2024年1月11日
NEDOが公募した「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」に採択
量子技術と古典AI技術を活用した物流業務効率化アプリケーションの開発を開始
大日本印刷株式会社(以下、DNP)とBIPROGY株式会社(以下、BIPROGY)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」における「量子・AIアプリケーション開発・実証」委託事業*1の公募に対し、「量子+古典AIによる物流業務効率化のアプリケーション開発」を共同提案し、実施予定先として採択されました。本事業の実施期間は最大で、委託期間が2023年12月~2026年8月、助成期間が2026年9月~2027年8月です。
両社は、今回採択された研究開発テーマで、量子インスパイアード技術*2を含む量子アニーリング*3と、古典AI技術*4を組み合わせた「量子・AIハイブリッド技術」を活用した最適化アプリケーションを開発します。物流・交通分野における配送計画の最適化や、倉庫内のピッキング計画の最適化などの課題に適用します。開発するアプリケーションは、DNPグループ内の製造・物流現場やBIPROGYの顧客企業にて導入実証を行い、本格的なサービスの導入につなげていく予定です。また、当アプリケーションの普及や導入支援につながるさまざまな取り組みを推進していきます。
【委託事業の背景】
2022年4月に内閣府が策定した「量子未来社会ビジョン」では、量子技術の研究開発や社会実装を加速・強化し、日本の産業の成長機会創出や社会課題解決などに対応することが喫緊の課題であると示されています。量子技術については、AIなどの計算機科学、5Gなどの情報通信技術、計測・センシング技術などにおいて、従来型(古典)技術システムとも密接に関連づけて、相互に融合・一体化させながら取り組むことが重要であると提言されています。
このような課題に対して、DNPは、生産や人員計画の最適化などの「組合せ最適化」を高速で処理する「DNPアニーリング・ソフトウェア」*5を開発し、製造・物流領域への適用に取り組んでいます。またBIPROGYは、量子計算、量子アルゴリズムなどの理論分野の研究を継続しながら、「量子コンピューティング・タスクフォース」を立ち上げ、システムインテグレーターとしてのビジネスへの適用に取り組んでいます*6。両社は量子技術の研究開発とビジネス展開などで協業関係にあり、これまで培った物流・交通分野向けの業務課題解決の知見と、「量子・AI ハイブリッド技術」を活用した最適化アプリケーションの研究開発を共同で実施します。
【共同研究テーマの概要】
1.配送計画最適化アプリケーションの開発
物流業界や配送業者に向けて、効率的な配送計画を決定するアプリケーションを開発します。配送計画は、さまざまな制約条件に加え、道路状況や運転手・荷物の事情などで緊急に変更する可能性が高いため、高速な処理が求められます。本アプリケーションによって、輸送距離とCO2排出量の削減と同時に、物流業界の課題となっている輸送能力不足の解消にも貢献していきます。
2.ピッキング計画最適化アプリケーションの開発
自律走行するロボットと作業者が協働する倉庫に向けて、効率的なピッキング計画を策定し、ロボットの走行時間が最小になる移動経路を計算するアプリケーションを開発します。開発にあたっては、「DNPアニーリング・ソフトウェア」の適用も検討しながら、倉庫で働く人の動きや作業の進捗、障害物の状況を常に把握し、リアルタイムな高速処理を行うという課題の解決につなげていきます。本アプリケーションの開発により、製造・物流現場への産業用ロボットの導入を促進し、作業効率の向上や生産年齢人口の減少といった社会問題の解決に貢献します。
3.メタ解法*7を活用した汎用モジュールの開発
従来の量子アニーリングを用いた組合せ最適化問題の求解では、制約条件が多くなると計算速度と解析精度が落ちるため、ビジネスへの適用が困難になるという課題があります。本研究開発では量子アニーリングを適用する前処理のために採用する古典AI技術の「メタ解法」を利用可能な汎用的なモジュールを開発し、最適解となりうる候補の集合である解空間の範囲を絞り込むことで計算速度と解精度の飛躍的向上を目指します。このモジュールは、両社が開発する最適化アプリケーションに適用するだけでなく、他のプログラムからも呼び出して、汎用的に利用できるように構成します。量子技術者に幅広く長期間利用いただくことを目的に、オープンソースとして公開する予定で、量子技術の社会実装に貢献していきます。
■両社の役割
○DNP:ピッキング計画最適化アプリケーションの開発、グループ内の製造・物流現場での導入実証など
○BIPROGY:配送計画最適化アプリケーションの開発、メタ解法モジュールの開発など
【今後の展開】
DNPとBIPROGYは、今回の採択事業を通じて、「量子・AIハイブリッド技術」の研究開発を加速させます。また、開発したアプリケーションの普及に向けた支援サービスも拡充し、両社の顧客企業・団体などに提供して、量子技術の社会実装に貢献していきます。
*1 「量子・AIアプリケーション開発・実証」委託事業」について → https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100350.html
*2 量子インスパイアード技術 → 量子コンピューターから得た着想から、量子現象の振る舞いを模倣して現在のコンピューター(古典コンピューター)上で、複雑な計算を高速に処理できるコンピューティング技術
*3 量子アニーリング → 組合せ最適化問題を解くことを主な目的として開発された、量子力学を用いた計算手法の一種
*4 古典AI技術について → 従来から使われているスーパーコンピューターやサーバーなどのデジタルコンピューターを活用したAI技術
*5 DNPアニーリング・ソフトウェアについて →
https://www.dnp.co.jp/biz/solution/products/detail/20169909_1567.html
*6 BIPROGY 量子コンピューティングについて → https://www.biprogy.com/solution/service/quantum.html
*7 メタ解法とは → オペレーショナルリサーチ分野で最適化プログラムを実装する際に汎用ソルバを利用するだけでは解精度・処理性能が不十分な時に採用される多様な手法の総称
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