事務作業の改善で生産性向上を 効率化の5つのポイント
【連載-販促物管理のポイント 第4回】

事務作業には、効率化できる部分が多く残っているといわれています。直接的に利益に結びつけて考えることの少ない分野ですが、事務作業を効率化することでなぜ業務改善へとつながるのでしょうか。事務と業務の関係、事務作業効率化のポイントと具体策を見ていきながら、さらに販促物管理の業務効率化について紹介します。

事務作業の効率化と業務改善はどう結びつく?

事務作業の効率化と業務改善との関係を考える前に、事務と業務とはそもそもどのような位置にあるのかをおさえておく必要があります。その上で業務改善手法としての事務作業効率化を考えてみましょう。

「事務」と「業務」

一般的に業務とは「職業や事業などに関して、継続して行う仕事」と定義されています。一方、事務は「書類の作成など、主として机の上で取り扱う仕事」のことです。現実社会に照らして考えると、業務は「組織の最終的な目的達成のために行う仕事」を指します。一般企業であれば、営利を目的として行う仕事全般が、業務です。

事務は業務を遂行する手段のひとつで、書類作成や帳簿の処理など、机の上で行う仕事全般を指して使われる言葉と考えられます。また、事務の指す範囲を広く考えると、時にはマーケティングや目標に対する進捗の分析まで含む場合もあります。こういった事務と業務の関係は、効率化の観点から見るとどのように結びつくのでしょうか。

事務を効率化すると業務が改善される

例えば製造業では、生産現場での工程管理から個々の作業まで、常に改善が求められ、極限まで生産性を高める努力がなされてきました。一方で、業務を支える事務作業の効率化は、あまり注目されていないのが現状です。販促物管理における事務作業は、多くの場合営業拠点の事務担当者が実施しています。事務担当者は拠点の在庫数、調達中の資材数を把握し、営業担当者が確実に販促物を利用できるようにしています。事務作業にも当然、人件費や消耗品といったコストがかかり、また、補助的ながら売り上げに貢献しています。そのため、事務作業を効率化することは、その作業自体の生産性が上がるだけでなく、業務全体も効率化します。結果、全体の生産性の押し上げにつながります。

事務作業を効率化するためのポイントとは

では、事務作業を効率化しようとしたとき、どのような点に注目すべきでしょうか。重要なポイントは以下の5つです。

1.作業を定型化する

事務作業は、それぞれの作業について「やり方」が定まっていない場合が多く、個人で独自の方法をとっているケースが多いです。こういった作業を定型化することで、人によって作業スピードや使用するツールのばらつきが解消され、作業を均一にすることが可能です。作業が均一化されれば、作業のやり方についてさらに効率のいい方法も模索しやすくなります。作業を個別にリストアップして課題をまとめ、定型化できるものがないか探すことから始めてみましょう。

2.作業を集約させる

次に注目するのは、重複している作業はないか、まとめられる作業はないかという点です。ひとつの分野に関する作業を分散して行っている場合、それらを一カ所に集約することで作業効率が上がる場合があります。また、別々の作業でも途中で同じことをしていて、無駄が発生している場合もあります。リストアップした作業の中から、集約できる作業はないかを探してみましょう。

3.マニュアル化する

まとめた作業について、もう一度定型化を行います。それにより、さらに全体の作業が効率化されるでしょう。

次に行うのは、再度定型化した作業の属人化を解消するためのマニュアル作成です。作業は定型化できていますから、マニュアル化することで、作業担当者が休んだ場合も大きな支障が出にくく、すべての人が一定の水準で作業できるようになります。また、新人教育に関しても、スムーズに行うことができます。作業をマニュアル化することで、さらに効率化できそうな部分が見えてくるというメリットもあります。

4.ミスの発生点を見つけ修正点を定める

作業のマニュアル化ができたら、整えた手順に沿って実践してみます。作業に慣れてくると、必ずミスややり直しが発生しやすい部分が出てくるはずです。一連の作業でミスが発生しやすい場所を特定し、その後に行う作業に確認・修正の工程をおく工夫をしてみましょう。

確認や修正の作業を定型化することは、余計な作業を設定し作業完了までの速度を落としているように見えるかもしれません。しかし、事務作業のミスによりほかの業務に支障が出た場合、その修正や補填(ほてん)に大きな損失が発生する可能性もあるのです。一見無駄に見えても、ミスの発生しやすい作業をねらって確認・修正の工程を設定することで、全体の効率化につながります。

5.スピードアップの工夫を続ける

ここまでの効率化手順をふまえて作業を続けていきながら、常にスピードアップできる方法を探していくことが大切です。作業スピードが上がる方法を検討する場を定期的に設け、互いにアイデアを出し合い、試してみましょう。さらに大きくスピードアップできるツールやソフトがあれば、設備投資も含めて考えてみることも必要です。

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事務効率化の具体的なプロセス例

では、実際の事務作業においてはどのような部分が効率化できるのでしょうか。実施されることが多く、着手しやすい事務作業効率化の例を見てみましょう。

机の上に書類の山をつくらない

机の上に書類を積み重ねたまま管理している人もいますが、これは非効率な管理方法の典型です。必要な書類を探し出すのに時間がかかり、机の上という限られた作業スペースを狭くしています。必要なものとそうでないものをしっかりと分別し、種類ごとにファイリングして並べるか、引き出しの中に収めるようにしましょう。整理整頓は効率化の第一歩です。

IMEの有効活用

事務作業では、決まったあいさつ文や言い回しをよく使うケースも多いのではないでしょうか。こういったフレーズはパソコンの機能IME(文字入力システム)に辞書登録しておきましょう。簡単な1文字か2文字を打つだけで長いフレーズも変換候補に表示され、文章作成にかけていた時間が大幅に短縮されます。

Excelで自動化

進捗管理や日々の業務分析を表にして見える化する作業も、売り上げに対し補助的に貢献します。こういった表作成に使われるExcelのような表計算ソフトには、必ず自動計算機能があります。セルに計算式を設定することで、行や列の合計や平均、割合などを一瞬で表示してくれます。Excelの自動化を活用して表作成を効率化しましょう。

システムの見直し

ふだん手作業で行っている発注作業も、定型化によって効率化の次のステップへと進むことができます。ある程度決まったものは発注が必要になるタイミングの法則が見えてくるはずです。このような場合は、発注システムやソフトを導入して、その作業を自動化することができます。自動化することで、定期的な発注品の変動や年間コストなどの見える化も容易になります。

事務作業を委託する方法も BPOの活用

社内で重要な役割を持つ事務作業は社内で処理する、というのがかつての日本では常識とされていました。しかし近年、特に事務作業において注目される仕組みのひとつに、BPOがあります。BPOとは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略で、業務の一部を外部の企業に委託することをいいます。
BPOという仕組みが注目されるようになったのは、次のようなメリットがあるからです。

BPOサービスには、先述した業務を効率化するための5つのポイントがすべて取り入れられていることが多く、自社内で効率化のためのプロセスを進める時間も省けます。

販促物管理では次のような業務でBPOサービスを利用することができます。

  • 販促物の保管から発送業務商品と一緒に保管していた販促物を、販促物専用の倉庫で保管し、注文を受けて発送まで行います。多くの場合、倉庫の在庫状況をシステムで確認できるサービスが付随しており、販促物の欠品防止にも役立ちます。
  • 店舗や代理店からの注文受付業務メールや電話、FAXでの注文受付業務から倉庫への発送指示連絡を行います。これらはインターネットを通じたシステムでの注文が一般的です。なかにはインターネットでの注文が出来ない方に向けて、メールや電話、FAXでの注文受付をし、システムへの代行入力を行います。ユーザーへのサービスレベルを上げつつ、業務の記録を残すことができるようになります。
  • 発注代行業務システムから取得した情報をもとに、委託元に代わってサプライヤーへの代行発注を行います。委託元との情報共有、発注の進捗や証跡を残すためにシステムで管理します。管理業務を削減し、かつ業務の属人化を撤廃することができます。

単調な事務作業はBPOという選択肢も視野に入れて考えることで、事務作業の効率化だけでなく社内業務全体の効率化とコスト削減に結びつけることも可能です。

生産性向上のために事務作業の効率化に注目

事務作業の効率化によるメリットと、その手法を紹介しました。業務全般を支える事務作業を効率化することは全体の生産性向上につながります。これまで重要視されることの少なかった事務作業は、改善できる部分が残っている可能性があります。事務作業の効率化を考え直し、生産性向上へとつなげてみてはいかがでしょうか。

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■連載コラム【販促物管理のポイント】シリーズ

第1回: 販促物の過剰在庫や欠品を防ぐカギは?
第2回: みんな悩んでいる「販促物の在庫管理方法」、販促物受発注システムでどこまで解決できる?
第3回: 販促物管理のコスト削減をめざすときに最初に取り組むべき二つの対策
第4回: 事務作業の改善で生産性向上を 効率化の5つのポイント(現在のページ)

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