DXがCXにもたらす変化をふまえ、どのようにECサイトを立ち上げていくべきか
新型コロナウィルス感染症の拡大をきっかけに社会のICT化が加速するとともに、新しい生活様式のひとつとしてECサイトの活用が推奨されています。生活者からモノやサービスが選ばれるための条件として顧客体験価値が生活者の期待を上回ることが求められている現代において、企業としてこれからどのようなECサイトを立ち上げていくべきでしょうか。
今回は、DXとCXをテーマに、これからのECサイトの在り方を考えていきます。
目次
1.DX、CXとは
2.ECサイトとDXの関係
3.DXを考慮したECサイト作りに欠かせないポイント
4.CXを最適化するDXによってECサイトはどのように変わっていくのか
5.まとめ
1.DX、CXとは
DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、「企業がデジタル技術を活用し、既存のビジネスモデルや組織を抜本的に変革すること」をいいます。経済産業省が2018年12月に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」においては、次のように定義されています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
IT化がデジタルによる効率化の推進であったことに対し、DXは「デジタル技術を活用した社会や生活の変革」に焦点が当たっているのがポイントです。
一方、CXはカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)の略で、「商品やサービスの価値を高める顧客体験」を意味します。単に「顧客体験」ともいわれ、商品やサービスがもたらす直接的な満足感だけでなく、購入後のアフターフォローや企業の対応から受ける心証なども含まれます。さらに、顧客視点に立ち、顧客の満足度を最優先として重視するためことから、リピーターを得やすいなどのメリットもあり注目を集めている概念です。
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2.ECサイトとDXの関係
はじめに、ECサイトとDXとの関係を少し紐解きます。
従来は多くの企業で対面でのモノ売りが基本となっており、そのために BtoCでは店頭で消費者とのやり取りが行われ、BtoBでは対面やFAXを中心としたアナログな媒体を通して受発注が行われてきました。
しかし、DXに脚光が当たりかつこのコロナ禍によって、一気にデジタルシフトが進んだ結果、企業はECサイトをひとつの新たな販売チャネルとして捉えるのではなく、ECサイトを中心としたデジタルの世界全体を軸に顧客とのコミュニケーションを取り、CXを高めていくことが重要になりました。
次の項目では、顧客体験向上のためのデジタルトランスフォーメーションを、ECサイトに活用する具体的な方法について掘り下げていきます。
3.DXを考慮したECサイトづくりに欠かせないポイント
訴求や広告のパーソナライズ
顧客体験を起点としてDXを考える上では、データを活用して顧客一人ひとりの状態を把握し、それぞれに合わせた情報を提供することが重要になってきます。具体的には、顧客データや購買履歴、アクセスデータなどをAIで分析し、顧客ごとに個別の商品をレコメンドすることや、広告のパーソナライズなどが挙げられます。
VOC(Voice Of Customer)の活用
企業が持つ顧客データという資産を顧客ごとに適切な方法でフィードバックする点においては、コールセンターに届いたVOCをもとに顧客を理解し、商品やサービスに還元することも有効です。新規、継続、休眠など顧客の状態ごとに VOCの内容や購買情報を分析することで、顧客の状態別に傾向を把握できます。お客さま一人ひとりとのコミュニケーションに活用することで離脱を防ぐことにつながるだけでなく、ロイヤルティの向上にも寄与します。
顧客情報とDXツールを活用したパーソナライズドコミュニケーション
顧客ごとに状態を把握して適切なコミュニケーションをとるために、顧客情報の一元化、メール送信等の自動化、パーソナライズするマーケティングオートメーションツールの活用が効果的です。これまでの販促施策はコンバージョンの確度が高い顧客に対するものに集中しがちでしたが、DXツールの活用により、対応がおろそかになりがちであった見込み客とのコミュニケーションも効率的に図ることができ、広範囲の顧客育成が可能になります。また、将来の顧客となりうるお客さまを見つけ、初期段階から丁寧に関係を構築することは、顧客にとってその企業が信頼に値する存在となり、最終的に顧客から選ばれる存在となる近道でもあります。
リアルタイム性の追求
購入を悩まれているお客さまには購入を後押しするような情報を、再訪問されたお客さまには前回の情報をふまえたご提案をというように、顧客に最適なタイミングで最適なアクションをすることも重要です。そこで、今すぐに情報を必要としているお客さまのためにチャットボットによる相談応対や、購入を悩まれていて離脱しそうなお客さま限定のクーポン配信など、状況に応じて即時に解決策や後押しとなる特典を提示することも顧客満足度を向上させる手段としてとても有効です。
4.CXを最適化するDXによってECサイトはどのように変わっていくのか
企業にとっての変化
DXの活用によりマーケティング精度が向上し、対面販売の強みであった個別の「おもてなし」がWeb上でも可能になるのは、ECサイトが店舗のひとつとして大きな役割を担うことを意味します。オンライン接客やチャット機能などのサービスが複数登場している点からも、その兆しを感じ取ることができます。また、ECサイトの運営は、企業からのメッセージや商品に込めた思いを顧客に直接伝える場を作り出すことに他なりません。価格以外の価値を顧客に共有しやすく、デジタル技術をもとにCXを高めることができるECサイトは、大手モールでは受けることができない顧客体験を提供する場として欠かせない存在となっていくでしょう。
消費者にとっての変化
店舗に近い感覚でECサイトを利用できるようになれば、これまで店舗での購入がメインだった層にも大きな変化が起こります。また、主にアパレルECにおいて問題になるサイズや色に関しても、チャットを活用したスタッフの適切な説明があれば解決が容易です。これにより、近隣に店舗のないエリアの顧客でもECサイトで店舗と同等の接客を受けられるようになるため、購入機会の促進につながるでしょう。さらに、DXを活用しCXの価値を最大化したECサイトであれば、顧客に合った商品レコメンドや情報提供により、かゆいところに手が届く存在となり、顧客のファン化を促すことにつながります。
5.まとめ
モノやサービスがあふれ、顧客の期待よりも顧体験価値が上回らなければ選ばれない時代になりました。コロナ禍によりデジタル化が進み、DXの促進によりリアルとデジタルが融合しつつある今、新しい生活様式のひとつとしてECサイトの活用が推奨されています。そしてECサイトは重要な顧客接点のひとつとして、DXを促進し、CXの価値の最大化を追求することが求められているのです。
従来の施策では画一的な販促になりやすく、過剰なPRから敬遠されるケースも少なくありませんでした。そのような環境において一人ひとりに合わせた「顧客体験価値」を提供することは、企業だけでなく、EC業界において確かな変革の一歩となるはずです。
※2020年12月時点の情報です。