ファーストステップで差がつく、選ばれるECサイトの始め方
企業規模を問わず、販売経路拡大などの目的でECサイトを展開することが一般的になってきました。しかし、ECサイトの運用は実店舗とは異なるノウハウが必要になるうえ、ECサイト自体も星の数ほど存在するため、せっかく立ち上げても埋もれてしまうケースが少なくありません。 ただのECサイトではなく、「選ばれるECサイト」を作るには一体どのようなことを心がけるべきか、ECサイト構築の基礎も交えて解説していきます。
目次
1.ECサイト構築の基礎
1-1.ECサイトを始める理由を明確にする
1-2.ECサイトの種類
1-3.ECサイトの構築方法
2.構築~構築後の運用設計
2-1.開始前に意識すべきこと
2-2.開始後に意識すべきこと
2-3.顧客体験価値を高め、他社ECサイトと差別化するために
2-4.選ばれるECサイトを始めるために
1.ECサイト構築の基礎
1-1.ECサイトを始める理由を明確にする
まずは、目的を明確にすることが重要です。ターゲットユーザーはどんな人なのか?ECサイトにはどのような機能を準備しておく必要があるのか?を明確化しましょう。
目的を明確にしたら、それをECサイトのデザインやコンセプト、訴求ポイントなどの具体的な要素に落とし込んでいきます。例えば入り口となるTOPページではユーザーに与える印象の大半が決まるだけでなく情報提供の場でもあるため、商品やブランドのイメージも考慮したうえで慎重に決定すべきといえます。
また、ECサイトを始める目的やターゲット、提供価値は、その後の運営で課題や迷いが生じた場合も「このような目的を達成するため、このようなターゲットに対し、このような価値を提供したい」という考えに立ち戻ることができ、適切な指針を得やすくなるでしょう。
1-2.ECサイトの種類
ECサイトには、大きく分けて自社サイト型とショッピングモール型の2種類が存在します。企業やブランドの規模はもちろんのこと、達成したい目標によってもとるべき選択肢は変わってきます。
自社サイト型
ECサイトのうち、インターネット上に独立したショップを持つものを指します。ショッピングモールの一角にテナントとして出店するのではなく、1軒を丸ごと自社のショップとして運営する形態で、企業名やブランド名を冠した独自ドメイン上で運用されることがほとんどです。自由度が高く顧客体験(以降CX)を重視したサイト構築が可能な反面、集客力には欠けるため、集客施策は別途行う必要があります。使用するサービスによってはスモールスタートも可能ですが、ショッピングモール型と比べて比較的多くの資金が必要になるため、一定以上の規模を持つ企業向けの形態といえるでしょう。
ショッピングモール型
ECサイトのうち、既存のショッピングモールの中にテナントとして出店するものを指します。楽天市場やAmazonなどが代表的で、自社サイト型と比べて低価格で始められることから、企業規模を問わずインターネット上にショップを開店できるのがメリットです。しかし、デザイン・機能面で自由がきかないため、ECサイトを開設しても埋もれてしまいやすいことや、顧客情報がモールの運営主体に帰属するため個別のCRM施策が展開できないというデメリットがあります。一定の知名度があるなどで売上が見込める場合は、自社サイト型の方が適しているといえるでしょう。
1-3.ECサイトの構築方法
CXを重視して構築することができる自社サイト型ですが、多くの場合、ECサイトの構築サービスを利用し、そのうえでサイトを作り上げていくことになります。一言で自社サイト型といっても、その構築サービスにはさまざまな種類が存在します。
インスタントEC
自社サイト型の中では最も価格が低く、スタート資金が少なくてもECサイトを開設することが可能です。その名の通り、開設までの所要時間も少なく手軽に始められますが、どちらかというと初心者向けの設計で、デザインはほぼテンプレート選択方式となるため、使い続けるにつれて不便さが目立ってくることもあります。一般的に必要な費用は、初期費用・運用費用ともに無料で始めることが可能ですが手数料の割合が高いことが特徴です。
ショッピングカートASP
インスタントECの次に価格が低いため導入しやすく、多様な構築サービスが提供されています。価格と機能のバランスに優れ普及率も高いですが、その半面自由度は低めで、カスタマイズはオプション内に制限されていたり、カスタマイズができなかったりする点には注意が必要です。一般的に必要な費用は、初期費用は数万円、デザイナーの力を借りると30~100万円程度の費用がかかります。運用費用はサービスの利用費用が月額1万円前後、さらに決済手数料が数%かかる場合が多いです。
フルクラッチ
これまでに挙げたサービスとは異なり、ECサイトをゼロから開発することを指します。莫大なコストはかかりますが、カスタマイズ性が最も高く自由に構築ができる点は、他にはない大きなメリットといえます。CXを追求したきめ細やかな設計が可能ですが、投資する金額に応じた効果が見込める場合にのみ選択すべきでしょう。一般的に必要な費用には幅がありますが、初期費用は1000万円から、運用費用は初期費用の10%程度の費用が月額で発生し、さらに決済手数料が数%かかってきます。
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2.構築~構築後の運用設計
2-1.開始前に意識すべきこと
実店舗とは異なり、ECサイトでは商品を手に取って購入を検討することや、購入してその場で持ち帰るといったことができません。売買をインターネット上で完結させるECサイトではどのような点に留意すべきか、重要なポイントを解説していきます。
商品写真と紹介文
以前よりも生活者の写真に対する目が肥えているので、商品写真や紹介文は特に力を入れるべきでしょう。紹介文の完成度はブランドイメージにもつながるため、決して手を抜かず、クオリティの高いものを用意します。商品の魅力をより適切に伝えるためのレタッチを施すほか、使用イメージを想像しやすくするためにモデルを起用するなども効果的です。
決済方法
商品やサービスに応じた適切な決済方法を用意します。できるだけ多くの決済手段に対応しておくのがよりよいですが、最初のうちはクレジットカード決済とコンビニ決済など最低限の決済方法を用意しておき、徐々に選択肢を増やしていくのもよいでしょう。また、決済手段ごとに手数料や料率が異なる点には注意が必要です。
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配送方法
到着日時指定や追跡が可能で信頼性の高い宅配便と、留守でも受け取りやすいポスト投函のメール便が主流です。慎重な取り扱いが求められる商品は宅配便が適していますが、一人暮らしなどの場合に受け取りづらくなるため、できる限り複数の配送方法から選択できるようにすべきでしょう。ライフスタイルの多様化や配送コストの増加を受けて、メール便での配送を意識した商品開発をしている企業もあります。
集客方法
ECサイトの集客は、Web広告がメインとなります。SNSアカウントやメールマガジンといった自社メディアがあれば、Web広告との併用が効果的です。また、実店舗を運用している場合は、既存メディアやサイネージなどを活用することでも集客効果が望めます。
顧客育成手段の検討
ECサイトでは、CXの向上と効率的な運用を実現するWeb接客ツールや、マーケティングオートメーションツール(以降MAツール)を最初から組み込んでおくことが推奨されます。それにより顧客育成や顧客情報の収集が容易になり、行動履歴に応じたアクションの自動化ができるため、CXをふまえた適切な施策を迅速に立てられるようになるのです。メルマガにおいては、セグメント配信するだけでなく、その顧客におけるアクションの有無のデータを取れるかどうかが重要となります。顧客の育成戦略を明確にし、目的実現のための機能が備わっているツールを選定しましょう。
2-2.開始後に意識すべきこと
前述の通り、自社サイト型ではCXを追求できる反面、集客や販促に力を入れる必要があります。立ち上げたあとはどのような運用を心がけるべきか、具体的に見ていきましょう。
新規顧客、継続顧客の割合や顧客像
将来の売上へとつながる新規顧客は順調に増加しているか、リピーターである継続顧客はどのような属性か、両者の割合に極端な偏りがないかを意識します。さらに、購入金額や継続期間の切り口から継続顧客の中にロイヤル顧客がどのくらい存在していて、どのような属性なのかもチェックしておくことで顧客像がより明確になります。また、顧客がECサイトのターゲット像と一致しているかどうかも重要なポイントです。
新規顧客ばかりに偏らないようにすることも重要
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メールマガジンの配信
ECサイトにおいて重要な顧客接点となるメールマガジンですが、ユーザーに開封してもらうためには工夫が必要です。思わず続きが読みたくなるような魅力的なタイトルや、メルマガ限定オファーなど売りの強さを重視するだけでなく、有益な情報を盛り込んだコンテンツを作成し、顧客にとって価値ある情報を届けることをも意識しましょう。
MAツールの活用
上記3点のポイントを統合管理できるのが、ECサイト運営において重要な工程を自動化できるMAツールです。顧客分析やメールマガジン限定キャンペーンといった施策シナリオにおけるPDCAサイクルを効率化し、自社サイト型の強みである顧客体験価値の最大化に大きく貢献します。
更新性
新商品の発売など、コンテンツを定期的に更新することは、ECサイトの再訪問を促すきっかけになります。施策シナリオだけでなく、何度も訪れたくなるECサイトとはどういうものかを顧客視点で考え、商品の魅力が伝わるような読み物コンテンツを用意するなど、施策以外の点においても訪問したいと思える工夫を凝らすことが大切です。
商品登録
ECサイトにおける商品登録作業や商品ページのメンテナンスは、商品数が多いほど作業負担が増していきます。そのため、効率的に商品データを作成・登録するフローや体制を整え、早い段階で確立させることを意識しましょう。
2-3.顧客体験価値を高め、他社ECサイトと差別化するために
自社サイト型を始める際の肝となるのが、「顧客体験価値の最大化」という考え方です。「商品の価格以上の体験価値を顧客に提供する」というCXの概念をベースにすることで、他社ECサイトとの差別化が可能になるのです。
自社だけでなく、他社のCXも研究する
CX向上のために他社ではどのような手法が行われているかを研究し、自社ECサイトの差別化やCXの最大化に反映させます。従来のECサイトは企業目線で設計されたものが主流でしたが、ECサイト立ち上げの段階からCXを意識することでより質の高い顧客体験を提供できるようになります。
DXツールの活用
思い描いた理想のCXを実現するためには、Web接客ツールやMAツールといった各種DXツールの活用が望ましいでしょう。ECサイトでは実店舗のような直接的な接客ができないため、チャットボットをはじめとするWeb接客ツールの導入はCX向上の手助けとなります。さらにMAツールを活用し、日常的に行われる定型作業の自動化を行うことで、運営にばかり時間を割くのではなく販促計画や効果測定、CXの向上に関する検討・施策展開などに時間を割けるようになります。ただしサイト構築方法によってはDXツールの導入が難しい場合もあるので、導入を視野に入れる場合はカスタマイズが柔軟な構築方法を選択することが賢明です。
顧客行動情報の収集、分析
ショッピングモール型では出店企業が利用できる情報には制限がありますが、自社サイト型の場合はそういった制限がないことも強みのひとつ。このメリットを最大限にいかし、基本情報に加えて自社サイト型でしか収集できない独自の顧客行動情報を掛け合わせた分析を行うことで顧客をより詳しく知ることができ、施策検討や顧客育成のプランニングに活用することができます。独自情報には、コラムの閲読情報やオリジナルアンケートなどが該当します。
KPIの明確化とBIツールの導入
ECサイトをどんな目的で開始・運営し、何をゴールとするのか。それをKGIやKPIとしてしっかりと定義し、社内で共有していくことは重要です。そして、そのKGIやKPIをビジネス・インテリジェンスツール(BIツール)で表示し、モニタリングをしっかり行うことで何が問題になっているのかが一目で分かります。
AI活用によるPDCAの自動化
上記の項目はいずれも、自社サイト型が差別化を図るために欠かせない要素ですが、さらにAIの活用によりこれらのPDCAを自動化することで、顧客体験価値の最大化を加速させることが可能になります。AIは学習させるほどに精度が上がるという特徴を持つため、当初から導入を検討したいシステムのひとつです。
2-4.選ばれるECサイトを始めるために
ショッピングモール型が飽和しつつある今、競合他社との差別化などの目的から、CXを追求できる自社サイト型に注目が集まっています。インターネット上できめ細やかな接客を実現するCXの考え方と、テクノロジーを用いて従来の業務を劇的に効率化させるDXツールは、自社サイト型のECサイトで差別化を図るために、特に重要なポイントとなっています。
生活にインターネットが浸透し、ECサイトの利用率も上がった反面、使いやすいECサイトはもはや当たり前でしかなく、それ以上の付加価値が求められるようになりました。CXやDXの概念に加え、AI技術がECサイトの分野にも導入されているのは、そこに生活者のニーズがあるからに他なりません。
他社のまねをするのではなく、自社のECサイトに必要なものとは何か、それがなぜ必要とされるのかをしっかりと考え、実現したいことに合致した構築方法、導入ツールを選定することが選ばれるECサイトを作るための近道といえるでしょう。
※2021年5月時点の情報です。