを蓄積・管理しているシステム部門と認識のずれがないよう調整する必要があります。そのためには、システムやデータについての最低限の理解が必要です。また、統合されたデータから、ユーザーの特徴を見出す分析能力も必要不可欠です。マーケティング担当者であってもSQLの知識と技術は当然求められてきます。

マーケターとしての「KPIの設定や各施策をプランニングする構成力」

細分化されたセグメントに対して、適切なマーケティング施策を構成する力がなければ、セグメントを細分化しても、成果には繋がりません。また、成果に繋がる正しいKPIを設定する力も重要となります。当然、MAツールを活用するわけですからそれをツールとして使いこなすスキルも求められます。

クリエイターとしての「各施策にマッチした広告内容を表現できるクリエイティブ力」

各セグメントの心を掴むクリエイティブを打ち出せる能力も必要です。特にBtoCの場合、クリエイティブの如何によって、購入数を左右するケースも少なくありません。


このようにOne to Oneマーケティングの実践には幅広いスキルが求められます。一人ないし少人数の人材に対し、これらのスキルを最初からすべて望むのは難しいでしょう。

4.MAツールで成果を出すためには

前章のような「ヒト」の「人数」と「スキル」の課題を解決するには、複数の部門を跨いで横断的にスキルマッチングを行い、不足しているスキルについては、教育プログラムへの参加など、能動的な社員のスキルアップ支援が必要です。事業の推進、発展のための経営的な判断となります。

また、「スキル」と「人数」の一部を、外部パートナーを積極的に活用することで補うことも視野に入れるべきです。
「ヒト→モノ→カネ」の順に経営資源の投入を検討するとすれば、「カネ」はツール導入だけに注力せず、バランスよく「ヒト」の育成や確保にも投資する必要があります。

5.知っておきたい3つのこと

企業がMAツールを活用する際には、ツールという「モノ」とその導入にかかる「カネ」に目が行きがちです。
しかし、最も重要なのは、「モノ」が実現できる領域を理解し、本当に目指したいマーケティング活動を実現するために、その「モノ」を最適に活用できる「ヒト」を用意することです。必要な人数とスキルの「ヒト」を用意するために、教育や体制変更まで視野に入れ、検討する必要があるということをご理解いただけたのではないでしょうか。

・「ヒト」と「モノ」が担う領域と、必要な「ヒト」のスキルや工数の理解
・MAツール活用に必要な知見・スキルを担当者に身につけさせるための時間とコスト
・必要な人材のアサイン、外部パートナーとの連携など、組織や企業の壁を越えた体制づくり

これら3つのポイントをしっかりと押さえ、既存のマーケティングを脱し、One to Oneマーケティングによる新たな顧客満足の実現を目指しましょう。


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栗木 竜平
大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部
C&Iセンター デジタルマーケティング本部
プロジェクトマネジメント部 MAグループ

※2018年7月時点の内容です。

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