【セミナーレポート】第1回 CX事例研究セミナー
DX for CXを実現するための“デザインシンキング”
お客さまが本当に必要としている価値を届けることが、DNPのお客さまに対する最高のCX(カスタマー・エクスペリエンス)だと考えます。それを実現するために、サービスデザイン・ラボという組織が主体となってデザインシンキングという思考方法を導入しています。当社がどのようにして1万人組織へそのデザインシンキングの浸透・定着に挑戦しているかをご紹介するセミナーを、2023年1月に開催しました。
本ページでは、セミナーの概要をまとめたレポートを掲載しています。セミナー動画の視聴と講義資料の閲覧・ダウンロードもできますのでぜひご覧ください。
※セミナー動画はYouTubeからご覧いただけます。
登壇者
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菅野 加代子 |
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松田 久仁子 |
DNPのサービスデザイン・ラボとは?
サービスデザイン・ラボ発足の歴史
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これまで当社は、創発的な社会の発展に貢献するために印刷技術と情報技術を融合させ、多角的に事業を拡大してきました。しかし、リーマンショック以降の世界同時不況や印刷産業のデフレによりこれまでにない状況に直面し、この状況の打開に向けて、新たな強みを発揮できる体制を整えてきました。端的に言うと、モノ(製品・技術)からコト(体験・サービス)への増強です。そのような時期に発足した組織が「サービスデザイン・ラボ」です。
サービスデザイン・ラボの主な活動
サービスデザイン・ラボのビジョンは未来のあたりまえとなるようなイノベーションを共創型で作り上げることです。世の中にイノベーション創出のためのアプローチはさまざまありますが、特に私たちの特徴といえるのが、サービスデザインと共創です。
これら2つの領域を中心に研究開発を行い、得られた知見を新たな価値の創出活動につなげる実践重視のラボになります。
サービスデザイン・ラボの主な活動は4つあります。
活動1)方法論の研究開発
1つ目は方法論の研究開発です。サービスデザインという体系化された方法論をもとに、社会環境やビジネス環境の変化に応じて新たな方法論を開発し、イノベーションの創出活動を行っています。例えば、脳科学をビジネスに応用する取組みなども実践しています。
活動2)サービスデザインの普及・啓発
2つ目の活動はサービスデザインの普及・啓発です。主に企業での講演会やイベント開催、大学での講義、イノベーション関連の書籍監修などを行っています。
活動3)サービスデザインの実践
3つ目の活動はサービスデザインの実践です。社内外のクライアント向けにサービスデザインによる共創プロジェクトを提供しています。当社はプロジェクト設計やマネジメント、価値創出のための方法論の提供など、デザインコンサルティングの役割を担っています。サービスデザイン・ラボでは、家電・出版・食品・インフラといったさまざまな業界のクライアントと共創でサービス開発や事業開発に取り組んできました。
活動4)組織デザイン
4つ目の活動は組織デザインです。今回のセッションのメインテーマであるため、セッション2で詳しく解説していきます。
POINT
世の中のニーズがモノからコトへ変化するなかで、体験にも重きをおくサービス視点へと変化しました。世の中のニーズ変化にあわせて、新しい組織の発足・活動を即座に行う姿勢こそが、事業を継続する上で非常に重要といえるでしょう。
セッション1 なぜDNPがデザインシンキング?
DNPは文明の営業を理念に掲げ、創業より147年もの間、一貫した課題解決力を強みとしてさまざまな事業に取り組んできました。課題解決には強い一方で、自ら課題を提起し価値を創出することに関しては、組織全体として力を底上げしていかねばならないという課題意識がありました。この状況を打破するため、私たちの所属する事業部ではDX for CXというキーコンセプトを掲げ、事業部全体で考えを共有するようになりました。
DX for CX=DXを手段として顧客体験価値(CX)を最大化していく
そして、体験価値の最大化を実現する取組みの一つとしてデザインシンキングを位置づけ、その考え方を組織に共有しています。
デザインシンキングとは?
デザインシンキングとは、デザイナーの思考プロセスを、ビジネス上の問題解決に活用する手法や考え方です。問題の本質的な課題をとらえて、質の高い価値提供につなげるためのものであり、デザイナーやクリエイター特有のスキルや手段ということではなく、ビジネスにおけるさまざまな課題解決に適用できる考え方です。
デザインシンキングの特徴
これまで、イノベーションの創出パターンは市場環境や技術起点から始まるものもありましたが、デザインシンキングは市場や技術起点ではなく、対象となる人の行為や感情を起点にしてイノベーションを起こす点が特徴です。
私たちの社会環境やライフスタイルは急速に変化しており、将来の予測ができない(過去の成功体験が通用しない)時代となりつつあります。対象となる人や現場に焦点を当てて課題の本質をとらえる、最適な解決策を見出す、というデザインシンキングの特徴は、現代のような不確実な時代にこそ必要なアプローチだと考えています。
そして、私たちの組織もこの考え方を身につけ実践することで、課題提起にも強い組織に変容しようとしています。
創業から147年間、課題解決に真摯に取り組んできた集団を、課題提起型の集団に変えられるか。
私たちは現在この大きな問いに取り組んでいます。
POINT
私たちの社会環境やライフスタイルは急速に変化しており、将来の予測が難しい時代です。そのため、従来の課題解決ではなく、課題提起の考え方がより重要視されるようになるでしょう。事業を行う際には顧客の立場になって物事を考え、現場の状況や抱えている課題を適切に把握することがポイントです。
セッション2 「3つのP」でデザインシンキングの浸透を加速!
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Sessinon2ではデザインシンキングの考え方を組織に浸透させていく方法を具体的に解説しました。
デザインシンキング浸透活動を一緒に進める仲間
当社では浸透活動に一緒に取り組んでくれる社員をデザインシンキングアンバサダーとして全国各地で起用しています。デザインシンキングアンバサダーは、2023年1月時点で152人となっており、各所属組織の状況に寄り添い、自組織での活用の検討や浸透活動の推進を行うことを主なミッションとする、活動に欠かせない仲間です。
浸透を進めるために必要な3つのPとは?
サービスデザイン・ラボでは、3つのP「People」「Process」「Place」の視点で、デザインシンキングの浸透を進めています。
People
組織に新しい考えをインストールする際には、日々の仕事もあるなかで、「また新しい教育・研修を受けなければいけないのか」「とりあえず出ておけばいいか」と考える人も出てくるでしょう。当社では組織として変化しないといけない!という意識を持ってもらうために、熱いトップメッセージから始まる全事業部グループ員必須のトレーニングセッションを実施しています(“研修”“講座”という、お勉強感のないネーミングにしているのもポイントです)。また座学用動画教材やオンラインワークショップによるトレーニングコンテンツを開発し、浸透活動のDXも推進しています。
Process
デザインシンキングの考え方は理解できたものの、いざ自分の業務に取り入れようとすると何をするべきか分からない、なかなか実践できないと悩む人も少なくありません。当社ではデザインチームが現場に入り、実務を通して現場のプロセスをスピーディーにリデザインするリビングラボ活動を実施しています。また、新しい考えを取り入れることに対して心理的・時間的負荷を高く感じるという課題を解決するために、ユーザーである現場の社員自らによるオリジナルなデザインツールの開発に取り組んでいます。
Place
既存の環境のままだとせっかく得たマインドやスキルを活用しづらい。周りに仲間がいないと孤独になり継続しづらい。といった悩みを抱える人も多く見られます。そのような課題を解決するため、市谷にある本社やなんばの営業所などに、クリエイティブな共創に特化したスペースを作り上げました。幅広いメンバーでの価値創造ディスカッションや、共創を促進させるために最適な空間となっており、共創に必要な資材や環境が整っている点が魅力です。
また、リアルの場だけではなく、社員同士の情報発信や交流のためのコミュニケーショングループや、社内イントラサイトなどのコミュニティサイトも運営しています。コミュニケーショングループでは世の中の事例共有やプロジェクトメンバーの募集、サービスデザイン・ラボによる定期相談会を行い実践の後押しをしています。
浸透活動もDX for CXで!
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組織への浸透は一朝一夕では進みませんので根気強く継続していくことが重要ですが、「施策が行き当たりばったりになる…」「成果・効果が見えず、勢いが減速してしまう」ということから活動自体がフェードアウトしてしまうケースも多々あります。当社では、各種施策にデジタルを取り入れつつ、対象者向けの定期アンケートでの定点観測をあわせて、浸透定着度合いの見える化、データ分析を行っています。そして課題抽出から新たな打ち手の検討・実施と、サイクルをまわしながら活動自体もDX for CXのコンセプトで行っています。
素敵なCXを描くために大事なコツ
最後に、イノベーション活動(組織デザインや、素敵なCXの創出など)を成功させるための3つのコツをご紹介します。
Try and Error
1つ目はTry and Errorです。とにかくやってみる!という姿勢がなによりも大切です。職場全体で失敗を恐れない姿勢を持てれば、小さなトライの積み重ねから学びを得て、スピーディーに大きなイノベーションにつなげていけるでしょう。
Open Innovation
2つ目はOpen Innovationです。多様な部門・視点で共創することが非常に大切です。他のメンバーの考えを否定するのではなく、お互いの良いところを見つけて乗っかり合い、新たな価値の創造をめざしていきましょう。
Playful Thinking
3つ目は最も大事なPlayful Thinkingです。組織を変える、新しいイノベーションを生み出すなど大きなチャレンジには、それ相応の困難や壁があります。そんな時こそ複雑なこと、困難なことを楽しむ。真剣に楽しむというマインドが欠かせません。
POINT
新しい考え方を組織に浸透させていくためには、社員1人ひとりが継続して取り組みやすい環境をつくる必要があります。新しい考えをインストールしようとすると、心理的な負荷がかかるものです。社員の気持ちや状況に徹底的に寄り添い、工夫を惜しまず日々施策のアップデートをしていくことが重要です。
デザインシンキングを取り入れて活動している「今」のDNPの姿をご紹介しました!DNPと取り組むとなんだか楽しそう、わくわくする!と感じていただけたら幸いです。ぜひ一緒にデザインシンキングを活用し、皆様の課題に取り組んでみませんか?
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※セミナー動画はYouTubeからご覧いただけます。
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※2023年2月時点の情報です。