2023年1月16日
DNPの鑑賞システム「みどころキューブ」を小学校の授業で活用
子どもたちの探究力への学習効果を検証
大日本印刷株式会社(本社:東京 代表取締役社長:北島義斉 以下:DNP)は、DNPコンテンツインタラクティブシステム「みどころキューブ®」を小学校の授業で活用し、子どもたちの探究力向上に向けた学習効果を検証する実証実験を行いました。今回、三重県伊賀市立成和西小学校(校長:藤山秀公)にて、デジタルアーカイブを活用した公開研究授業で、授業をコーディネートするTRC-ADEAC株式会社(本社:東京 代表取締役社長:稲垣実)所属で、東京大学大学院情報学環の特任研究員でもある大井将生氏に、「みどころキューブ」を教材として提供しました。
「みどころキューブ®」を使った授業風景(左・中央)と画面イメージ(右)
【本実証実験の背景と概要】
近年、デジタル田園都市国家構想の推進や博物館法改正を背景に、全国の自治体やミュージアム施設は、所蔵資料のデジタルアーカイブ化やデジタルデータの利活用を推進しています。DNPはそうした動きなどを受けて、ミュージアム向けの鑑賞システムとして「みどころキューブ」を開発しており、今回の実証実験は、実際の学校授業でこの鑑賞システムを使用する初めての事例となります。 学校教育では、GIGAスクール構想の推進などによってICT教材の需要が高まるとともに、学習者が主体的に学ぶ「アクティブラーニング」が注目され、「探究的な学習」を促進する教材が期待されています。 今回の実証実験では、デジタルアーカイブ化された地域の歴史に関する資料の画像や情報を搭載した「みどころキューブ」を小学校の授業で使用し、子どもたちの学習理解や学習態度に変化が見られたかどうかを検証しました。
- 実施時期 : 2022年12月7日(水) 10:45~11:30
- 実施校 : 三重県伊賀市立成和西小学校6年生
- 授業テーマ : 第6学年における国語科授業「服部半蔵がつなげる、伊賀と東京」
- 指導者 : 宮田諭志 教諭(成城学園初等学校教諭)
【「みどころキューブ」を使った授業の流れとその特長】
○教諭があらかじめ準備した教材用の「みどころキューブ」に子どもたちがアクセスし、タッチパネルなどで直感的に操作。
○「みどころキューブ」内の資料や画像を回転させたり、キューブの中に入ったりすることで、多角的な視点から資料の関係を捉え、興味あるテーマを見つけながら自らの「問い」を設定。
○「みどころキューブ」から外部サイトのデジタルアーカイブ資料にリンクし、詳しい情報にアクセス。
今回、「みどころキューブ」は「みどころキューブ SaaS型」として、インターネット上に公開され、専用アプリケーションをダウンロードする必要なく、子どもたちは1人1台配布された端末のWebブラウザからアクセスしました。
「みどころキューブ」は、ミュージアムのコレクションや資料情報を、キューブ(立方体)状のインタフェースを通して、テーマや関係性等の多様な視点で鑑賞できる新しいビューアです。今回の実証実験で使用した「みどころキューブ SaaS型」は、Webサーバーを学校等で用意する必要がないため、素早く、簡単に利用できます。
【参加者のコメント】
当日は、伊賀市が公開する「デジタルミュージアム 秘蔵の国 伊賀」(デジタルアーカイブシステムADEAC所収)の有効活用を目的とした公開授業として、市内他校の関係者・市議会議員・市教育委員会関係者・地域のMLA施設(博物館・美術館:Museum、図書館:Library、文書館:Archives)の多くの方が見学され、デジタルアーカイブの教育利用に対する注目度の高さがうかがえました。授業では、子どもたちが自ら進んで直感的に操作する姿や、先生の指示に従って「みどころキューブ」から資料にアクセスし、新たな発見をする場面が見られました。「探究的な学び」に対する学習効果の可能性について、担当教諭や授業を受けた児童から以下のようなコメントがありました。
◯授業を実際にやってみるまでは「みどころキューブ」が使えるか不安もあったが、明らかに児童たちの「問いの誘発」につながったと感じている。(宮田教諭)
◯「みどころキューブ」を初めて使った。通常、資・史料は横に並べるだけだが、「みどころキューブ」では縦軸で時代のつながりが見えたり、立体的に見られたりするのが良い。(担当教諭)
◯普段の勉強は文字ばかりなので、文字だけでなく画像が立体的にあって分かりやすかった。また使ってみたい。(6年生児童)
◯デジタルアーカイブの資料を使ってこんなに面白い授業ができるんだと驚いた。(6年生児童)
◯最初、地図上で伊賀と東京の関係性を見るものだと思ったが、触ってみて資料の関係する年代も見ることができ、資料の関係性を見るものだということがわかった。(6年生児童)
【今後の予定】
実証実験以降も子どもたちは自ら設定した「問い」に沿って「調べ学習」を継続し、「みどころキューブ」にさまざまな情報を付加していくためのディスカッション授業を行いました。今後、さらに子どもたちがデジタルアーカイブや図書館・博物館、現地調査等で調べた情報を付加した「みどころキューブ」を使い、子どもたちが学習成果を発表するプレゼンテーションの授業も実施していく予定です。 DNPではデジタルアーカイブ化した地域の文化財情報等の利活用を推進しており、今回の学校教育への展開はこの取組みの一環となります。「みどころキューブ」を使い、学校教育にデジタルアーカイブ化した地域の文化財、史資料情報を活用することで、MLA施設と教育機関の‟博・学連携”を促進し、ふるさとに愛着と誇りを持つ心豊かな子どもの育成の支援を行います。
<大井将生氏プロフィール>
東京大学 大学院 学際情報学府/東京大学 大学院 情報学環 特任研究員/TRC-ADEAC株式会社 特任研究員。「デジタルアーカイブの教育活用」をテーマとして情報学やデジタルヒューマニティーズの視座から学校教育を対象とした実践的研究に従事。主な研究に「ジャパンサーチを活用したキュレーション学習」「S×UKILAM(スキラム)連携」「学習指導要領LOD」など。
【DNPのデジタルアーカイブに関する取り組み】
DNPは、世界遺産をはじめとする京都の有形・無形の文化遺産を毀損することなく保存し、次代へ継承する「京都・文化遺産アーカイブプロジェクト」*1や、フランス国立図書館の貴重な作品のデジタル化や鑑賞システムの開発を行う「リシュリュー・ルネサンス・プロジェクト」*2などを推進しています。こうした取り組みを通じて、高精細画像処理の技術とノウハウを培うとともに、ITを活用したインタラクティブな鑑賞システムを開発し、作品のデジタル化や公開・利活用を支援していきます。DNPは今後も、文化財等の保存・継承・公開などに関わる活動を推進し、多くの人々が文化を学び、さまざまな体験が得られる事業を展開*3していきます。
*1:有形・無形文化遺産の“保存と継承”高精細映像アーカイブについて
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