CXを効果的に管理し、素早くPDCAを回すカスタマーフィードバックマネジメント(CFM)とは
製品やサービスがコモディティ化し、競合との差別が難しい時代と言われる現代において、各企業にとっては、製品・サービスそのものだけでなく、企業と顧客のあらゆる接点(タッチポイント)においてその体験価値を高めるカスタマーエクスペリエンス(以下CX)の向上が重要課題となっています。
このCXを管理し、顧客体験を高めるPDCAを回す手法として最近注目されているカスタマーフィードバックマネジメント(以下CFM)。このコラムでは、CFMの概要とそのメリット、活用方法を解説します。
目次
1.CFMがなぜ重要なのか
1-1.CXを管理するカスタマーフィードバックマネジメント(CFM)とは
1-2.CFMで重要なVOC(Voice of Customer)とは
2.CFMでPDCAを回す方法
2-1.顧客ロイヤルティとLTV(Life Time Value)によるKGI /KPI管理
2-2.CFMのあるべき姿
3.まとめ
1.CFMがなぜ重要なのか
1-1.CXを管理するカスタマーフィードバックマネジメント(CFM)とは
近年、生活者の価値観多様化、人口減少等の社会環境の変化を背景に、新規顧客獲得以上に顧客の囲い込みが企業のマーケティング戦略において重要視されるようになってきました。すべての企業において、CXの向上は、このような顧客の囲い込み、ブランディング、顧客ロイヤルティの向上につながる非常に重要な要素です。
CFMとは、端的に言えば、顧客からのCXに対する声やフィードバックを管理し、オペレーション、マーケティング、IT・デジタルマーケティング、商品開発などのビジネスプロセスに反映させ、最終的に企業の経営指標に貢献させる手法を指します。そこには、「顧客の声を継続的に収集・分析すること」、「分析結果から効果的な顧客の囲い込み施策を実行すること」、「実行施策がどの程度効果を上げたかを検証すること」が含まれます。
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1-2.CFMで重要なVOC(Voice of Customer)とは
CFMの根幹をなすのは、顧客からのフィードバックデータです。
これらの代表的な例はコールセンターへ寄せられるVOC(Voice of Customer:顧客の声)があげられますが、このようなVOCは一部の尖った声であり、逆に大多数の声に出さない声(Silent Majority)を拾いあげていくことが重要となります。
また、VOCは通常、定性データとして扱われることが多いですが、定量化することによってはじめて、経営指標との相関を分析したり、VOCにもとづく改善活動や施策の優先順位等を設定することが可能となります。
さらに、VOCからは顧客の感情を読み取ることができるため、顧客囲い込みにおいても特に「離脱防止」に有効であると言われています。よって、顧客育成を図るCRMにおいても購買データとともにVOCも収集・分析することで顧客ロイヤルティを高めながら囲い込みを実現することが可能となるのです。
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2.CFMでPDCAを回す方法
2-1.顧客ロイヤルティとLTV(Life Time Value)によるKGI /KPI管理
繰り返しになりますが、新規顧客の獲得が難しい近年においては特に、リピーターの獲得すなわち既存顧客の囲い込みが、利益拡大に大きく貢献します。LTV(Life Time Value)とは、一般的にある顧客が自社製品・サービスの利用から離脱してしまうまでの期間にもたらしてくれる総利益のことを指し、一般的には顧客ロイヤルティが高いほどLTVが高くなります。
したがって、企業は顧客ロイヤルティを高めることを目的として、各ビジネスプロセスにおいてPDCAサイクルをまわして改善していく必要があります。そのためには、顧客とのすべてのタッチポイントにおけるCXの顧客評価を収集し、分析した上で最適なCXを提供し続けなければなりません。
この際のロイヤルティを測る有効な指標のひとつがNPS(R)(Net Promoter Score)です。NPS(R)は経営指標との相関が高いことで注目され、採用する企業が増えている顧客ロイヤルティを測る指標です。自社の顧客のNPS(R)(=ロイヤルティのスコア)と顧客利用頻度や利用金額等の経営指標との相関を分析した上で、ロイヤルティに影響するタッチポイントのCXを管理することにより、ロイヤルティが高まり、ひいてはLTVの最大化を実現できると言えるでしょう。
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2-2.CFMのあるべき姿
最適なCXの提供よるロイヤルティのPDCAサイクルをまわすためには、クローズドループによるVOCの収集⇒分析⇒改善⇒検証を高速で回していくことが必要となり、これにCFMを回すための仕組み(CFMシステム)が活用されます。CFMシステムには、VOCを収集するためのアンケート作成機能や収集したVOCデータを分析する機能、各種スコアをダッシュボードに表示する機能が含まれ、リアルタイムに顧客CXのスコアをモニタリングすることが可能です。これにより評価が著しく悪化した際には、アラートをあげ、重要課題に対して迅速なアクション起こすことも可能です。
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このPDCAを回していくにあたって、企業が留意すべきポイントがいくつかあります。
顧客が体験した直後のVOCを取得する
ECサイトでショッピングした際の購入完了メールや、購入したアイテムが手元に届いたタイミングでの(納品書等にアンケートサイトのURLをQRコード印字)CXアンケート等、顧客の記憶は時間がたつほど曖昧となります。体験直後のVOCの取得が最も質の高いデータとなります。
継続的にVOCを収集し、改善や施策の効果検証を続ける
顧客の感情はちょっとしたことが原因で大きく変化します。よって一度VOCを収集したら終わりではなく、顧客が体験をするタイミングで継続的にVOCデータを収集することが必要となります。
VOC収集のためのアンケートは簡潔に
継続的なアンケートによりVOCを収集する際に、回答に時間がかかるアンケートだと、アンケート自体が悪いCX、ひいてはロイヤルティを低下させる要因になりかねません。
したがってアンケートはできるだけシンプルに設計する必要があるでしょう。
3.まとめ
このコラムでは、CFMのメリットとあるべき姿について解説しました。CFMの主目的は、顧客からのフィードバックをビジネスプロセスに反映させ、顧客ロイヤルティ、ひいてはLTVの改善につなげることにあります。CFMを利用して、必要なデータを継続的に収集し、PDCAサイクルをまわすことで、自社利益の向上につなげましょう。
※2020年1月時点の内容です。