2023年9月1日
年齢や言語の違い、障がい等がある人も読みやすい「LLマンガ」の制作サービスを開始
京都精華大学と連携してコニカミノルタウイズユーで実証実験、86%が「読みやすくなった」
大日本印刷株式会社(DNP)グループの株式会社DNPメディア・アート(DMA)は、できるだけ多くの多様な人々にとって読みやすい形式の「LLマンガ」の制作サービスを2023年8月に開始しました。
読み書き障害(ディスレクシア)*1や自閉症等の人、視力の衰えのある高齢者、日本語を母語としない人など、書籍を読むことに困難がある人々にとって、読みやすく制作する本「LLブック」が海外を中心に流通しています。「LL」は、“やさしくてわかりやすい”という意味のスウェーデン語・Lättläst(レットラスト)の略で、できるだけ多くの人に読書の楽しみや必要な情報を提供することを目指してつくられています。こうした考え方や技術・ノウハウをマンガに展開させたものが「LLマンガ」です。
本サービスの開始に先駆けて、『障害のある人たちに向けた LLマンガへの招待』(樹村房、2018年)の著作者で京都精華大学教員の吉村和真教授監修のもと、2022年11月〜2023年2月に、コニカミノルタグループ特例子会社・コニカミノルタウイズユー株式会社の社員教育のなかで、「LLマンガ」を活用した理解度向上の検証を行う実証実験を行いました。
実証実験で用いた、「LLマンガ」のガイドラインに沿って作成したマンガ
サービス開発の背景
2019年6月に国内で「読書バリアフリー法」が施行され、障がいの有無などに関わらず、すべての国民が等しく読書できる環境を整備する必要性が一層高まっています。そうしたなかでマンガのコンテンツは、ページの構成やコマ割り、説明・表現などが複雑な場合もあり、すべての人にとって理解しやすいとは言えない状況でした。
今回DMAは、読書のバリアフリー対応に対して、この取り組みをマンガコンテンツにも広げ、「LLマンガ」制作のガイドラインとフローを構築して、サービス提供を開始します。これにより、日本語のマンガコンテンツを読むことが困難な人も含めて、できるだけ多くの人がマンガを楽しむことができる環境づくりを目指します。
「LLマンガ」制作サービスのポイント
1.マンガ特有の表現を分析し、ストーリー性を配慮してコマを分解するなど、シンプルな設計や改善のレギュレーション(規則等)を構築
2.ロケーション(場面)や表情による心理表現などを読み取る必要がない作画
場面を示す背景や表情による心理表現などを抑えてセリフで伝えることで、わかりやすさを向上(左のコマの各種情報を右のコマでは抑制)
3.わかりにくいテキスト・文章や複雑なコマ構成の改善
4.デフォルメや誇張表現をはじめとする「略画表現」の改善
直感的に理解できる文章を心がけるとともに、背景の誇張した表現を抑えることで、わかりやすさを向上(左のコマの各種情報を右のコマでは抑制)
実証実験の概要
コニカミノルタウイズユーの人事制度の説明資料について、従来のテキスト主体の資料をベースに、通常のマンガと、吉村教授監修による「LLマンガ」の二種類を制作しました。この二種類のマンガを知的障害や精神障害を抱える同社のメンバーに読んでもらい、理解度を検証したところ、参加者の約86%が「LLマンガ」の方が「よりわかりやすい」と評価しました。
今後の展開
DMAは本サービスを、2022年に構築したマンガ制作スタジオ「MANGA CREATIVE WORKS®」*2のコンテンツ制作機能と連動させて、出版社や企業、教育機関などにも提供していきます。DNPグループは本サービスを通じて、「D&I(多様性と包摂)」を一層促進し、多様な人材の育成や障がい者雇用の定着といった企業の課題解決を支援するとともに、継続的な出版文化の発展にも貢献していきます。
*1 ディスレクシア:知的能力や教育環境に問題がないにも関わらず文字を読むことが困難な学習障がい
*2 「MANGA CREATIVE WORKS®」について→ https://www.dnp.co.jp/news/detail/10162244_1587.html
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